ユニバーサル・ヘルス・ カバレッジ(UHC)達成に 向けた質が高く効率的な 保健財政: 可能で包摂的な 21 世紀の持続 成長を推進する 世界銀行グループ ユニバーサル・ヘルス・ カバレッジ(UHC)達成に 向けた質が高く効率的な 保健財政: 21 世紀の持続 可能で包摂的な 成長を推進する 世界銀行グループ 2 | 世界銀行グループ 要旨(仮訳) 保健財政の強化に向けて緊急の対策を講じない限り、 い人的資源を活用可能にすることは、すべての国にとっ 途上国の過半数がユニバーサル・ヘルス・カバレッジ て有益である。また、健康安全上の保障(ヘルスセキュ (UHC) と健康および貧困関連の持続可能な開発目標 1 リティ)を強固にするための財政支出は、保健システム (SDG)に関するターゲットを達成できない。SDG 達成 の不備による感染症大発生の頻度と影響を減少させ、そ の期日である 2030 年まで 10 年余りとなった現在におい の他の国境を越えて拡大する保健上のリスクを減らすこ ても、世界の 36 億人が、必要としている最も基礎的な保 とで、すべての国に利益をもたらす。このアジェンダを 健医療サービスを受けておらず、1 億人が医療費の自己 G20 財務トラックに取り込み、財務大臣と保健大臣の共 負担額のために貧困に追い込まれている。UHC は SDG 同によるリーダーシップを推進することは、縦割り行政 3 の中核であり、その達成への前進が包括的かつ持続可 を崩し、UHC を目的とするハイパフォーマンス保健財政 能な経済成長を促進するという確かなエビデンスがある。 の進歩を妨げている政治経済的障壁を乗り越えるチャン ただし、UHC 達成には質の高い効率的な保健財政(ハイ スとなる。 パフォーマンス保健財政)の実現が不可欠である。ここ でいう質の高い効率的な保健財政とは、十分かつ持続可 能なレベルの財源が確保されていること、不健康である ときの経済的リスクを分散させるために必要な資金が事 UHC および持続可能で包括的な成 前に集約・共有(プーリング)されていること、そして、 長を前進させるハイパフォーマンス 医療サービスの適用範囲・サービスの質・経済的保護が 望ましい水準で、かつすべての人に効率的・公平に分配 保健財政 されるような医療支出の仕組みのあることの 3 点が満た されているような状況である。 医療費が単なる消費であるという説はもはや信憑性を 失っている。ハイパフォーマンス保健財政は 6 点の主要 UHC 達成に向けてどのように資金を確保するかという問 因を通じて経済的便益をもたらす: 題は、持続可能で包括的な成長を推進し、世界経済に対 する潜在的リスクを軽減するという G20 の目標と一致す • 人的資本の構築。予防接種と栄養補給を含む母親、新生 る。UHC の質を向上し効率化を実現を通じ、生産性の高 児、小児の基本的なプライマリ・ヘルスケアや地域医療 サービスへの投資は、極めて重要な幼年期における人的 1.  ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC:Universal Health Coverage)と 資本の創出を促進し、より良い学校成績や所得創出の基 は、全ての人が適切な予防、治療、リハビリ等の保健医療サービスを、必要な時に支払 盤を築く。健康増進、予防、治癒のための基礎的な保健 い可能な費用で受けられる状態を指します。UHC の達成には、適切で質の高い保健・ 医療サービスの保障と、経済的リスクからの保護の 2 つの柱が重要です。 UHC は、最 医療サービスは、生涯を通じて労働者の生産性向上に資 も困難な環境にいる人々-重病人、必要な保健・医療サービスが受けられない人、貧困 層-への支援と、基本的人権としての健康への優先的な支援を実現するものです。 する。 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた質が高く効率的な保健財政 | 3 • 労働市場の流動性、雇用と技術の創出、労働市場のフォー 適応し、革新をおこす能力が向上する。医療保健分野に マル化の推進。労働市場、仕事の在り方が変容してきて おける効率性の向上を推進することにより、保健財政は おり、労働者は複雑な問題解決、チームワーク、イノベー 新たな戦略的用途のために生産的な人材の活用を可能に ションのスキルや自主性を持つことが求められている。 し、各国が国際貿易において相対的な優位性を獲得、ま 労働者がこれらのスキルを育成・維持し、国がイノベー たは維持するための土台となる。 ションの創出や、新たな雇用と成長を生むための能力を • 健康安全保障の強化。2013 ~ 16 年に西アフリカで発生 高めるためには、保健医療への投資は前提条件となる。 したエボラ危機は、パンデミックが経済に長く残る傷跡 ハイパフォーマンス保健財政は、人々が暮らす場所、雇 を残し、数十年ではないとしても数年間にわたり開発を 、 用状態の如何によらず、経済的保護を保証することで、 後退させうることを世界に知らしめた。サーベイランス、 労働者の転職や新たな挑戦も容易になる。また、民間企 プライマリ・ヘルスと地域医療従事者、公衆保健衛生研 業が事業を拡張し雇用増加に対応するためのコストを低 究機関のネットワーク、情報システムなどの備える能力 減させ、労働市場のフォーマル化率と常勤雇用における への投資は、手に負えないほど蔓延する前に感染症の発 人口の割合を増加させる。 生を検出し、拡大を防止するために不可欠である。人命 • 貧困と不平等の解消。自己負担の支払いを減らすために を救うことに加えて、感染症の大発生を早期に食い止め 前払いおよび共同で貯蓄(プール)された資金調達を拡 るための対策への投資は、マクロ経済への悪影響や、投 大することは、貧困削減に向けて迅速で大きな利益をも 資以上にコストのかかる非常事態対応を防ぐためにも役 たらす。経済的保護はその他の利点をもたらす。例えば、 立つ。 人々は医療への支払いのために、資産を売却したり借金 したりすることが不要になるため、資金を他の用途や投 資へ回すことができるようになる。経済的保護はまた、 保健財政の重大な欠点と新たな脅威 病気や貧しい人々が健康を改善、維持することを可能に による UHC の危機 し、それにより所得を増やせるようになる。その結果、 所得格差は減少する。 このような複数の利点にもかかわらず、開発途上国の過 • 効率性と財政規律の向上。資金活用の効率化により、コ 半数がいまだにハイパフォーマンス保健財政がもたらす ストの上昇を抑制しながら、既存の財源によって、保健 成長と開発の機会を活用できていない。基礎的な保健医 医療サービスの質向上と適用範囲拡大を実現し、経済的 療サービスの普及には、いまだに大きなギャップがある。 な保障を拡大することができる。資金活用を効率化する また、サービスを受けていても、質が低いため効果がな 手段を組み合わせることで、長短期にわたって保健医療 いことがしばしばある。質の高いサービスと経済的リス 分野の財政規律を確保する。保健医療分野が現在多くの クからの保護を備えた制度を普及させるには、全体的な 国で歳出額のかなりの割合を占めている(公的支出に対 医療費支出の規模、複数の財源の組合せ、資金の共同負 し平均で 11%以上)ことを考えると、こうした改善は 担および資源の効率的で公平な活用が重要である。本レ 財政支出に直接的な影響を与える可能性がある。 ポートでは、保健財政に対する主要な制約を指摘する: • 消費と競争力の育成。経済的な保障により、人々は予期 • 途上国では、一人当たりの医療費支出が非常に低く、低 せぬ支出に備えるための貯蓄から解放され、他の商品 所得国(LIC)では平均 40 ドル、中所得国(LMC)で やサービスへの消費へが拡大する。UHC、健康および は 135 ドル、上位中所得国(UMIC)では 477 ドルである。 人的資本の蓄積によって、将来の競争力にとって最も重 これに対し、高所得国(HIC)では 3,135 ドルである。 要である国内の起業家、企業、および労働者が継続的に 4 | 世界銀行グループ • 支出額が低い原因の 1 つは、多くの開発途上国で政府の • 2000 年以降に保健医療のための開発援助(DAH)が急 歳出総額に占める保健医療への配分が割合が相対的に低 増したことにより、最貧困国の保健医療への歳出が大 いためである。 現在の水準は、すべての人にとって不 幅に拡大したが、近年その水準は停滞している。 その 可欠な質の高い保健医療サービスの実現には不十分であ ため UHC 達成に向け、DAH の在り方について方向転 る。政府支出において保健医療が占める割合は、高所得 換を迫れられている。これまで DAH は主に感染症プロ 国では 15%であるのに対し、開発途上国では平均 10% グラムに向けられてきたが、他の疾病分野でも同様の である。この数値には約 3% から 30% 弱までと非常に 進歩を促進し、保健システムを強化し、歳入拡大に取 大きな幅があるが、中でも上位中所得国の一部で保健医 り組む政府を支援し、UHC への加速的な進歩に必要な 療に対する優先度が最も低くなっている。 すべての保健財政機能を実行する能力を強化するため、 • 政府支出が低い原因の一つとして、政府が歳入を確保す 追加の国際援助が必要である。 る能力が不足していることが挙げられる。 途上国政府 の半数近くにおいて、IMF が持続的で包括的な成長を 新たに発生して深刻化する課題が保健医療のコストを引 生み出すために不可欠であるとする基準(国内総生産 き上げ、公平で公正な将来の歳入確保のリスクとなって (GDP)の 15%)まで税率を引き上げられていない。 いる。主な課題としては、消費者の期待の高まり、国民 の高齢化とそれに伴う非感染症の負担増および介護の需 • 政府による歳入確保が低水準であるということは、現 要、政府の税収確保能力の不足、経済のフォーマル化の 在、すべての人にとって質の高い保健医療サービスを提 遅れ、労働の形態と内容の変化、パンデミックの脅威、 供するために必要な資金と、中低所得国および低中所得 薬剤耐性、人口の強制移動等が挙げられる。迅速な措 国で利用可能な財源との間に相当なギャップがあること 置を講じない限り、途上国政府が UHC に必要なハイパ を意味する。経済成長が良好であっても、このギャップ フォーマンス保健財政を構築するのが、ますます難しく は今後 10 年間で大幅に縮小するとは予想されておらず、 なる可能性がある。 2030 年までに中所得に達する可能性が低い 54 カ国で は合計約 1,760 億ドルに達すると予想されている。 低所得・下位中所得 54 カ国に存在する UHC 資金調達 • 政府支出が低水準にとどまっている結果として、低・中 における相当のギャップを解消するには、国内からの投 所得国では医療費の自己負担が大きな割合を占めてお 資と海外からの投資を組み合わせる必要がある。経済成 り、総額で毎年 0.5 兆ドル、一人当たり 80 ドル以上に 長に加え、政府による GDP に占める税収比率引き上げ のぼっている。 前述のように、これらの支払いは一部 と保健医療に対する公的支出の比率の引き上げという の人々が必要な保健医療サービスを利用するのを妨げ、 財政措置により、総額約 1,760 億ドルと推定される資金 人々を貧困に追いやり、その貧困から抜け出せなくなる 調達ギャップを、2030 年までに約 3 分の 1 縮小し、約 原因となっている。 1,140 ~ 1,220 億ドルまで減らすことが可能である。こ れに加え、民間セクターから資金が流入する可能性はあ • 保健財政で非効率と不公平が拡大しており、推計によれ るが、限られた金額になるものと思われる。すなわち、 ば、世界的に医療費の平均 20 ~ 40%が無駄になってい る。公平性の点では、貧困層が受ける医療サービスは富 110 億ドルという現在の保健医療のための開発援助の水 裕層より相対的に少なく、より質が低いにもかかわらず、 準はギャップを解消するには足りていない。各国が UHC 保健医療に対する支払いが所得に占める比率が高く、ま を達成し、持続可能で包括的な成長を確実にするために たその支出に対する補てんを現金または現物支給を受け は、DAH の大幅な増額と併せ、各国政府が外部資金を取 られない状況にある。 り込む能力の向上、民間部門の関与の強化、さらには革 新的な保健財政政策の策定が必要である。 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた質が高く効率的な保健財政 | 5 国ごとの取り組みのロードマップ 進歩を加速するための国際協力 各国がハイパフォーマンス保健財政を整備する上 多くの途上国において、保健財政の支援を意図した多数 で、以下 3 つの取り組みの必要性が国際社会で概 の国際的イニシアティブが存在する。二国間・多国間の ね合意されている: 開発機関、開発金融機関、グローバルパートナーシップ、 ネットワーク、プラットフォームがあり、それらは、技 • 好事例の拡大。各国は、効果が実証済みの保健財政の原 術協力、政策対話およびグローバルな学問分野の発展を 則および方針をそれぞれの状況に合わせて調整すること 促進するために、開発資金以外にも重要な貢献をしてい により、大幅な進歩を遂げる。以下のような選択肢はそ る。これに含まれるものとして世界保健機関(WHO)に の重要性について大方の合意がなされている:質の良い よる、「健康的な生活と福祉のためのグローバルアクショ プライマリ・ヘルス及び地域医療サービスへの投資を優 ンプラン」が挙げられる。また、実行に移すための資 先させることによる財源の使用の効率と公平性を改善す 金調達機能を担っているのが、P4H プラットフォーム、 る。一般歳入からの保健医療への資金を増加し、支払い UHC 2030、UHC のための共同学習ネットワーク(JLN)、 能力に応じて健康保険への負担を義務的に求める。 政府の予算担当者のネットワーク(経済協力開発機構 (OECD)予算担当者ネットワーク、アフリカ予算改革協 「全体像」 • への注目。各国のリーダーは 2 つの方法で「全 力イニシアティブ)、アフリカ連合の地保健医療分野への 体像」という視点を取り入れることにより、保健財政状 国内資金調達に関するアフリカ・スコアカードおよびト 況を改善できる:まず、政府全体によるアプローチの中 ラッカーと地域保健医療ファイナンシングハブ、ワクチ で、セクター横断的に保健財政政策を結びつける。次に、 ンと予防接種のための世界同盟(Gavi)、グローバル・ファ 中期的な時間枠を設定し、歳入創出、医療費、効率性、 イナンシング・ファシリティ(GFF)、世界エイズ・結核・ 公平性に対する将来の脅威を定期的に評価し、問題が顕 マラリア基金である。今日、切迫する各国の保健医療財 在化する前に保健医療戦略を調整することである。これ 政を補助する上で、これらのパートナーシップ / プラッ ら 2 つのアプローチを合わせて用いることにより、保健 トフォームが貴重な役割を果たしている。 財政の強靭性と持続可能性が強化される。 しかしながら、UHC ファイナンスにおけるかつてから続 • 保健財政のリーダーシップ、ガバナンス、組織能力の強 いている課題を考えると、次の 2 つの分野で、資金調達 化。財務大臣と保健大臣が共同してリーダーシップを発 を支援するための新たな国際協力の仕組みが必要である: 揮することにより、保健財政政策の開発と実施を加速す (1) 未解決の問題や議論のある領域に新たなエビデンスを ることができる。これは幅広いコンセンサスが得られて もたらし、経済の強靭性と持続性を改善するための新し いるにもかかわらず、実施が進んでいない分野に特にあ い戦略を提供し、UHC 達成に向けた段階的変化を可能に てはまる。そのような遅れはしばしば政治的障壁、ガバ し得るイノベーションを生むための保健財政に関する研 ナンスと組織能力の不足が原因であり、それらの解決に 究開発。(2) 国内財源の活用をさらに推進し、世界的な健 は共同リーダーシップが必要となる。保健省と財務省が 康安全保障を確保するための保健財政のリーダーシップ、 共同でリーダーシップをとることは、保健財政のガバナ ガバナンス、組織能力の強化に向けた保健医療のための ンスと組織の能力を強化する。 開発援助資金の大幅な増加および戦略的移行。 6 | 世界銀行グループ G20 財務大臣と中央銀行総裁が強靭 臣経験者、並びに保健財政、保健医療、国家財政、財 政政策の分野で世界的に認められた専門家で構成され で持続可能な UHC 資金調達アジェ る “UHC 資金調達の強靭性および持続可能性に関する ンダの舵を取る 諮問パネル” が管理・取りまとめを行う。 2) UHC ファイナンスが直面する困難な課題解決のため G20 の財務大臣・中央銀行総裁が、強靭で持続可能な の資金の出し手となる。 具体的なポートフォリオは、 UHC 達成に向けた資金調達アジェンダを採択し監督する “G20 UHC ファイナンスの強靭性および持続可能性に ことで、すべての国における保健財政の将来にわたる健 関する対話” で特定された、保健財政に関する課題の 全性を推進することができる。このアジェンダの中心と 解決を目的とした投資を対象にする。特に、世界の経 なる要素は保健医療の範囲を超えて国家財政にまで及ぶ 済と保健医療に影響を与える可能性を持ち、UHC 達 ため、G20 財務大臣によるリーダーシップが不可欠であ 成に向けた段階的な進歩を可能にする投資に重点を置 る。G20 の財務大臣・中央銀行総裁は、財務当局と保健 く。この投資対象は、より効果的な解決策を提示する 医療当局が協働することで、より良い保健・医療サービ ことを目的とした新たな革新的基金という形を取るこ スを提供し、経済的リスクから保護する強固な保健財政 とが可能であり、(または)すでに既存の困難な問題 制度を構築することができ、またそれを維持することが を解決する基金に投資している G20 国は、その資金を できる、という規範を示すことができる。 新たな基金に振り向けることもできる。 このアジェンダを前進させるために、G20 財務大臣・中 3) 2030 年までの UHC 達成に向けた進歩を加速するため 央銀行総裁には以下を提案する: に、持続可能な国内資金の動員を促進する DAH の量 1) 今後の G20 会合において、2 年に一度 UHC 資金調達 と質の向上を支援する。前述のように、保健医療のた めの開発援助への多数の新規投資は、低所得国と下位 の強靭性および持続可能性に関するレビュー会合を財 中所得国が UHC の目標達成に向けて融資ギャップを 務大臣と保健大臣の共同リーダーシップにより開催す 縮小するために不可欠である。次世代の DAH は、国 る。同会合では、保健財政に対する脅威を認識し、対 内資源が効率的で公平に活用・動員・プーリングされ 処するための国家および全世界的な優先項目を特定す ること、また、各国が持続的に保健財政を維持する能 る。また、イノベーションアジェンダを定義し、UHC 力を向上させることに加え、感染症大発生の予防と対 資金調達に対する政治的コミットメントを引き出す。 応という分野にも一層取り組んでいくことを可能に 同会合は財務省と保健省が、医療支出の決定要因、将 する。世界銀行グループの国際開発協会(IDA)、グ 来の DAH を含む収入の増加及び効率改善のための選 ローバルファンド、Gavi などを含む、主要な国際保健 択可能な手段について対話する場を提供する。2 年に 資金調達メカニズムが 2019 年および 2020 年にもた 一度の対話は UHC 資金調達の強靭性と持続性の評価 らす資金は、各国が UHC 達成にむけた進歩を加速す に組み込まれる。分析的アプローチの開発は世界銀行 ることを支援するために、より優れた保健医療援助の が WHO と緊密に協力して行う。既存のパートナー 長期的なシフトを提供するための短期的機会を与えて シップおよびネットワークがつなぎ役となることで、 いる。 世界中の財政の専門家を結び付け、彼らが互いの技術 的強みを生かしながら、保健医療財政の脅威と機会を 評価することができるようになることで、分析的アプ ローチの実施が促進される。この対話における評価基 準の設定とその進捗は、財務大臣経験者および保健大 ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた質が高く効率的な保健財政 | 7 結論 ハイパフォーマンス保健財政を通じて UHC を進めるこ とにより、より迅速で持続可能かつ包括的な成長と貧困 削減を実現できる。だが、効率的に機能する保健財政を 構築するチャンスを完全にとらえた発展途上国は少なく、 UHC 達成に向けた世界的進歩はいまだに遅い。一方で、 いかに UHC のためのハイパフォーマンス保健財政を最 も効果的に構築できるか、いかに支援機関が各国の取り 組みを支援できるかという点で、国ごとの経験に基づく 世界的コンセンサスが生まれつつあることはよいニュー スと言える。この戦略的思考の収束は、UHC の漸進的実 現に伴う経済的利益を実現するための過去に例のない機 会を提供する。 現在、各国が UHC 達成への前進と経済成長のリスクと なる脅威に対処する準備を整える中で、G20 財務大臣と 中央銀行総裁は UHC 資金調達の強靭性および持続可能 性に関するアジェンダの支援者かつ監督者として、それ らの国々を支援するために重要な役割を果たすことがで きる。公共の利益の実現に尽力する機関による公正な管 理は、危機を契機に果敢な行動を実現に移すための触媒 となる。G20 首脳は、これらのメカニズムを通じ、世界 の安定、繁栄、平和のために最も確実な基盤である万人 のための公正な機会に基づく繁栄に向けて、パートナー 諸国が前進できるよう支援する。 世界銀行グループ