年次報告書 2018 開発金融の在り方を 見直す IFC とは 世界銀行グループの一員である IFC は、途上国の民間セクターに特化 した世界最大規模の国際開発機関です。 1956 年に設立された IFC は加盟国 184 カ国から構成され、その方針 は、これらの加盟国によって包括的に決定されます。 IFC は、世界の最も困難な市場おいて 60 年にわたる経験を積み上 げてきました。世界約 100 カ国に事務所を設け、多数の金融機関と 2,000 社以上の民間セクター顧客企業のネットワークを有する IFC は、機会と市場を最も必要としている場所でそれを創出できる独自の 立場にあります。 IFC は、極度の貧困撲滅と繁栄の共有の促進のため、資金、知識、 そして影響力を活用しています。 目次 理事会のメッセージ  2 総裁からのメッセージ  世界銀行グループ総裁兼理事会議長  3 IFC 長官フィリップ・ル・  ウエルーからのメッセージ  6 経営陣  9 開発金融の在り方を見直す  10 民間セクターのソリューションを  動員する  24 市場を拓く  32 持続可能性を推進する  44 貧困に終止符を打つ  52 IFC 2018 年次報告  62 業務結果の要約  64 財務結果の要約  65 世界銀行グループ 2018 年度の成果概要  68 IFC の概要  72 結果の測定  73 IFC の専門知識  76 職員と業務  84 表紙 : 開発資金の最大化のため、 IFC は民間セクターのソリューショ ンを優先した意思決定プロセスを導入しています。我々はこれを 「カスケード」と呼んでいます。 IFC 年次報告書 2018  |  1 理事会のメッセージ 2018 年 度、 理 事 会 は 世 界 銀 行 グ ル ー プ の ビ ジ ョ ン で あ る 後列 前列 Forward Look の推進で積極的に経営陣と協議しました。なか (左より) (左より) でも、資金面でより持続可能な手法でこれまで以上に効果的に Werner Gruber Melanie Robinson 開発成果をあげるための資本パッケージ案を中心に、議論がな スイス 英国 されました。 Frank Heemskerk Christine Hogan オランダ カナダ Turki Almutairi Máximo Torero 世界銀行及び IFC への過去最大規模の増資を掲げた資金・政策  サウジアラビア(代理) ペルー   パッケージは、世界銀行グループに大きな変革をもたらし、 Andrei Lushin Jason Allford 今日我々が直面する最も困難な開発課題へのアプローチを大き ロシア連邦 オーストラリア く変えるものです。必要な組織改革へのマネジメントによる関 Yingming Yang Bongi Kunene 中国 南アフリカ 与と並び、このイニシアティブ・パッケージは、持続可能な開 Jean-­Claude Tchatchouang Merza Hasan 発のための 2030 アジェンダ、IDA18 のビジョン及び開発資金 カメルーン(代理) クウェート(筆頭理事) の最大化を支えるとともに、世界銀行グループが引き続き国際 Hervé de Villeroché Franciscus Godts フランス ベルギー 公共財を先導し、脆弱・紛争状況下で支援を拡大する一助とな Otaviano Canuto Patrizio Pagano るでしょう。 ブラジル イタリア 小口一彦 Juergen Zattler また理事会は、加盟国の出資を調整する投票権の見直しにも取 日本 ドイツ り組み、極度の過小代表の割合を減らし、ボイス(投票権)を Andin Hadiyanto Susan Ulbaek インドネシア デンマーク 改革し世界銀行グループ機関内でより整合性のとれた投票権比 Erik Bethel Andrew N. Bvumbe 率を実現することで合意しました。以上に加え理事会は、世界 米国(代理) ジンバブエ 銀行グループが継続してビジネスモデルの改善に取り組むため Fernando Jimenez Latorre の様々なイニシアティブ、たとえば、各種プロセスの合理化の スペイン 推進と機動性の向上、IFC の戦略である IFC 3.0 を通した市場 Omar Bougara アルジェリア の創出と開発効果の向上、報酬などの支出に関する効率性指標 Aparna Subramani の導入、及び財務の持続可能性を確保するための枠組みやメカ インド ニズムなどについて指導しました。 IFC 年次報告書 2018  |  2 総裁からのメッセージ 世界銀行グループ総裁兼理事会議長 現在世界は、未曽有の課題に直面して 第一に、包括的かつ持続可能な経済成長を促進する いると言っても過言ではありません。 には、開発金融の新たなビジョン、すなわち全ての人々と 地球のために適切に機能する市場システムのビジョンが必 世界各地で活動する世界銀行は、気候 要です。グローバル目標の達成には毎年数兆ドルが必要と 変動、紛争、パンデミック、自然災害、 の試算があります。しかしこれに対し、政府開発援助は数 強制移住など、いくつもの危機が重な 十億ドル規模に留まるため、抜本的に異なったアプローチ を試みない限り貧困の撲滅は不可能です。 り合った事態を目の当たりにしていま す。援助受入国が喫緊の危機に対処し、 2017 年 7 月、「G-20 ハンブルク首脳宣言」の採択によりい 差し迫った問題に対する強靱性を構築 わゆる「カスケード・アプローチ」が支持され、「開発資金 最大化(MFD)」という我々の目標とのつながりが期待さ し、不確かな先行きに備えるための持 れています。世界銀行、IFC、MIGA は、インフラ、農業、 続的投資を行うことができるよう、並 電気通信、再生可能エネルギー、安価な住宅といったセク ターで市場を創出し、民間セクターならではのソリューショ 行した支援を進めていかなければなり (詳 ンを導入するために、より緊密な連携を図っています。 ません。 細は p.5 を参照) 第二に、 こうした困難な状況の中にあっても、2030 年までに極 外的ショックや脅威に対する強靱性の強化 度の貧困を撲滅し、全世界の途上国における所得の下位 40%の人々にも繁栄の共有を促進するという世界銀行 には、気候変動に強いインフラの開発やシステムの向上を の 2 大目標の達成について、私は楽観視しています。世 続けると同時に、革新的な資金調達の手法が必要となりま 界銀行グループの各機関は、包摂的かつ持続可能な経済 す。これは、危機のリスクを世界の資本市場に移転すると 成長の促進、外的ショックや脅威に対する強靱性の強化、 いう、富裕国がこれまで長年実施してきたやり方を貧困国 そして援助受入国による国民への投資を促進するため、 にも適用しようというものです。2018 年春、パンデミッ 2 大目標の達成に向けた戦略の内、以下の 3 つの要素に ク緊急ファシリティ(PEF)による初の資金拠出として、   ついて、技術の活用や革新的資金調達の開発を進めでい コンゴ民主共和国で発生したエボラ出血熱に対してグラン ます。 トが直ちに提供されました。世界銀行は、飢餓への対策強 化と防止を目的とする同様のファシリティの創設を進めて いますが、こうした新手法を用いて最貧国が金融市場にリ スクを移転することにより、危機発生時のパニックや看過 といった悪循環を断ち切ろうとしています。 IFC 年次報告書 2018  |  3 総裁からのメッセージ 世界銀行グループ総裁兼理事会議長 強靱性の強化にはまず、我々の存在を脅かす気候変動の 2018 年度、IDA はその堅固な資本基盤を活用して初の 脅威から手を付けなければなりません。パリ協定 2 周年 IDA 債を発行しました。その結果、15 億ドルの発行額 を記念して 2017 年 12 月に再びパリで開催されたサミッ に対する投資家からの需要は 40 億ドルを上回りました。 トの場において、西アフリカの海岸浸食防止や世界的な 従来のドナーによる資金支援と資本市場における資金調 再生可能エネルギーの規模拡大といった深刻な気候変動 達とを組み合わせたこの革新的な金融手法により、紛争 対策に資金を提供する 10 以上の協定が協議されました。 予防をはじめとする世界の最貧国に対する IDA の支援能 世界銀行はさきがけとして、2019 年以降の石油・天然 力向上が可能となります。 ガスの上流部門への融資の取りやめ、開発目標達成に向 けた持続可能な方法の特定における途上国支援を発表し 国 際 金 融 公 社(IFC) が 民 間 セ ク タ ー 開 発 の た め に  ました。 2018 年度に提供した投融資総額は、他の投資家から動 員した 117 億ドルを含め、 230 億ドル以上に達しました。 第三に、今後ますます加速が見込まれるイノベー この内 68 億ドル近くが IDA 対象国向けで、37 億ドル 以上が脆弱性・紛争・暴力の影響下にある地域向けで  ションの進化を見据え、途上国が人々への投資を拡大し、 した。 その効果を高められるよう、新たな支援の手法を見出さ なければなりません。仕事に就くために特定の複雑なス 設立 30 周年を迎えた多数国間投資保証機関(MIGA) キルが要求される将来が近づく中、人的資本はますます は、低・中所得国への民間資本の動員において国際開発 重要な資源となるでしょう。世界銀行は、2018 年度に 金融機関(MDBs)の中で第 3 の規模となっています。 立ち上げた人的資本プロジェクトを通じ、各国の人的資 2018 年度、MIGA は過去最高となる 53 億ドルの政治 本の厳密かつ詳細な評価を進めています。 的リスク保証と信用補完を提供し、途上国におけるプロ ジェクトの 179 億ドル相当の資金調達を支援しました。 人的資本指標(HCI) は、2018 年 10 月にインドネシ 2018 年度の新規引受及びグロス・エクスポージャ総額 アで開催される年次総会の場で発表の予定です。この指 は、2013 年度のほぼ 2 倍に当たる 212 億ドルでした。 標に照らし、次世代の人的資本への投資規模に応じて途 上国をランク付けすることにより、各国の首脳や財務大 2018 年度に承認された世界銀行グループの増資は、貧 臣が人的資本の問題に正面から向き合い、人々への投資 困撲滅に向けて世界各地でたゆまぬ努力を続ける職員に と今後の経済への取組みが促進されるものと期待してい  寄せられた大きな信頼の証であったと言えるでしょう。 ます。 援助受入国の人々の希望をかなえるため、意欲的に活動 する職員の献身と能力の高さには日々勇気をもらってい 資金調達、専門知識、イノベーションに対する需要は、 ます。 世界中で膨らみ続けています。ただし、高まるニーズの 一方で、失敗した場合の代償があまりにも大きいという 一方で、増資に伴い、大きな課題が突き付けられたこと 課題があります。この課題を解消すべく、過去最大規模 も事実です。業務の効率化と有効性拡大、イノベーショ となる 130 億ドルの増資が出資国により承認されまし ンの推進、そして最終的に貧困のない世界の実現のため、 た。これにより世界銀行グループは、貧困の削減、今日 取組みの加速が求められています。我々は、来年度もま 特に顕著で困難な課題への取組み、援助受入国と人々の た、課題に対処すべくこれまで以上に尽力してまいり  希望の達成に向け、支援を強化することが可能になり  ます。 ます。 2018 年度、世界銀行グループは、総額約 670 億ドルに 上る融資、投資、保証を承認しました。 国際復興開発銀行(IBRD)の支援に対する援助受入国 からの需要は引き続き大きく、2018 年度のコミットメ ントは 230 億ドルに増加しました。国際開発協会(IDA) による最貧国支援のためのコミットメントもまた、過去 ジム・ヨン・キム博士 最高額となる 240 億ドルに達しました。 世界銀行グループ総裁兼理事会議長 IFC 年次報告書 2018  |  4 ベンバン (アスワン県) エジプトの電力不足 解消に向けた戦略 4 年前、エジプト・アラブ共和国は深刻な電力危機に陥りました。長時間にわたる停 電により企業や人々の生活は悪影響を被り、電力需要が供給を 20%も超過するとい う事態に直面しました。乏しい公的資金は他の分野でも必要なことから、政府は電力 不足解消のための資金を別の方法で調達する必要に迫られました。そこで世界銀行グ ループは「開発資金最大化( MFD)」を重点的に進めるに至りました。 MFD のアプローチは、政府開発援助に他の資金も動員して パークの建設資金として 6 億 5,300 万ドルの投融資パッ 途上国の開発ニーズに対応するという世界銀行グループの ケージを承認しました。ベンバンの 32 カ所の太陽光発電 取組みに沿ったものです。世界銀行グループの各機関の機 所による発電容量は最大 752 メガワットに上り、35 万人 能を活かし、世界銀行の 2 大目標達成に役立つ革新的なソ 以上に家庭用電力を供給し、建設期間中に最大 6 千人分の リューションを見出そうというもので、何よりも、資金の 雇用が創出される見込みです。MIGA もまた、同ソーラー 出し手として、また知識の提供源として、民間セクターに パーク内での 12 件のプロジェクトに最大 2 億 1 千万ドル 重要な役割が期待されています。 の政治的リスク保証を提供しています。全体では、FiT プ ログラムにより世界銀行グループ及びその他の資金源から 2014 年、エジプト政府は世界銀行グループと共にエネル 1,600 メガワットの発電支援として総額 20 億ドルの民間 ギー問題への対応の第一歩として、内外の専門家を結集し 投資が動員される予定です。 エネルギーの持続可能性と民間セクター投資に重点を置い た国家戦略を策定しました。こうして政策を明確化した結 エジプトのエネルギー・セクターは転換期にさしかかって 果、2015 年 3 月までにエジプトの石油・天然ガス生産と います。エジプト政府は改革の一環として、2016 年までに 液化天然ガスに対し、300 億ドルを上回る民間資金が集ま エネルギー・セクターへの補助金を半分に減らし対 GDP 比 りました。IBRD は 2015 年 12 月、エジプトのエネルギー・ 3.3%とする一方で、世界銀行グループの支援を受けて電力 セクター改革を技術・資金面で支援する 3 件のプログラ 料金を世界基準に照らしても割安な水準に維持しています。 ム融資の第一弾として 30 億ドル以上の融資(対象期間は 同セクターは効率化が進み、財政面の持続可能性も高まっ 2015 ~ 17 年)をコミットしました。 ています。政府は、重要な社会セクターに充てる公的資金 を増やすなど、民間セクターの環境整備にも取り組んでい この改革プログラムで鍵となったのが、エジプトの長い日 ます。 照時間の活用です。2015 年、IFC は政府と協力し、太陽光 発電固定価格買取制度(FiT)に関する契約を策定しました。 詳細は、以下のリンクをご参照ください。 さらに IFC は 2017 年、世界最大となるベンバン・ソーラー www.worldbank.org/mfd。 IFC 年次報告書 2018  |  5 IFC 長官フィリップ・ル・ウエルーからのメッセージ 2018 年度は世界銀行グループにとり歴 史的な 1 年となりました。まず、加盟国 が、 IBRD 及び IFC への 130 億ドルの払 込資本の増資を承認しました。これに は、 IBRD の 75 億 ド ル と IFC の 55 億  が含まれています。この増資により、 設立以降 IFC に振り込まれた累積払込 資本が 3 倍強拡充することになります。 $ 233 30% 36% 45% 億ドル 投融資の 30%が IDA 諸国対象 投融資の 36%が 気候変動関連 新規アドバイザリー・ プロジェクトの 45%が ジェンダー・インパクトを 投融資 重視したものを含む IFC 年次報告書 2018  |  6 また加盟国は、国際開発協会(IDA)への IFC 資金の移転 • IDA18 IFC-MIGA 民間セクター・ウィンドウ は、25 億ド の停止で合意しました。払込資本金と IDA への移転の停止 ルのリスク削減のための枠組みで、高リスクプロジェクト による留保利益の合計は 92 億ドルとなります。この追加 への対処、及び IDA 諸国や脆弱国家での現地通貨建ての融 資本は現在から 2030 年までの IFC の活動を支えることに 資への限定的なアクセスという問題の克服を支援するもの なります。 です。2018 年度、IFC はこの制度を初めて活用し、プロジェ クトのパイプラインを構築しました。これらプロジェクト これは、我々の今後の戦略的優先課題に対する確固たる信 は今後 2 年間同ウィンドウの支援を受けます。 頼の証左です。しかし同時に、これには大きな期待も寄せ られています。なかでも、世界で最も困難な市場で高い開 • 国別民間セクター診断・セクター・ディープ・ダイブ によ 発成果をあげるという我々の戦略を実現しなければなりま り、各国・各セクターでの市場の創出に何が必要なのかを せん。2030 年までに年間の承認額は合計で 480 億ドルと、 特定することができます。この 2 つの診断ツールは、国別 現水準から 2 倍以上引き上げなければならないと予測して 戦略の強化の基礎となるでしょう。後者は、民間セクター います。我々は、IDA 諸国及び脆弱国家への投融資を大幅 が参加し開発ギャップの解消に貢献するために必要な初期 に拡大することを誓約しました。 気候関連、 また、 ジェンダー 段階のアジェンダの概要を示します。また、IFC の特定のア 関連の投融資の拡充にも関与しています。 ドバイザリー・投融資プログラムの各国における成果も特 定します。 今年度、昨年度考案した新たなツールと制度が始動しまし た。さらに、組織構造を変更し、投融資は過去最高を記録 • 市場創出アドバイザリー・ウィンドウ は、IDA 適格国及び しました。 脆弱国家における初期段階の作業を支援するための資金支 援制度です。2018 年度、同ウィンドウの資金で診断作業を 行うことができました。これにより、我々はアドバイザリー 新たなツールとアプローチを 業務において市場創出とプロジェクト・パイプラインの構 展開 築に集中することができます。 我々は、リスクを軽減し、より戦略的にプロジェクトを選 • インプルーブド・プロジェクト・セレクション は 2 つの 択するとともに 開発成果をより厳正に測定するため新た 新しいツールを備えています。一つは「期待される成果の なツールの活用を始めました 測定とモニタリング(AIMM)」システムで、プロジェクト 案を事前の(または期待される)開発効果に従い評価しま • 開発資金の最大化 に向け、世界銀行グループではカスケー す。AIMM の手法と関連する評価法は、2018 年 1 月 1 日付 ド と呼ぶ系統的なアプローチを採用しました。これは、民 で IFC の全ての投融資プロジェクトで完全に適用されます。 間セクターによるソリューションを優先した意思決定プロ 2019 年度にはアドバイザリー・プロジェクトでも導入する セスです。本年次報告書の表紙のように、カスケードは一 予定です。二つ目はカーボンプライシング (炭素への価格 連の滝の流れと考えることができます。滝の流れの一つ一 付け)です。5 月 1 日始動となったこのツールは、セメント、 つが、民間セクター / 公共セクターのソリューションと投 化学、火力発電といったセクターにおける全てのプロジェ 融資を組み合わせるまでのステップを表しています。 クト投融資で活用しています。これにより IFC は、炭素価 格付けに関するハイレベル委員会の報告書 の提言に基づき、 相対的に排出量の少ないプロジェクトを選択することがで きるようになります。 IFC 年次報告書 2018  |  7 IFC 長官フィリップ・ル・ウエルーからのメッセージ 2018 年度の IFC の投融資は 記録的な水準に達しました。 これは我々の職員の献身とス キルによるものです。 新たな組織構造 この成長は今年度の 117 億ドルという記録的な動員を反映 しています。2017 年度の動員額は 75 億ドルでした。 2017 年度、組織改革により「経済・民間セクター開発」 コミットメントの約 30%が最貧国、すなわち IDA 適格国 と「パートナーシップ・コミュニケーション・アウトリー での開発支援に向けられました。気候関連への投融資は、 チ」という 2 つのチームが新しく誕生しました。この組 本年度の投融資の 36 %を占めました。これも過去最高と 織改革を補完すべく今年度我々は、業務に焦点を合わせ なっています。さらに、ジェンダー問題を一段と重視、女 IFC の産業チーム・地域チームの基盤を再調整し、IFC 性の金融サービスへのアクセスを支え、事業拡張に取り組 で利用可能なあらゆるリソースとスキルのより良い活用 む女性起業家を支援し、企業におけるジェンダーパリティ に向けた取り組みを推進しました。 を育成しました。また、引き続き解決策に関する助言を途 • 新構造 により我々は、現地事務所とグローバルセク 上国、なかでも IDA 諸国と脆弱国・紛争国の顧客に提供し ターの知見と専門知識を大いに活用することができるよ ました。IFC のアドバイザリー・プログラムのおよそ 57% うになります。IFC の全業務を監督する最高執行責任者 が IDA 諸国、19%が脆弱国家の顧客を対象としていました。 (COO)もこれに含まれます。新たに設置した IFC の地 同プログラムの 27%は気候変動に関するものでした。さら 域担当副総裁を頂点としたチームは、グローバル・イン に、新規アドバイザリー・プロジェクトで、プロジェクト・ ダストリー・シニア・ディレクターと緊密に連携し、各 デザインにおいてジェンダーへの影響に焦点を当てたもの 国の状況に見合ったソリューションを提供しています。 が占める割合は、昨年の約 33%から上昇し約 45%でした。 また、実態に即した国別戦略を基に、より強力になった また今年度は、40 を超える賞を受賞しました。これは、画 IFC の地域チームも世界銀行や MIGA との連携を強固な 期的なプロジェクトとソリューションを提供する我々のス 「カスケード・アプローチ」が系統的に構築 ものにし、 キルへの第三者の力強い支持の表れだといえるでしょう。 され国レベルで導入されるよう尽力しています。 この 1 年間、 IFC は、増資、出資国からの新たな支援構造、 • アドバイザリー業務改革 では、プロジェクト開発の初 成果をあげるための新たなツール及びアプローチと、 IFC 期段階の作業の優先付けをしプロジェクトを積極的に開 の新戦略を実行に移すための基礎を築き上げてきました。 発するため、アドバイザリー業務と投融資業務の連携を こうした実績により IFC は、「 From Billions to Trillions 強化しています。2018 年度末、複数の分野に跨るアド (数十億ドルから数兆ドルへ)」の課題と新たな開発金融の バイザリー・チームの大半と IFC の投融資担当者との統 在り方の構築に積極的に貢献できるようになるでしょう。 合を進めました。これにより、アドバイザリー分野での 経験と知見をより適切に活かし、市場の創出という優先 課題に集中できるようになります。 実績 フィリップ・ル・ウエルー こうした変化の一方で、2018 年度の IFC の投融資は記 IFC 長官 録的な水準に達しました。これは我々の職員の献身とス キルによるものです。IFC が民間企業に対して実行した 投融資は、2017 年度の 193 億ドルから上昇し 233 億ド ルと、IFC 史上最高額を記録しました。 IFC 年次報告書 2018  |  8 Philippe Le Houérou フィリップ・ル・ウエルー 経営陣 IFC の経営陣は、開発成果の最大化と顧客ニーズへの対応を主眼に、その資源の効果的な展開に万全を 期しています。また開発分野における長年の経験、幅広い知識、そして固有な文化的視点の恩恵も受 けています。経営陣は IFC の戦略や方針も形成します。それらは機会を最も必要としている場所でそ れを創出する際の礎となっています。 Stephanie von Friedeburg Georgina Baker Elena Bourganskaia Marcos Brujis 最高執行責任者 ラテンアメリカ・カリブ海地域及び  首席補佐官 IFC アセット・マネージメント社最高  ヨーロッパ・中央アジア担当副総裁 経営責任者(CEO) Karin Finkelston Mohamed Gouled Jingdong Hua Hans Peter Lankes パートナーシップ・コミュニケーション・ リスク・金融持続可能性担当副総裁 副総裁・トレジャラー 経済・民間セクター開発担当副総裁 アウトリーチ担当副総裁 Monish Mahurkar Sérgio Pimenta Nena Stoiljkovic Ethiopis Tafara 経営戦略・経営資源担当副総裁 中東・アフリカ担当副総裁 アジア大洋州地域担当副総裁 法務・コンプライアンスリスク・持続  可能性担当副総裁兼法律顧問 IFC 年次報告書 2018  |  9 開発金融の在り方を見直す 民間セク 役割を最大活用  今我々は新しい時代にあります。 民間セクターのソリューションは、いまだかつてない多くの困難な試練、 より多くの国を対象とした開発を考える最前線にあります。 このためには、これまでにない規模の民間資金を動員し、これを最も必要 としているところに向ける必要があります。 IFC は、この分野におけるグローバルリーダーであり、ブレトンウッズの パートナー機関である世界銀行や国際通貨基金をはじめとする多くのパー トナーと連携しています。 IFC 年次報告書 2018  |  10 スケールアップ IFC は、新興市場に特化した世界最大規模のグリーンボ ンド・ファンドの立ち上げで、ヨーロッパの資産運用会 社アムンディ (Amundi) を支援しました。同ファンドは 20 億ドルを動員し気候変動ファイナンスへのニーズを 支えます。 ターの  IFC 年次報告書 2018  |  11 開発金融の在り方を見直す 新しいビ ネスの形  IFC 年次報告書 2018  |  12 イノベーションにコミット カスケード・アプローチを活用し、IFC と世界銀行グルー プは、エジプトのベンバン・ソーラー・パークの建設 費用 20 億ドルの調達で同国を支援しています。 ジ 今日の意欲的な開発目標の達成を支援すべく、IFC は民間セクター の役割を拡大する市場創出戦略を取り入れ、これを広く実践してい ます。 この戦略はカスケードから始まります。カスケードとは、開発資金 の最大化のための世界銀行グループのアプローチの中核に位置する 優先付けを行うシステムです。特に最貧国や脆弱国家に新たな投融 資を引き付け、動員された資金 1 ドルにいたるまでインパクトをも たらし、その効果を増幅させるために必要なイノベーションと改革 を促します。 IFC 年次報告書 2018  |  13 開発金融の在り方を見直す 今年度、加盟国は我々の新戦略を 55 億ドルという記録的な増資をもって承認 しました。 これは、世界最大の国際開発機関である IFC が民間セクターに特化し行われた、 我々の 60 年を超える歴史上最大規模の増資です。これにより、設立からの累 積払込資本が 3 倍以上拡充されることになります。 今こそ、こうした歴史的な信頼に応える時です。我々は、強固な基盤を生かし、 雇用の創出で民間セクターが一層活躍できる新たな方策を講じるとともに、貧 困を削減し、途上国の最も困難な地域で暮らす人々の生活の向上を実現するこ とで、これに応えていきます。 IFC の資本  基盤を強化す IFC 年次報告書 2018  |  14 厳しい市場へ リクエダ・フルーツ・プロセシング・カンパニー (Rikweda Fruit Processing Company) が 建 設 中の最新鋭の工場に対する IFC の支援により、   ア フ ガ ニ ス タ ン の レ ー ズ ン の 生 産 は 倍 増 し、 3,000 戸の小規模農家に恩恵をもたらすと期待 されています。 る IFC 年次報告書 2018  |  15 開発金融の在り方を見直す リスク の均衡のた 追求 IFC 年次報告書 2018  |  16 IFC は新規の投融資の道を拓きその効果を拡大する ため、様々なリスク削減ツール及びプラットフォー ムを駆使しています。こうしたツールやプラット フォームは、投資家の高リスク市場への選好度を 高め、資本投入の足かせとなっていた主な障壁を 取り除きます。 これらの新たなツールにはブレンド型融資や資金 動員のためのプラットフォームなどがあります。 新たな投融資と専門知識を最も必要としている地 域がこれらを得ることができるよう支援し、開発 分野に存在する深刻なギャップを解消します。 とリターン  めの新たな手法の  新たなツール 新 た な ツ ー ル で あ る IDA18 IFC-MIGA 民 間 セ ク ターウィンドウを活用し、IFC は西アフリカで住宅 金融向けに 5 億ドルを確保しました。現地では自 宅を購入できる人はほとんどいないのが現状です。 IFC 年次報告書 2018  |  17 開発金融の在り方を見直す IFC の在 見直す 大きな目標を達成するには幅広いアプローチが必要です。 第一のステップは、ギャップを特定し民間セクターによるギャップの解消をど のように支援することができるかを示す新規国別戦略です。これは、職員をど こに配置し顧客やパートナーと協力すべきかという判断材料となります。また、 事前の結果測定システムを新たに導入し、プロジェクトの成果をもたらす能力 のみならず市場を創出する能力についても評価します。 最貧国でより大きな成果をあげるために我々はポートフォリオの見直しを進め ていますが、この統合的アプローチは、顧客の事業目標を支え人々の生活の向 上を推進するなかで、我々の投資 1 ドルに至るまでその効果を拡大するカギと なるでしょう。 これは実現可能であり、実現しなければなりません。そして今これに向かい我々 は努力を続けています。 IFC 年次報告書 2018  |  18 2030 年 に 向 け た 意 欲 的な目標 • 年間投融資 250 億ドル(IFC 自己勘定 り方を  分)と他からの動員資金 230 憶ドル • 投融資の 40 %は IDA 諸国及び脆弱国 家を対象―このうち 15 %~ 20 %は、 低所得国及び IDA 諸国のなかの脆弱国 家を対象とする • 投融資の 35%(IFC 自己勘定分)は気 候変動関連を対象とする • 年間承認額のうち 26 億ドルは特に女 性をターゲットとした金融機関を対象 とする • 女性または女性が経営する中小企業に 特化した年間投融資を 4 倍にする • IFC が取締役会メンバーを務める企業 の取締役会に推薦する取締役について は 50%を女性とする IFC 年次報告書 2018  |  19 2018 年 グローバル  アワード   IFC と我々の顧客は今年度 40 を超える賞を受賞しました。 これは幅広い分野における我々の業績を明確に示しています。 コロンビア大学 プロジェクト・ファイナンス・   国際公共政策大学院 インターナショナル誌( PROJECT グローバル・リーダーシップ・アワード FINANCE INTERNATIONAL) 「国際公共財への画期的かつ類まれなる  グローバル・マルチラテラル・オブ・ザ・   貢献」 イヤー エジプトの太陽光発電プログラムで  の欧州復興開発銀行との共同支援事業 IJ グローバル ラテンファイナンス ディベロップメント・ファイナンス・  ( LATINFINANCE) インスティテューション・オブ・ザ・  マルチラテラル・ディベロップメント・バンク・ イヤー オブ・ザ・イヤー IFC の「ラテンアメリカへの  中東及び北アフリカ地域 画期的なアプローチ及びコミットメント」 IFC 年次報告書 2018  |  20 リージョン  南アジア (地域)・ グローバル・アグリカル 2018 年度 アワード チャー・リーダーシップ・ア ワード:CSR リーダーシップ・ アワード IFC 顧客 DCM シュリ 東アジア・太平洋 ラム(インド) 受賞一覧 プロジェクト・ファイナンス・ グリーンテック財団: インターナショナル誌 アジ ゴールド・アワード・イン・ ア・パシフィック・ディール・ ケミカルセクター DCM シュ オブ・ザ・イヤー ミンジャ リラム安全管理優秀企業  ン PPP(ミャンマー) (インド) アジア・マネー誌 China Green インド電力省 エネルギー効 Finance Awards(チャイナ・ 率局:ベストパフォーマー・ グリーン・ファイナンス・ア イン・エネルギー・セイビン グローバル・ パートナーシップ・アワード: ベスト・ユーティリティ・プ ワード) :ベスト・グリーン・ グ DCM シュリラム(インド) アワード ロジェクト金賞及びプロジェ インターナショナル・フィナ IJ グローバル: ンシャル・インスティテュー パワーディール・オブ・ザ・ クトグランプリ Kigali Bulk フィナンシャル・タイムズ: ション イヤー シラジガンジ 4 デュ Water Supply PPP (ルワンダ) • FT グローバル GC 25 IFC の シンガポール・ベンチャー アルフューエル(バングラ Ethiopis Tafara 副総裁兼法律 東京金融取引所(TFX) :ソフ デシュ) 、ハイドロ・ディー キャピタル・プライベート・ 顧問を表彰 ト・コモディティ・ファイナ ル・オブ・ザ・イヤー Karot エクイティ協会:VC ディー ンス・ディール・オブ・ザ・ Hydropower(パキスタン) 、 • イノベイティブ・ローヤー ル・オブ・ザ・イヤー ICC 顧 イヤー IFC の Mercon Coffee ウォーター・ディール・オブ・ ズ・アワード革新的な法律知 客 Jungle Ventures Group への投融資 ザ・イヤ ーガンジス川バラ 識:新規市場と資本 ナシ下水水質向上プログラム スティービーアワード: フォーチュン: ヨーロッパ (インド) 、ミッドストリーム ・ ベスト・アニュアルレポート 世界を変える企業 50 社: オイル&ガス・ディール・オ 銀行、金融サービス、保険& EMEA ファイナンス誌: IFC の顧客 bKash 社を表彰 ブ・ザ・イヤー、モヘシュカ 不動産部門 ベスト・リストラクチャリ リ Floating LNG 輸入施設(バ インターナショナル・ファイ ARC アワード: ング・イン・セントラル・ ングラデシュ) 、ウィンド・ ナンシャル・ロー・レビュー  ゴールド・アワード・フォー・ イースタン・ヨーロッパ AES ディール・オブ・ザ・イヤー アジア ・アワード: ベスト・アニュアルレポート Kavarna(ブルガリア) サファイア 150MW 風力発電 プロジェクト・ファイナンス・ 国際開発金融機関 所(パキスタン) IJ グローバル: ディール・オブ・ザ・イヤー グラフィックデザイン USA ヨーロピアン・エアポート・ パートナーシップ報告書: ミンジャン独立系発電事業者 誌:アメリカン・グラフィッ ディール・オブ・ザ・イヤー スペシャル・アワード バン (ミャンマー) ク・デザイン・アワード IFC ギリシャの 14 カ所の地域  グラデシュ透析 PPP 年次報告書 空港 アセット・ トリプル A・アジ リーグ・オブ・アメリカン・ ア・インフラストラクチャー・ ラテンアメリカ・カリブ海地域 アワード : PPP ディール・ コミュニケーション・プロ フェッショナルズ : ビジョ オブ・ザ・イヤー Sembcorp ラテン・ファイナンス: North-West Power Company ン・アワード IFC 年次報告書 ベストローン・ベストスポン (バングラデシュ) 、及びリ サー・ベストインフラスト ニューアブル・エネルギー・ ラクチャー・ファイナンシン ディール・オブ・ザ・イヤー グ:Red Compartida Wireless Azure Power Energy (インド) Telecommunications PPP (メキシコ) サブサハラ・アフリカ PPP アワード・カンファレン ス : モースト・イノベーティ アフリカ情報技術・通信ア ブ・PPP オブ・ザ・イヤー ワード : 企業の社会的責任 気候変動に関する国連枠組み条約 サンパウロ道路 PPP(ブラ  (CSR)イニシアチブ・オブ・ ジル) ザ・イヤー IHS Towers モメンタム・フォー・チェンジ・クライメイト・ ソリューション・アワード 「世界初の大規模集光型 IJ グローバル: グローバル・キャピタル・ ラテンアメリカ・ソーラー・ ボンド・アワード: 太陽熱発の開発・建設での民間資金の活用」 、南ア ディール・オブ・ザ・イヤー モースト・イノベイティブ・ フリカ・カシュ(KaXu)ソーラーワン Solem 1・Solem 2(メキシコ) サブサハラ・アフリカ・ミディ アムターム・ノート・イシュ 中東・北アフリカ ワー IJ グローバル: IJ グローバル: アフリカン・リニューアブ インフラストラクチャー・   ル・ディール・オブ・ザ・イ プログラム エジプト太陽光 ヤー バングウェウル太陽光 プログラム 発電 (ザンビア) 、アフリカ ン・ウォーター・ディール・ オブ・ザ・イヤー Kigali Bulk グローバル・ウォーター・アワー Water Supply PPP (ルワンダ) 及び アフリカン・アップス ド(GLOBAL WATER AWARDS) トリーム・オイル&ガス・ ディール・オブ・ザ・イヤー ウォーター・ディール・オブ・ザ・イヤー 「国際水 Vitol Sankofa(ガーナ) セクターへの民間セクターの参画推進への最大の 貢献」ルワンダの Kigali Bulk Water Supply プロ ジェクト IFC 年次報告書 2018  |  21 開発金融の在 り方を見直す ページ ページ 24 32 民間セクターの 市場を拓く ソリューションを 動員する IFC 年次報告書 2018  |  22 世界中で債務が記録的な水準に達しています。富裕国では第二次世界大戦 以降初、そして途上国では 1980 年代の債務危機以来初となるレベルにあ ります。これは、2030 年までに極度の貧困を撲滅し繁栄の共有を促進す るという世界的な取り組みを実現するうえでの大きな試練となっていま す。この問題を克服するためには新しい思考が必要です。 ページ ページ 44 52 持続可能性を 貧困を撲滅する 推進する IFC 年次報告書 2018  |  23 民間セクターの ソリューションを 動員する ページ ページ 26 リスク回避ツール: 28 資金動員: 困難な市場での進展の 開発に民間資金を 障壁を取り除く 活用する IFC 年次報告書 2018  |  24 IFC は開発資金の 最大化に取り組んで います。 ページ 30 現地の資本市場: 民間セクターの成長と 安定性を構築する IFC 年次報告書 2018  |  25 写真:開発途上国で IFC は、貧困層に 益する民間資金を呼び込むため、投資 リスクの削減を支援しています。 IFC 年次報告書 2018  |  26 リスク回避ツール 困難な市場での クターウィンドウを創設しました。これは、IDA 諸国、な かでも脆弱国家で民間セクターの投融資を加速化するため 進展の障壁を の枠組みで、これを通しこうした国々で IFC や他の投資家 が投資リスクを開発機関と共有することができます。 我々は同制度を初めて発動し、西アフリカの住宅金融向け 取り除く の資金 5 億ドルを確保しました。同地域で自宅を購入する ことができる世帯は 7%未満です。IFC はこの枠組みを活用 し、住宅ローン借換のトップ企業である Caisse Régionale de Refinancement Hypothécaire de l’UEMOA が 発 行 す ビジネスと経済を支える海外直接投資は毎年革新的な変化を る長期現地通貨建て債券を 900 万ドル購入しました。この 遂げ成長しています。こうしたなか、1 兆 5,000 億ドルを超 投資により、現地の債券市場の深化が進むと同時に、同社 える資金が国境を越えて移動しています。その大半がわずか は住宅融資のポートフォリオを 5 億ドル拡大することがで 10 カ国に向かい、投資を最も必要としている地域、すなわち きるようになります。 紛争や不安定性を抱える国々が手にすることができるのは、 また、最もリスクが高い市場でも、民間の投資家が抱え わずか 1%です。 るリスクの一部を移転することができるよう、IFC は様々 その主な原因はリスク、あるいは投資家のリスクに対する認識 な 開 発 パ ー ト ナ ー と 連 携 し て い ま す(98 ペ ー ジ 参 照)。 です。投資家は資金の投資先を選択する際、金融、規制、法、 ここではブレンド型融資も活用しており、譲許的ドナー資 政治に関する一連のリスクと不確実性について複雑な判断を下 金を用いた特定の投資リスクの削減に取り組んでいます します。こうしたリスクは、最も小さく貧しい脆弱な国や地域 (79 ページ参照)。2018 年度、IFC は 2 億 1,800 万ドルの で最も高い傾向にあります。こうしたリスクを削減する―また ドナー資金を用い 15 億ドルの民間投資を取り付けました。 は投資家がリスクをより広く共有できるようにする―ことで、 また IFC は、官民パートナーシップ(PPPs)の促進でも中 膨大な民間資金を解き放つことができます。 心的な役割を果たしています。2004 年以降、IFC が構築 IFC と世界銀行グループは、まさにこれを実現するため複数の した PPPs は、少なくとも 275 億ドルの民間投資を促しま 革新的な手法を導入しました。2018 年度、我々は世界銀行の した。 国際開発協会と連携し、25 億ドルの IDA18 IFC-MIGA 民間セ 2018 年度は、ブラジルで IFC が主導する PPP プロジェク トにとり記念すべき年となりました。この PPP は、サン パウロ州のインフラの近代化を進めています。1,500 キロ に及ぶプロジェクトの 4 つの道路のうち 3 つの公共施設運 営権がオークションにかけられました。政府への公共施設 運営権の費用が記録的な規模に達し、同プロジェクトを完 成させるための新規投資約 40 億ドルの基盤となりました。 ブラジル政府は、我々の活動が革新的であるとして IFC に 対し国レベルで同様の PPPs を構築するよう依頼しました。 5 億ドル 西アフリカで住宅金融のた めの資金を確保しました IFC 年次報告書 2018  |  27 資金動員 開発に民間資金を 活用する 世界では、保険会社、政府系ファンド、年金基金といった機関投資家にお いて利用可能な資金が少なくとも 100 兆ドルに及びます。 これは、途上国が 2030 年までに持続可能な開発目標を達成するために必 要となる、年間の資金規模 4 兆 5,000 億ドルを賄うために十分な資金です。 しかし、この世界の膨大な民間資金を活用するには新たなマインドセット が必要です。投資のリスクとリターンのバランスがとれているならば、民 間投資家を喫緊の開発課題に取り組むために呼び込むことができます。 IFC は民間資金の動員におけるグローバルリーダーです。民間資金の活用 には主に 2 つの手法があります。ひとつは IFC の協調融資プログラムで、 1959 年の設立以来、115 カ国におけるおよそ 1,000 件のプロジェクトを対 象に、500 を超える金融機関から 690 億ドル以上の資金を動員しました。 他方は、IFC アセット・マネジメント社で、IFC の 23 億ドルを含め機関投 資家から 101 億ドルを調達しました。 協調融資運用ポートフォリオ・プログラム( MCPP)は、 我々の主要な協 調融資プラットフォームです。IFC は、2013 年に中国人民銀行より IFC プ ロジェクトへの投資向けに 30 億ドルの拠出を受け、MCPP を立ち上げま した。以来、同プラットフォームは多数のグローバルな機関投資家が参加 し、当時の 2 倍を超える規模を誇っています。2017 年、香港金融管理局は、 MCPP への 10 億ドルの拠出を誓約しました。これは、100 カ国以上でプ ロジェクトを資金面から支えることを可能にします。 IFC は「信用動員」取引をはじめとする斬新な手法を導入しています。  これらの取引では、保険会社のリスク引受能力を生かし、顧客により多く の資金を提供することができます。直近の例として、MCPP 金融機関と MCPP アンファンディッド・リスク・パーティシペーション があげられま す。これらイニシアティブでは、ミュンヘン再保険会社、リバティスペシャ ルティマーケット社及びスイスリーコーポレートソリューションズ各社か らの 5 億ドルのアンファンディッド型の信用保険を活用します。 また、IFC は、信用動員により、ベトナム産業貿易商業銀行向けに 1 億  8,500 万ドルを供与し、同行の手頃な価格の住宅ローン及び中小企業向 け融資事業の拡大を支援しました。世界的な保険会社であるリバティ・ ミューチュアルとミュンヘン再保険会社の 2 社が同プロジェクトを支える 信用保険を提供しました。2018 年度を通して、信用動員取引により 3 億  690 億ドル 2,500 万ドルの投融資(IFC 自己勘定分)が実施されました。 IFC アセット・マネジメント社が運用する IFC エマージング・アジア・ファ ンドは、アジア 26 カ国でグロース・キャピタル投資を行うための 6 億 9,300 万ドルを調達し、2018 年にファイナル・クローズしました。モザ 協調融資プログラムは、 ンビークでは、多様な融資先より約 27 億ドル動員しナカラ回廊鉄道プロ ジェクトを支援しました。新たに敷かれた全長 912 キロにわたる路線は、 1959 年の設立以来 690 億 ザンビアとマラウィという 2 つの内陸国をアフリカ南部で最も水深の深い 港に繋ぎます。また、2040 年までに域内で最大 100 万件にも及ぶ雇用を ドルを動員しました 創出すると期待されています。 IFC 年次報告書 2018  |  28 写真:IFC の資金は、ベト ナム産業貿易商業銀行が展 開する中小企業向けの手頃 な融資事業の拡大を支えて います。 IFC 年次報告書 2018  |  29 現地の資本市場 永続的な繁栄には、厚みがあり効率的な現地の資本市場が 不可欠です。 民間セクターの こうした市場は、成長の原動力となり、企業の成長とより 多くの雇用の創出を支えます。また、人々が家を購入し、 成長と安定性を 大学の学費を払い、老後に備え貯蓄し、政府が、道路、学校、 病院の建設に必要な資金を確保する下地となり、現地の経 構築する 済を外部発生的な一連の金融の問題から守ります。 しかし、途上国においてはこのような市場は依然として小 規模です。途上国は、世界の経済産出量の 3 分の 1 強を占 める一方で、世界の株式市場においては時価総額のわずか 10%、社債市場では圧倒的に小さい割合を占めるにとどま ります。 写真(上):ウズベキスタンでは、零細・中小企業向けの 融資を拡大するため、IFC はスム建ての債券発行により 1,000 万ドルを調達しました。 IFC 年次報告書 2018  |  30 :ペルーをはじめとする多くの国で、現地の資本市 写真(下) 場の強化のための世界銀行グループの共同資本市場プログラム の成果が期待されています。 IFC は、途上国の資本市場の強化において重要な役割を担っ きるようになります。ウズベキスタンでは、国際市場では ています。我々は、現地通貨建て債券の発行により、企業 初となるスム建ての債券を発行し、同国の零細・中小企業 が外貨の変動に晒される危険性から守ります。また、債券 向け融資の拡大に向け 1,000 万ドルを調達しました。 発行に際し、世界の多様な投資家の参加を奨励しています。 資本市場の発展に向け我々は、系統的かつ協調的なアプロー 資本市場の強化のための政策及び規制の立案で途上国を支 チを導入しています。IFC と世界銀行が 2017 年に立ち上げ 援しています。我々は多くの場合、こうした途上国におい た共同資本市場プログラムは、世界銀行グループを構成す て初めて債券を発行する国外の発行体です。 る各機関の専門知識を総合的に活用し、バングラデシュ、 2013 年 以 降、IFC の 現 地 通 貨 建 て 債 券 の 発 行 額 は、1 億 ケニア、モロッコ、ペルー、ベトナム、及び西アフリカ経 8,300 万 ド ル か ら 2018 年 度 に は 約 8 億 600 万 ド ル と  済通貨同盟加盟国といった、資本市場の発展を最も必要と 4 倍以上増加しました。この間、我々は融資、スワップ、保証、 している国々でこれを加速させることを狙いとしています。 リスクシェアリング・ファシリティ、証券化商品を通じ、 2017 年 12 月に初めて資本市場診断共同視察団をバングラ 74 カ国で 130 億ドルを超える現地通貨建て資金供与を行い デシュに派遣しました。 ました。 2017 年 3 月に設立した IFC のソーシャルボンド・プログラ ウクライナでは、フリヴニャ建ての融資を初めて行い、世 ムも拡大を続けています。IFC は、公募債及び私募債にお 界最大の食品小売業者のひとつであるオーシャンリテール いて 6 通貨建てのソーシャルボンドを 18 回発行しました。 社(Auchan Retail)に対し、同国における長期投融資の これにより、女性が経営する企業や、小規模農家と低所得 資金として 1,500 万ドル相当を提供しました。我々の投融 者層の機会を創出するビジネスを支援する、30 件以上の 資は雇用の創出を支える一方で、低所得・中所得世帯がよ IFC プロジェクト向けに 9 億 8,000 万ドルを調達しました。 り高品質な食料や商品を手頃な価格で手に入れることがで IFC 年次報告書 2018  |  31 市場を拓く ページ ページ ページ 34 インフラストラク 36 テクノロジー: 38 金融へのアクセス: チャー: ハイテク・ソリュー 起業家のアイデアを  賢明かつ持続可能な ションを提供する 機会に変える 開発を加速する IFC 年次報告書 2018  |  32 IFC は、雇用を創出し人々の生活の 向上に貢献する最大限の可能性を 秘めたセクターを重視しています。 ページ ページ 40 アグリビジネス: 42 人的資本: 農家の生産性と所得を より良い教育と  増大させる 保健医療への  アクセスを推進する IFC 年次報告書 2018  |  33 インフラストラクチャー 賢明かつ持続 可能な開発を 加速する 74 億ドル 7,900 万人 2018 年度の投融資額 発電の恩恵を受けた人数 写真:IFC の資金提供を受けたリーワー・ウルトラメガ・ソーラーパーク (Rewa Ultra Mega Solar Park)は、デリー・メトロ公社の日中のエネル ギーの 80%を提供します。 IFC 年次報告書 2018  |  34 エジプトの西方砂漠ほど不毛な土地はないと言っても過 言ではありません。しかし今日、アスワン近郊の 37 平 方キロメートルの土地が、建設作業員のなかで大きな話 2018 年度、IFC は基幹インフラプロジェクトに、他の 題となっています。現在ここでは、世界最大の太陽光発 投資家から動員した資金を含め約 74 憶ドルの投融資を 電施設の建設が進められています。 行いました。我々の顧客は、電気供給の改善が喫緊の課 2019 年までにベンバン・ソーラーパークは、1,600 メ 題となっている国々で発電事業を支援し、7,900 万を超 ガワット強の発電能力を持つようになります。何百万と える人々がその恩恵を受けました。 いう家庭や職場に電気を供給するに十分なパワーを備え インドでは、IFC が資金を提供したリーワー・ウルトラ ることになります。IFC は、同パークを対象とした 6 億 メガ・ソーラーパーク(Rewa Ultra Mega Solar Park) 5,300 万ドルの融資パッケージを取りまとめました。世 が 2018 年末には操業可能となる見込みです。このソー 界銀行グループの戦略である最大限の開発資金調達を実 ラ ー パ ー ク は、 デ リ ー・ メ ト ロ 公 社 の 日 中 の エ ネ ル 行し、グループ内の他の機関並びに国際銀行 9 行からな ギーの 80 %を提供することになります。IFC は、出力 るグループからの支援を取り付けることができました。 750 メガワットの施設の開設を支援するため、他の投資 成長、雇用創出、及び生活の質には近代的なインフラが 家から動員した資金を含む合計 2 億 8,900 万ドルの融 不可欠です。それには毎年、現在の 2 兆 5,000 億ドル 資パッケージを提供しました。 を大幅に上回る 3 兆 3,000 億ドルの投融資が必要です。 これまで 10 年にわたり IFC は、新興市場国における IFC は、エネルギー、輸送、自治体のインフラへのアク 350 件の都市インフラプロジェクトに 120 億ドルを超 セスの改善を支えることで、このギャップの解消に取り える融資を行ってきました。アルゼンチンでは、新たに 組んでいます。 17 キロの道路、地下道、橋を建設し都市コルドバの環状 道路を完成させるため、3 億ドルのパッケージを提供し ました。同プロジェクトは、経済成長及び雇用創出の促 進に貢献するでしょう。 トルコでは、アンタルヤの路面電車の路線の新規建設 に融資を行うことで合意しました。IFC は、同市に対し 1 億 4,000 万ユーロの融資パッケージを提供します。こ れにより同市の都市鉄道輸送システムに、18 キロの線 路と 29 の駅が追加されることになり、年間の乗客数は 2,500 万人増加すると見込まれています。カザフスタン では、アルマトイの環状道路の建設と運営のための画期 的な官民パートナーシップの構築を支援しました。これ により通勤時間は最大で 1 時間短縮されるでしょう。 ベトナムでは、国内の都市に暮らす家庭や地方の住人 に対し、清潔な水へのアクセスの増加を支援するため、 DNP ウォーター社(DNP Water)に対する 1,530 万ド ルの融資で合意しました。 IFC 年次報告書 2018  |  35 米、卵、トマト。これらは多くのバングラデシュの人々 メキシコでは、 同国史上最大の通信プロジェクトであるレッド ・ の生活に欠かせない食材です。しかし、ダッカなどの混 コンパルティーダ(Red Compartida)が、予定より大幅に前 雑が激しい街では、人々は買い物をするのに激しい往来 倒しされ 2018 年に始動しました。2024 年までに、IFC が支 をかき分けて進まねばならず、買い物よりも移動に多く 援する 4G-LTE の音声及びデータプラットフォームにより、メ の時間がかかります。 キシコの人口の 92%強がオンラインのバンキング、医療保健、 通信、教育サービスを利用できるようになる見込みです。 こうしたなか、ワシーム・アリムは、食料品や日用品の オンライン・デリバリーサービスを行うチャンダル社 テクノロジーによりアフリカも変化しています。2018 年、IFC (Chaldal)を 2013 年に興しました。チャンダル社はバ は 1 億ユーロの基金の立ち上げでパーテック・ベンチャーズ ングラデシュのテクノロジーの新規事業の新しい波の先 社(Partech Ventures)を支援しました。同基金はサブサハ 駆者として成功を収めており、IFC を含む複数の投資家 ラ・アフリカ地域におけるデジタル技術関連の新規事業に焦 が資本を投入しています。 点を絞った最大のベンチャーキャピタル基金となります。IFC の 1,500 万ユーロの出資は、同地域における主要ベンチャー バングラデシュをはじめとする新興市場国でスタート キャピタル基金に対する IFC 初の出資です。また、アフリカで アップ投資文化が浸透するなか、IFC はこうした国々に 起業家に不可欠なデジタルインフラ・ソフトウェアを作成する よるグローバルな電子商取引市場への積極的な参加を支 モバイル・テクノロジー企業であるアフリカズトーキング社 援するための取り組みを進めています。近代的な情報・ (Africa’s Talking)にも 600 万ドルの投資を行いました。 通信技術により、貧困層が各種サービスや資源をより容 易に利用できるようになっています。こうした技術が、 中国でも大きな変化が起こっています。中国ではトラック運 機会を創出し、市場の効率性を向上させるのです。 転手と荷主を結ぶフル・トラック・アライアンス(Full Truck Alliance:「トラック版ウーバー」として知られるオンライン IFC は、投融資を近代的な通信インフラや情報技術ビジ 市場)により、物流業務が改善しました。このプラットフォー ネスを構築する民間企業に仕向けることで、こうした技 ムは国内全土で長距離ドライバーと荷主を結びつけます。長 術の普及を図っています。2018 年度、我々はテクノロ 距離ドライバーはこれまで、仲介業者に最大で報酬の半分を ジー関連のイニシアティブに、他の投資家から動員した 支払っていましたが、これによりその必要がなくなりました。 資金を含め 3 億 7,600 万ドルを投融資するなど、同セ IFC は、1,500 万ドル(自己勘定分)の投融資を行いました。 クター向けの IFC のポートフォリオを 24 億ドル強まで IFC アセット・マネジメント社は、IFC カタリスト・ファンド 拡大させました。 と IFC グローバル新興市場(GEM)ファンド・オブ・ファン ズを運用し、さらに 3,200 万ドルを動員しました。 IFC 年次報告書 2018  |  36 テクノロジー ハイテク・ ソリューショ ンを提供する 写真(左):IFC が支援するバングラデシュのチャンダル社は、1 日 1,500 個を超える 商品の配達にテクノロジーを活用しています。 写 真( 右 ):IFC は 500 ル チ ャ ド ー ル 社(500 Luchadores) の 設 立 で サ ン テ ィ ア ゴ・サバーラ(Santiago Zavala)に資金支援を行いました。500 ルチャドール社は、  テクノロジー関連の新規ビジネスに融資・指導を行うメキシコシティの企業です。 IFC 年次報告書 2018  |  37 金融へのアクセス 起業家の アイデアを 機会に変える IFC 年次報告書 2018  |  38 ゼイナ・クーリー・ダウードは、22 歳の時にレバノンで伝統的な 手法を用いて作ったオリーブオイルの販売を始めました。起業家と しての成功を熱望していたゼイナは後に、商品のデリバリーサービ スを開始するとともにオーガニック商品のフランチャイズ事業を始 めました。 事業を始めるにあたりゼイナは、金融サービスへのアクセスという 中小企業最大の問題に直面しました。しかし、IFC の顧客でありレ バノンの中小企業への支援で知られる BLC バンク社(BLC Bank) がクーリー・ダウードのアイデアに賛同し融資を行うとともに、ビ ジネスの各段階にて助言を行いました。ゼイナのビジネスは成長し、 従業員数も増えています。 場所を問わない金融へのアクセスは、起業家のアイデアを機会に変 えることを可能にします。これは経済成長には不可欠です。しかし 途上国では、25 億人の成人が銀行に口座を持たず、2 億社もが事 業を展開するうえで不可欠な融資を受けることができません。 多くの中小企業が金融サービスを利用できるよう、IFC は金融機 関と協力しています。こうした連携を通し IFC は、支援を単独で 行った場合よりはるかに多くの中小企業を支えることができます。 2018 年度、我々の顧客は中小企業金融で約 3,650 億ドルを提供し ました。さらに、 2005 年以降、我々は 180 億ドル以上を投融資し、 90 カ国以上で 550 を超える、低所得層かつ十分なサービスを受け られていない層を顧客とするインクルーシブな企業に協力してきま した。 ラオスでは、2017 年にタイの TMB 銀行と協力しアクレダ銀行ラ オスに 910 万ドルの融資を行いました。この資金は、ラオスの特 に女性を経営者とする中小企業による金融サービスの利用の拡大に 向けた、同行の取り組みを支えます。 また、新興市場でより多くの人々が金融サービスを利用できるよう、 IFC は、クレディ・アグリコル・CIB と革新的な取引で連携しまし た。これにより、同行は貿易金融に関連した業務を活発化させ、保 健医療、教育をはじめとする主要サービスへの支援でさらに 5 億  3,650 1,000 万ドルを融資することができるようになります。シンセ ティック型のリスク移転取引を行い、IFC はクレディ・アグリコル・ CIB の新興市場貿易金融と法人融資が構成する 20 億ドルのポート フォリオに対し、8,500 万ドルの信用リスクプロテクションを提 億ドル 供しました。この結果、同社は融資を拡大することができました。 IFC がオフショアの現地通貨建て債券により調達したインド住宅開 発金融会社(HDFC)向けの 2 億ドルの投融資もまた、手頃な価格 の住宅の増加を支えています。HDFC は、自己資金 6 億ドルによ り設立するファンドを通じ、2022 年までに住宅 8 万戸を建設する IFC 顧客による ための資金供与を行い、同国における意欲的な「全ての人に住宅を (Housing for All)」計画の実現を支えます。 中小企業向け融資 トルコでは、女性起業家が 50 億ドルの与信ギャップに直面してい ることをふまえ、IFC は、新興市場の民間セクターにおいて初とな るジェンダー・ボンドに 7,500 万ドルの投融資を行いました。ギャ ランティバンク(Garanti Bank)が発行するこの債券により、同 行の女性顧客を対象とする融資件数は今後 5 年間で 3 倍増となる と期待されています。 写真:レバノンの有機栽培農家を営むゼイナ・クーリー・ ダウードは、IFC 顧客の融資を受け、オーガニック関連 の日用品のフランチャイズ事業とデリバリーサービスを 立ち上げ成功しています。 IFC 年次報告書 2018  |  39 アグリビジネス 農家の生産性と 所得を増大さ せる カクイ・ウアンコの家族は何世代にもわたり、綿と穀物の IFC は、小規模農家と近代的なサプライチェーンを結び付 販売で生計を立ててきました。収穫量が、彼の家族が今後 けるプログラムを支援しており、これにより農民は生産性 どれほどの食料を購入することができるのか、そして子供 と収益性を上げるための農業知識を習得することができま を学校に通わせることができるのかを左右します。 す。これは、我々のアグリビジネスへの包括的なアプロー チのひとつの要素です。2018 年度、我々のアグリビジネス 適切な器具やテクノロジーを利用できなければ、悪天候へ と林業への投融資は、他の投資家から動員した資金を含め の対策でカクイができることはほとんどありません。 合計で約 16 億ドルでした。IFC の顧客は約 370 万戸の農家 に機会を創出しました。 繊維のブルキナファソ社(Société Burkinabè des Fibres textiles:SOFITEX)が IFC と世界銀行の支援を受け推進し 我々は、持続可能な食料生産システムを構築すべく、サプ ているプロジェクトは、カクイが暮らすブルキナファソ西 ライチェーン全体と連携しています。顧客が在庫や種、農 部でこの問題に取り組んでいます。同プロジェクトは、綿 薬に対する融資を行えるよう、我々は運転資金枠を用意し の収穫を安定化させ、さらに増やすことで農家の所得を向 ています。貿易を促進しコストを削減するため、港や倉庫 上するとして、農家に対し土壌と水の管理、雨水の貯留、 を含めたインフラに投融資しています。 そして灌漑への融資や研修を行っています。4 年間で 1,000 戸の農家にこうしたサービスを提供することを目標として インドでは、米の貯蔵施設の建設、融資、維持のための官 おり、カクイもその一人です。 民パートナーシップでオリッサ州と連携しました。備蓄米 は、サイクロンなど多くの自然災害の被害に遭う同州の 小規模農家の生産性と頑健性の向上は、世界の貧困に終止 遠隔地域に住む貧しい人々の食料安全保障を担保します。 符を打つための取り組みの中で重要な一歩です。世界の貧 同プロジェクトはオリッサ州の他の地域でも行われおり、   困層の約 4 分の 3 が農村地帯に暮らしており、基本的な家 30 万人以上を支援すると見込まれています。 族のニーズを辛うじて支えるだけの収穫を上げるため、わ ずかな土地で農業を営んでいます。 また、途上国では競争力の向上でアグリビジネス企業を支 援しています。アルゼンチンでは、 ラボバンク(Rabobank) と連携し、レノバ(Renova)の穀物専用の港の新規建設と 大豆の加工能力の向上を支援するため、4 億 1,000 万ドル の融資パッケージを取りまとめました。 IFC 顧客が 370 万戸 写真:IFC の顧客 SOFITEX 社を経営するウスマン・シーは、 の農家 融資とより良い研修を行うことで、綿花農家の生活に変化を もたらすための支援をしています。 に機会を創出しました IFC 年次報告書 2018  |  40 IFC 年次報告書 2018  |  41 IFC はヨルダンでも教育面での取り組みを進めています。 同国ではルミナス(Luminus)に対し 880 万ドルの投融 資を行い、学生が経済のニーズに見合ったスキルを習得で きるよう支援しています。またアフリカでは、我々の顧客 であるアンデラ(Andela)が学生を対象に研修を行い、彼 らが世界中でテクノロジー関連の仕事に就けるよう支援し 人的資本 ています。市場のニーズに対応した教育が、中国におけ る IFC の活動の重点分野です。同国では、テクノロジー企 より良い教育と保健医 業である百度(バイドゥ:Baidu)の零細企業担当のロー ンユニットに対して、約 2 億ドルの現地通貨建ての協調融 資を取りまとめました。このユニットは、職業訓練やビジ 療へのアクセスを促進 ネス関連の学校に通う女性を対象に学費の融資を行ってい  ます。 する 学生の教育とキャリアの展望がマッチするよう、我々は職 業雇用適正評価ツールを導入しました。このツールを用い 関連機関は、人材紹介サービスの実効性を評価することが インドの大学院の共通入学試験は極めて難しいことで できます。また、これは、教育の質と関連性の評価のため 知られています。満点を取る学生がわずかな中、バイ の卒業率・斡旋率といった指標を示すのみならず、教員が ジュ・ラビンドランはその一人です。 雇用主のニーズにより適切な教育を行うための指針として の役割も果たします。 バイジュは、テストで高得点を取るための指導を数年 間行った後、より基本的な問題である「21 世紀の仕事 教育と共に、IFC は、質の高い保健医療へのアクセスの改 への準備でインドの学生に必要な、世界レベルの数学 善に向けた取り組みも進めています。キルギス共和国では、 教育を行うにはどうしたら良いのか」という問題に取 IFC の官民パートナーシップ(public-private partnership: り組むようになりました。現在インド全土で、 バイジュ PPP)により、国民の 70%以上が利用できる透析センター が考案した対話型アプリケーションである Byju’s の を 6 カ所建設中です。これまで在宅透析は行われていませ 利用者数は 90 万人に達しています。IFC をはじめと んでしたが、 これにより在宅透析が可能となり、 病院の負担、 する投資家からの融資を支えに、この有料アプリケー そして時間、通院、費用面で患者の負担も和らげることが ションはインドの教育ギャップの是正に貢献すると期 できます。バングラデシュでも同様の PPP が行われ、同国 待されています。 の透析治療を行う能力が 8 倍増大しました。これは、末期 腎不全の患者で透析を受けることができる人の割合が 10% 家族の繁栄のために高品質のサービスを求めるのはイ 未満という国において、大きな社会的ニーズに応えるもの ンドの人々だけではありません。IFC は、世界中で社 です。 会の発展に貢献する保健医療や教育関連の企業に融資 を行っています。2018 年度、我々は他の投資家から ケニアでは、質の高い薬局へのアクセスの拡大が保健医療 動員した資金を含め 7 億 6,900 万ドルをこれら企業に の転換に貢献しました。IFC のグッドライフ・ファーマシー 融資しました。IFC の顧客は、570 万人の学生が教育 (Goodlife Pharmacy)への 300 万ドルの投融資により、 を受けることができ、4,120 万人の患者に医療サービ 同社は薬局を 70 店以上新規に出店することができました。 スを提供できるよう支援しました。 グッドライフ・ファーマシーはアフリカ東部で最大の医薬 品チェーン店となり、利用者の多いショッピングセンター、 ガソリンスタンド、診療所などで最新鋭のテクノロジー・ システムを備えた 100 店以上の認可薬局を経営しています。 写真(左):IFC の投融資先であるグッドライフ・ファー マシーは、ケニアで 100 店舗以上を展開し、高品質な真 正医薬品の普及に貢献しています。 写真(下):ナイロビで、IFC の顧客であるアンデラでソ フトウェア開発担当者への研修を行うムバラク・ムビゴ。 IFC 年次報告書 2018  |  43 持続可能性を 推進する ページ ページ 46 持続可能性: 48 気候変動対策ビジネス: 12 兆ドルのビジネスの より環境に配慮した取り 機会 組みへの道を進む IFC 年次報告書 2018  |  44 IFC は持続可能性という視点に 立った活動を展開しています。 なぜなら我々の未来はまさに持続 可能性にかかっているからです。 ページ 50 ジェンダー: 繁栄の促進のため、 女性に投融資する IFC 年次報告書 2018  |  45 持続可能性 12 兆ドルの ビジネスの機会 2030 年までに持続可能な開発目標を達成するには、途上国向けの 4 兆 5,000 億ドルを含め世界で年間 7 兆ドルもの投融資が必要です。これはま さに壮大な取り組みです。これには莫大な費用がかかるものの、非常に多 くの機会をもたらします。 Business & Sustainable Development Commission の 分 析 に よ る と、  持続可能な実践を採用し従来とは異なる手法で目標の達成に貢献すること で、ビジネス界には年間少なくとも 12 兆ドルもの市場機会がもたらされま す。また同調査により、ビジネス界は、持続可能性の面でパフォーマンス を改善する多くの十分な理由があると認識していることが明らかになりま した。顧客と従業員がこれを期待し、また規制当局と投資家がこれを要求 しているのです。 新興市場国も、持続可能性の推進のための取り組みに乗り出しました。IFC が支援する持続可能な銀行ネットワーク(Sustainable Banking Network) によるグローバル進捗報告書(初版)によると、新興市場国は開発の推進 と気候変動対策の主要な原動力となっています。たとえば、34 カ国の新興 市場国が、持続可能な開発を支える融資の拡大に向け銀行改革に着手しま した。 この 34 カ国による取り組みは 42 兆 6,000 億ドルの銀行資産に相当しま す。これは、新興市場の銀行資産の合計の 85%を超える規模であり、この 全ての国が、サステナブルファイナンス(持続可能な金融)を前進させて います。一連の改革によって、銀行は融資業務における環境リスク、社会 的リスクに関する分析と報告を行い、さらにグリーンプロジェクト(環境 問題の解決に貢献する事業)に融資を行う市場インセンティブを付与する 必要があります。 60 年以上にわたり、IFC は持続可能性面の改善で企業支援をリードしてき ました。IFC のパフォーマンス基準(102 ページ参照)は、持続可能な実践 を目指すための世界的な基準となっています。我々の顧客はこれを指針に、 企業の最終的な利益のみならずコミュニティや環境面でも優れたビジネス・ ソリューションを形成することができます。 15 年前に、IFC の環境及び社会的な保護条項からエクエーター原則が誕生 しました。これは、世界の銀行業界における投融資プロジェクトへの厳 格な環境基準・社会基準の導入のはじまりです。今日、37 カ国における  94 の金融機関が同原則を採用しています。欧州復興開発銀行やアジア開発 銀行をはじめとする他の主要な開発機関は、IFC の基準から派生した慣行 を採用しています。さらに、35 の開発金融機関が、我々のコーポレートガ バナンス手法(103 ページ参照)を取り入れています。 IFC はグリーン・ビルディングの推進も継続しています。温室効果ガスの 主要排出国であるインドネシアで、我々は現地の建築家及び建設会社と協 働し、新規住宅のプロジェクトでグリーン・イニシアティブを推進しまし た。これにより、2021 年までに年間の温室効果ガスの排出量を 120 万ト ン削減し、500 メガワット / 時のエネルギーの利用を回避するとともに、   約 2 億ドルを節減することになるでしょう。 今年度 IFC は、開示・透明性ツールキットを立ち上げました。これは、資 本市場の環境、社会、ガバナンスに関する原則の構築という意欲的な取り 組みの一環で実現しました。世界の証券取引所、規制当局、投資家、そし て開発及びドナー機関は、このツールキットを途上国が資本市場の透明性 の向上で活用できる重要な指針だと考えています。 IFC 年次報告書 2018  |  46 :IFC の投融資を受けるプロジェク 写真(上) トは、持続可能な慣行の世界的な基準である IFC のパフォーマンス基準を遵守しなければな りません。 :インドネシアのグリーン・ビルディ 写真(下) ング・プロジェクトであるシプトラ・レジデ ンス(Ciputra Residence)は、環境に配慮し たビジネス・ソリューションの形成における IFC の顧客への支援の在り方を示しています。 35 開発機関が、IFC のコーポレー トガバナンス手法を採用してい ます IFC 年次報告書 2018  |  47 気候変動対策ビジネス より環境に配慮した 取り組みへの道を 進む IFC 年次報告書 2018  |  48 民間投資家の、新興市場国での気候変動対策型プロジェクトへの投資 意欲と能力は高まっています。しかし、実際に投資を行うための適切 なツールを備えていないケースが多くあります。 これにより、気候変動対策に活用できる資金で大きなギャップが生ま れます。より環境に配慮した成長への道を目指すことは、燃料費の削 減や多くの生命を救うことにつながるとともに、雇用の創出を加速さ せる可能性があります。また、2030 年までに、主要な新興市場国に おいて、少なくとも 23 兆ドルの投融資の機会を企業にもたらす可能 性があります。 IFC は、気候変動への対処で民間セクターのソリューションを推進す る大きな役割を担っています。2018 年度、我々が関連分野で他から 動員した資金は 45 億ドルと記録的な額となりましたが、これを含め 気候変動対策型ファイナンスとして 84 億ドルを提供しました。これ は、今年度の他から動員した資金を含めた承認額の合計の 36%を占め、 我々の 2020 年の目標値を上回っています。この投融資は、温室効果 ガスを推定で年間 1,040 万トン削減するための取り組みで顧客を支え るでしょう。 IFC は、投融資を決定する際にこれまで以上に気候変動関連を重視し ています。温室効果ガスの排出量が高い傾向にある、火力発電、化学 肥料、そしてセメントといった 3 つのセクターにおいて、我々はカー ボンプライシングを導入し、排出量削減に資するテクノロジーとプロ セスの導入を促進しています。このアプローチは、炭素価格付けに関 するハイレベル委員会の報告書 の提言を反映しています。 グリーンボンドは、低コストで長期の資金供給源となる可能性がある ことから、インフラプロジェクトにとって特に魅力的な資金調達ツー ルだと言えます。2018 年度末時点で、IFC のグリーンボンド発行額は 合計で 76 億ドルでした。2018 年、我々はヨーロッパ最大の資産運用 会社であるアムンディとともに、新興市場に特化した世界最大規模の グリーンボンド・ファンドである Amundi Planet Emerging Green 84 億ドル One を立ち上げました。同ファンドは 14 億 2,000 万ドル調達し、運 用期間中、リターンを再投資に回すなど新興市場のグリーンボンドに 20 億ドル投資します。 気候変動対策型ファイナンス 2017 年、IFC はソブリン・グリーンボンドにより 5,000 万ドルを調達 し、太平洋の島国であるフィジーを支援する世界銀行グループの取り 組みを主導しました。オーストラリアの支援も得て、同国は途上国と して初めてソブリン・グリーンボンドを発行、その後、同債券はこの 種のものとしては初めてロンドン証券取引所上場を果たしました。フィ ジーは気候変動への脆弱性を改善するため、今後 10 年間で 40 億ドル 以上の投融資を必要としています。 写真:IFC は島国のフィジーがソブリン・  持続可能な発電は最優先分野です。セルビアでは、廃棄物をエネルギー グ リ ー ン ボ ン ド( グ リ ー ン 国 債 ) で  に変換する取り組みでベオグラードを支援しています。同市では毎年 5,000 万ドル調達するのを支援しました。 50 万トンの廃棄物が排出されています。さらに現在使用している埋立 地は環境面で大きな問題となっています。2017 年 9 月、IFC は廃棄物 をエネルギーと熱に変える複合施設の建築と運営のため、官民パート ナーシップを構築することで同市を支援しました。 ドミニカ共和国では、IFC とカナダが 8,000 万ドルの融資パッケー ジをまとめました。1,700 万ドルのブレンド型融資も含んだ同パッ ケージは、系統連系型の出力 50 メガワットの風力発電所の新規建 設と運営を支援します。このペカサ(Parques Eolicos del Caribe: PECASA)風力発電所は同国最大の風力発電所に名を連ね、2 万台の 自動車を削減するに匹敵する量の温室効果ガスの排出量を削減すると 期待されています。 IFC 年次報告書 2018  |  49 ジェンダー 繁栄の促進のため、 女性に投資をする 長い間マーンサー・デヴィの家族にとり、子供の学費の支 女性起業家が成功するためには、金融へのアクセスは不可 払いや教科書の購入は容易ではありませんでした。 欠です。しかし同時に、市場とのつながりや政策及び法律 上の障壁を克服するための助言も必要です。こうしたニー しかし、2016 年に状況は変わりました。IFC のアジア・ ズに応えるため、14 カ国の政府の資金援助を受け、IFC インドに光をプログラムで連携しているダーマ・ライフ と世界銀行は女性起業家資金イニシアティブ(Women (Dharma Life)の起業家として、マーンサーが働き出した Entrepreneurs Finance Initiative : We-Fi) の 立 ち 上 げ ためです。インドで最も貧しい州のひとつで暮らすデヴィ を支援しました。このイニシアティブのもと、複数の国際 は、太陽光ランプの訪問販売をしています。彼女の収入は 開発金融機関が官民双方の機関に融資と助言を行います。 家族の必需品を購入するのに十分です。マーンサーは研修 We-Fi による第一段階の資金支援は 16 億ドルの投融資を動 により販売に必要な知識も習得しました。商品を売る際に 員する見込みです。 彼女は客にこう言います、 「このランプは携帯電話の充電に も使えるんですよ。 」 2014 年に、IFC の女性向け金融プログラムとゴールドマ ン・サックスの 1 万人の女性(10,000 Women)イニシ 世界中のデヴィのような女性が、経済成長と機会を生み出 アティブが女性起業家機会改善ファシリティー(Women す力強い原動力です。途上国では、こうした女性がまさに Entrepreneurs Opportunity Facility : WEOF)を立ち上げ 雇用創出のエンジンである中小企業の約 3 分の 1 を占めま ました。これを通し IFC は、6 億ドルという当初の目標規 す。また、世界のフォーマルな労働力の 41 %を占めます。 模を上回る、29 カ国における 41 の金融仲介機関に対し 11 しかし、極めて多くの女性たちが経済活動の大半に依然と 億ドルを超える投融資を行いました。また、9 カ国におけ して参加することができません。調査によると、女性の参 る 9 件のアドバイザリー・プロジェクトにも資金を拠出す 画が拡大することで、経済の産出量を年間数兆ドル相当押 るなど、 合計 420 万ドルがプロジェクトに活用されました。 し上げる可能性があります。 IFC は、ジェンダーギャップの是正がビジネスにいかに重 IFC は、女性の機会の創出で顧客に投融資と助言を行い、 要であるかを明確に示すリサーチも発表しています。たと ジェンダー・インクルージョン(包摂)がビジネスにプラ えば、IFC の報告書である 子育て支援への取り組み は、企 スであるということを明確に示す調査を行うとともに、女 業による子育て支援は生産性向上という利益を生むことを 性を従業員、起業家、消費者、そしてビジネスリーダーと 示すとともに、どのような子育て支援を行うことができる して支える国際的あるいは国別のパートナーシップを構築 かについての企業の判断材料となっています。またもう一 することで、女性の経済活動への参画を拡大するための取 つの報告書である平等を目指して は、配車アプリなどの新 り組みを続けています。2018 年度、IFC の顧客は途上国で しいテクノロジーを通して女性の経済への平等な参画を検 80 万件以上の女性の雇用を生み出すとともに、女性が経 証しています。 営する中小企業に対し 114 億ドルの融資を行いました。 IFC は企業の幹部レベルのダイバーシティも推進していま す。IFC の女性取締役 プログラムは、我々と地域の女性ネッ トワークの連携とともに、多様な才能、文化、そして視点 の維持で企業を支えています。 写真(左):IFC のアジア・インドに光を プログラムにより、マーンサー・デヴィ のような主婦が稼ぎ手として成功してい ます。マーンサーは、太陽光ランプを販 売しています。 :ウン・ソフィープは、カンボ 写真(右) ジア・プノンペンで織物センターを経営 しています。彼女のビジネスは IFC の顧 客であるアクレダ銀行(ACLEDA Bank) から融資を受け成長しました。 IFC 年次報告書 2018  |  50 IFC 年次報告書 2018  |  51 貧困に終止符を 打つ ページ ページ 54 IDA と紛争地域: 56 サブサハラ・アフリカ: 最も困難な ビジネスの機会に溢れた 地域で貧困と戦う 大陸 IFC 年次報告書 2018  |  52 2030 年までに、世界の貧困層の 約半数が、アフリカ、南アジア、 中東といった紛争や暴力が蔓延する 国で暮らすようになると 言われています。 ページ ページ 58 南アジア: 60 中東・北アフリカ: 極度の貧困からの脱出で 成長と雇用創出を  2 億 5,000 万人を支援する 加速させる IFC 年次報告書 2018  |  53 IDA と紛争地域 最も困難な 地域で貧困と戦う ケニア カクマ難民キャン プは、市場として 年間 5,600 万ドル の価値があります 貧困層は、貧困撲滅が最も困難な地域にますます集中しています。 約 13 億の人々が、世界銀行の IDA から借入を行うことができる 世界の最貧国のうちの 75 カ国に暮らしています。 2030 年までに、 極度の貧困状態にある人々の約半数が、脆弱国家で暮らすように なると言われています。 IFC は、こうした国々において、制度の構築あるいは強化、投融 資の動員、及び民間の起業家精神の育成を支援するなど、貧困撲 滅に向け包括的なアプローチを導入しています。2030 年までに、 IFC の年間投融資承認額の 40%が、IDA 諸国と脆弱国家を対象と したものになると予測しています。 IFC 年次報告書 2018  |  54 :IFC が資金支援したアフガニスタンのリク 写真(上) エダのレーズン加工工場(Rikweda raisin-processing plant)は、農産物を高値で買い上げることで、現地の 3,000 戸の小規模農家を支援しています。 写真(左):ケニアのカクマ難民キャンプで、新しい技 術の習得に励む難民たち。IFC の報告書によると、カク マ難民キャンプは、年間 5,600 万ドルの市場価値が示 されています。 IFC は、ソリューションに関する助言へのニーズの増大に応え るべく、市場を創造するためのアドバイザリーウィンドウ の 運用を開始しました。同制度から拠出された資金が、ハイチの 北東回廊の工業団地近郊での、 手頃な価格の住宅の増加、クリー ンな電気の促進、農産物の価格の引き上げを支えています。ま たニカラグアでは、主要なアグリビジネス・イニシアティブを 支援しており、ホンジュラスの金融セクターでは環境基準・社 会基準の強化を支えています。 さらに、IFC と国際連合難民高等弁務官事務所は、民間投融資 が、難民キャンプでの生活をどのように向上させることができ るかを示した報告書も発表しました。ケニアのカクマ近郊の難 民キャンプには、16 万人以上の難民あるいは強制移住者が暮 らしています。難民とカクマはビジネスと雇用で相互依存関係 にあり、このキャンプは少なくとも年間 5,600 万ドル規模の 市場に相当することが明らかになりました。 IFC の IDA 諸国向け長期投融資の承認額は、他の投資家から動 ミャンマーでは、ヨマ・マイクロパワー(Yoma Micropower) 員した資金を含め、 2018 年度には 68 億ドルまで増加しました。 を支援し、遠隔地のコミュニティまで電力網事業を拡大できる また、 我々のアドバイザリー ・プログラムの 57%がこうした国々 よう支援しています。同社は、ブレンド型融資を活用し、太 で行われました。今年度の IFC の脆弱国家への投融資は他の投 陽光を使った小規模発電所を国内に設置しようとしています。 資家から動員した資金を含め、合計 37 億ドルでした。IFC のア 2022 年までに、こうした約 2,000 カ所の発電所が通信タワー ドバイザリー・プログラムの約 20%がこうした国や地域で行わ に電力を供給し、遠隔地の電気が通っていないコミュニティに れました。 電力を届けることになります。 2018 年、世界銀行グループは、新規ツールである IDA18 IFC- カンボジアでは、現地の家具業界の強化と国際市場への統合 MIGA 民間セクター・ウィンドウ 活用し、アフガニスタンでの を支援しました。IFC は中国を拠点とする手頃な価格の家具の 最新鋭のレーズン加工工場の建築でリクエダ・フルーツ・プロ 製造業者である慕容控股(モーリスホールディングス:Morris セシング・カンパニーを支援しました。同工場の稼働後は、ア Holdings)に 2,600 万ドル相当の融資を行い、シアヌークビ フガニスタンのレーズン生産量を倍増させ、3,000 戸の小規模 ルでの近代的な製造施設の建設によって同社を支援しました。 農家から彼らの農産物を購入することで支援します。 IFC 年次報告書 2018  |  55 サブサハラ・アフリカ ビジネスの 機会に溢れた 大陸 極度の貧困状態にある人々が最も多く暮らしているのがサブサハ サブサハラ・アフリカは、人口の急増に合わせ数多くの雇用 ラ・アフリカです。その数は約 4 億人と、世界の他の地域で暮ら を創出する必要があります。これは、中小企業を動員するこ す最貧困層を全て合わせた人数より多くなっています。また、こ とで解決が可能な課題です。南アフリカにおいて、IFC は中 の地域には、他の地域より多くの紛争国が存在します。 小企業プッシュ型プログラム(SME Push Program)を構 築しました。これは、今後 7 年間で中小企業向けの投融資を しかし一方で、IFC の新報告書アフリカの未来を作る( Shaping 最大で 30 億ドル調達するためのもので、現在、同国最大ク the Future of Africa) によると、アフリカは膨大なビジネスの ラスの銀行とのパートナーシップの構築を進めています。こ 機会に溢れた大陸でもあります。2030 年までに、1 億人がアフ のプログラムのもと、我々はファーストランド(FirstRand) リカの中所得層や高所得層に加わり、こうした層は合計で 1 億  に対し、中小企業支援のための資金として最大で 2 億ドル融 6,000 万人を超えるといわれています。家計の消費や企業の支出 資することで合意しました。 が急激に増加しており、2025 年までには合計で 5 兆 6,000 億ド ルに達する可能性があります。 ザンビアでは、世界銀行グループのスケーリング・ソーラー ( Scaling Solar) ・プログラム のもとで同国初となる大型の太 これは、同地域が抱えるインフラの不備、急速な都市化、そして 陽光発電所を建設するため、2,530 万ドルのブレンド型融資 人々の貧困からの脱却に資する仕事へのニーズといった喫緊の開 を含めた融資をまとめました。これにより建設される発電所 発課題への対処が、民間セクターにとって大きなプラスになるこ 2 カ所が生み出す低コストの再生可能エネルギーは、干ばつ とを意味しています。IFC はこの点で包括的な役割を担っており、 により水力発電が低迷した分を補う電力源となることが期待 生産性の向上とより広範な市場への結びつきを確立させることで されています。また我々は、同プログラムをセネガルまで拡 企業を支援し、金融面・社会面でインクルージョンを推進すると 大し、電気料はこれまでと比べ 60%低く設定しつつ、同国 ともに、紛争の抑制に資する手法で繁栄を促進しています。 の電力発電能力を 60 メガワット拡大する取り組みによって 同国を支援しています。 2018 年度、サブサハラ・アフリカへの我々の長期投融資は、他の 投資家から動員した 46 億ドルを含め合計で 62 億ドルでした。 我々 マダガスカルではコブウシが減少しています。その対策と の顧客は、27 万 8,000 件の雇用を支え、100 万戸以上の農家に して IFC は、アグリビジネスのボン・ヴィアンド・デ・マダ 機会をもたらし、140 万人を超える患者に治療を施しました。IFC ガ ス カ ル(Bonne Viande de Madagascar:BoViMa) に、 のアドバイザリー・プログラムは世界レベルで展開していますが、 700 万ドルの融資(半分はブレンド型融資)を供与しました。 その 3 分の 1 が同地域で行われました。 同社は、近代的な飼育場と食肉処理場の建設を進めており、 これは今後、コブウシとヤギの肉の輸出市場を形成し、同国 の家畜産業の再構築と雇用創出を支えるでしょう。当面、世 界銀行のイニシアティブにより、獣医師に研修を行い、研究 所の再建を行うとともに、家畜の管理を改善するなど、マダ ガスカルが国際的に認知された動物の健康状態に関する証明 書を発行できるよう協力していきます。コブウシの肉は、世 界銀行も資金を拠出したトラニャロの近代的な港から海外に 輸出されます。 IFC 年次報告書 2018  |  56 ザンビア 2,530 万ドル 世界銀行グループのスケーリング・   ソーラープログラムの下での  同国初の大規模太陽光発電所の  建設を支えるブレンド型融資 写真: ジャッキー・エイドリアーノは、IFC の顧 客である BoViMa の建設監督者です。BoViMa は、  世界レベルの飼育場と食肉処理場を建設してい  ます。 IFC 年次報告書 2018  |  57 写真: ガンジス川で漁をする女性。IFC は、 世界で最も汚染された川のひとつであるガ ンジス川を浄化することで同国を支援してい  ます。 南アジア 極度の貧困からの 脱出で 2 億 5,000 万人を 支援する IFC 年次報告書 2018  |  58 バングラデシュの騒がしい織物工場で、クリスノ・クマール・ダス は、慎重に布を染色機に入れていきます。彼は、貴重な資源と資金 が無駄になることはないと安心して作業にあたることができます。 クリスノが勤務するテキスタウン(Textown)がより持続可能な 2017 年、我々はバングラデシュ初の液化天然ガスの輸入ターミナ 製造手法への転換を決め、IFC が主導するイニシアティブである ルを対象とした 1 億 2,570 万ドルの融資パッケージを取りまとめ パートナーシップ ・ フォー ・クリーナー・テキスタイル(Partnership ました。このターミナルが完成すれば、国営企業のペトロバングラ for Cleaner Textile:PaCT)に参加したのは最近のことです。こ (Petrobangla)は、同国の天然ガス供給を最大で 20%拡大するこ れにより、同社が使用するエネルギー、染料、そして化学製品の量 とができます。これは、3,000 メガワットの発電能力を支えるの は大幅に削減されました。水の消費量も年間 1,100 万リットル削減 に十分な量です。 されます。これは、オリンピックで使用される規模のプール 4 つ 分を上回る量に相当します。 インドでは、IFC はガンジス川の浄化という同国による意欲的なプ ログラムを支援しています。ハリドワール、マトゥラー、ヴァー オーストラリア、カナダ、デンマーク、及びオランダが資金を拠出 ラーナシーから同河川に大量の未処理の汚水が流れ込んでいます。 する PaCT は、過去 5 年間で 200 以上の工場に対し実地調査を行 2018 年度、我々はこれらの都市で、民間企業による下水処理場の いました。PaCT の助言により、バングラデシュでは、水の使用量 建設を支える初の官民パートナーシップの構築を支援しました。こ が年間で 210 億リットル減少しました。また、これらの工場では れらの 3 つの施設は 1 日あたり 2 億リットル以上の汚水を処理し、 エネルギー消費量が減少し、温室効果ガスの排出量が年間 46 万ト 水質を改善していきます。 ン削減されました。これは、10 万台の車を削減した量に匹敵します。 観光立国であるネパールでは、ヒマラヤ・チェーン・リゾート 主にインドとバングラデシュが、南アジアの 6.5%という GDP 成 (Himalayan Chain Resorts)に 170 万ドルの投融資を行いました。 長率の原動力となっています。民間消費は力強く、投資はインフラ 現在、同社は 3 棟のロッジを経営していますが、IFC の投融資によ プロジェクトと改革で活気づいています。その一方で、同地域の近 り今後、クンブ(エベレスト地域)のゴーキョ湖・トレイルとエベ 年の経済発展にかかわらず、2 億 5,000 万人以上が極度の貧困状 レスト・ベースキャンプ・トレイルに沿ってロッジを 10 棟まで増 態にあります。 やしていきます。これに伴い 120 件の雇用の創出が期待されてい このことから、同地域は IFC の戦略的最優先地域となっています。 ます。 2018 年度、IFC は他の投資家から動員した 13 億ドルを含め、南ア ジアの企業を対象に 34 億ドルの融資を供与しました。我々の顧客 は 110 万戸にガスを届け、59 万人以上に仕事を提供し、160 万戸 を超える農家に機会を創出しました。 バングラデシュ 発電能力が新たに 3,000 メガワット追加  される予定です IFC 年次報告書 2018  |  59 中東・北アフリカ 成長と雇用創出を 加速させる IFC 年次報告書 2018  |  60 ガザのプラスチック会社で働くイブラヒム・ハスーナ にとって、職場での停電は驚くことではありません。 ほぼ毎日何度も停電することで製造ラインが止まり、 130 人の従業員が手持無沙汰になります。「電気が止ま るたびに、作業が最大で 30 分止まってしまいます。」 とライン管理を担当する 41 歳のハスーナは話します。 同じような不満を抱いている人はハスーナだけでなく 健医療を提供し、また約 100 万人が電話を利用できる ガザ全土にいます。ガザは最も深刻な電力危機にあり ようになりました。 ます。ガザの唯一の発電所は燃料が不足し、供給ライ ンは老朽化し、また戦争により損傷しています。停電 ヨルダンでは、アイリス・ガード(IrisGuard)を支援し、 により、同地域の製造業は 1990 年代後半から 60%縮 シリア難民の生活向上に貢献しました。虹彩認証技術 小するなど大きな損害をもたらしています。 を用いたアイリス・ガードの e ペイメントにより、難 民が迅速かつ容易に現金にアクセスし商品を購入する IFC は、この縮小傾向を反転させるべく支援していま ことができます。ヨルダン全土に同社の店頭向け製品 す。2018 年、我々は最大限の開発資金調達イニシア を設置することで、230 万人のシリア難民が ATM で ティブを立ち上げました。これを通し、 世界銀行グルー 現金を引き出したり商品の支払いができるようになり プの他の機関と連携し、ガザのエネルギー不足を緩和 ます。 するための太陽光プロジェクトに 1,200 万ドル拠出し ます。太陽光パネルが屋上に設置され 7 メガワットを IFC は、 銀 行、 建 設、 そ し て 製 造 業 の トップ企業で 発電する施設によって、ガザの工業団地にある 32 カ あるイラクのサラハッディーン・ホールディングス 所の工場に不可欠なエネルギーがこれまでより大幅に (Salahaddin Holding)の改革を支援しています。幹 安く提供されます。また、このプロジェクトにより 部の意思決定の際に、より一層社内規律及び内部統制 800 件の雇用が生まれます。 の観点を組み込むとともに、責任、権限と役割を明確 にし、幹部の研修の改善などを行っています。 中東・北アフリカ全土で、経済成長率は 2011 年から 半減しています。若者の失業率は高く、紛争により多 エジプトでは、IFC は、エイペックス・インターナショ くの人々が土地を追われました。こうしたことから、 ナ ル・ エ ナ ジ ー(Apex International Energy) に  同地域は IFC の最優先地域となっています。 2018 年度、 7,500 万ドル出資しました。同社は、国内最大の石油 IFC は、他の投資家から動員した 10 億ドルを含め同地 及びガス生産拠点への転換を目指しています。IFC ア 域に 20 億ドル以上の投融資を行いました。我々の顧 セット・マネジメント社が、同プロジェクト向けに 客は 11 万 9,000 人以上に雇用を、290 万人以上に保 さらに 2,500 万ドルを動員しました。このプロジェ クトにより、エジプトの石油及びガスの貯蓄量は、   2023 年までに石油 1 億バレル分増大すると見込まれ ています。 ヨルダン イラク 230 万 IFC は、銀行、建設、 製造のトップ企業 人のシリア難民が であるサラハッ 現金を引き出すこ ディーン・ホール とができます ディングスの改革 を支援しています エジプト 写真(上): ガザの工業団地でプラスチックの部品を作る エイペックス・イ ンターナショナル・ 労働者。IFC は同工業団地の出力 7 メガワットの太陽光発 エナジーに 電所に投融資を行いました。この発電所は、800 件の雇用 創出に貢献しました。 7,500 万 ドル出資しました :ベイルートのマデラ・クリエーション(Madera 写真(左) Creation)の共同オーナーであるナンシー・エル・アスマー ルは、IFC の顧客からの融資を得て家具関連のビジネスを 展開し成功しています。 IFC 年次報告書 2018  |  61 IFC 2018 年次報告 IFC の 2018 年度の投融資額は、他の投資家から動員した約 117 億ド 総計およそ 233 億ドルに達しました。 ルを含め、 IFC の包括的アプロー チは、企業が創意性を発揮し、国際競争力のある産業セクターを構築 し、より良い仕事を生み出すことに役立ちました。 ヨーロッパ・ ラテンアメリカ・ 東アジア・大洋州地域: 中央アジア地域: カリブ海地域: 34 億ドル 29 億ドル 50 億ドル 長期投融資承認額 長期投融資承認額 長期投融資承認額 2,090 470 万人 1,030 億ドル 億ドル 実行済み零細・  治療を受けることがで 実行済み零細・  中小企業融資額 きた患者数 中小企業融資額 57 100 35 億ドル 億ドル 億ドル 国内のサプライヤーか 国内のサプライヤーか 官民パートナーシップ ら購入された商品と ら購入された商品と を通したインフラ投資 サービス サービス 55 万 210 20 件の政策改革 万人 4,000 件 成長を支え投融資を促 教育を受けることがで きた学生数 進するために 11 カ国で 雇用創出数 実施 IFC 年次報告書 2018  |  62 中東・北アフリカ地域: 南アジア: サブサハラ・アフリカ: 20 34 62 億ドル 億ドル 億ドル 長期投融資承認額 長期投融資承認額 長期投融資承認額 300 497 33 万人 億ドル 件の政策改革 治療を受けることがで 実行済み零細・  成長を支え投融資を促 きた患者数 中小企業融資額 進するために 12 カ国で 実施 16 1 億 5,300 億ドル 万件 130 万戸 国内のサプライヤーか 現金以外での小売店で ら購入された商品と の取引、合計 79 億ドル 支援が行きわたった  サービス 農家 8,400 340 万ドル 4,670 万人 万人 政策改革の結果動員  新たに電気の供給を  された新規投融資額 新たに電気の供給を  受けた人数 受けた人数 IFC 年次報告書 2018  |  63 業務結果の要約 年度別(6 月末終了)、単位:百万ドル 2018 2017 2016 2015 2014 長期投融資承認 IFC 自己勘定分 $ 11,629 $ 11,854 $ 11,117 $ 10,539 $ 9,967 プロジェクト数 366 342 344 406 364 対象国数 74 75 78 83 73 中核資金動員 1 $ 11,671 $ 7,461 $ 7,739 $ 7,133 $ 5,142 協調融資 2 $ 7,745 $ 3,475 $ 5,416 $ 4,194 $ 3,093 IFC イニシアティブ、その他 $ 2,619 $ 2,207 $ 1,054 $ 1,631 $ 1,106 アセット・マネジメント社(AMC)ファンド $ 263 $ 531 $ 476 $ 761 $ 831 官民パートナーシップ(PPP)3 $ 1,044 $ 1,248 $ 793 $ 548 $ 113 投融資承認額合計 $ 23,301 $ 19,316 $ 18,856 $ 17,672 $ 15,109 投融資実行 IFC 自己勘定分 $ 11,149 $ 10,355 $ 9,953 $ 9,264 $ 8,904 協調融資 4 $ 1,984 $ 2,248 $ 4,429 $ 2,811 $ 2,190 投融資実行額合計 $ 13,133 $ 12,602 $ 14,382 $ 12,075 $ 11,094 承認済みポートフォリオ 企業数 1,977 2,005 2,006 2,033 2,011 IFC 自己勘定分 $ 57,173 $ 55,015 $ 51,994 $ 50,402 $ 51,735 協調融資 5 $ 16,210 $ 16,047 $ 16,550 $ 15,330 $ 15,258 承認済みポートフォリオ合計 $ 73,383 $ 71,062 $ 68,544 $ 65,732 $ 66,993 短期資金融資 平均残高 $ 3,435 $ 3,185 $ 2,807 $ 2,837 $ 3,019 アドバイザリー・サービス アドバイザリー ・ サービス ・ プログラム支出 $ 273.4 $ 245.7 $ 220.6 $ 202.1 $ 234.0 IDA 融資適格国向けプログラムの割合 6 57% 63% 62% 65% 66% 1. 中核資金動員の定義―IFC が資金調達に直接関与した結果、IFC 以外の主体から、顧客が利用できる資金として供与された投融資を指す。 2. B ローン、パラレルローン、MCPP ローンを含む。 3. 中央政府や地方政府などの政府主体に対し、IFC が、マンデート下で主幹アドバイザーを務めたことにより、第三者から官民パートナーシップ ・ プロジェク トに供与された投融資を指す。 4. B ローン、代理型パラレルローン、MCPP ローンを含む。 5. B ローン、A ローン・パーティシペーション(ALPS)、ストラクチャード A ローン・パーティシペーション(SALPS) 、エージェンティッド・パラレルロー ン、アンファンディッド・リスク・パーティシペーション(URPs)および MCPP ローンを含む。 6. 本書中の、IDA 融資適格国および脆弱・紛争地域向けアドバイザリー ・ プログラムの支出の割合(%)には、いずれもグローバル ・ プロジェクトは含まれない。 IFC 年次報告書 2018  |  64 財務結果の要約 年度別(6 月末終了)、単位:百万ドル * 2018 2017 2016 2015 2014 IFC に帰属する純利益(損失) 1,280 1,418 -33 445 1,483 IDA 拠出金 80 101 330 340 251 IDA 拠出金控除前利益 1,360 1,523 296 749 1,739 資産合計 94,272 92,254 90,434 87,548 84,130 貸出金、出資、および負債証券投資(純額) 42,264 40,519 37,356 37,578 38,176 出資(推定公正価値) 14,573 14,658 13,664 14,834 14,890 主要比率 平均資産利益率(GAAP ベース) 1.4% 1.6% 0.0% 0.5% 1.8% 平均資本利益率(GAAP ベース) 5.0% 5.9% -0.1% 1.8% 6.4% 翌 3 年間の予測正味現金需要に対する  現金および短期投資の比率 100% 82% 85% 81% 78% 負債比率 2.5:1 2.7:1 2.8:1 2.6:1 2.7:1 必要資源合計(十億ドル) 20.1 19.4 19.2 19.2 18.0 利用可能資源合計(十億ドル) 24.7 23.6 22.5 22.6 21.6 実行済み貸出金ポートフォリオ総額に対する  貸倒引当金の比率 5.1% 6.1% 7.4% 7.5% 6.9% 上記数値の詳しい算出方法については、経営陣の所見および分析と連結財務諸表をご覧ください。http://www.ifc.org/FinancialReporting *  IFC 年次報告書 2018  |  65 2018 年度の長期投融資承認額 2018 年度の環境・社 2018 年 6 月 30 日現在の IFC 自己勘定分(百万ドル) 会カテゴリ別にみた長 合計 $ 11,629 100.00% 期投融資承認額 産業別 承認額 新規 カテゴリ (百万ドル) プロジェクト数 金融市場 $ 5,509 47.37% インフラ $ 2,073 17.83% A 817 12 アグリビジネス・林業 $ 956 8.22% B 4,225 148 観光・小売・不動産 $ 764 6.57% C 139 23 ファンド $ 747 6.42% 保健医療・教育 $ 739 6.36% FI5 23 0 製造 $ 536 4.61% FI-1 754 12 通信・情報技術 $ 207 1.78% FI-2 3,907 100 石油・ガス・鉱業 $ 97 0.83% FI-3 1,764 71 地域別 1 合計 11,629 366 ラテンアメリカ・カリブ海 $ 2,509 21.58% 5. FI カテゴリは、旧プロジェクトに関連した新規 承認額に適用される。カテゴリの定義について ヨーロッパ・中央アジア $ 2,256 19.40% はウェブサイト(www.ifc.org/escategories) 南アジア 2 $ 2,080 17.88% をご覧ください。 東アジア・大洋州 $ 1,940 16.89% サブサハラ・アフリカ $ 1,566 13.25% 中東・北アフリカ 2 $ 1,010 8.69% 承認済みポートフォリ グローバル $ 268 2.31% オ残高上位国 6 商品別 2018 年 6 月 30 日現在(IFC 自己勘定分) 融資 3 $ 9,804 84.30% 世界合計に 出資 4 $ 1,300 11.18% 国名 承認残高 占める割合 世界順位 (百万ドル) (%) 保証 $ 442 3.80% リスク管理商品 $ 83 0.71% 1 インド 6,127 10.71% 2 トルコ 4,957 8.67% 2018 年度の承認済みポートフォリオ 3 中国 3,378 5.91% 4 ブラジル 2,877 5.03% 2018 年 6 月 30 日現在の IFC 自己勘定分(百万ドル) 5 バングラデシュ 1,520 2.66% 合計 $ 57,173 100% 6 アルゼンチン 1,411 2.47% 産業別 7 エジプト 1,406 2.46% 金融市場 $ 20,017 35% 8 コロンビア 1,343 2.35% インフラ $ 11,370 20% 9 パキスタン 1,196 2.09% ファンド $ 4,640 8% 10 メキシコ 1,192 2.09% 製造 $ 4,515 8% 6. 地域プロジェクトやグローバル・プロジェクト アグリビジネス・林業 $ 3,866 7% に含まれる国別シェアは除外。 貿易金融 $ 3,527 6% 保健医療・教育 $ 2,828 5% 観光・小売・不動産 $ 2,678 5% 石油・ガス・鉱業 $ 1,976 3% 通信・情報技術 $ 1,757 3% 地域別 1 ラテンアメリカ・カリブ海 $ 12,313 22% ヨーロッパ・中央アジア $ 10,345 18% 南アジア 2 $ 9,898 17% 東アジア・大洋州 $ 9,045 16% サブサハラ・アフリカ $ 8,824 15% 中東・北アフリカ 2 $ 4,905 9% グローバル $ 1,842 3% 1. グローバル・プロジェクトとして正式に分類された投融資の地域シェアを含む。 2. アフガニスタン及びパキスタンは、共に中東・北アフリカ地域に分類されていたが、現在では南アジア に分類されている。2018 年度、これらの国は IFC の承認額のうち 200 万ドルを占めた。 3. 融資タイプの準借入商品を含む。 4. 持分タイプの準株式商品を含む。 IFC 年次報告書 2018  |  66 加重後および加重前の 2018 年度の投融資サービスの産業別 DOTS 投融資サービスの スコア DOTS スコア IFC 全体 776 (45,275) 59% ファンド 98 (1,700) 64% 2018 年度 製造 58 (2,569) 64% 776 59% 金融市場 216 (26,282) 62% $45,275 71% インフラ 143 (6,454) 62% 2017 年度 保健医療・教育 56 (1,540) 61% 石油・ガス・鉱業 17 (1,351) 59% 828 55% アグリビジネス・林業 100 (3,047) 54% $31,526 69% 観光・小売・不動産 46 (1,277) 48% 2016 年度 通信・情報技術 42 (1,054) 31% 834 58% バーグラフ左側の数値は評価を受けた企業数の合計を、また括弧内の数値は、これら企業向けプロジェク $32,751 68% トの 2018 年度末の IFC 投融資の合計(百万ドル)を示す。    加重前    加重後 バーグラフの左側の加重前の数値は評価を受けた 2018 年度の投融資サービスの地域別 DOTS 企業数の合計を、同じくバーグラフ左側の加重後 の数値はこれら企業向けプロジェクトへの IFC 投 スコア 融資の合計(百万ドル)を示す。 IFC 全体 776 (45,275) 59% 中東・北アフリカ 64 (3,733) 66% 東アジア・大洋州 97 (6,452) 63% ヨーロッパ・中央アジア 140 (10,295) 61% 南アジア 123 (5,330) 59% サブサハラ・アフリカ 158 (8,228) 55% ラテンアメリカ・カリブ海 173 (10,418) 54% バーグラフ左側の数値は評価を受けた企業数の合計を、また括弧内の数値は、これら企業向けプロジェク トの 2018 年度末の IFC 投融資の合計(百万ドル)を示す。 2018 年度のアドバイザリー ・ サービス ・ プログラムの支出 百万ドル 合計 273.4 100% 地域別 サブサハラ・アフリカ 86.4 32% 東アジア・大洋州 45.9 17% 南アジア * 42.0 15% ヨーロッパ・中央アジア 37.3 14% ラテンアメリカ・カリブ海 29.6 11% 中東・北アフリカ * 15.2 6% グローバル 17.1 6% 業務分野別 金融セクター 78.8 29% 投資環境の整備 60.3 22% 産業横断的分野 55.3 20% 官民パートナーシップ 34.5 13% エネルギー・資源の効率 25.3 9% アグリビジネス 19.1 7% * アフガニスタン及びパキスタンは、共に中東・北アフリカ地域に分類されていたが、現在では南アジア に分類されている。2018 年度、これらの国は IFC の承認額のうち 200 万ドルを占めた。 IFC 年次報告書 2018  |  67 世界銀行グループ 2018 年度の 成果概要 IFC 年次報告書 2018  |  68 世界銀行グループの各機関 世界銀行グループは、途上国に資金や知識を提供する世界有数の機関であり、貧困の撲滅、 繁栄の共有の促進、持続可能な開発の推進という共通の目的を持つ 5 つの機関で構成されて います。 国際復興開発銀行(IBRD) 中所得国及び信用力のある低所得国の政府を対象に貸出を提供。 国際開発協会(IDA) 最貧国の政府を対象に無利子の融資や贈与を提供。 国際金融公社(IFC) 途上国の民間セクター向け投資を促進するための投融資、アドバイザリー・サービスを提供。 多数国間投資保証機関(MIGA) 新興国への対外直接投資(FDI)を促進するために投資家や貸手に政治的リスク保険や信用補完を提供。 投資紛争解決国際センター(ICSID) 国際投資紛争の調停と仲裁を行う場を提供。 世界銀行グループによる支援 年度別 単位:100 万ドル 世界銀行グループ 2014 2015 2016 2017 2018 a 承認額 58,190 59,776 64,185 61,783 66,868 b 実行額 44,398 44,582 49,039 43,853 45,724 IBRD 承認額 18,604 23,528 29,729 22,611 23,002 実行額 18,761 19,012 22,532 17,861 17,389 IDA 承認額 22,239 18,966 16,171 19,513c 24,010d 実行額 13,432 12,905 13,191 12,718c 14,383 IFC a 承認額 9,967 10,539 11,117 11,854 11,629 b 実行額 8,904 9,264 9,953 10,355 11,149 MIGA 総引受額 3,155 2,828 4,258 4,842 5,251 援助受入国実施信託基金 承認額 4,225 3,914 2,910 2,962 2,976 実行額 3,301 3,401 3,363 2,919 2,803 a. IBRD、IDA、IFC、援助受入国実施信託基金(RETF)のコミットメント、および MIGA の引受総額を含む。RETF コミットメントは援助受入国実施グラン トの全てを含んでおり、信託基金による活動の一部のみを反映する世界銀行グループのコーポレート・スコアカード記載のコミットメント総額とは異なる。 b. IBRD、IDA、IFC、RETF の支援実行額を含む。 c. データにはパンデミック緊急ファシリティのための 5,000 万ドルのグラントのコミットメントおよび実行額を含む。 d. データには承認された IDA18 IFC-MIGA 民間セクター・ウィンドウの 1 億 8,500 万ドルは含まない。このうち IDA のエクスポージャーは保証 3,600 万ドル、 デリバティブ 900 万ドル。 e. IFC 自己勘定の長期コミットメント。短期融資や他の投資家を通じて動員した資金を除く。 IFC 年次報告書 2018  |  69 世界銀行グループの グローバルな コミットメント 2018 年度、世界銀行グループは引き続き、迅速に成果を収め、援助受入国や パートナーとの関係強化に加え、世界各地の課題解決に向けたグローバルなソ リューションを途上国に提供することができました。 669 億ドル 加盟国の政府・民間企業に対す る融資、贈与、出資、保証など の支援総額。 複数の地域にまたがるプロジェクトやグローバルなプロジェクトを含む。  地域別内訳は世界銀行の分類による。 IFC 年次報告書 2018  |  70 68 億ドル 東アジア・大洋州地域 88 億ドル ヨーロッパ・中央アジア地域 87 億ドル ラテンアメリカ・カリブ海地域 82 億ドル 中東・北アフリカ地域 141 億ドル 南アジア地域 198 億ドル サブサハラ・アフリカ IFC 年次報告書 2018  |  71 IFC の概要 IFC は他に類を見ないような実績を残すことに尽力しています。 IFC ではこれを「付加価値」と呼んでいます。これにより開 発効果の最大化を図ることが IFC 戦略の礎となっています。 73 結果の測定 74 貧困の撲滅と繁栄の共有促進の  支援方法 75 重点分野における IFC のパ  フォーマンス 76 IFC の専門知識 77 業務拠点 78 IFC の業務 82 産業に関する専門知識 84職員と業務 85 開発成果の把握 92 企業責任 94 ガバナンス 95 説明責任 96 グローバル・パートナーシップ 99 ポートフォリオ運用 100 リスク管理 102 IFC の持続可能性枠組み 104 気候関連財務情報開示タスクフォースの  枠組み下での報告 106 持続可能な開発に関する一部の情報の  独立した保証報告書 110 財務パフォーマンスの概要 IFC 年次報告書 2018  |  72 結果の測定 IFC は、新興市場国における持続可能な民間セク ターの発展を促すため、投融資と助言を組み合 わせた独自のサービスを顧客に提供しています。 IFC はこの付加価値を活かし開発効果の最大化に 取り組んでいます。 IFC 年次報告書 2018  |  73 貧困の撲滅と繁栄の共有促進の 支援方法 IFC の業務は、最も必要とされているところに市場を構築し 民間のソリューションを動員するという決意を指針としてい ます。 1 貧困および脆弱性が最も深 刻 な 地 域 を 重 点 地 域 と し、 2 生産性の向上、雇用創出お よびインクルージョン(包 そこでの活動を拡大します。 摂性)につながるよう産業 を強化します。 3 4 気候変動への対応を支援し、 環境的・社会的持続可能性 現地の資本市場を強化し民 間資本を動員します。 を促進します。 IFC 年次報告書 2018  |  74 重点分野における IFC のパフォーマンス 重点地域 指標 2018 年度 2017 年度 中東・北アフリカ 長期投融資承認額合計(百万ドル) $2,032 $8981 南アジア 長期投融資承認額合計(百万ドル) $3,406 $3,3421 サハラ・アフリカ 長期投融資承認額合計(百万ドル) $5,953 $3,513 IDA および紛争地域 IDA 長期投融資承認額合計(百万ドル) $6,837 $4,590 IDA アドバイザリー・サービス・プログラムの割合(%) 57% 63% FCS2 長期投融資承認額合計(百万ドル) $3,721 $902 FCS アドバイザリー・サービス・プログラムの割合(%) 19% 20% インフラ、保健医療・教育、アグリビジネス・林業、および金融市場 インフラ 長期投融資承認額合計(百万ドル) $7,439 $3,122 保健医療・教育 長期投融資承認額合計(百万ドル) $763 $929 アグリビジネス・林業 3 長期投融資承認額合計(百万ドル) $2,640 $2,121 金融市場 長期投融資承認額合計(百万ドル) $8,595 $8,576 気候変動、環境・社会的持続可能性 気候関連の投融資承認額(百万ドル) $8,452 $4,776 アドバイザリー・サービス・プログラムの割合(%) 27% 26% 資金動員 中核資金動員 $11,671 $7,461 承認額合計は、投融資に使われた資金(IFC 自己勘定分)及び他の投資家から動員した資金を含む。 1. パキスタン及びアフガニスタンは、共に中東・北アフリカ地域に分類されていたが、現在では南アジアに分類されている。2017 年度のデータはこれを反映し 修正した。 2. FCS(脆弱・紛争状況)。2015 年度以降、FCS 向け投融資に関する IFC データには、過去 3 年間の会計年度のいずれかの時点で、世界銀行の FCS 調和化リ ストに掲載された国のプロジェクトを含む。これは、投融資プロジェクトが実を結ぶまでに長期間かかるためと、これらの国々に対し長期的な視野で臨むよ う奨励する意図を反映したもの。 3. アグリビジネス・林業には肥料も含む。 IFC 年次報告書 2018  |  75 IFC の専門 知識 IFC は、投融資、助言、そして資金動員を適 切に組み合わせ、民間セクターによる開発 促進を支援しています。 IFC 年次報告書 2018  |  76 業務拠点 民間セクターに特化した世界最大の国際開発 機関である IFC は、約 100 カ国で業務を展開 しています。ある地域で学んだ教訓は別の地 域での問題解決に生かされます。また、IFC は、 現地企業が自社の知識を他の途上国でも活用 できるよう、機会と知識のマッチングを支援 します。 IFC 年次報告書 2018  |  77 IFC の業務 投融資 企業は、IFC の金融商品を利用して、リスク管理や内外の資 IFC の業務には、投融資、助言提供、資産運 本市場へのアクセスを拡大することができます。IFC は商業 ベースで運営されています。IFC の投融資は、途上国におけ 用の 3 つがあります。各業務は互いに補完し る営利目的のプロジェクトのみを対象とし、その商品やサー 合いながら、資金およびグローバルな知識を ビスには市場金利が適用されます。 途上国の顧客に提供します。 これらの商品・サービスは、インフラ、製造、アグリビジネス、 サービス、金融市場といった分野を中心に、様々な業種の顧 これらの業務を総合すると、民間セクターに 客の具体的なニーズに見合うよう設計されています。2018 年 よる機会創出の支援で、IFC に 1 つの大きな 度の IFC 長期投融資は、366 件のプロジェクトを対象に、総 額約 116 億ドルに上りました。また、途上国の民間セクター支 優位性をもたらします。それは、投融資と助 援のために動員した資金は約 117 億ドルでした。 言を付加価値をもたらす形で顧客独自のニー ズに合わせカスタマイズすることができると 商品ライン いうことです。さらに、他の投資家を呼び込 融資 むことも大きな利点です。それにより、新た IFC は通常、償還期間 7 ~ 12 年の融資を自己勘定で実行し、 な資金源やより良い事業の推進方法を顧客に プロジェクトや企業に資金を提供します。また、仲介銀行、リー 紹介することができます。 ス会社、他の金融機関に対し、オン・レンディング(転貸し) を目的とした融資も行います。 IFC は従来、主要先進国の通貨建てで融資を行ってきました が、現地通貨建て商品の組成を優先させるようになり、74 カ 国の現地通貨で投融資を行いました。 2018 年度の新規融資承認額は 98 億ドル(自己勘定分)でした。 出資 出資は、民間企業に必要な設立当初の支援と長期的成長のた めの資金を提供します。IFC は、企業の株式への直接投資の ほか、プライベート・エクイティ・ファンドを通じた投資も 行います。2018 年度の出資承認額(自己勘定分)は合計約  13 億ドルでした。 IFC の出資の比率は通常、企業の株式資本の 5 ~ 20 %です。 投資先企業に対しては、証券取引所への上場を通じて株主の 幅を広げるよう奨励しています。これは現地の資本市場の深 化に役立ちます。また利益参加型融資、株式転換型融資、優 先株式を通じた投資も行います。 貿易金融とコモディティ・ファイナンス IFC のグローバル・トレード・ファイナンス・プログラム (GTFP)は、認可金融機関の貿易関連の支払い債務を保証す るものです。このプログラムは、世界 87 カ国における 287 行 以上の銀行に対し、取引ごとにリスク緩和を行って、貿易金 融に携わる銀行の能力を高めたり補完したりしています。 2018 年度の貿易金融の平均残高は 34 億ドル強でした。 IFC 年次報告書 2018  |  78 協調融資 助言 IFC の協調融資プログラムは、国際開発銀行中、最も古く最 市場を構築し民間投資を喚起するという IFC の戦略において、 大の規模を誇っています。2018 年度の IFC 協調融資額は、 助言の提供は極めて重要です。この活動を通し IFC は、民間 IFC が動員した資金全体の約 3 分の 2 を占めました。 資本を最大限呼び込むうえで必要な条件の整備を支援し、民 間セクターの成長を促します。 2018 年度の IFC 協調融資総額は、B ローン、パラレルローン、 MCPP ローン、ストラクチャード A ローン、アンファンディッ このことから IFC はより戦略的なアプローチへ移行しました。 ド・リスク・パーティシペーション(URP)など、総計約  世界銀行グループの国別あるいはセクター別の戦略で特定さ 77 億ドルに達しました。商業銀行、機関投資家、開発金融機関、 れた最大のニーズにアドバイザリー・プログラムを体系的に 新興国の中央銀行などがこれに参加しました。2018 年度末の 連動させます。IFC は、最貧国および世界の紛争の影響を最 協調融資ポートフォリオ残高は 162 億ドルでした。 も大きく受けた地域を中心に、顧客が必要とする資金を呼び 込む高い効果をもたらすプロジェクトの立案を一段と重視し 協 調 融 資 を 通 じ て IFC が 提 供 し た 融 資 の 40 % 以 上( 合 計  ていきます。 35 億 7,000 万ドル)が IDA 融資適格国に向けられました。 • 民間の投資家やパートナーの呼び込み、新規市場への参入、 デリバティブおよびストラクチャード・ファイナンス そしてそのインパクトの向上を図ることで企業を支援しま す。また、カスタム化した市場情報を提供し、企業のパフォー IFC は顧客に対し、ヘッジ目的のみにデリバティブ商品を提 マンスと持続可能性の改善のため助言を行います。 供しています。為替リスク、金利リスク、あるいは一次産品 価格の変動リスクをヘッジする目的で、顧客企業が国際デリ • 競争力と生産性を強化するため、グッドプラクティスと基準 の導入で業界を支援します。 バティブ市場にアクセスできるようになれば、当該企業の信 用強化と収益向上が可能になります。IFC は通常、リスク管 • 高品質のインフラと基礎的サービスへの市民のアクセスの向 上のため、官民パートナーシップの構築、そして民間投融資 理商品の提供に際し、新興国の民間企業と市場の間の取次ぎ を促す改革の実施で各国政府を支援します。 役も務めます。さらに、国際資本市場や現地資本市場で資金 を集め金融リスクの管理を図る顧客に、ストラクチャード・ IFC の助言チームは経験豊かな専門家を擁しており、助言専 ファイナンス商品も提供しています。IFC は、信用を部分保 門家の約 80 %が現地を拠点としています。2018 年度、IFC 証することで、顧客の債券市場へのアクセスを可能にしまし の助言ポートフォリオは 15 億ドルに拡大し、約 100 カ国で た。さらに、証券化を取りまとめ資本市場の投資家向けにこ 741 件のアドバイザリー・プロジェクトを行っています。IFC れを発行する点でも顧客を支援します。 のアドバイザリー・プログラムの 57% が IDA 適格国、19 % が脆弱国家で行われ、27% が気候に関連したものでした。 ブレンド型融資 IFC は、本来ならば資金調達が困難であろう高い開発成果を 企業との協調的取組み もたらすプロジェクトのために必要な民間資金を呼び込む(ク アグリビジネス: 効率的なバリューチェーンの構築、食糧安 ラウドイン)ため、複数の補完的ツールを活用しています。 全保障の確保、小規模農業事業体やコミュニティへの経済・ 通常開発パートナーから譲許的資金を調達し、これを IFC お 社会・環境面の利益の強化などに努めることで、企業の生産 よび IFC の共同投資家の資金と組み合わせます。ブレンド型 性と基準の向上を支援します。 融資は、初期費用の節減やプロジェクトのリスク緩和に役立 ち、革新的な投資を可能にし商業投資への道筋をつける実績 インフラと天然資源: 地域コミュニティに利益をもたらしプ を構築します。IFC の歴史を通し、この枠組みを気候変動、ア ロジェクト・リスクを緩和することで企業を支援します。 グリビジネス・食糧安全保障、中小企業向け金融という 3 分 野で利用しています。一方で、IDA18 IFC-MIGA 民間セクター・ コーポレート・ファイナンス・サービス: 新規市場への参入、 ウインドウ(27 ページ参照)の導入が、他の多くのセクター 投資家の呼び込み、複雑なプロジェクトの立案で企業を支援、 を支援するための機会をもたらしました。ブレンド型融資へ 合併や買収、パートナーシップの構築に関する助言を行い  の我々のアプローチは、原則に基づいた賢明なもので、市場 ます。 の失敗に対処し、市場の歪みを回避するとともに、透明性を 維持し開発成果の向上を狙いとしています。2018 年度、IFC エネルギーおよび水に関する助言: パフォーマンスの向上と は、ドナーからの譲許的資金 2 億 1,800 万ドル以上を承認し、 環境の持続可能性の改善のため、エネルギーと水のより効率 民間投融資 15 億ドルを取り付けました。 的な利用で企業を支援しています。また、再生可能エネルギー 市場の発展の加速と近代的なエネルギーサービスへのアクセ スの向上に取り組んでいます。 IFC 年次報告書 2018  |  79 グリーン・ビルディング: 企業がエネルギー、水、資材を効 政府との協調的取組み 率的に利用するような建物の建築を行う際のツールおよびト レーニングを提供します。また、政府による関連政策の枠組 官民パートナーシップ: 地域のニーズに合わせた PPP の設計 みの構築を支援し、グリーン金融商品の立ち上げを目的とし と実施で政府を支援し、インフラのボトルネックの解消と国 て銀行と協同します。 の開発目標の達成を支えます。 中小企業とバリューチェーン: 中小企業のスキルおよびパ 金融セクター: 頑強かつ透明で円滑に機能する金融システム フォーマンスの強化を支援し、相対的に規模の大きい企業の と資本市場の構築で、政府および民間セクターと連携します。 サプライネットワーク・流通ネットワークへの参画能力を改 投資環境の整備: 投資と成長を促し雇用を創出する改革を通 善します。また、繊維セクターのサプライチェーンの労働環 じて、ビジネス環境の改善を支援します。 境の改善と競争力の強化で、企業および政府に助言を行い  ます。 2030 年水資源グループ: 投資ニーズを特定し、渇水という困 難な課題で改革を推進するため、政府と市民社会、そして民 ジェンダー平等: 女性の雇用、定着、昇進の改善を目指し、 間セクターが一体となった取組みを後押しします。 企業と連携します。また、女性の金融サービス、テクノロジー、 情報および市場へのアクセスの向上も支援します。 アセット・マネジメント社 戦略的ビジネス・ソリューション: 事業上の複雑な課題の解決、 革新的なプログラムの組成、新たな市場機会の創出で企業を IFC の全額出資子会社である IFC アセット・マネジメント社 支援します。 (AMC)は、途上国市場やフロンティア市場への事業資金の 動員と運用に携わります。AMC は、投資家が、IFC の新興国 コーポレートガバナンス: コーポレートガバナンスを向上さ 向け投資案件に他には類を見ないような手法でアクセスでき せ、資本へのアクセス拡大、リスク緩和、経営陣による不適 るようにし、さらにそうした市場への長期資金の供給量を高 切な運営の防止措置導入で企業を支援します。 めるために 2009 年に設立されました。AMC は IFC の開発 成果を向上させるとともに、IFC のグローバルプラットフォー 環境・社会リスク管理: 企業の長期的成長を確保するため、 ム、および投資基準を活用することで投資家に利益をもたら 環境・社会リスク管理に関する事項を業務に組み入れるにあ すことが可能になります。 たり支援を行います。 2018 年 6 月 30 日現在、同社は IFC からの約 23 億ドルを含 金融機関・ファンドとの協調的取組み め約 101 億ドルを調達しました。AMC は、政府系ファンド、 年金基金、開発金融機関など様々な機関投資家の為に、エク 金融機関: 中小企業融資、ジェンダー、住宅金融、持続可能 イティ、デット、ファンド・オブ・ファンズ商品など合計 12 なエネルギーなどの分野において、リスク管理の強化と提供 件の投資ファンドを運用しています。 する商品の多様化で顧客を支援します。さらに、金融サービ スへのユニバーサルアクセスの促進、資本市場の強化、信用 AMC が運用するファンド 調査機関や担保登記所の確立にも力を注ぎます。 資本増強ファンド ファンド・マネージャー: フロンティア市場でのプライベート・ エクイティ業界の育成を助け、ファンド・マネージャーやファ IFC 資本増強ファンド(総額 30 億ドル)は、13 億ドルの株 ンドの投資先である中小企業に助言を提供します。 式ファンドと 17 億ドルの劣後ローンファンドという 2 つのサ ブファンドで構成されています。このファンドは、システム 上重要な新興国の銀行を強化して、金融情勢の悪化や景気後 退局面での対応力を高めるために 2009 年に設立されました。 2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は合計 28 億ドル(投資 案件 41 件)でした。 IFC 年次報告書 2018  |  80 IFC アフリカ・ラテンアメリカ・カリブ海( ALAC) IFC グローバル新興市場( GEM)ファンド・オブ・ ファンド ファンズ 2010 年に立ち上げられた ALAC ファンド(総額 10 億ドル) 2015 年に立ち上げられた GEM ファンド・オブ・ファンズ は、サブサハラ・アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ海地域 (総額 8 億ドル)は、主に、新興市場とフロンティア市場の の様々なセクターで出資と株式関連投資を行います。2018 年 様々なセクターの成長企業に主眼を置くプライベート・エク 6 月 30 日現在の投資承認額は合計 8 億 7,900 万ドル(投資 イティ・ファンドへの投資に加え、このような企業に直接投 案件 38 件)でした。 資も行います。2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は 3 億  9,700 万ドル(投資案件 18 件)でした。 アフリカ資本増強ファンド IFC 中東・北アフリカ( MENA)ファンド このファンド(総額 1 億 8,200 万ドル)は、システム上重 要なアフリカの商業銀行に投資するために 2010 年に設立さ 2015 年に立ち上げられた総額 1 億 6,200 万ドルのこのファン れました。2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は合計 1 億  ドは、中東・北アフリカ地域で出資と株式関連投資を行います。 3,000 万ドル(投資案件 8 件)でした。 2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は 5,200 万ドル(投資案 件 3 件)でした。 IFC カタリスト・ファンド 女性起業家デットファンド 2012 年に立ち上げられたこのファンド(総額 4 億 1,800 万 ドル)は、新興市場で気候変動への取組みに革新的な方策を 2016 年に立ち上げられた女性起業家デットファンド(総額 1 立てる企業の成長資金を提供するファンドに投資するほか、   億 1,500 万ドル)は、新興市場の女性が所有する中小企業に このような企業にも直接投資を行うこともあります。2018 年  転貸を行う商業銀行に対しシニアローンを提供します。この 6 月 30 日現在の投資承認額は合計 3 億 8,200 万ドル(投資 ファンドは、ゴールドマン・サックス社の 1 万人の女性イニシ 案件 19 件)でした。 アティブと IFC が 2014 年 3 月に共同で立ち上げた女性起業 (総額 6 億ドル)の一部となっ 家機会ファシリティ(WEOF) IFC グローバル・インフラストラクチャー ・ ファンド ています。2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は 8,700 万ド ル(銀行 8 行)でした。 2013 年に立ち上げられたこのファンド(総額 12 億ドル)は、 IFC と共同で新興国のインフラ ・ セクターに出資や株式関連 IFC エマージング・アジア・ファンド 投資を行います。2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は合計 6 億 6,200 万ドル(投資案件 21 件)でした。 IFC エマージング・アジア・ファンド(総額 6 億 9,300 万 ドル)は、アジアの新興市場で全セクターを対象に出資と準 中国・メキシコ・ファンド 出資を行う目的で 2016 年に立ち上げられました。2018 年  6 月 30 日現在の投資承認額は 9,000 万ドルでした(投資案件  2014 年に立ち上げられた 特定国を対象とするこのファンド 3 件)。 (総額 12 億ドル)は、メキシコで IFC とともに出資、準出資、 メザニン投資を行います。投資の対象は、主にインフラと石 油・ガス・セクターですが、製造、アグリビジネス、サービス、 銀行といった他のセクターも含まれます。2018 年 6 月 30 日 現在の投資承認額は合計 2 億 7,000 万ドル(投資案件 3 件) でした。 IFC 金融機関成長( FIG)ファンド FIG ファンド(総額 5 億 500 万ドル)は、IFC 資本増強ファ ンドの後継ファンドで、新興国の金融機関に対し出資や株式 関連投資を行います。2018 年 6 月 30 日現在の投資承認額は 1 億 3,300 万ドル(投資案件 4 件)でした。 IFC 年次報告書 2018  |  81 産業に関する専門知識 アグリビジネス・林業 アグリビジネスは貧困削減で重要な役割を果たします。農業 セクターは、多くの途上国で GDP と雇用の少なくとも半分を 持続可能な民間セクター開発で IFC が主導的 占めるケースが多いことから、このセクターは IFC の優先課 役割を果たしてきた背景には、その特別な利 題となっています。 点が挙げられます。それは、新興国の企業の IFC は環境面で持続可能であり社会面でインクルーシブな形 成功と発展のための支援において、60 年に で、農産物への需要に応える民間セクターを支援します。顧 わたり蓄積された IFC の深遠で幅広い知識 客が、農家に対し在庫、種、肥料、農薬、燃料の購入資金を です。 融資できるよう、当該顧客に運転資金借入枠を提供します。 また貿易を振興しコスト削減を図るため、倉庫や冷蔵施設な どのインフラ向け投融資も行います。さらに作物の持続的生 IFC は、失業、気候変動、食糧・水の安全保 産が可能な土地となるよう、技術移転や最善の資源利用法を 障といった開発をめぐる今後の最大の課題に 促して生産性の向上も支援しています。 取り組むべく、グローバルな産業に関する知 2018 年度のアグリビジネス・林業向け新規長期投融資の承認 識を活用しています。 額は合計約 9 億 5,600 万ドル(自己勘定分)でした。 金融機関 健全かつインクルーシブで持続可能な金融市場は、資源の効 率的配分を可能にするため、開発には不可欠な存在です。IFC と金融仲介機関との協働作業は、金融機関と金融制度全般の 強化に貢献しました。この協力により、IFC が単独で達成で きる数を遥かに超える多数の零細 ・ 中小企業への支援が可能 になりました。 金融仲介機関を通すことによって、IFC は、女性所有ビジネ スや気候変動などの戦略的優先課題であるセクターや、脆弱 国家のような支援の立ち遅れた地域、さらに住宅、インフラ、 社会サービスといった分野で、関与をいっそう深めるよう金 融仲介機関に奨励することが可能になります。 2018 年度の金融市場向け新規長期投融資の承認額は合計約 55 億ドル(自己勘定分)でした。 保健医療及び教育 保健医療と教育は、基本的人間ニーズを満たす重要な要素で す。しかし、途上国では依然として多くの人々が、保健医療 や教育の機会を享受できていません。 貧困削減と繁栄の促進のためのあらゆる戦略の中核に位置す るのが、保健医療・教育へのアクセスの拡充です。IFC は、保 健医療およびライフサイエンス分野の企業に対し投融資を行 い専門知識を共有するとともに、管理運営および臨床基準の 改善、政府政策の立案支援や官民連携の支援を行います。教 育分野では、民間企業が公的セクターによる活動を補完し、 子供や青年、成人のために、より多くの機会を創出できるよ う支援しています。 IFC 年次報告書 2018  |  82 IFC は、民間医療と教育の分野で最大規模の投融資を行う国 石油・ガス・鉱業セクターにおける IFC の使命は、持続可能 際機関です。2018 年度の保健医療・教育向け新規長期投融資 なエネルギー資源を促進する一方、この恩恵を途上国で実現 の承認額は合計約 7 億 3,900 万ドル(自己勘定分)でした。 するための助力となることです。IFC は民間セクターの顧客 に投融資と助言を提供しますが、政府に対しても効果的な規 インフラ 制の導入や、この産業のバリューチェーン全体での運営能力 の強化に貢献しています。 近代的なインフラの整備は、経済成長を促し、生活水準を高 めるほか、急激な都市化や気候変動など、台頭しつつある困 IFC はこうした産業への民間投資を支援し、地元の地域社会 難な開発課題に取り組むための機会となります。 が実益を享受できるよう尽力しています。2018 年度の同セク ター向け新規長期投融資の承認額は総計 9,700 万ドル(自己 インフラはまた、民間セクターが大きく貢献できる領域でも 勘定分)でした。 あり、多数の利用者に基礎的サービスを効率的かつ経済的に、 しかも採算をとりながら提供することができます。IFC の主 通信・情報技術 眼は、革新的で強い影響力をもち、幅広い普及が可能なビジ ネスモデルを携えた民間のインフラ・プロジェクトを支援す 近代的な情報・通信技術の進歩により、貧しい人々もサービ ることです。 スや資源に容易にアクセスできるようになりました。こうし た技術は、機会の拡大、市場・機構のさらなる効率化に寄与 IFC は電力、輸送、水へのアクセス拡大に役立っているほか、 します。IFC はこのような技術の利用度を高め、また、近代 官民パートナーシップに関する助言も政府に行っています。 的な通信インフラの整備、IT ビジネスの育成、温暖化防止技 さらに、都市インフラや関連サービスの改善にも取り組んで 術の開発に力を入れる民間企業への投資を促進しています。 います。リスクを緩和し特殊な金融構造をした商品の組成な ど他の機能も活用しています。2018 年度のインフラ・セクター また、国境を越えて他の途上国に進出する顧客を支援してい 向け新規長期投融資の承認額は合計約 20 億ドル(自己勘定分) ます。2018 年度の同セクター向け新規長期投融資の承認額は でした。 総計 2 億 700 万ドル(自己勘定分)でした。 製造 観光、小売、不動産 製造業は途上国での機会創出と貧困緩和で重要な役割を果た 観光、小売、不動産の各セクターは、途上国の雇用創出、税収、 します。製造業に携わる IFC 顧客は、他のセクターの顧客よ 経済成長に大きく貢献します。 り多くの雇用を創出し、またこれを維持する傾向にあります。 IFC は途上国においてこれら 3 セクターの強化に努めていま IFC は、化学品、建設資材、省エネ型機器、輸送機械など、 す。IFC の投融資は、観光客や出張者向けの高品質のホテルが 製造業での活動を拡大しています。また、新製品・新市場を 不足している地域でのこうした重要なインフラの発展を促し 開拓する企業や、国際競争力をつけるためにリストラや近代 ます。IFC は小売部門の顧客と連携し、雇用の創出、税基盤 化を進めている企業にも投融資や助言を行います。 への貢献、地元銀行の事業能力の構築、インフラの改善、労 働基準の改善に取り組んでいます。また、手頃な価格の住宅 これらの産業には、炭素排出量が最も多いセクターが含まれ や商業用不動産を増やすため不動産企業にも投融資を行って ているため、排出量とエネルギー消費量の削減に役立つ設備 います。 投資などの立案・実施で顧客を支援しています。 2018 年度の観光、小売、不動産向け新規長期投融資の承認額 2018 年度の製造セクター向け新規長期投融資の承認額は総計 は総計 7 億 6,400 万ドル(自己勘定分)でした。 5 億 3,600 万ドル(自己勘定分)でした。 石油・ガス・鉱業 世界の多くの最貧困国にとって自然資源採掘産業は欠かせな い存在です。この産業は、雇用、エネルギー、政府歳入、そ して地元経済にもたらす他の様々な恩恵の重要な源泉となっ ています。特にアフリカでは、こうした産業に大規模な投資 を持続可能な形で行えば、それに等しい規模の経済発展を期 待することができます。 IFC 年次報告書 2018  |  83 職員と業務 IFC の組織風土には、途上国世界で最も脆 弱な立場にある人々の貧困を緩和し、これ らの人々のために機会を創出するという IFC のコミットメントが表れています。 IFC 年次報告書 2018  |  84 開発成果の把握 IFC は、民間セクター業務における開発成果 の測定で先陣をきる存在となってきました。 IFC は、直接的な開発成果の測定でコーポレー ト・ターゲットを導入した数少ない国際金融 機関の 1 つです。IFC の活動実績の測定は我々 の活動に不可欠です。IFC の戦略が成果を上 げ、IFC と顧客の活動が支援を最も必要とし ている人々や市場に届いているかどうか、実 態を把握することが極めて重要です。 開発成果の評価と結果測定システム IFC は、毎年高い開発成果をあげ我々のパフォーマンスを改善 するための業務指針といえる包括的なシステムを開発しまし た。このプロセスの第一段階では、国別診断・セクター別診断、 そして最優先課題と潜在的なプロジェクトの特定を行います。 これは、予測される開発成果の評価で強化されますが、この 評価は同時にプロジェクトの選定と設計の情報源となります。 さらにこれは、プロジェクトの実践結果を定期的にモニタリ ングし、最終的に実際の成果を確認するとともに教訓を導き 出すため、診断が可能な段階に入ったプロジェクトの選択性 評価を行うことで強化されます。 診断: 第一に、特定の国の民間セクターのニーズの診断を行いま す。IFC は新たなツールである国別民間セクター診断(Country Private Sector Diagnostics: CPSDs)を導入、民間セクター への投融資にかかる制約を明確にし、民間セクターの関与で最 開発成果の評価のため 1 の「端から端まで」の 診断 重点セクターとプロジェクト選定 サポートシステム の情報源;国別の優先事項を特定 2 3 4 プロジェクト 結果の測定 評価 の評定 成果を特定し教訓 学習を促し事後の プロジェクト を導き出す 説明責任を向上さ の選定と事前 せる 計画 予測される成果 測定&モニタリング モニタリング / フィードバック IFC 年次報告書 2018  |  85 大の可能性を秘めたセクターを特定するとともに、開発の優先 モニタリング:成果を特定し教訓を導き出す 課題の推進に資する活動を提言します。このアプローチにより、 世界銀行グループ、加盟国政府、そしてパートナーは、開発課題 複数の段階からなるアプローチを活用する我々の結果測定シ を特定しこれに対する具体策を講じることができます。 ステムは、新たな事業に関する決定を支えモニタリングと評 価の価値を高めることにより、世界銀行グループの 2 大目標 IFC は、世界銀行と密接に連携し対ガーナ及びカザフスタン の達成に向けた IFC の活動を支えています。2006 年から IFC CPSD を完了し、他の 13 カ国でも CPSD を開始しました。 は DOTS を活用し、開発成果の追跡を行っています。DOTS は、 今後 3 年間で一段とこの面での活動を進めていきます。 IFC の投融資顧客企業の全てのパフォーマンスをモニタリング し評価するための枠組みです。今後数年間かけ AIMM システ AIMM:プロジェクトの選定と設計を改善する ムは、DOTS システムのうちの関連する要素を積極的に取り 入れていき、成果測定への「端から端まで」の徹底したアプロー 2017 年、IFC は新たにプロジェクトの成果の評価のための チを構築していきます。 ツールを導入しました。この「開発効果測定フレームワーク (AIMM)」は、IFC の活動の成果の測定枠組みを強化するもの AIMM システムの大きな特徴として、事前のプロジェクト評 です。このシステムの下、プロジェクト案件は予想される「事 価と結果測定の分析結果を即時に結び付けることができる点 前の」開発効果を基に評価され選定されます。このアプロー が挙げられます。AIMM システムは証拠ベースのシステムで、 チにより、我々は野心的ながらも達成可能なターゲットを設 予測される開発成果の推計値が、モニタリングの指標と明白 定し、開発成果で最大限の可能性を秘めたプロジェクトを選 にリンクしています。AIMM システムでは、事前評定の根拠 定するとともに、最適なプロジェクト設計を行うことができ となったあらゆる要素について、それぞれに関連した追跡指 ます。このシステムを導入したことで、IFC は高い開発成果 標が少なくとも 1 つ設定されています。 をもたらし財務面でも確実なリターンを期待できるプロジェ クトを選択することができるようになりました。今後もこの 評価:証拠を示し説明責任を向上させる システムの改善に努めていきます。 評価が可能となった、あるいは完了したプロジェクトの評価 AIMM システムにより IFC は、プロジェクトの成果と市場創 は、成果評価枠組みの最後の要素です。毎年、IFC は評価が 出への貢献も評価することができます。まず、雇用主、顧客、 可能となった投融資業務や完了したアドバイザリー・プロジェ サプライヤーを含めた投資の受益者への影響を診断します。 クトの一部について自己評価を行います。こうして導き出さ また、経済面・社会面といったより広範な効果についても検 れた評価は、IFC の総合的なパフォーマンス評価の基盤となり、 証します。このシステムにより IFC は、競争力、頑健性、市 また、セクター別、項目別、及び地域別の評価に反映されます。 場内・市場間での統合、包摂性、そして持続可能性を促進す その後、独立評価グループがこうした評価を検証します。 ることで、当該プロジェクトがどのように IFC の市場創出に 向けた取り組みの目標を推進することができるのかを検証す また、IFC は、評価が可能となったプロジェクト、あるいは ることができます。 プロジェクトグループの詳細な評価も行います。2007 年には、 深刻な知識のギャップを解消すべく、評価へのより戦略的な 2018 年、IFC は全ての新規プロジェクトについて AIMM 枠 アプローチを採用しました。業務を実践するうえでの課題や 組みを用いた評価を開始しました。モニタリングを含む過程 我々の仲介の実効性に影響する問題などに焦点を当て、27 件 では開発結果追跡調査システム(DOTS)を活用して います。 の評価を行うとともに応用研究を実施しました。これにより、 アドバイザリー・サービス向けの AIMM システムは、2019 個々のプロジェクトを超えたセクターレベルでの IFC の影響 年度中に開発する予定です。 をについて分析することができます。また、業界戦略や実践 に反映できる有益な教訓も導き出します。 たとえば、IFC のブレンド型融資のファシリティのひとつであ る世界農業食糧安全保障プログラム (Global Agriculture and Food Security Program: GAFSP)の評価は、投融資とアドバ イザリー・サービスを組み合わせるといった IFC の独自のア プローチが、IDA 融資のみの適格国(IDA-only 国)の農産物 市場に大きな価値をもたらしたとの分析を示しました。さら に IFC の商業ベースの融資と GAFSP の譲許的資金をブレン ドすることで、IFC は、リスクが高すぎると投資家が判断す るケースが多い国において新規の顧客や市場を支援すること ができました。 IFC 年次報告書 2018  |  86 2017 年 度、GAFSP が 支 援 し た プ ロ ジ ェ ク ト は、 貧 困 率 が 結果測定のソートリーダーとしての IFC 高く深刻な食糧不足に悩まされていた国々の 87 万 4,000 戸 の農家に恩恵をもたらしました。また GAFSP による約 2 億 IFC は、民間セクター業務のモニタリングと評価で、国際開 5,000 万ドルの投融資が合計 16 億ドルに上る投融資の組成に 発金融機関や開発金融機関をリードしています。そのひとつ 重要な役割を果たしました。 の例が、コミュニティ・オブ・プラクティスで、民間セクター 業務の評価を目的に国際金融機関を対象に設置しました。 IFC の南アフリカの出力 100 メガワットの集光型太陽熱発電 所(CSP)建設プロジェクトであるアベンゴア(Abengoa) 2018 年 3 月、IFC はロンドンにて英国の開発金融機関である のカシュ・プロジェクトへの 2012 年の投融資もまた、評価の CDC グループと共に、民間セクターの開発効果の評価に関す 重要性を明白に示しています。クリーン・テクノロジー基金 る第 2 回年次会議を開催、31 の開発パートナー、国際開発金 (Clean Technology Fund:CTF)の譲許的な資金支援も受 融機関、そして国際金融機関が参加しました。会議では、民 けたこのカシュプロジェクトは、サブサハラ・アフリカで民 間投融資の SDGs の実現への貢献を示す明確かつ信頼に足る 間が資金を拠出した初の CSP です。このプロジェクトにより、 証拠を示すことの重要性が強調される一方で、市場創出成果 雇用目標を大幅に上回る 1,700 件の建設関係の雇用と 80 件の の評価という課題も指摘されました。 正社員の雇用が生まれました。また、これにより新たに 3 万 IFC のパフォーマンスと開発効果 3,000 戸の顧客に対応するに十分なエネルギーが作り出され、 年間 30 万 6,000 トン(推計)の二酸化炭素の排出が回避さ 独立評価グループが指摘するように、IFC の開発の有効性の れています。 評価は、投融資・アドバイザリー・サービス共に近年下降傾 向にあります。この落ち込みは、経済成長の減速、一次産品 IFC の開発目標:IFC の戦略を支える 価格の低迷、多数の国での政治的混乱なども反映しています。 IFC の開発目標は、我々のプロジェクトにより達成可能と予測 プロジェクトの選定と監督が弱く、これもその要因の一つと される成果に関連した目標の特定によって、AIMM システム なっています。 を補完することです。これらの目標は、IFC の戦略と整合した IFC は、プロジェクトの選定と実施過程における説明責任の IFC が支援する市場において人々の生活に直接影響を及ぼす 5 強化を含め、こうした問題への対策措置を講じています。IFC つの分野を対象としています。 はまた全てのアドバイザリー・プロジェクトについて半年ご • 持続可能な農業機会の創出 とのポートフォリオの見直しを行い、積極的な運営と迅速な • 保健医療および教育サービスの改善 是正措置の実施に努めています。 • マイクロファイナンスおよび中小企業の顧客のための金融 サービスへのアクセスの拡大 2018 年度、IFC の投融資で良い評価を受けた割合は、2017 • インフラサービスの拡大または向上 年度から 4 ポイント上昇し 59%でした。全てのパフォーマン • 温室効果ガスの排出量削減 ス分野で評価が上昇しました。DOTS スコアは、2009 年~ 2014 年に承認されたもので評価が可能となった 776 の投融資 IFC は、投融資そしてアドバイザリー業務を承認するごとに、 案件を対象としています。 顧客の協力を得て一定期間で達成可能と考えられる開発成果 IFC の投融資の規模が大きいほど評価は高く、71%が良い評価 の推定値を設定します。現行の 3 年サイクル(2017 年度~ を受けました。 2019 年度)の 2 年目で、IFC は 2018 年度の目標に向けたコミッ トメントで大きく前進しました。詳細は IFC のウェブサイト 産業セクターでは、プライベート・エクイティ・ファンドが https://www.ifc.org/developmentgoals をご覧ください。 最も高い評価を受けました。投資の 64%が良い評価を受けて います。観光、小売、建設、不動産セクターへの投融資が最 IFC の SDGS への貢献 大の改善幅を見せました。2017 年度から 14 ポイント上昇し IFC の結果のモニタリングは、2015 年 9 月に採択された国連 48%が良い評価を受けました。これは主に、サブサハラ・ア の持続可能な開発目標(SDGs)と連携しています。なかでも、 フリカ及びラテンアメリカ・カリブ海での DOTS スコアの改 AIMM システムにより、IFC は我々の戦略的目標から世界銀 善を受けたもので、これらの地域でこの分野における IFC プ 行の 2 大目標及び SDGs の達成に焦点を合わせることができ ロジェクトの 3 分の 2 が行われています。 ます。AIMM システムは、SDGs に関連した目標に照らして、 プロジェクトレベルの結果と全体的な結果を測定するよう設 計されています。このアプローチにより IFC は、IFC 及び我々 の顧客の SDGs の達成への貢献に関する報告で、国際金融機 関のなかでも重要な役割を果たすことが期待されています。 IFC の SDGs への貢献についての詳細は https://www.ifc.org/sdgalignment をご覧ください。 IFC 年次報告書 2018  |  87 電気通信、メディア、テクノロジーの分野で DOTS スコアは • モロッコ、モンゴル、ナイジェリア、ヨルダン及びアゼル 悪化しました。この分野の投融資の 31% が良い評価を得まし バイジャンで、5 件の信用調査機関の設立と強化も支援しま  たが、2017 年度から 6 ポイント下落しています。この悪化は、 した。 ラテンアメリカ・カリブ海、ヨーロッパ・中央アジア、及び 南アジアという、顧客の財務パフォーマンスが予測を下回っ ソリューションとサービスの提供: た 3 地域に集中して発生しました。 • オフグリッドの太陽光発電ソリューションを支援する IFC 地域別 DOTS スコアは、中東・北アフリカの投融資が最も良 のアドバイザリー業務により、1,700 万人以上の人々が恩恵 い評価を得ました。同地域の投融資の 66%が良い評価を受け を受けました。 ました。2017 年度から 16 ポイントの改善です。これは、非 • IFC の顧客は、主にサブサハラ・アフリカと南アジアで、9,720 金融セクターの投融資のより力強いパフォーマンスを反映し 万人に電力(発電および送電)を供給しました。また南アジ ています。 ア地域を中心に 1 億 8,670 万人が電話を、主に南アジアで 310 万人がガスを利用できるようになりました。 2018 年度、完了済みアドバイザリー・プロジェクトの 66 % • IFC の顧客は 570 万人の学生への教育を支援しました。また、 が良い評価を受けました。これは 2017 年度から 4 ポイントの アグリビジネスの顧客は、金融・市場へのアクセス改善や持 悪化ですが、それでも IFC のターゲットである 65%を上回っ 続可能な農業慣行の促進を通じ、400 万戸の農家を支援し ています。この評価は、本年度終了した 136 件のプロジェク ました。この恩恵を受けたことで、農家の生産性と収入が伸 トで、開発の有効性の評価を受けることができたプロジェク び、不測の事態への対応能力が高まると期待されています。 トのパフォーマンスを反映しています。 • 新慣行や新技術の導入で企業と協力した結果、資源の効率的 な利用のための技術に関するプロジェクト向けの投融資とし 3 つの地域でパフォーマンスの大きな改善が見られました。 て約 1 憶 2,120 万ドルの投融資が実行されました。 ヨーロッパ・中央アジアが、プロジェクトの 88% を良いと評 • IFC 支援下で政府と民間事業者が結んだ契約数は 17 件でし 価するなど最も高く評価された地域でした。南アジア、サブ た。これらの取引により、610 万人のインフラと医療サービ サハラ・アフリカ、及びラテンアメリカ・カリブ海でプロジェ スへのアクセスが改善され、インフラ向け民間投資として クトのパフォーマンスが悪化しました。 46 憶ドル以上が動員される見通しです。 顧客による開発効果の普及と結果 事業環境の整備: IFC の投融資と助言を受けた顧客は、全世界で多数の人々に • 世界銀行との連携を通し、民間セクターの開発環境の改善、 支援の手を広げていますが、なかには目覚ましい成果を達成 競合的な市場および雇用創出の育成のための 73 件の改革で、 したものもあります(89 ページ参照)。以下はその例です。 35 の中央政府と地方政府を支援しました。うち脆弱国家で の 13 件を含め、51 件が IDA 適格国で実施されました。 金融サービスへのアクセス拡大: • これらの改革の結果、民間セクターの節減額は 8,550 万ド ルに上り、1 億 4,200 万ドル以上の新規投資につながりま  • IFC は、市民や零細、中小企業を対象とした金融機関に投融 した。 資と助言を行いました。こうした金融機関が提供した小口貸 付は約 5,440 万件、中小企業向け貸付は 830 万件に上り、 その合計は約 4,390 億ドルに達しました。また、IFC 顧客が 提供した住宅ローンは 230 万件で、合計 698 億ドルでした。 • デジタル金融サービスのパートナーを支援した結果、現金以 外の小売取引は合計 3 億 6,600 万件以上、総額 100 億ドル を超えました。 • 各国の金融市場を強化するため、担保登記所や信用調査機関 と協力した結果、合計 1,468 億ドルの融資につながりました。 動産を担保に借入を受けることができた零細・中小企業は 30 万 2,000 社を上回りました。 • エネルギー効率のため、アグリビジネス関連の借手及び住宅 セクターに合計で 4 億 4,400 万ドルの融資が行われました。 IFC 年次報告書 2018  |  88 IFC 顧客による開発効果の広がり ポートフォリオ  ポートフォリオ  投資 2016 暦年 2017 暦年 雇用数(百万人)1 2.4 2.5 , マイクロファイナンス・ローン 2  3 件数(百万件) 53.7 54.4 金額(十億ドル) 60.7 73.9 , 中小企業(SME)向けローン 2  3 件数(百万件) 8.3 8.3 金額(十億ドル)  351.1 364.7 貿易金融 4 件数(百万件) 1.8 1.7 金額(十億ドル) 255.9 280.4 普及したサービス利用者数 発電(百万人)5 78.1 79.2 送電(百万人) 24.8 18.0 給水(百万人) 14.3 18.2 ガス(百万人) 59.9 3.1 電話(百万人) 345.3 186.7 患者数(百万人) 34.0 41.2 生徒・学生数(百万人) 4.9 5.7 農家数(百万戸) 3.0 3.7 サプライヤーおよび政府への支払い  財・サービスの現地購入額(十億ドル) 36.6 38.3 政府の収入(節約)への貢献(十億ドル) 14.6 15.8 上記の数値は 2016 年末と 2017 年末(共に暦年)において IFC 顧客が達成した開発効果の広がりを指す。2016 年と 2017 年(共に暦年) IFC 顧客のポー のデータは、 トフォリオの内容が変化するため、厳密な対比は不可能。マイクロファイナンス・ローンと中小企業向けローンの結果にはアドバイザリー・サービスによる貢 献も反映されている。顧客が提供したデータは、様々な形で管理統制がなされているが、ときには推定値であったり、指標の定義が顧客によって若干異なる場 合がある。 1. 雇用に関するデータには、ファンドの被投資会社がもたらした雇用数(合計の 35%)を含む。 2. このデータは、IFC の零細・中小企業に重点を置いた融資を行う顧客金融機関の零細・中小企業向けローン残高を示す。 3. 報告されたマイクロファイナンスと中小企業のデータは、アジアの大手機関からの大規模な拠出を含む。 4. グローバル・トレード・ファイナンス・プログラム(GTFP)の新興国銀行ネットワークから融資を受けた貿易の取引件数と取引額の合計は、2017 暦年に ネットワーク内で活発に業務を進めた銀行のうちの 76%(取引件数)と 79%(取扱額)から得られた実際のデータに基づく。調査書に回答した銀行の数が 異なるため、前年との厳密な対比は不可能。取引数には、IFC が直接保証したものと、同プログラムのネットワーク内の銀行によって実施されたものを含む。 2016 暦年のデータは、調査参加者による前年のデータの修正を反映し改訂された。 5. 2016 暦年に発電により恩恵を受けた顧客の合計は、南アジア地域の顧客 1 社及びラテンアメリカの顧客 1 社のデータ調整に伴い修正された。 IFC 年次報告書 2018  |  89 投融資サービスのパフォーマンス 投融資サービスの地域別 DOTS ス 分野別 DOTS スコア:2017 年度 コア:2017 年度 vs. 2018 年度 vs. 2018 年度 良い評価を受けた割合(%) 良い評価を受けた割合(%) IFC 全体  59% 開発結果 55% 59% 中東・北アフリカ * 55% 66% 環境・社会パフォーマンス 49% 70% 東アジア・大洋州 69% 63% 民間セクター開発成果 59% 70% ヨーロッパ・中央アジア 67% 61% 経済パフォーマンス 56% 52% 南アジア * 49% 59% 財務パフォーマンス 55% 41% サブサハラ・アフリカ 39% 55%    2018 年度    2017 年度 53% ラテンアメリカ・カリブ海 54% 投融資サービスの産業別 DOTS ス 54% コア:2017 年度 vs. 2018 年度    2018 年度    2017 年度 良い評価を受けた割合(%) *アフガニスタンとパキスタンでのプロジェクト。両国は以前は中東・北ア フリカに分類されていたが、現在は南アジアに分類される。2017 年度のデー IFC 全体 タはこの変更を反映し修正済み。 59% 55% ファンド 64% 60% 製造 64% 54% 金融市場 62% 58% インフラ 62% 54% 保健医療・教育 61% 60% 石油・ガス・鉱業 59% 48% アグリビジネス・林業 54% 59% 観光・小売・不動産 48% 34% 通信・情報技術 31% 37%    2018 年度    2017 年度 IFC 年次報告書 2018  |  90 アドバイザリー・サービスの地 アドバイザリー・サービスの業務 域別 DOTS スコア:2017 年度 分野別 DOTS スコア:2017 年度 vs.2018 年度 % vs.2018 年度 * 良い評価を受けた割合(%) 良い評価を受けた割合(%) IFC 全体  IFC 全体 66% 66% 70% 70% ヨーロッパ・中央アジア アグリビジネス 88% 100% 70% 67% 東アジア・大洋州 エネルギー・資源の効率 69% 85% 57% 43% 南アジア * 金融セクター * 65% 75% 93% 77% サブサハラ・アフリカ 産業横断的分野 61% 61% 74% 70% ラテンアメリカ・カリブ海 投資環境の整備 60% 50% 75% 71% 中東・北アフリカ ** 官民パートナーシップ 56% 50% 42% 69%    2018 年度    2017 年度    2018 年度    2017 年度 *アフガニスタンとパキスタンでのプロジェクト。両国は以前は中東・北ア *  上記の「金融セクター」には、世界銀行グループの金融・市場グローバル・ フリカに分類されていたが、現在は南アジアに分類される。2017 年度のデー プラクティス(FMGP )部門の統括チームが実施したプロジェクトを含む。 タはこの変更を反映し修正済み。 IFC 年次報告書 2018  |  91 企業責任 IFC は、国際機関として備わっている多様性の先を行くこと にコミットしています。2018 年、全てのダイバーシティの指 標指数、なかでも、サブサハラ・アフリカとカリブ地域出身 の職員と女性のシニア・プロフェッショナル及びマネージャー IFC の業務の中核に持続可能性を据える―こ レベルでの採用を推進しました。これは、目標値を定めた人 れは IFC の企業責任に関する誓約です。言い 材採用イニシアティブを取り入れたことで実現しました。 換えるならば、我々が顧客に求めるものと同 IFC は、他のトップ企業とともに、ジェンダー平等の経済的 じ環境面・社会面の基準に、自らも責任を負 配 当(Economic Dividends for Gender Equality:EDGE) うということです。IFC の有言実行への誓い の認証の取得に乗り出しました。EDGE は、ジェンダー平   等 に 関 す る 国 際 的 な 最 善 慣 行 の 遂 行 レ ベ ル を 評 価 し ま す。 は、IFC の使命と我々の業務のあり方を結び 2018 年度、世界銀行グループの一員である IFC は、国際金融 つけています。 機関としてはじめて国際的な EDGE 認証を受けました。IFC は人材のパイプラインでジェンダーのバランスを維持し、給 与面のジェンダーの平等を積極的に管理するとともに、ジェ IFC の職員 ンダー平等のための政策と慣行を導入し、インクルーシブな IFC の職員は、革新的なソリューションと国際的な最善慣行 職場文化の育成のためのイニシアティブを実施しています。 を我々の顧客にもたらす我々の最も重要な資産です。職員の 倫理的文化を推進する:IFC は、ポジティブかつ互いを尊重 知識、技術、多様性そして意欲が、IFC に比較優位性をもた する職場環境を推進しています。世界銀行グループは本年度、 らしています。 成果、インテグリティ(高潔性)、尊敬、チームワーク、そし 2016 2017 2018 てイノベーションという 5 つの基本的価値を中心に、グルー 指標 年度 年度 年度 プの行動規範を見直しています。パフォーマンス管理、採用、 正規職員総数 3,757 3,860 3,921 内部コミュニケーション、そして職員に対するトレーニング 米国以外の配属(%) 56.5% 55.9% 54.9% で、こうした価値を強化するためのイニシアティブを展開し 短期コンサルタント・   ています。 臨時職員(FTEs) 904 1,018 1,092 職員の参加指標 72% 75% 75% 職員の能力開発を充実させる:IFC は、リーダーの能力開発 プログラムを実施するリーダーシップとマネジメント・フレー 多様性 ムワークを設置しました。グローバル・ビジネス・リーダー 女性管理職(%) 34.8% 35.5% 39.5% シップ・プログラム(GBLP)とコーポレート・リーダーシッ パート II 管理職(%) 40.6% 38.9% 40.5% プ・プログラム(CLP)という高い潜在力を備えたスタッフ 女性 GF+ テクニカ  を対象とした主要な 2 つのプログラムを用意しています。こ ルレベル(%) 45.7% 46.2% 46.7% うした優れたリーダーを育成するためのプログラムは、内部 サブサハラ地域 / のあらゆるレベルで仕事への精通度を高めリーダーシップを カリブ海地域 GF+(%) 10.5% 10.9% 11.2% 促します。2018 年度 60 人の職員が GBLP 及び CLP を修了 本部での職員 1 人当たり  研修日数 3.35 3.21 2.8 し、新しい任務を通して様々な経験を積むプログラムを通し 現地事務所での職員 1 人  て、職員に指導や助言を行い、組織としての優先課題を推進 当たり研修日数 4.08 3.71 2.95 する 850 人を超える修了生の仲間入りを果たしました。 注:FTE =のべ人数(職員);GF+ =給与等級 GF 以上、すなわち専門職 本年度、エグゼクティブ・スポンサーシップ・プログラムの ダイバーシティとインクルージョンを推進する:IFC の活動は 初の修了生 19 人が誕生しました。このプログラムは、多様 世界中の顧客、すなわちあらゆる人々、場所、言語そしてアイ な人材のパイプラインを構築する一連のプログラムの一環で デアに影響します。このダイバーシティ(多様性)は、95 カ  行われた最新のイニシアティブです。参加者は IFC の人材レ 国・151 の国籍を代表する職員に映し出されています。IFC 職 ビュープロセスを基に推薦されます。参加者は、副総裁とス ポンサー・助言関係を結び、キャリアネットワークを充実さ 員ひとりひとりの独自の洞察や視点が、我々の開発業務の中 せることができます。 核にあります。 競争力のある報酬と福利厚生を確保する:IFC は、世界銀行 グループの報酬枠組みを採用しています。ワシントン本部で 採用される職員の給与体系は米国市場を基準としています。 米国以外の国で採用される職員の給与は、現地の独立市場調 査の結果に従い、当地の競合性に基づいて決められます。IFC は、功績の評価や、パフォーマンスに関する各種の賞など複 数の部分で構成された変動型賞与プログラムを採用していま す。さらに年金プラン、医療保険、生命保険、死亡事故保険、 労働者災害補償、就労不能所得補償保険など、他の組織にひ けをとらない福利厚生を提供しています。 IFC 年次報告書 2018  |  92 職員の給与体系(ワシントン DC) 2018 年 6 月 30 日現在の世界銀行グループ職員の給与体系(税引き後)と、年間の平均給与および平均諸手当(共に手取り額) は以下の通りです。 職階別 階級別 平均 a 最低額 中間額 最高額 職員の割合 平均給与 諸手当 職階 代表的な職位 (米ドル) (米ドル) (米ドル) (%) (米ドル) (米ドル ) GA 事務アシスタント 27,200 38,900 50,600 0.02% 38,995 21,129 GB チーム・アシスタント、  情報技術者 33,200 47,500 61,800 0.23% 46,393 25,137 GC プログラム・アシスタント、 情報アシスタント 40,700 58,100 75,500 6.69% 59,947 32,481 GD 上級プログラム・アシスタン ト、情報スペシャリスト、  予算担当アシスタント 47,900 68,500 89,100 6.21% 74,009 40,101 GE アナリスト 65,200 93,100 121,000 10.44% 85,303 46,220 GF 専門職 85,300 121,800 158,300 21.06% 111,642 60,491 GG 上級専門職 112,800 161,200 209,600 33.68% 155,672 84,349 GH マネージャー、専門職主幹 153,000 218,600 284,200 18.72% 218,903 118,609 GI 局長、シニア・アドバイザー 233,100 291,400 349,700 2.50% 289,412 156,813 GJ 副総裁 278,900 328,100 377,300 0.37% 359,193 194,623 GK 専務理事、長官、CEO 310,000 364,700 419,400 0.08% 408,904 263,497 注:米国市民以外の世界銀行グループ(WBG)職員については通常、WBG 報酬が非課税であるため、職員に支払われる給与は税引き後の金額を基準に設定さ れている。この税引き後の金額は一般に、WBG が給与算定の参照とする組織・企業の職員の税引き後の手取り額に相当する。給与水準の上位 3 分の 1 を満た す職員は比較的少数。 a. 医療保険、生命保険、就業不能所得補償保険、退職金、その他の給与以外の手当を含む。税額控除は除外。 IFC のオフィス 2018 年度、IFC は本部ビルの廃棄物排出量をゼロにするとい う目標に向け大きく前進しました。ビル全体のリサイクルシ IFC の業務による環境への影響を最小限に抑えることが、我々 ステムを改良し、再利用が可能な食品容器を使うプログラム の優先課題です。このことから、IFC は持続可能な手法で IFC を立ち上げ、年間 25 万個の使い捨て容器を除去しました。最 のビルをデザイン・管理するとともに、除去することができ 新の廃棄物の監査結果によると、このプログラムにより、廃 ない排出についてはこれを相殺するよう努めています。 棄物量の合計が推計で 2015 年から 26% 減少しました。さら に、IFC は再生可能なごみをより多く分別し埋立廃棄物との 天然資源を効率的に利用する:IFC の最大のオフィスであるワ 選別を行っていることが、同監査報告により明らかになりま シントン DC の本部ビルは、平方フィートで換算すると IFC した。 のグローバルな不動産の約半分を占めることになります。効 率性向上のための取り組みにより、本部ビルでの電力使用量 持続可能性を念頭において:IFC の不動産のフットプリントの を 2007 年から 18%削減することができました。また、コン 約 60%(平方フィートあたり)が、LEED 認証を受けた、ま パクトな蛍光電球を LED に替え、水の利用や冷暖房システム たはこれに相当するレベルにあります。IFC は、セネガル・ダ の温度設定点の調整も引き続き行っています。2017 年度、こ カールの世界銀行グループのネット・ゼロ・エネルギー・ビ うした省エネプロジェクトにより、およそ 6 万キロワット / 時 ルの新規建設と設計をリードしています。このプロジェクト の電力を節約することができました。 は 2020 年に完了する予定です。また他の IFC の不動産物件 への太陽光エネルギー発電施設の設置の可能性も検討してい ます。 IFC 年次報告書 2018  |  93 クライメイト・ニュートラル(Climate Neural)であり続 25 億 6,000 万ドルは、加盟国 184 カ国により保有されていま ける: 世界で業務を展開する中で IFC はカーボン・ニュート す。加盟国は IFC のプログラムや活動に指針を示します。 ラルな状態を保っています。入手可能な最新のデータである 2017 年度のデータによると、我々のグローバルな業務から排 IFC は民間セクターと協働し機会を最も必要とする場での機 出される炭素排出量は合計で 4 万 3,672 トン(二酸化炭素換 会創出を目指します。1956 年の設立以来、途上国の民間セク 算値)となっており、このうち出張関連が 71%を占めていま ター向け投融資の承認額は総計 2,340 憶ドル(自己勘定分) す。オフィスの電力消費は 23%で、その半分が IFC 本部ビル を上回り、他機関から動員した資金は約 510 億ドルに達して での消費でした。過去 3 年間で IFC の正社員一人当たりの炭 います。 素排出量は 2%減少し、二酸化炭素 8.95 トン相当となりまし 極度の貧困の撲滅と繁栄の共有の促進で、IFC は世界銀行グ た。これは 2018 年度にアップデートされた排出係数を反映し ループの他の機関と緊密に連携しています。 ており、それまでのデータもこれに伴い修正されました。 IFC はプロジェクト 4 件から炭素クレジットを購入しました。 IFC の加盟国―出資国による力強い その選定にあたっては、コミュニティで具体的な開発成果を 支援 あげるプロジェクトを重視しました。そのひとつの例が、チャ ドのイリディミ難民キャンプの住人に太陽光発電の調理器具 加盟国 資本金の割合(%) を提供するというものです。これにより薪の利用を回避でき 米国 22.19 ます。IFC は、本部オフィスの消費量に等しいグリーン証書 日本 6.33 (RECs)も購入しています。また毎年、クライメイト・ニュー ドイツ 5.02 トラル・ナウイニシアティブと、カーボン・ディスクロー フランス 4.72 ジャー・プロジェクトを通し温室効果ガスの排出量を報告し 英国 4.72 ています。詳細は、http://www.ifc.org/footprint をご覧く インド 4.01 ださい。 ロシア連邦 4.01 カナダ 3.17 IFC の世界的業務から発生した炭素 イタリア 3.17 排出量の 2017 年度の合計 中国 2.41 その他 174 カ国 40.25 二酸化炭素換算値(トン) 出張 30,933 理事会 現地事務所での電力消費 5,099 各加盟国は総務 1 人と総務代理 1 人を任命します。IFC の組織 本部での電力消費 4,781 としての権限は総務会に付与されており、総務会はその大半 その他 2,859 の権限を 25 人の理事が構成する理事会に託しています。また 排出量合計 43,672 各理事に与えられた議決権数は、各々が代表する国の出資額 注:世界銀行グループの Inventory Management Plan の下で排出係数は に比例しています。 2018 年に変更となった。 理事は、米ワシントン DC にある世界銀行グループの本部で 定期的に会合を開き、投融資の審査・決定のほか、IFC の運 ガバナンス 営陣に対し全体的戦略についての指導を行います。世界銀行 グループの総裁は IFC の総裁も兼任しています。 世界銀行グループにおける IFC の位置づけ 総裁と長官の報酬 世界銀行グループは、途上国に資金援助や技術支援を行う重 世界銀行グループ総裁の給与は同グループの理事会で決定さ 要な役割を果たしています。その使命は、専門家としての精 れます。IFC の長官の給与は、米国で毎年実施される独立報 神と熱意をもって貧困に取り組み、永続的な成果を上げるこ 酬市場調査の結果に基づき、最高レベルの IFC 職員の給与と とにあります。 世界銀行グループ総裁の給与の中間点とされています。総裁 と長官の報酬は一般に公開されています。 IFC は世界銀行グループを構成する 5 つの機関の 1 つです が、独自の設立協定、資本金、財務構造、運営陣、職員を有 フィリップ・ル・ウエルー IFC 長官の年収は 41 万 9,400 ド する別途の法人です。IFC への加盟は、世界銀行の加盟国に ル(税引き後)でした。 限られています。2018 年 6 月 30 日現在の IFC 払込資本金約  IFC 年次報告書 2018  |  94 説明責任 独立評価グループ 独立評価グループは独立した存在で IFC 理事会に直属します。 その使命は、戦略や将来進めるべき業務の情報面の基盤とな る評価を行い世界銀行グループの全機関を強化し、最終的に は開発効果を向上させることにあります。 IEG は、IFC の活動の結果を評価し改善のための提言を行い ます。IFC の活動の新たな方向性や政策、手順、国別・セクター 別の戦略が十分な情報に基づき策定されるようにすることで、 組織内の学習に貢献します。本年度 IFC と IEG は、アドバイ ザリー・プロジェクトの開発効果を一層向上させるための作 業グループを立ち上げました。 世界銀行グループの活動結果とパフォーマンスに関する IEG による直近の年次報告書では、環境面・社会面への効果に関 する開発効果の指標の評価を重点的に行っています。この報 告書をはじめとする主要な報告書は、IEG のウェブサイト http://ieg.worldbankgroup.org で公開されています。 コンプライアンス・アドバイザー/オンブズマン室 コンプライアンス・アドバイザー/オンブズマン(CAO)室は、 IFC の説明責任を追求する独立したメカニズムで、IFC の影響 を受けたコミュニティは制限なくこれを利用することができ ます。CAO は、環境面・社会面のプロジェクトの結果の改善 と IFC の公への説明責任の向上を目的に、IFC が支援する事 業活動の影響を受けた人々の苦情を、公平かつ客観的にまた 建設的に対処します。 IFC および MIGA の幹部から独立し世界銀行グループ総裁の 直下に置かれた CAO は、その紛争解決部門が柔軟な問題解 決のためのアプローチを駆使し苦情に対処するとともに、IFC のコンプライアンス部門が環境的・社会的パフォーマンスに 関する調査を監督します。また CAO の助言部門は、IFC のパ フォーマンスの総合的改善という目標のもと、環境面・社会 面のより広範な懸念について独立した助言を行います。 2018 年度、CAO は、32 カ国で IFC が行ったプロジェクトに 関連した 55 件のケースに対応しました。IFC と CAO の関係 に関する詳細はウェブサイトをご覧ください (www.cao-ombudsman.org)。 IFC 年次報告書 2018  |  95 グローバル・パートナー 2018 年度、我々のパートナーシップは、以下の開発優先課題 を重視しました。 シップ アフリカでの活動を拡大する IFC と IFC の開発パートナーは、開発資金の IFC のパートナーによるアフリカでのアドバイザリー・プロ グラムへの拠出承認額は前年比 35%増となり、これにより主 最大化に向けた革新的な手法をとり連携して 要な開発課題に対処することができました。 います。開発に係る問題の解決に向け市場創 デンマーク、アイルランド、日本、オランダ、ノルウェー、 出と民間投融資の動員を図る IFC の新規戦略 スウェーデン及び英国が、サブサハラ・アフリカの国々の経 に沿う形で、我々のパートナーシップは多様 済成長と安定性の促進に向けた我々の活動を支援しました。 な機能を果たします。新たなアイデアを生み これらの国々は、紛争の影響を受けたアフリカ国家(Conflict Affected States in Africa: CASA)イニシアティブといった、 出し、裏付けされたソリューションのスケー 以前より存在しているプラットフォームのみならず、ソマリ ルアップを実現します。知識の移転を促し、 ア、エチオピア、モザンビーク、及びケニアでの我々の民間 ビジネス・組織や制度の能力を構築します。 セクター開発プログラムをはじめとする新規の国別のアドバ イザリー事業を通し支援しました。 なかでも気候変動やジェンダー平等といった 分野横断的な課題での活動の効果を向上させ ドイツとノルウェーは、2018 年度に IFC が創設したアフリカ とのコンパクト・プログラム(ISCA)を支援しました。これ るイニシアティブを共に支援するとともに、 は、アフリカ 10 カ国における民間セクターの開発を推進する 民間投融資を最も必要としている地域に資源 ため G20 のアフリカとのコンパクト・イニシアティブを支え を向かわせるために連携しています。 ることを意図しています。さらに、資金拠出と業務上の活動 が相互補完的となるよう、マルチドナーの官民インフラ助言 開発パートナーとの協調的取組み ファシリティー(PPIAF)や他の既存のプラットフォームと 密接に連携していきます。 IFC は、30 を超える政府、20 の財団及び企業、そして様々 な多国籍機関パートナーや機関投資家などと連携しています。 気候変動への革新的なソリューションを拡大する 2018 年度は、英国の外務・英連邦省という新たな開発パート 気候変動への世界的な対処を支援するための我々のパート ナーが加わりました。こうしたパートナーシップが、戦略的 ナーの助言面とブレンド型融資へのコミットメントは、昨年 優先分野を支援する仕組みとして大幅に増加しているブレン から 10 倍以上増加し 5 億 3,600 万ドルに達しました。これ ド型融資などを通し、IFC のアドバイザリー・サービスと投 は記録的な増加です。以下はそのようなイニシアティブの例 融資サービスを支えています(75 ページ参照)。2018 年度、 です: IFC の開発パートナーは、IFC のアドバイザリー・サービス を支えるために 2 億 6,800 万ドルを超える額に、そしてブレ • 新規のカナダ・ IFC ブレンド型気候変動融資プログラム は、 ンド型融資イニシアティブに対し 4 億 6,900 万ドルをコミッ 低炭素で持続可能かつより気候変動に耐性のある経済への移 トしました。 行で、途上国を支援します。 • フィンランド・IFC 気候変動プログラム は、気候変動の緩和、 再生可能エネルギーへの投資、エネルギーの効率性、グリー ン・ビルディング、気候変動対応型農業、及び林業を重点分 野としています。また、途上国の気候変動への適応を支援す る投資も模索します。フィンランドは、気候変動のための返 却可能資金によるブレンド型融資プログラムの設立のため の、最初のヨーロッパの二者間パートナーとなりました。 • ウクライナ・エネルギー効率ファンド は、複数世帯が暮らす 住宅向けビルで管理組合がエネルギー効率のための改築を行 うことができるようにするものです。IFC は、欧州連合及び ドイツと同プログラムへの支援で連携しています。 IFC 年次報告書 2018  |  96 • グリーンボンド・技術支援プログラム は、新興市場国におけ 国際機関と連携する るグリーンボンドの発行を支援します。アムンディの新しい ファンド Emerging Green One を支援しました(49 ペー IFC は、開発金融における民間セクターの役割を強化するため、 ジ参照)。スイスとルクセンブルクは、グリーンボンド原則 広範な課題について主要な国際機関と協力しています。主な の採択、政策改革、資金調達手段としてのグリーンボンドの 国際機関は、国際連合、経済協力開発機構、主要 20 カ国・地 可能性の周知の促進のための資金を提供しました。 域(G20)、先進 7 カ国、国際開発金融機関(MDBs)及び開 発金融機関(DFIs)となっています。 • カナダ・IFC アフリカのための再生可能エネルギー・プログ ラム は、サブサハラ・アフリカで手頃で持続可能なエネル IFC は、途上国における 60 年の経験から導き出した教訓を共 ギー・サービスへのアクセスを拡大し、化石燃料への依存度 有する一方で、強力なパートナーシップを構築してきました。 を下げることを目的としています。カナダはブレンド型融資 我々は、開発成果のための民間セクターのソリューションに で最大の二者間パートナーとなっています。 関するグローバルなアジェンダを構築するとともに、顧客の • グリーンファイナンス・プログラム は、ウクライナにおいて ビジネスモデルが、持続可能な開発目標がもたらす新たな市 再生可能エネルギー・プロジェクトを支えるための金融商品 場機会と一致するよう、顧客と協力してきました。こうした の周知とこれを提供することを重視しています。これにより、 関係は、開発成果をあげるために民間セクターが担う中心的 年間 20 万トンの温室効果ガスを削減もしくは排出を回避で な役割を確認するうえで役立っています。 きると期待されています。オーストリアが同プログラムを支 援しています。 IFC は MDB の ト ッ プ の た め の プ ラ ッ ト フ ォ ー ム を 通 し MDBs と協働しています。このプラットフォームは、経営陣が、 ジェンダー平等を支える MDB システムの戦略的に重要な課題について定期的に協議す 女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi)は、世界銀行グルー る場となっています。主な成果として、民間資金、気候変動ファ プが設立した新規のパートナーシップです。これには 14 カ国 イナンス、ブレンド型融資の動員の定義及び測定の方法の調 の政府、国際開発金融機関 8 行、そして官民両セクターの関 和に加え、開発成果が相互補完的であるよう調整することな 係者が参加しています。IFC は、途上国の女性起業家が直面 どが挙げられます。また、気候変動に対処しインフラへの投 している資金面・非資金面の制約への対処で、We-Fi の資金 資を拡大するためにこうした機関と協力しています。 供与を受けました。この活動は、ブレンド型融資、リサーチ、 2018 年度、IFC は他の MDBs と協力し、共通の測定枠組み アドバイザリー・サービスなどを提供します。 と手法を活用し、MDBs 及び DFIs による民間資金の動員に また、我々は、MENA 女性バンキング・チャンピオン・プロ 関する共同報告書の第 2 弾を公表しました。同報告書によると、 グラムを、スイスの支援を得て新しく立ち上げました。この MDBs と DFIs は、民間投資家から 1,600 億ドル以上を動員 プログラムは、エジプト、モロッコ、そしてチュニジアで金 しました。これには、欧州開発金融機関(EDFIs)による動員 融仲介業者と連携し、女性の起業家を含む女性の金融サービ も含まれています。EDFIs と MDB の経営陣は、民間セクター スへのアクセスの改善を狙ったものです。 プロジェクトのための DFI ブレンド型譲許的ファイナンス の強化された原則を採択し、これを導入することで合意しま  インフラ・セクターを強化する した。 新規プログラムである、韓国・IFC パートナーシップ・プログ ラムに対し韓国は、IFC のアドバイザリー・サービスに対する 同国最大規模のコミットメントを約束しています。同プログ ラムは、世界における情報技術やコミュニケーション技術な どのインフラの主要な分野の制約に対処します。このパート ナーシップにより、電力、輸送、水、廃棄物、公益事業、地 方政府の財政、採取産業、デジタルサービス、官民パートナー シップを含む IFC の助言業務を支援します。 IFC 年次報告書 2018  |  97 開発パートナーによる拠出  IFC アドバイザリー・サービスへの拠出承認額(米ドル換算値:百万ドル) 要約 2017 年度 2018 年度 政府 256.76 192.01 機関・多国間パートナー 8.32 76.34 企業、財団、非政府組織(NGO) 3.07 0.00 合計 268.15 268.35 政府 2017 年度 2018 年度 オーストラリア 62.92 3.05 オーストリア 6.47 8.19 カナダ 0.00 3.78 デンマーク 9.17 5.02 フランス 2.12 0.00 ドイツ 2.62 23.24 アイルランド 0.96 1.08 イスラエル 0.00 0.80 イタリア 5.09 0.00 日本 21.17 6.25 韓国 0.00 9.00 ルクセンブルク 3.98 9.28 オランダ 11.00 4.91 ニュージーランド 4.82 1.24 ノルウェー 0.94 13.72 スウェーデン 0.00 7.12 スイス 68.68 24.89 英国 38.74 70.43 米国 18.08 0.00 合計 256.76 192.01 機関・多国間パートナー 2017 年度 2018 年度 気候投資ファンド 4.70 0.25 欧州委員会(EC) 3.08 50.54 MENA 移行基金 0.54 0.00 TradeMark East Africa (TMEA) 0.00 0.35 女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi) 0.00 25.20 合計 8.32 76.34 企業、財団、非政府組織(NGO) 2017 年度 2018 年度 BHP ビリトン財団 2.57 0.00 ウィリアム&フローラ・ヒューレット財団 0.50 0.00 合計 3.07 0.00 IFC ブレンド型融資への拠出承認額(米ドル換算値:百万ドル) 開発パートナー 2017 年度 2018 年度 カナダ 0.00 310.54 フィンランド 0.00 134.31 英国 36.40 0.00 女性起業家資金イニシアティブ(We-Fi) 0.00 24.20 合計 36.40 469.06 IFC 年次報告書 2018  |  98 ポートフォリオ運用 プロジェクト・レベルでは、投融資やセクターのスペシャリ ストなどを擁する IFC の総合チームが、投融資パフォーマン スと投融資契約書の遵守状況を密接に監視します。この一環 力強い財務結果と開発成果を生むポートフォ で、プロジェクトの進捗状況の調査のための現地視察や、将 来起こりうる問題の早期発見と適切な解決策の策定でスポン リオの策定と積極的な運用が、IFC のポート サーや、必要に応じて政府関係者と積極的に交流します。また、 フォリオ運用へのアプローチの中核的要素で 環境・社会パフォーマンスを体系的かつ時宜を得た形で追跡 す。IFC は地域に根付いた力強いネットワー し、財務結果と開発成果の測定を行います。 クとセクターに関する深い知識を組み合わせ 近年の IFC の出資のポートフォリオの大幅な拡大を受け、IFC ることでこれを実現します。この結果、顧客 は出資に関する新たなアプローチを採用しました。これは、 出資のより穏やかな成長とその選択性を高めることを主眼と や市場との密接な関係を維持しトレンドのモ しています。また、IFC は IFC の開発面での役割が完了した ニタリングと顧客への影響の予測が可能に ダイベストメント(投資の引き揚げ)が可能な資産を特定す なっています。 るために出資ポートフォリオを積極的に見直しています。こ のリバランスは、市場の状況、機会、期待収益とリスクを考 慮した分析の結果であり、必要に応じて定期的に調整されま IFC の経営陣の委員会であるコーポレート・ポートフォリオ す。この新たなアプローチを支えるべく、セクター投資部門 委員会は、約 572 億ドル(自己勘定分)に上るポートフォリ ヘッドを任命します。このポジションは、一元化された監視 オの全体的審査を定期的に行って、その動向とプロジェクト を行い IFC のより大規模で複雑な出資ポジションを効果的に を検証します。この検証作業は、IFC が毎月行う IFC の主要 管理することが求められています。 セクター別・国別の残高に関する詳細な協議により補完され ます。IFC のポートフォリオの四半期ごとの見直しの結果は、 財 政 難 に 陥 っ た プ ロ ジ ェ ク ト に つ い て は、 特 別 業 務 年度末に詳細な分析とともに理事会に提出されます。現地事 局(SOD) が 適 切 な 是 正 策 を 決 定 し ま す。 そ の 際、 同 務所を主に拠点とする IFC の投融資担当チームとポートフォ 局 は、 プ ロ ジ ェ ク ト 開 始 当 初 に 目 指 し た 開 発 効 果 を 実 リオ担当チームは、四半期ごとに融資・出資を含め資産別審 現 す る こ と が で き る よ う、 プ ロ ジ ェ ク ト を 継 続 可 能 と す 査を行って、世界的な審査を補完します。 る こ と を 目 標 と し ま す。 ま た 債 権 者 や 株 主 と プ ロ ジ ェ ク ト 再 建 の 負 担 共 有 を 目 指 す 交 渉 を 進 め 彼 ら に 合 意 を 求 め  コーポレート・レベルでは、ポートフォリオのパフォーマン ます。 ス分析結果とセクターに関する専門知識、地域市場の情報お よび世界のマクロ経済・市場の動向に関する予測を総合し、 積極的なポートフォリオ運用は、事業の決断を下すための正 これを今後の投資に関する決定を行う際に情報として活用し 確な情報を時宜良く捉えることにかかっています。IFC は、 ます。さらに、将来起こりうるマクロ経済情勢を想定して、ポー ポートフォリオの運用をより良く支えるために情報技術シス トフォリオ・パフォーマンスを評価するとともにリスクを テムに引き続き投資していきます。また、ポートフォリオを 特定しこれに対応するため、定期的にストレステストを行い  支えるための体制を、コーポレート・オペレーション・サポー ます。 ト・ユニットを設置するなどして強化しています。これは後 にセクター担当チームと地域担当チームまで拡大される予定 です。 IFC 年次報告書 2018  |  99 リスク管理 財務 IFC は、民間セクターへの融資を行うため、そして IFC のト エンタープライズ・リスクの管理 リプル A 格付にふさわしい十分な流動性を確保するため、国 際資本市場で資金を調達しています。 IFC は新興市場の民間セクターに長期の投融資を行っていま すが、これには、最も困難なフロンティア地域への投融資拡 IFC が発行する債券には、米ドルなどの主要通貨建てベン 大も含まれます。その過程で、IFC は、金融および金融以外 チマーク債、気候変動などの戦略的優先課題を支援するテー の様々なリスクにさらされます。新たなリスクの積極的なモ マ型債券、そして現地の資本市場の育成を支援する新興国通 ニタリングと健全な管理は IFC の使命を達成する上で不可欠 貨建て債券が含まれます。IFC 融資の大半は米ドル建てで行 となっています。 われますが、資金調達源の多様化、借入コストの削減、現地 の資本市場の支援を目的に様々な通貨建てで資金調達を行い  IFC のエンタープライズ・リスク管理の枠組みは、その事業 ます。 活動から生じる財務上の影響と評価に及ぼす影響を慎重に管 理するためのものです。こうしたなか、IFC のリスク管理へ IFC の資金調達プログラムは長年、融資活動と歩調を合わせ の取組みは、IFC のパフォーマンスと戦略的方向性が合致す て拡大してきました。2018 年度の新規の中核資金と短期資金 る一助となるように具体的にデザインされています。 の調達額は合計で約 167 億ドルでした。 IFC が策定したリスク選好ステートメントは、IFC の開発目 標の達成のためにどれほどのリスクをすすんでとるかという 方向性を定めたものです。これらのステートメントは、開発 効果の最大化という IFC の中核的価値観を反映するもので、 財務の持続可能性を確保し IFC ブランドを保護します。 2018 年度の資金調達 金額 通貨 (米ドル換算値) % 米ドル USD 9,106,890,500 54.5% オーストラリア・ドル AUD 1,436,546,360 8.6% 日本円 JPY 815,159,597 4.9% ロシア・ルーブル RUB 239,001,013 1.4% ブラジル・レアル BRL 434,491,970 2.6% トルコ・リラ TRY 1,180,551,179 7.1% インド・ルピー INR 608,468,320 3.6% その他 2,893,671,464 17.3% 合計 16,714,780,403 100.0% IFC 年次報告書 2018  |  100 流動性管理 適正資本と財務能力 貸借対照表上の流動資産は、前年度末に 392 億ドルだったの 健全なリスク管理は、IFC が開発マンデートを全うする際に重 に対し、2018 年 6 月 30 日現在の合計は 389 億ドルでした。 要な役割を果たします。IFC の本来の事業が変動の激しいダイ 流動資産の大半は米ドル建てで保有されています。米ドル以 ナミックな新興市場への長期的投資であることを踏まえると、 外の通貨建て資産保有から生じるエクスポージャーは、米ド IFC は常に財務リスクやオペレーショナル・リスクにさらさ ル建てにヘッジするか、全体として通貨リスクを削減するた れています。 め同一の通貨建ての負債とマッチされます。流動資産の水準 は、市場にストレスが生じた時でも承認額に見合う資金を確 慎重なリスク管理を行い、堅固な資本を備えることで、強固 保するよう決められます。IFC は流動資産を、規定したベン な財務基盤を維持し、経済や金融の混乱時も融資活動を持続 チマークに対して、金利を生む金融商品に投資して運用して することが可能です。IFC の強固な財務基盤は、低い借入コ ます。 ストを実現し、顧客への低利での融資に結びついています。 流動資産のレベルは、通常の計画見通しと市場にストレスが IFC のリスク管理と財務状況の健全性と質の高さは、1989 年 生じた場合にキャッシュフロー要件を満たすことができる十 以来堅持しているトリプル A の格付からも明らかです。 分な資源を確保するために決定されます。また流動性カバレッ IFC の最低自己資本所要額は、IFC のエコノミック・キャピ ジ比率を導入し、IFC の流動性ニーズを分析します。 タルの枠組みに従って評価され、この枠組みはバーゼル協定 財務リスク管理 の枠組みおよび主要な金融業界の慣行とも整合的なものです。 エコノミック・キャピタルは、リスクの共通通貨の役割を果 財務リスクは、(1)包括的方針の枠組み、および(2)財務活 たし、それにより、IFC の様々な投融資商品から生じる損失 動に対するエコノミック・キャピタルの厳格な限度額設定と リスクや他の諸リスクをモデル化し、集計することを可能に いう二段階のリスク枠組みを通じて管理されています。この します。 方針の枠組みは以下 4 つの原則に基づきます。 IFC は、金融界および規制慣行と整合的な形で、以下のリス (1) 高質の資産への投資 クに対するエコノミック・キャピタルを算定します。 (2) 持高/集中度の限度設定を通じた分散化 (3) 市場リスク(クレジットスプレッド、金利リスク、為替リ • 信 用リスク: 顧客の債務不履行または信用格付の格下げに スク)の厳格な限度額設定 よって生じる損失の可能性。 (4) 積極的なポートフォリオの監視 • 市場リスク: 市場の変数(金利、為替レート、株価、一次産 品価格など)の変動によって発じる損失の可能性。 国際金融市場の変化を受け、IFC は、エコノミック・キャピ • オペレーショナル・リスク: 不適切または機能不全に陥った タル(経済的自己資本額)に関する決定を下す際の手法の変 内部のプロセス、人員、システムから発生しうる、あるいは 更などを含め 2018 年度に財務方針の枠組みを強化しました。 外部の事象によって生じうる損失の可能性。 IFC の利用可能な総資源は、払込資本、利益剰余金(特別目 的指定項目と特定の未実現利益控除後)、そして貸倒引当金の 合計で構成されます。現行業務の支援に要する資本を超えた 利用可能資源の余剰金は、IFC ポートフォリオの将来の成長 に利用できるほか、予期しない外部ショックに見舞われたと きのバッファーとなります。2018 年 6 月現在、利用可能な総 資源は 247 億ドル、最低自己資本所要額は 201 億ドルでした。 IFC 年次報告書 2018  |  101 IFC の持続可能性枠組み IFC のパフォーマンス基準 持続可能性枠組みの中核には、持続的な事業推進の手段とし てリスクの回避・緩和・管理で顧客を支える IFC パフォーマ 持続可能性は、企業が事業で成功するうえで ンス基準が存在します。それらは、事業、投資家、環境、コミュ 不可欠です。それは、企業の顧客、周辺コミュ ニティにとって良好な解決策の策定で顧客を助けます。 ニティ、そして幅広い層のステークホルダー IFC パフォーマンス基準は、持続可能な慣行の世界的ベンチ にとっても同様に重要です マークとして認められています。この基準をモデルとした「エ クエーター原則」は、37 カ国で 94 の金融機関が導入してい IFC の調査によると、企業の環境・社会・コーポレートパフォー ます。加えて、輸出入銀行、輸出信用機関など、他の金融機 マンスが良好である場合、その企業は、自己資本利益率、総 関でも IFC パフォーマンス基準が参照されています。IFC は、 資本利益率双方で財務パフォーマンスはより良好となります。 環境・社会リスク管理を融資決定過程に組み入れるため、銀 IFC の顧客の約 90%が、IFC の活動は、その長期的ビジネス 行を指導し能力の育成に努める国際的知識共有グループ(銀 ゴールの達成、ステークホルダーや地域コミュニティとの関 行規制当局と銀行協会で構成)「サステナブル・バンキング・ 係の改善、そしてそのブランドの価値や認識を高めるうえで ネットワーク(SBN)」の事務局でもあります。 極めて重要だとしています。IFC の持続可能性枠組みとコー ポレートガバナンス手法は、企業のそれぞれの目的の達成を IFC パーフォーマンス基準は、顧客による環境・社会リスク 支えます。 評価と、これらリスクの管理・緩和能力、そしてこれへのコ ミットメントを統括する、環境・社会面のデューデリジェン IFC は、業界や他のステークホルダーと協力し顧客が抱える自 ス・プロセスの指針となります。この審査は、顧客の実務と 社のリスクについての理解および管理を援助し、経済的、社 IFC パフォーマンス基準の間に差異があるかを判別して、遵守 会的、かつ環境的に持続可能な民間投融資の機会を広げるこ を確保するための行動計画で合意を得るためのものです。IFC とをサポートします。これは、雇用の創出とインクルーシブ は投融資の全期間を通じてプロジェクトを監督します。 な成長につながります。企業が単独で解決する責任能力を超 えるような、環境・社会・ガバナンスの困難な課題への取組 みにおいて、世界銀行グループの機関全体の能力を活用する ことが期待されます。 IFC は、いかなる投融資の決定においても、信用リスクや財務 リスクに対処する場合と同様の比重と注意を払い、環境・社会・ ガバナンスのリスクに対応します。これにより、開発効果と 財務上の持続可能性のいずれにも、適切な情報に基づいてリ スクを負うことが可能になります。 IFC のパフォーマンス基準 1 リスク管理 2 労働面 3 資源の効率性 4 コミュニティ リスクの予測と、そのあ  労働者を公平に扱い、  エネルギー効率の促進、資源 労働現場の事故や他のプロ らゆる影響の回避、最小化、 安全かつ健全な労働環境の  の持続可能な手法での活用、 ジェクト関連の危険からの  補償 整備 温室効果ガスの排出量削減。 地域コミュニティの保護。 IFC 年次報告書 2018  |  102 統合的ガバナンス 二つ目のツールは、「IFC 透明性および情報公開ツールキット とこれに係るガイダンス」です。新興市場の企業が、そのク 投資家は意思決定において、コーポレートガバナンスを極め ラスで最高レベルの包括的な年次報告書を作成するため支援 て重視します。同時に、企業の環境面・社会面の様々な指標 します。こうした企業の規模と組織の複雑性、事業環境を配 についても同じように注意を払うケースが増えてきました。 慮し、投資家や他のステークホルダーに有益な情報を提供す 戦略的・運営的なあらゆる課題に企業がどのように対処する ることを目的とします。 のか-これを見極めるため投資家は、企業の環境面の問題・ 社会面の問題への対応を注視します。 IFC は、これらの統合的アプローチを投融資を行う企業以外 にも適用しています。また、規制監督者や証券取引所とのア このことから、一貫した手法で、環境、社会、そしてガバナ ドバイザリー活動でも活用し、企業の上場、要件の報告、そ ンス慣行を評価することが不可欠となっています。 の他の開示義務での、より高度な情報公開基準の活用で支援 しています。 IFC は、パフォーマンス基準とコーポレートガバナンス手法 の応用での実績をもとに、新興市場を対象とした実践を目的 として、包括的な市場ガイダンスおよび実践的ツールを開発 しました。 新規ツールのひとつである「ESG プログレッション・マトリッ クス(進捗指標)」は、企業、投資家、規制監視者、コーポレー トガバナンス評価担当者、そして他のステークホルダーを対 象とした、企業の環境、社会、ガバナンス枠組みの評価と改 善を指針としています。ここでは、企業のガバナンス慣行に おいて、最低基準を満たすのみならず、継続的に前進するこ とが重要であることを強調しています。 このマトリックスは、6 つの下記のコーポレートガバナンス・ パラメーターに沿った評価を重視しています。これには、主 要な環境・社会政策と慣行、取締役会の構造と機能、統制環境、 情報公開と透明性、少数株主の扱い、およびステークホルダー・ エンゲージメントのガバナンス(市民社会、企業の活動に影 響を受けるコミュニティを含む)が含まれます。 5 住民移転 6 生態系の多様性 7 先住民 8 文化遺産 強制的な移転の回避と、住む 生態系の多様性とエコシステ 先住民の権利、尊厳、文化の 文化遺産の保護と、関連する 場所を失った人々への影響の ムの保護。 保護 利益の公平かつ公正な共有の 最小化。 推進。 IFC 年次報告書 2018  |  103 気候関連財務情報開示タス 気候変動対策実施計画は、気候変動関連の活動を IFC 業務の 主流に組み込むため、投融資関連各局との協力の下で作成し クフォースの枠組み下での IFC の経営陣が承認しました。IFC は、理事会に対し、気候 変動関連の目標への進捗度を毎年報告しています。IFC の直 報告 近の理事会への報告は 2018 年 6 月に行われましたが、その 際、IFC は気候変動関連ビジネスは 2018 年度の承認額合計の 34 %(自己勘定分)を占めることになると報告しました。2 気候関連の財務情報 年連続で年間の気候変動関連目標を上回ることになり、また 2015 年 12 月、金融安定理事会は、気候関連財務情報開示タ 2020 年度のターゲットも上回っています。IFC は、クリーン スクフォース(TCFD)を立ち上げました。同タスクフォース エネルギー分野を中核に据え投資を増やす一方で、気候変動 は 2017 年 7 月に、企業に対し、気候関連の財務リスクをどの 対応型の農業、グリーンビルディング、そしてグリーンファ ように評価しまたこれをどのように削減するかについての情 イナンスへの投融資も大幅に行ってきました。 報を自主的に開示することを提言しています。これは、TCFD ガバナンス: IFC は、コーポレートレベルで気候変動関連を 枠組みに基づく IFC の初の情報公開ですが、近年我々は、気 重視していますが、これを支援するため、2010 年に気候関連 候関連の投融資及び排出量削減量(ネット)を毎年公開して ビジネス局(CBD)を設置しました。これは、IFC の投融資 います。 のそれぞれについて、環境・社会・ガバナンス面のパフォー 戦略とガバナンス マンス基準-より広く環境面のリスク 1 を含め-の監視を担当 する局の業務を補完します。CBD の役割は、気候変動ビジネ 戦略: IFC は気候変動対策ビジネスへの投融資を他に先駆け スの拡大と未来への投資のための市場の機会の構築を支援す 行うとともに、2005 年に気候変動関連の投融資の追跡を開始 ることにあります。CBD は、気候変動対応セクター、測定基準、 しました。2018 年末までに IFC の承認額の合計の 3 分の 1 以 戦略、政策、及び気候変動ファイナンスの革新的手法を熟知 上が、気候変動関連を対象とするようになりました。2016 年、 した献身的な専門家などから構成されています。 IFC は気候変動対策実施計画 を策定しました。世界銀行グルー プの気候変動の新行動計画の一環である同計画は、(1)2020 組織全体で気候変動に関する業務を一体化するため、IFC は 年までに気候変動関連への投融資を IFC の承認額の 28%(自 クライメイト・アンカー・ネットワークを設置しました。各 己勘定分)まで拡大する、(2)2020 年までに民間資金を年 産業セクター・各地域を担当するアンカーが、担当セクター 間 130 億ドル動員する、(3)気候変動リスクを分析する、(4) や分野の気候変動業務の構築に責任を負います。アンカーは、 効果を最大化する、という 4 要素を IFC の気候変動面での業 所属する局の局長及び気候変動ビジネス局長に報告します。 務の指針として示しています。 リスク管理 この計画は、クリーンエネルギー、グリーンビルディング、 気候に配慮した都市、気候変動対応型の農業、そしてグリー IFC は、気候変動が投資収益、なかでも長期投資の収益にリ スクをもたらす可能性があると考えています。2011 年と 2015 ンファイナンスという 5 つの優先セクターへの気候変動関連 年に、IFC は、機関投資家に係るリスクに焦点を当て、また 投融資の拡大の手法を明らかにします。各分野において、IFC 金融機関に関連する洞察を示した、金融リスクの影響を特定 は市場が動いているところでは現在の市場の可能性を特定し、 するマーサー(Mercer)の研究 2 件を支援しました 2。これ IFC が各セクターにおいてどのように投融資を加速できるか ら報告書により、通常通りのビジネス・シナリオに大きな投 を特定します。また、技術支援の最優先セクターや各セクター 資リスクが存在することが判明しました。以降、気候変動関 の地理的優先度、そしてどこでブレンド型融資が新規市場の 連の投融資の割合を拡大するとともに、主要な新規投融資に 開拓に貢献できるかといったことを含め、この計画で定めた かかる気候変動関連リスクを体系的に評価するためのツール 目標の達成に必要なツールと資源を特定します。 の開発にも取り組んでいます。 物質的リスク: これは、投資に与える気候変動の物質的な影 響がどのように投資収益に影響するかを示しています。IFC は、 現行の環境リスク・社会リスク評価を超え、気候変動の物質 的リスクの分析を IFC の投融資のデューデリジェンスに組み 1. ダウンロード: https://www.ifc.org/wps/wcm/connect/topics_ext_content/ifc_external_corporate_site/sustainability-at-ifc/policies-standards/ performance-standards/performance-standards 2. ダウンロード: https://www.ifc.org/wps/wcm/connect/6b85a6804885569fba64fa6a6515bb18/ ClimateChangeSurvey_Report.pdf?MOD=AJPERES https://www.mercer.com/content/dam/mercer/attachments/global/investments/mercer-climate-change-report-2015.pdf IFC 年次報告書 2018  |  104 込むという試みに着手しました。IFC は、港、河川や水路、道路、 気候変動測定基準:IFC は独自の気候関連活動に関する定義・ 空港、林業、パルプ・紙、保険を含む主要なセクターへの IFC 測定基準を用いて、気候変動関連投融資として適格なプロジェ の投融資にかかる同リスクを評価するツールの導入を進めて クト及びセクターを特定します。他の国際開発金融機関と足 います。2019 年度には、このパイロット事業の結果の分析を 並みを揃えたこれら定義は公表されています 4。 行い、必要に応じアプローチを修正または拡大していきます。 投融資の公表:IFC は、気候変動ファイナンスの承認額を年次 移行リスク: 各国政府の政策と座礁資産のリスクに対処し、 報告書(75 ページ参照)及び国際開発金融機関の気候変動ファ 組織的に気候変動関連事項を投資決定の際に考慮するため、 イナンスに関する共同報告書 5 で報告しています。また、IFC 2016 年 11 月、IFC の経営陣は、特定のセクターへのプロジェ は毎年グリーンボンド・インパクト・レポートを発表してい クトファイナンス投資に炭素価格を導入するというパイロッ ますがこの中で、IFC が発行するグリーンボンドから資金を ト計画を承認しました。これには、こうしたセクターへの投 調達しているプロジェクトの環境面・市場面の影響について 融資では事前にストレステストを行うことや、新規投資につ も報告しています 6。 いてリターンの経済的収益率の計算で炭素価格を用いること などが含まれていました。 排出量の公表:IFC は、気候変動関連投融資に起因する温室効 果ガスの排出量の合計削減量を(ネット)本年次報告書(49 ペー 2018 年 3 月、経営陣は排出量が高い特定のセクターのプロジェ ジ参照)で報告しています。2018 年度の純合計削減量は 1,040 クトファイナンス取引で炭素価格付けを完全に実施すること 万トンで、1 年前の 670 万トンから増加しています。IFC の を承認しました。2018 年 5 月から、IFC は 2016 年の炭素価 パフォーマンス基準 3 の下、プロジェクトの排出量が二酸化 格付けに関するハイレベル委員会の報告書 3 に従い、火力発電、 炭素換算で想定年間 2 万 5,000 トンを超える場合は、全ての セメント、化学製品で、二酸化炭素換算で 2 万 5,000 トン以 プロジェクトについて環境・社会面のレビューの要旨(ESRS) 上の年間排出量を伴うプロジェクトファイナンス取引の経済 で報告しています。 分析に、炭素価格付けを導入しています。こうしたプロジェ クトについて IFC は、炭素価格感度分析を行い、その結果を 理事会に報告します。他のセクターと他のタイプの取引につ いては、現在、今後これを導入するかについてその可能性の 分析を進めています。 目標と測定基準 目標: 既述のように IFC は気候変動関連ビジネスに関する 2 つ数値目標を、気候変動対策実施計画で公表しています。IFC は、気候変動パフォーマンスをコーポレートスコアカードや ユニット・スコアカードに含めるなど、これらの目標の達成 の推進の一環で、内部にインセンティブを設けました。 2018 年 4 月に承認された IFC の増資パッケージの一環とし て、IFC の理事会は 2030 年までに IFC の投融資(自己勘定分) についてその 35%を気候変動関連ビジネスに向けるという新 たな目標を設定しました。IFC の投融資が総じて増加するなか、 この新たな目標により、IFC の気候変動関連承認額が 2017 年 度と比較しドル換算で約 3 倍となる見込みです。また、体系 的に取引を気候変動リスクの観点から精査するという計画を、 上記のパイロットを基に実施する予定です。 3. ダウンロード: https://www.carbonpricingleadership.org/report-of-the-highlevel-commission-on-carbon-prices 4. https://www.ifc.org/wps/wcm/connect/8ea3b242-c6bb-4132-82b1-ee4bd7007567/ IFC+Climate+Definitions+v3.1+.pdf?MOD=AJPERES で入手可能。 5. 報告書は http://pubdocs.worldbank.org/en/266191504817671617/2016-joint-report-on-mdbs-climate-finance.pdf で入手可能。 6. https://www.ifc.org/wps/wcm/connect/37ad9090-df3f-489e-b3d7-66d3ca2ff69c/ 201710-IFC-Green-Bond-Impact-Report-FY17-v2.pdf?MOD=AJPERES IFC 年次報告書 2018  |  105 持続可能な開発に関する一部の情報 の独立した保証報告書 我々は、IFC からの要請を受け、2018 年 6 月 30 日に終了し た年度の年次報告書にかかり、持続可能な開発に関する一部 の情報のレビューを実施した。これには量的指標(以下「指 標」と称す)と質的な表明(以下「表明」と称す)が含まれる。 その際、我々は、特定のステークホルダーの利害に関わると みられる指標と表明を選別し、IFC の名声にリスクを及ぼし かねない事項及びまたは企業責任をめぐる対応とパフォーマ ンスを評価した。 次の項で示された表明の評価を行った:開発金融の在り方を見直す(24 ~ 61 ページ)、 結果の測定(73 ~ 75 ページ)、開発成果の把握(85 ~ 91 ページ)、企業責任(92 ~ 94 ページ)、IFC の持続可能性枠組み(102 ~ 103 ページ)、及び気候関連財務情 報開示タスクフォースの枠組み下での報告(104 ~ 105 ページ) IFC 年次報告書 2018  |  106 レビューした指標は以下の通り: 重要分野 指標 2018 年度 DOTS スコア 投融資 DOTS スコア(%、加重後及び加重前)パフォーマンス分野、産業別、地域別、  (pp. 90–91) アドバイザリー・サービスの DOTS スコア(%)、パフォーマンス分野、産業別、地域別 2017 暦年広がりに関する指標 雇用数(100 万人) 、生徒・学生数(100 万人) 、患者数(100 万人) 、農家数(100 万戸)、 (p. 89) ガス(100 万人)、給水(100 万人)、送電(100 万人)、発電(100 万人)、電話(100 万人)、 貿易金融の件数(100 万件)及び金額(10 億ドル) 、マイクロファイナンス・ローン・中小 企業向けローンの件数(100 万件)及び金額(10 億ドル) 、アドバイザリー・サービスが促 進した投資(10 億ドル) 2018 年度環境・社会カテゴリ別にみた 環境・社会カテゴリ別にみた長期投融資承認額(100 万ドル) 、プロジェクト(件数) 長期投融資承認額 (p. 66) 2018 年度気候関連のパフォーマンス結果 気候関連の投融資承認額(10 億ドル) (p. 75) 2017 年度 IFC の世界的業務から 炭素排出量(tCO2e )、IFC の業務による 発生した炭素排出量 (p. 94) このレビューは以下の項目についての限定的保証 1 を行うこと レビューの種類と範囲 を目指した。 我々は、結論の記述が可能となるよう、以下のレビューを実 1. 指標は、特定の指標に関する IFC の指示書、手続き、ガイ 施した。 ドラインから成る、2018 年度の報告書作成基準(以下「報 告書作成基準」と称す)に基づいて作成された。指標の • 報告書作成基準、方針ならびに原則を、各々の重要性、完全 要約は、本年次報告書の「環境 ・ 社会カテゴリ別承認額」   性、中立性、信頼性の観点から評価した。 (66 ページ) 、投融資とアドバイザリー ・ サービスの開発効 • 上記の表に記述された持続可能性と開発分野に関する重要な 果の各項に記述されている。また、その他の指標について 表明を特定するため、本年次報告書の内容のレビューを行  は IFC ウェブサイトに掲載されている。 った。 2. 表明は、IFC のウェブサイトに掲載された 2「情報アクセ ス • 報告書作成基準の適用状況、あるいは表明の適正を評価する に関する IFC の方針」と、国際基準 3 で定義された重要性、 ため、コーポレートレベルで 20 人余りの評価報告上の責任 完全性、中立性、明確性、および信頼性の原則に基づいて 者とのインタビューを実施した。 作成された。 • コーポレートレベルで分析手続きを実施し、試査により指標 の算出と併合過程を確認した。 これらの指標や表明の作成、報告書作成基準についての情報 • 指標または表明の裏付けとなる書類、例えば、理事会や他の 提供、そして年次報告書の編集責任は IFC に帰属する。 会合に提出された報告書、融資契約書、内外のプレゼンテー ションや報告、研究・調査結果などを収集した。 一方、我々の責任は、レビューに基づいて、これらの指標と • 本年次報告書に掲載された表明および指標、そしてそれらに 表明についての結論を述べることにある。我々のレビューは、 関連した手法の付記などの提示についてレビューを 行った。 国際会計士連盟(IFAC)の国際保証業務基準(ISAE)3000 に準拠して実施された 4。なお我々の独立性は、IFAC の職業人 倫理規範に定義されている。 1. より高水準の保証には、さらに徹底した業務が必要。 2. https://disclosures.ifc.org 3. 国際会計士連盟(IFAC)の国際保証業務基準(ISAE)3000、グローバル・レポーティング・イニシアティブ(GRI)、または AA1000 説明責任に関する基 本原則を指す。 4. 「過去の財務データのレビュー以外の保証業務」、国際会計士連盟、国際監査・保証基準審議会、2003 年 12 月。 IFC 年次報告書 2018  |  107 レビューの限界 最後に、ガス、電力、水の指標について受益者の最終的な数 を評価するために、1 世帯当たりの平均人数(非 IDA 国では 4 人、 このレビューは、上記の表に記述された表明と指標のみに限ら IDA 適格国では 5 人)を使用している。この平均値はこれま れており、本年次報告書中で公開された他の情報は対象として でに定義され、他の国際開発金融機関と足並みをそろえている いない。 が、一定の国の人口動態の変化と異なる可能性もある。 我々が行った試査は、IFC のワシントン DC 本部での文書の 開発結果追跡調査システム( DOTS)スコア レビューとインタビューのみに限られた。本表明の対象となっ た作業に関する限り、外部のステークホルダーや顧客での活 IFC のプロジェクトの開発成果を測定する現行の事後評価シス 動には参加しなかったほか、個々のプロジェクトのサンプル テムである DOTS は、現在見直しが行われており、端から端 内容の妥当性確認においては限定的試査を実施しただけに留 (事前から事後までの)までのアプローチを採る開発効果測定フ まった。 レームワーク(AIMM)に取って代わられる予定である。 報告書作成基準と表明の作成プロセスに関する情報 投融資サービスについては、DOTS スコアは、ポートフォリ オ監視の間に投融資プロジェクトが成果を出した度合を反映 報告書作成基準および表明作成に関する方針と原則について している。こうした結果は、4 つのパフォーマンスエリアにグ は、以下のコメントを記しておきたい。 ループ分けされている。 開発の広がりに関する指標 • これらは、開発結果(経済パフォーマンス及び民間セクター 開発成果)と財務面のリターン(財務パフォーマンス)及び 広がりに関する指標は、IFC の顧客の開発成果をまとめたも 環境・社会リスク管理(環境・社会パフォーマンス)を組み のである。その結果、広がりに関する数値は、IFC の投融資に 合わせたものとなっている。新たな枠組みである AIMM の よりもたらされた他の開発の恩恵を表していない。 開発は、開発結果のみに焦点を絞っており、他の側面は別途 評価が行われている。 さらに、これら指標は、各顧客から提供された情報を基にして いることから、次のような注意が必要である。 • またこれらは、事前に想定された開発成果に照らし評価され る。IFC は、事前の AIMM スコアがポートフォリオ監視の 間にどのように変化するのかを決定する規則の開発に当たっ • 報告期間中、IFC が顧客に関与している場合でも、顧客から のデータが得られないケースもある。つまり、広がりの指 ており、これら規則により、IFC は後に DOTS 評価にかわり 標の範囲は、顧客の対応次第で年により異なる可能性がある。 ポートフォリオ AIMM スコアを利用することができるよう マイクロファイナンス融資、中小企業金融及び貿易金融の指 になる。 標については、IFC は保守的な補外法を用いており一定の誤 差の範囲が生じている。これはしかし許容範囲である。その 気候関連投融資 他の広がりの指標は補外法を用いていないことから、過小に 世界銀行グループの気候変動の新行動計画の一環として、IFC 評価されている可能性もある。 は、2016 年の気候変動対策実施計画で示した気候変動関連の • データが提出された際、収集されたデータの一貫性は、IFC 4 つの目標を達成することに強力にコミットしている。知識面 の定義と算出法に関するガイドラインから乖離している可能 での進歩とともに他の国際開発金融機関と連携し、IFC は定 性もある。IFC は結果として、なかでも最大のデータ提供者 期的に、気候変動関連投融資とアドバイザリー・プロジェク について、アドバンスド・コントロールやフォローアップな トの特定、推進、及び追跡に使う定義と類型論を見直してい どを行っている。こうした措置は特にマイクロファイナンス る。類型論は過去 2 年間で変化はないが、こうした詳細な調 融資、中小企業金融、貿易金融指標といった、こうした誤っ 整により、データを前年比で比較することが困難になる可能 た解釈が IFC により検知された指標でより重要となって  性がある。 IFC は手法が変化した場合はその旨示しデー ただし、 いる。 タへの影響も明らかにしている。 IFC 年次報告書 2018  |  108 IFC は、事前の GHG 算出ツールを開発した。これにより、 IFC とその顧客は可能な時に投融資が行われたプロジェクトに よる温室効果ガスの排出量の潜在的な回避分を評価すること ができる。こうしたツールは、定期的に見直され特定のセク ターや活動に合わせカスタム化されている。現在、実際の削 減量は事後に体系的に追跡されておらず、IFC は年間のコミッ トメントのグロスの排出量とネットの排出量を(ベースライ ンに照らし)モニタリングしていない。しかし IFC は来年に はこれを開始する意向である。 業務分野でのデータの入手には困難が伴いまた現在方法論に 関し議論が行われていることを踏まえると、気候関連財務情 報開示タスクフォースの提言に従い、IFC は年間のコミットメ ントと、地球温暖化を産業革命前と比べ 2 度以内に抑えるとい う目標との整合性を評価することができない。しかし、段階的 ではあるが、IFC は投融資に関連する決定に関連した経済分析 にシャドーカーボンプライスを取り入れている。 結論 我々のレビューに基づくと、以下の内容を疑うような注意を 引く事項は何も見つからなかった。 • あらゆる重要な側面において、指標が報告書作成基準に基づ いて作成された。 • あらゆる重要な側面において、表明が「情報公開に関する IFC の方針」と、国際基準によって定義された重要性、完全性、 中立性、明確性、および信頼性の原則に基づいて提示された。 Paris-La Défense、2018 年 8 月 8 日 The Independent Auditor 独立監査人 ERNST & YOUNG et Associés キャロライン・デレラブル クリーンテクノロジー・持続可能性担当パートナー IFC 年次報告書 2018  |  109 財務パフォーマンスの概要 全般的な市場環境は、IFC の財務パフォーマンスに重大な影響を及ぼします。以下は、IFC の 当期純利益(損失)と包括利益(損失)の主な構成要素、および各年における純利益(損失) と包括利益(損失)の金額と変化に影響を与える要素について述べたものです。 構成要素 重要な影響 純利益: 有利子資産にかかる運用益 スプレッド幅や競争などの市場の状況。未収利息不計上および以前に未収利息不計上とされ た貸出金の利息回収、個別貸出金にかかるパーティシペーション・ノートによる収益なども 貸出金による収益に含まれる。 流動資産収益 流動資産ポートフォリオにかかる実現・未実現損益。これらには、金利環境などの外部要因 のほか、流動資産ポートフォリオ中の特定の資産クラスの流動性による影響も含まれる。 出資ポートフォリオによる収益 世界的な新興市場株式の動向、通貨市場や商品市場の変動、出資における各社の業績。持分 ポートフォリオのパフォーマンス(主に実現キャピタルゲイン、配当、減損、非貨幣性取引 にかかる利益、ならびに出資の未実現利益および損失)。 貸倒引当金および保証損失引当金 借主についてのリスク評価、ならびに債務不履行および債務不履行時の損失の可能性。 その他の収益および費用 IFC から顧客へのアドバイザリー・サービスの水準、退職その他の給付制度の費用水準、  および管理費用その他の予算の承認額ならびに実際の支出額。 公正価値で評価されるその他の非トレー 主として、借入金(IFC のクレジットスプレッドを含む)および関連デリバティブ商品の公 ディング金融商品の損益 正価値の変動と、投資ポートフォリオ(世界的な新興市場の動向によって一部影響を受ける プット、ワラント、ストックオプションを含む)にかかる未実現損益との差額。これらの有 価証券は、観察可能または観察不能なインプットを利用して、内部的に開発したモデルや手 法を用いて評価する。 IDA 拠出金 総務会が承認する IDA 拠出金の水準。 その他の包括利益(損失): 売却可能として会計処理された上場株式 世界的な新興市場株式の動向、通貨市場や商品市場の変動および各社の業績。上場株式は 投資および負債証券にかかる未実現損益 市場価格(無調整)を用いて評価され、負債証券は内部的に開発した価格モデルまたは手法  (市場での観察が可能または観察不能なインプットを用いる)を使用して評価される。 給付制度にかかる未認識の数理計算上の 年金制度資産の運用収益、および予測給付債務を計算するための主な仮定(金融市場の金利、 損益(純額)および未認識の過去勤務  人件費、過去の実績、将来の給付コストの変動や経済状況に対する運営陣の最善の見積りを 費用 含む)。 IFC 年次報告書 2018  |  110 新興市場国における国際株式市場は近年激しく変動していま た。しかし、金利の上昇に合わせ借入金利も上昇するとともに、 すが、2018 年度になり、第四四半期(FY18 Q4)に低迷し 流動資産トレーディング活動による収益が減少しました。貸 たものその事業環境は総じて改善しました。IFC の投融資に 出金の特定の損失引当金が 2018 年に大幅に減少しました。こ 使われる主要通貨の対米ドル(IFC の報告上の通貨)相場は、 れは、プロジェクト特有の進展を主な理由にしたものですが、 FY18 Q4 に、そのうち複数の通貨が大幅に下落したものの、 この減少分は、2017 年度にリスク評価システムの導入により 2018 年度の大半を通し比較的安定していました。年度を通し 1 億 5,600 万ドルが拠出されたなか、貸出金の一般引当金が 総じて一次産品価格は上昇しましたが、セクターによっては 増加したことで相殺されました。 ばらつきが見られました。 IFC の 2018 年度の収益(公正価値で評価される非トレーディ 市場のボラティリティは、プロジェクト特有の進展と相まっ ング金融商品にかかる未実現純損益、IDA 拠出金、および非 て、IFC の投融資の評価と総合的な財務結果に影響を及ぼしま 支配会社持分に帰すべき純損益控除前)は、2017 年度からの した。2018 年度、主に出資の減損が減少したことから、出資 11 億 2,900 万ドルから増加し 12 億 7,200 万ドルとなりました。 及び関連デリバティブによる収益は前年度より上昇しました。 2017 年度からの 1 億 4,300 万ドルの増加の理由は以下に示す また、金利の上昇に加え、標準残高の増加に起因する負債証 通りです。 券による収益の増加を背景に、貸出金及び保証による収益も 増加しました。2017 年度、貸出金からの収益は、融資の完済 による金利収入の 1 度限りの計上のプラスの影響を受けまし 公正価値で評価される非トレーディング金融商品の未実現純損益、IDA 拠出金、および非支配会社持分に帰すべき純損益の控除前の収益の変化 (2018 年度 vs. 2017 年度)(百万米ドル) 増加(減少) 2018 年度 VS 2017 年度 非トレーディング活動にかかる為替取引収益の増大 $   311 出資および負債証券の一時的でない減損の減少 150 貸出金、保証、および貸出金・関連デリバティブの実現損益にかかる収益の増大 79 負債証券による収益の増大 66 出資および関連デリバティブにかかる未実現収益の増大、純額 50 その他の収益の増大 50 年金支出の減少 49 管理費用の増額 (67) 出資および関連デリバティブにかかる実現利益の減少、純額 (81) 流動資産トレーディング活動による収益の減少 (146) 借入費用の増大 (329) その他、純額 11 公正価値で評価される非トレーディング金融商品の未実現純損益、IDA 拠出金、 および非支配会社持分に帰すべき純損益の控除前の収益の変化 $   143 IFC 年次報告書 2018  |  111 2018 年 6 月 30 日まで過去 5 年間の IFC 純利益(損失)(百万米ドル)は以下の通りです。 IFC の純利益(損失)2014 年度~ 2018 年度 (各年 6 月 30 日終了年度)(百万米ドル) 2014 1,483 2015 445 2016 (33) 2017 1,418 2018 1,280 特定目的指定の対象となる収益(非 GAAP 測定指標)1 は、13 億 1,800 万ドルでした。これは、2017 年度の 12 億 3,300 万ドル、 2016 年度の 7 億 7,000 万ドルを上回っています。 1. 一般に、 特定目的指定の対象となる収益は、純利益から持分投資にかかる未実現純損益および非トレーディング金融商品にかかる未実現純損益を控除した金額、 VIEs による連結後の利益、ならびに過年度の指定に関して純利益に計上された費用から構成される。 特定目的に利用可能な収益算出のための純利益の調整(百万米ドル) 2018 年度 2017 年度 2016 年度 IFC に帰すべき純利益(損失) $ 1,280 $ 1,418 $ (33) 加算:非支配会社持分に帰すべき純利益(損失) – 4 (1) 純利益(損失) $ 1,280 $ 1,422 $ (34) 特定目的に利用可能な収益算出のための純利益の調整  借入金にかかる未実現(利益)損失 93 (74) (62) IDA 拠出金 80 101 330 過年度の特定目的指定額として計上されたアドバイザリー・サービス費用 60 64 57 投融資にかかる未実現(利益)損益 (198) (287) 470 その他 3 7 9 特定目的に利用可能な収益 $ 1,318 $ 1,233 $ 770 理事会が承認した財務配分方針に基づくと、特別目的指定 らに IDA 拠出金として最大 1 億 1,500 万ドル(条件を伴う) の対象となる金額の上限は 2 億 3,000 万ドルでした。2018   をそれぞれ指定することを承認しました。これらの指定は、 年 8 月 9 日、理事会は、IFC の利益剰余金から、CMAW 向 2019 年度に総務会が了承するときに正式に承認される見通し けに 7,000 万ドル、助言業務向けとして 4,500 万ドル、さ です。ただしこれらは上記の条件を伴います。 1. https://disclosures.ifc.org IFC 年次報告書 2018  |  112 直近の 5 会計年度における財務データの抜粋(百万米ドル) 6 月 30 日現在および 6 月 30 日終了年度 2018 2017 2016 2015 2014 連結損益計算書の要約 : 貸出金および保証による収益、貸出金および関連デリバテ  ィブにかかる実現損益  $ 1,377 $ 1,298 $ 1,126 $ 1,123 $ 1,065 貸出金、保証、経過利子およびその他未収金による損失引当金 (90) (86) (359) (171) (88) 出資および関連デリバティブによる収益 853 707 518 427 1,289 負債証券による収益、負債証券および関連デリバティブにかかる  実現損益 363 282 129 132 89 流動資産トレーディング活動による収益 771 917 504 467 599 借入費用 (1,041) (712) (409) (258) (196) その他の収益 578 528 501 505 461 その他の費用 (1,662) (1,617) (1,464) (1,423) (1,418) 非トレーディング取引による為替差損益 123 (188) (46) 53 (19) 公正価値で評価される非トレーディング金融商品にかかる  未実現純損益および IDA 拠出金控除前の収益 1,272 1,129 500 855 1,782 公正価値で評価される非トレーディング金融商品にかかる  未実現純損益 88 394 (204) (106) (43) IDA 拠出金控除前利益 1,360 1,523 296 749 1,739 IDA 拠出金 (80) (101) (330) (340) (251) 純利益(損失) 1,280 1,422 (34) 409 1,488 前項より減算:非支配会社持分に帰すべき純(利益)損失 – (4) 1 36 (5) IFC に帰すべき純利益(損失) $ 1,280 $ 1,418 $ (33) $ 445 $ 1,483 6 月 30 日現在および 6 月 30 日終了年度 2018 2017 2016 2015 2014 連結貸借対照表の要約 : 資産合計 $ 94,272 $ 92,254 $ 90,434 $ 87,548 $ 84,130 流動資産 1 38,936 39,192 41,373 39,475 33,738 投融資 42,264 40,519 37,356 37,578 38,176 借入金残高(公正価額調整を含む) 53,095 54,103 55,142 51,265 49,481 資本合計 $ 26,136 $ 25,053 $ 22,766 $ 24,426 $ 23,990 内訳: 未処分繰越利益剰余金  $ 23,116 $ 21,901 $ 20,475 $ 20,457 $ 20,002 特定目的のために指定された利益剰余金 190 125 133 184 194 資本金 2,566 2,566 2,566 2,566 2,502 その他の累積包括利益(損失)(AOCI)  264 458 (431) 1,197 1,239 非支配会社持分 – 3 23 22 53 1. 買戻条件付契約の下で売約された有価証券で、受領した現金担保及び関連デリバティブで支払うものを除く。 IFC 年次報告書 2018  |  113 主な財務比率 2018 2017 2016 2015 2014 財務比率 a: b 平均資産利益率(GAAP ベース) 1.4% 1.6% 0.0% 0.5% 1.8% c 平均資産利益率(非 GAAP ベース)   1.4% 1.3% 0.5% 1.3% 1.8% d 平均資本利益率(GAAP ベース)   5.0% 5.9% (0.1)% 1.8% 6.4% e 平均資本利益率(非 GAAP ベース) 5.1% 4.9% 1.8% 4.6% 6.5% f 総流動性比率   100% 82% 85% 81% 78% g 外部調達資金の流動性レベル N/A N/A 504% 494% 359% h 負債比率 2.5:1 2.7:1 2.8:1 2.6:1 2.7:1 i 実行済みポートフォリオ合計に対する貸倒引当金比率 5.1% 6.1% 7.4% 7.5% 6.9% 資本測定: j 所要資源合計(十億ドル)   20.1 19.4 19.2 19.2 18.0 k 利用可能資源合計(十億ドル) 24.7 23.6 22.5 22.6 21.6 l 戦略資本金 4.6 4.2 3.3 3.4 3.6 m 展開可能な戦略資本金 2.2 1.8 1.0 1.1 1.4 利用可能資源合計に対する展開可能な戦略資本金の比率 9% 8% 4% 5% 7% a. 以下に示すように、特定の財務比率については、投資にかかる未実現損益、その他の非トレーディング金融商品、AOCI、および連結後の変動持分事業体(VIEs) による影響を除外して算出。 b. 当年度末と前年度末の資産合計の平均に対する当年度の純利益の割合を指す。 c. 平均資産利益率とは、実行済み貸出金および出資の合計(引当金控除後)、レポ取引控除後の流動資産、ならびにその他の資産の合計額の当年度および前年 度の平均に対する、純利益(公正価値で評価される投資による未実現損益、連結後の VIEs にかかる収益および非トレーディング金融投資による純損益を除く) の割合を指す。 d. 当年度末と前年度末の資本合計(資本金の払込未済額を除く)の平均に対する当年度の純利益の割合を指す。 e. 平均資本利益率とは、当年度および前年度の払込資本金および未処分利益剰余金(特定の未実現損益控除前、支出前の累積的指定部分を除く)の合計額平均 に対する、純利益(公正価値で評価される投資による未実現損益、連結後の VIEs にかかる利益および非トレーディング金融投資による純損益を除く)の割 合を指す。 f. 総流動性に関する方針によると、IFC は翌 3 年間の予測正味現金需要の少なくとも 45%をカバーする最低流動性レベルに IBRD からの未引出借入承認額を 加えた金額を常に維持するよう規定している。 g. この比率は、IFC では主要比率とみなされないようになったことから、2017 年度末で廃止された。 h. レバレッジ比率(負債比率)とは、借入残高および保証承認額の合計額と、払込資本金および未処分利益剰余金の合計額(特定目的のために指定された利益 剰余金および特定の未実現損益を控除後)との比率を指す。 i. 実行済み貸出金ポートフォリオ合計に対する貸倒引当金の比率とは、実行総額に対する貸倒引当金の比率(%)を指す。 j. 所要資源合計(TRR)とは、IFC ポートフォリオにおいて予測される損失や予測外の損失が生じた場合に、トリプル A 格付を維持するために必要となる最 低資本を指す。TRR は、IFC を横断する各アセットクラスについて算定する要リスクベース経済資本の総計で算出され、承認済みポートフォリオの絶対的 規模、商品ミックス(株式、融資、短期資金融資、およびポートフォリオ自己資産)、オペレーショナル・リスク、その他のリスクなどによって決まる。 k. 利用可能資源合計(TRA)とは、(i) 払込資本金、(ii) 利益剰余金(特定目的に指定されたものと一部の未実現損益控除後)、(iii) 貸倒引当金合計で構成される IFC の総資本金を指す。TRA は、利益剰余金(利益から分配項目を減算したもの)および引当金の増加に伴い増大する。 l. 利用可能資源合計から所要資源合計を減じた金額。 m. 利用可能資源合計の 90%から所要資源合計を減じた金額。 IFC 年次報告書 2018  |  114 承認額 2018 年度、長期投融資の合計は、前年度の 118 億 5,400 万ド ルに対し 116 億 3,000 万ドル、中核資金動員は、前年度の 7 4 億 6,200 万ドルから 21 %増え 116 億 7,100 万ドルとなりま した。 加えて、2018 年 6 月 30 日現在の短期資金融資の平均残高は 34 億 3,500 万ドル(前年度は 31 億 8,500 万ドル)でした。 中核資金動員 中核資金動員は、IFC が資金調達に直接的に関わったことに より、顧客が利用できる資金を IFC 以外の主体から調達した ものです。IFC は資金の一部だけを供与し、その割合は通常、 プロジェクト・コストの 25%を超えることはありません。し たがって、IFC が支援するプロジェクトには常に、他の金融パー トナーが必要となります。 2018 年度と 2017 年度の長期投融 資および中核資金動員(百万米ドル) 2018 年度 2017 年度 長期投融資および中核資金動員 $23,301 $19,316 長期投融資合計 $11,630 $11,854 中核資金動員合計 $11,671 $  7,462 IFC 年次報告書 2018  |  115 アセット・マネジメント社(AMC) AMC が運用するファンドと 2018 年度と 2017 年度の活動 (別段の表示がない限り金額単位は百万米ドル) 2018 年 6 月 30 日まで 設立以降の調達ファンド合計 2018 年 6 月 30 日終了年度 IFC からの 他の投資家か 投融資承認額、 ファンドによる ファンドによる 合計 ファンド らのファンド 累積 ** 投融資承認額 *** 投融資の払込み 投資期間 IFC カタリスト・ファンド、L.P、IFC カタリスト・ ファンド(英国) 、L.P および IFC カタリスト・   ファンド(日本) 、LP(合わせてカタリスト・   ファンド) $            418 $            75 $            343 $           379 $  73 $  70 IFC グローバル ・インフラストラクチャー・ファンド、 L.P.(グローバル・インフラストラクチャー・   ファンド)* 1,430 200 1,230 891 23 44 中国・メキシコ・ファンド、L.P.(中国・メキシコ・ ファンド) 1,200 – 1,200 320 – 75 IFC 金融機関成長ファンド、L.P.(FIG ファンド) 505 150 355 133 – – IFC 世界新興市場ファンド・オブ・ファンズ、   L.P. および IFC 世界新興市場ファンド・ オブ・ ファンズ(日本パラレル) 、L.P.(合わせて  GEM ファンド) 800 150 650 397 189 120 IFC 中東・北アフリカファンド、L.P.(MENA ファンド) 162 60 102 52 25 2 女性起業家デットファンド、L.P.(WED ファンド) 115 30 85 87 19 32 IFC エマージング・アジア・ファンド、L.P. (アジアファンド) 693 150 543 90 20 11 投資期間後 IFC 資本増強(株式)ファンド、L.P.(株式資本  増強ファンド) 1,275 775 500 1,226 – – 資本増強(劣後債)ファンド、L.P.(劣後債資本  増強ファンド) 1,725 225 1,500 1,614 – – IFC アフリカ・ラテンアメリカ・カリブ海ファンド、 L.P.(ALAC ファンド) 1,000 200 800 876 – 25 アフリカ資本増強ファンド、Ltd(アフリカ資本  増強ファンド) 182 – 182 130 – – IFC ロシア銀行資本増強ファンド、L.P.(ロシア  銀行資本増強ファンド)**** 550 250 300 82 – – 合計 $10,055 $2,265 $7,790 $6,277 $349 $379 当該ファンドのリミテッド・パートナーシップに代わって AMC が運用する共同投資ファンドも含む。 * ** キャンセルされた承認額を除く。 *** 当該年度以前についてはキャンセルされた承認額を除く。 ロシア銀行資本増強ファンドは 2018 年度中に投資を全て清算した。 **** IFC 年次報告書 2018  |  116 2017 年 6 月 30 日まで 設立以降の調達ファンド合計 2017 年 6 月 30 日終了年度 IFC からの 他の投資家か 投融資承認額、 ファンドによる ファンドによる 合計 ファンド らのファンド 累積 ** 投融資承認額 *** 投融資の払込み IFC 資本増強(株式)ファンド、L.P.(株式資本  増強ファンド)  $1,275 $           775 $            500 $1,226 $           – $           – 資本増強(劣後債)ファンド、L.P.(劣後債資本  増強ファンド)  1,725 225 1,500 1,619 – – IFC アフリカ・ラテンアメリカ・カリブ海ファンド、 L.P.(ALAC ファンド) 1,000 200 800 901 36 14 アフリカ資本増強ファンド、Ltd(アフリカ資本  増強ファンド) 182 – 182 130 – – IFC ロシア銀行資本増強ファンド、L.P.(ロシア  銀行資本増強ファンド)**** 550 250 300 82 – – IFC カタリスト・ファンド、L.P、IFC カタリスト・ ファンド(英国) 、L.P および IFC カタリスト・   ファンド(日本) 、LP(合わせてカタリスト・   ファンド) 418 75 343 306 49 48 IFC グローバル ・インフラストラクチャー・ファンド、 L.P.(グローバル・インフラストラクチャー・   ファンド)* 1,430 200 1,230 868 189 151 中国・メキシコ・ファンド、L.P.(中国・メキシコ・ ファンド) 1,200 – 1,200 320 180 43 IFC 金融機関成長ファンド、L.P.(FIG ファンド) 505 150 355 133 – 37 IFC 世界新興市場ファンド・オブ・ファンズ、   L.P. および IFC 世界新興市場ファンド・ オブ・ ファンズ(日本パラレル) 、L.P.(合わせて  GEM ファンド) 800 150 650 207 99 44 IFC 中東・北アフリカファンド、L.P.(MENA ファンド) 162 60 102 27 15 15 女性起業家デットファンド、L.P.(WED ファンド) 110 30 80 70 40 45 IFC エマージング・アジア・ファンド、L.P. (アジアファンド) 440 150 290 69 67 70 合計 $9,797 $2,265 $7,532 $5,958 $675 $467 当該ファンドのリミテッド・パートナーシップに代わって AMC が運用する共同投資ファンドも含む。 * ** 2018 年度の承認額のキャンセル分を除いて報告された。2017 年度の額は、2018 年度の額と整合的となるよう修正した。 *** 当該年度以前についてはキャンセルされた承認額を除く。 ロシア銀行資本増強ファンドは 2018 年度中に投資を全て清算した。 **** IFC 年次報告書 2018  |  117 総務会への書簡 IFC 理事会は、国際金融公社の定款に基 いて、本年次報告書の作成に当たらせま した。ジム・ヨン・キム IFC 総裁兼理事 会議長は、監査済み財務諸表と共に本報 告書を総務会に提出しました。2018 年 6 月 30 日に終了する本年度中、民間セ クターへの投融資と助言業務を通じて、 IFC が持続可能な開発成果のさらなる拡 大を実現できたことを理事会一同、謹ん でここにご報告いたします。 IFC 年次報告書 2018  |  118 有益な情報源 インターネットおよびソーシャル・メディア IFC のウェブサイト(www.ifc.org)には、IFC の活動に関す る包括的な情報が掲載されています。ここでは、世界各地の事 務所の連絡先、プレスリリースや特集、結果測定に関するデー タ、投融資案件についての情報公開書、そして主な方針とガイ ドラインなどを入手することができます。 このサイトには、IFC 年次報告 2018 の英語版と関連資料、他 言語へ翻訳(完成次第掲載予定)された PDF ファイルがダウン ロード用として掲載されています(www.ifc.org/annualreport で入手可能) 。ソーシャルメディアでも年次報告をフォローで きます:#ifcar18 IFC オンライン クレジット 写真表紙 36 ページ Lucamanieri/Getty Chaldal IFC ウェブサイト IFC 年次報告作成チーム: 1 ページ 37 ページ ifc.org Mame Annan-Brown Dominic Chavez/IFC 500 Luchadores 年次報告書 IFC 対外関係担当マネージャー 2 ページ 38-39 ページ ifc.org/AnnualReport Joseph Rebello Grant Ellis/World Bank Dominic Chavez/IFC ソーシャル・メディア索引 編集長 3 ページ 40-41 ページ ifc.org/SocialMediaIndex Rob Wright Marcia Juzga/World Bank Dominic Chavez/IFC Facebook ブランド管理及びマーケティン 7 ページ 42 ページ facebook.com/IFCwbg グ担当責任者 Cameron Davidson Goodlife Twitter Aaron Rosenberg 9 ページ 43 ページ twitter.com/IFC_org 広報担当主任 Cameron Davidson Dominic Chavez/IFC LinkedIn M.A. Deviah David Hills 46-47 ページ linkedin.com/company/ 編集コンサルタント Grant Ellis/World Bank ARTESP IFClinkedin Alice Ngoc-Anh Cao 11 ページ Autif Sayyed/IFC YouTube コミュニケーションズ・  Sven Torfinn/Panos Pictures 48-49 ページ youtube.com/IFCvideocasts コンサルタント 12-13 ページ Jason Chute Instagram Adrian Romero Cazares Kessudap/iStock 50 ページ instagram.com/IFC_org/ チーム・アシスタント 14-15 ページ Thommen Jose/IFC Medium デザイン: Victor J. Blue/Bloomberg 51 ページ medium.com/@IFC_org Addison 16-17 ページ Chor Sokunthea/IFC www.addison.com SoundCloud Dhiraj Singh/Bloomberg 54 ページ soundcloud.com/IFC_org 印刷: 18 ページ Dominic Chavez/IFC Sandy Alexander Scribd Scott Wallace/World Bank www.sandyinc.com 55 ページ scribd.com/IFCpublications 19 ページ Nicholas Bertrand/Taimani Dhiraj Singh/Bloomberg Films/World Bank​ 26-27 ページ 56-57 ページ Karel Prinsloo/IFC Karel Prinsloo/IFC 28-29 ページ 58-59 ページ Truong Vu Minh Hieu/IFC Raju Ghosh/National Mission for Clean Ganga 30 ページ Sun_Shine/Shutterstock 60 ページ Dominic Chavez/IFC 31 ページ Paul Kennedy/Alamy 61 ページ Wissam Nassar/IFC 34-35 ページ Bluedog Studio/Shutterstock IFC 年次報告書 2018  |  119 2121 PENNSYLVANIA AVENUE, NW WASHINGTON, DC 20433 USA IFC.ORG