81792 v2 年次報告書 2013 海外投資に保証を r 事業機会を確実に 概観 2013年度の概観 2013 年 度、加 盟 途 上 国 で のプロジェクトに 対して MIGA が 発 行した 投 資 保 証 は 総 額 28 億ドル に 達しました 。 加えて、MIGAが管理する信託基金の下で、350万ドルの投資保証が発行されました。今年は、MIGAの新規保証総額 が 3年連続で最高記録を更新し、MIGAの4つの戦略的重点分野のうち、少なくとも1つの分野に取り組んでいるもの が全体の 82%を占めました。本年度末の MIGAの総保証残高は 108億ドルに上り、6年連続で増大しました。 今年はまた、MIGAの支援を受けた投資が、取引の高い革新性と重要性という点でかつてなく多くの業界賞を受賞し たことも特筆に値します。 さらに、債務不履行に対する保証の範囲を広げ、国有企業も含めることに関しては、理事会から承認を取り付けました。 本年度中、保証金の支払いは行われませんでした。 1990~ 2013年度 投資保証の発行額 2009年度 2010年度 2011年度 2012年度 2013年度 合計 被援助プロジェクト数1 26 19 38 50 301 727 新規プロジェクト2 20 16 35 38 26 - 継続の被支援プロジェクト3 6 3 3 12 4 - 保証契約発行数 30 28 50 66 47 1143 新規保証額、合計(十億ドル) 4 1.4 1.5 2.1 2.7 2.8 30.0 総保証残高(十億ドル)4 7.3 7.7 9.1 10.3 10.8 - 純保証残高(再保険差し引き後) 4.0 4.3 5.2 6.3 6.4 - (十億ドル)5 1. さらに2件のプロジェクトが、 MIGAが管理するヨルダン川西岸・ガザ地区投資保証信託基金を通じて支援を受けた。 2. 2013年度に初めてMIGA支援を受けたプロジェクト (拡大を含む)。 3. 過年度および2013年度にMIGA支援を受けたプロジェクト。 4. 協調引受プログラム (CUP)を通じた調達額を含む。 5. 総保証残高は最大の債務総額を示す。 純保証残高は総保証残高から再保険を差し引いたもの。 2 | MIGA 年次報告書 2013 業務の概観 2013年度にMIGAが保証を行ったプロジェクトの内訳 被援助 プロジェクト プロジェクト総額 被援助 全体に占める 保証発行額 (ドル)に占める プロジェクト数 割合 (%) (百万ドル) 割合 (%) 重点分野1 AR chapter box colors IDA融資適格国 2 21 70 2047.3 74 「南・南」投資 3,4 7 23 357.0 12 紛争の影響下にある国々 Figure 7 7 23 1150.3 41 Figure 1 複合プロジェクト 5 Austria 23.9 11 37 1924.4 69 United Kingdom 12.5 France 10.0 地域 United States 9.2 12 Germany 7.3 gross exposure アジア ・大洋州 South Africa 5.3 4 13 492.3 net exposure 18 Luxembourg 4.1 10 ヨーロッパ・中央アジア Finland 2.8 6 20 537.1 19 ラテンアメリカ・カリブ海 Switzerland 2.6 3 10 67.1 3 8 Greece 2.3 中東・北アフリカ 6 Singapore 2.3 3 10 172.9 6 United Arab Emirates 2.1 6 サブサハラ・ アフリカ 1.6 14 46 1,511.6 54 Canada Mauritius 1.5 4 セクター Korea, Republic of 1.4 Spain 1.3 Cayman Islands 1.1 2 農産物ビジネス ・製造・サービス Slovenia 1.0 6 14 47 385.0 14 金融 Bermuda 0.9 5 17 471.6 17 0 Senegal 0.7 03 04 05 06 07 08 09 10 11 12 13 0 40 インフラ Egypt, Arab Republic of 0.7 9 30 1,272.3 46 Cyprus 0.7 石油・ガス ・鉱業 2 6 652.1 23 Netherlands 0.7 Sweden 0.7 合計 Japan 0.7 30 2,780.7 Others 2.7 1. 複数の重点分野にまたがるプロジェクトもある。 46% Infrastructure 2. 世界で最も貧しい国々を指す。 Others: Nigeria, Poland, China, Thailand, Norway, Ecuador, Tanzania, Turkey, 23% Oil, gas, and mining Fig 2 Fig 5 Romania, 3. MIGA 加盟途上国 Kenya, Ireland,(カテゴリー ) から別の Belgium, Mali,2India, Lebanon, MIGA 加盟途上国への投資を指す。 Tunisia, Italy, St. Kitts and 17% Financial Nevis, Denmark, Panama, Virgin Islands (British), Colombia 4. これらの数値は、 途上国の投資家が関わるプロジェクトの合計を示す。 * Numbers may not add to 100 percent due to guarantee holders domiciled in two 14% Agribusiness, 5. インフラ、 different 資源採掘産業、 countries 複雑な資金調達手段などの複合プロジェクト。 manufacturing, 350 6. 総額 万ドルのプロジェクト2件はMIGAが管理するヨルダン川西岸・ガザ地区投資保証信託基金を通じた支援も受けている。 and services 54% Sub-Saharan Africa 本年度の MIGAの業務利益は、前年度の 1,780万ドルを上回る1,910万ドルでした(詳細はMD&A参照)。19% Europe and Central Asia 18% Asia and the Pacific Fig 1 fin Fig 3 受取保証料、手数料、投資収益(百万ドル) 6% Middle East and Eearned premium North Africa* 3% Latin America and 2013 66.3 33.6 the Caribbean 2012 61.7 36.9 0 2011 50.8 13.9 47% Sub-Saharan Africa 2010 46.0 24.1 20% Europe and Central Asia 2009 43.6 36.9 13% Asia and the Pacific Fig 4 10% Middle East and 保証料および手数料収入 Premium and fee income North Africa* Investment 投資収益 income 10% Latin America and the Caribbean MIGA 年次報告書 2013 | 3 41% Europe and Central Asia 世界銀行グループの 2013年度の 概観 A T I O N L BA N VELOPME DE A L I N ION AL CE E R N NA K N I V E AT TR ER F T N N A N E R L T T O S O TE TE IN RNA IONA L FO R T P O R AT I T I • IN AS M R • WORLD BANK IC R E N T M U L S O C I AT N AT I O SI SETTL UTES T D REC EN T • • SP OR EM G TE ON PM Y DI A IO U N EN L N C ST T O R N T C R A FINANCE UC EN E I L N V A E OF TIO E N T G INV ESTM N AND D E E A 世界銀行グループは、世界中の途上国への財政援助や技術支援の主な供給源となっています。世銀グループの各 機関は、互いに協力し、それぞれの活動を補完し合いながら、極度の貧困を撲滅し、繁栄の果実を全員で分かち 合うという共通の目標を目指しています。世銀グループは、途上国の人々の利益となるよう、農業、貿易、金融、保 健、貧困削減、教育、インフラ、ガバナンス、気候変動などの分野で知識の共有やプロジェクトへの支援を行って います。 2013 年度に世銀グループは 526 億ドルの援助を約束し 銀行、IFC、MIGAは、高い革新性と迅速な対応力をもっ ました。 て、プロジェクトの資金をクライアントにいち早く供出で きるよう尽力しています。本報告書には、そうした例が数 IDAとIBRDで構成される世界銀行は、加盟国に対し、315 多く盛り込まれています。 億ドルの融 資および 無 償 資金(グラント)を承 認しまし た。このうち、世界の最貧国を支 援する IDA の承認額は 163億ドルに達しました。 世界銀行グループは以下の密接に関連し合った 5つ の機関で構成されています。 IFCは、途上国の民間セクター開発向けに183億ドルの投 融資を承認したほか、65億ドルの追加資金を誘引しまし 国際復興開発銀行(IBRD)は、中所得国および信用力の た。また、この合計のほぼ半分はIDA 融資適格国に向け ある低所得国の政府に対し融資を行っています。 られました。 国際開発 協会( IDA )は、最貧困国の政 府に対して無利 MIGAは、途上国への投資を支援するため 28億ドルの保 子の貸付(すなわち融資)とグラントを提供しています。 険を引き受けました。また合計の約 4分の 3が IDA融資適 国際金融公社 ( IFC )は、途上国への民間セクター投資 格国に向けられました。本年度は、サントメプリンシペと を促進するために融資、出資、助言サービスを提供して コモロの 2か国が MIGAに新たに加盟しました。 います。 多数国間投資保証機関 ( MIGA )は、途上国への対外直 世銀グループ間の協力 接投資( FDI )を促進するために政治的リスクや非商業 世 銀グループの各機関による共同プロジェクトや共同プ 的リスクから生じた損失に対する投資保証を提供してい ログラムは、途上国における金融市場の拡大、投資家や ます。 民間金融機関による投融資の保証引受、よりよい投資環 境を整備するための助言サービスの提供を通じて、持続 国際投 資紛争解決センター( ICSID )は、国際的な投 資 可能な開発を促 進することに重点を置いています。世界 紛争の調停ならびに仲裁の場を提供しています。 4 | MIGA 年次報告書 2013 リーダーの視点 ジム・ヨン・キム世界 銀 行グル ープ 総 裁 からのメッセージ 我々は今、歴史上またとない好機に恵まれています。 途上国が、過去数十年にわたる開発の成果と、明るい 経済的見通しという2 つの要素により、一世代で極 度 の貧困をなくすチャンスを得ているのです。この機会を 逸してはなりません。 今年、世界銀行グループは、我々自身と開発コミュニティ はらんでいます。さらに、地球温暖化によって干ばつが広 のパートナーに対して、2つの具体的かつ測定可能な目標 がり、影響を受ける地域が拡大し、極端な気象現象の発 を課しました。一つ目は、1 日 1.25 ドル未満で生活する人 生頻 度が高まり、人命や 経済資 源が予測不能な規 模で 口の割合を 2030年までに 3%まで削減することで極度の 奪われる可能性もあります。 貧困を事 実 上なくすこと、二つ目は、各途 上国で所得の 下位 40%の人々の所得を引き上げることによって繁栄の それでも、目標達成は手の届くところにあると、私は今も 共有を促進することです。 楽観視しています。目標を達 成するには、世界銀 行が、 このような野心的な目標は、そう簡単に達成されるもの 188 の加盟国やその他のパートナーと体系的かつ徹 底的 ではありません。2008 年に始まった世界金融 危 機 から に協力する必要があります。 5  年近くが経ちましたが、世界経済の回復は依然として脆 弱です。先進国は高い失業率と低成長に苦しみ、途上国 各 国 政 府 は、特 に 現 状を踏まえると、開 発 援 助 だけに では成長率が危機前の水準を下回っています。さらに、目 頼って市民への公約を果たすことはできないと我々は指 標を達成しようとすればする程、貧困との闘いはますま 摘したことがあります。民間セクターは、自力で、あるい す困難になっていくでしょう。貧困状態に取り残された人 は官民パートナーシップを通して政府と連携することで、 々に到達することは、非常に難しいからです。 多大な役割を担うことができます。そしてその際、MIGA また、別の新たな問題が貧困削減への道のりを脅かすこ は、経済 発展や貧困削減を助け、投資を最も必要として ともあるでしょう。紛争や政治不安は貧困を増大させ、 いる場所で人々の生活向上を図るための対外直接投資の 開発に対する長 期的な妨げとなるなど、大きなリスクを 呼び水となるという重大な役割を果たしています。 MIGA 年次報告書 2013 | 5 MIGAの本年度の政治的リスクに対する保証額は過去最 う。これらの画期的なプロジェクトは、2011年の内戦終焉 高の 28 億ドルに達し、様々なセクターと地 域におよぶ投 後に形成された初の官民 パートナーシップの下で MIGA 資の下支えとなりました。 そのうちの 74 %は、IDA 融 資 が昨年支援したアビジャンでのアンリ・コナン・ベディエ 適格国に向けられました。 また、54%はサブサハラ・ アフ 有料橋梁プロジェクトを補完しました。こうした投資に対 リカでの民間セクター開発を、 さらに 41 %は紛争の影 響 する MIGA の支援だけをとっても、紛争の影 響下にある 下にある脆弱国での画期的なプロジェクトを支援しまし 国にしては相当額の 20億ドル余りの対外直接投資を同国 た。本報告書には、こうしたMIGAの支援が開発作業に大 にもたらしました。 きな影響を与え、しかもMIGAには外部と世銀グループ内 今年、MIGAが収めた実績は、2030年までに極度の貧困 部の両方で効果的なパートナーシップを形成する能力が を撲滅し、繁栄を全員で 分かち合うという世 銀グループ あることが示されています。 の目標の達 成に力強く貢献しました。私は特に、MIGA 本年度の MIGAのプロジェクトには、世銀グループの目的 の長官としての任期を最近満了された小林いずみ氏に感 達 成のための一段と強化された協調 的取り組みを強調 謝の意を表します。同氏の独創的で精力的なリーダーシ したものがいくつかあります。この協調 的取り組みの結 ップのおかげで、さらに幹部と職員のプロとしての精神と 果をみると、創意 溢れる総 括的な解決 策を各国や 他の 意気込みがあいまって、MIGAは異例の結果を出すことが パートナーに見出してもらうためには、世銀グループがい できました。この力強いモメンタムを引き続き保つために かに協力すれば膨大な専門知識と資源を活用することが も、今後、後任の本田桂子氏と業務を共にしますことを心 できるかが分かります。 待ちにしております。 コートジボ ワールで の 変 革 的 なプロジェクトに 対 する MIGAの支援は特筆に値します。 今年 IFCとIDAと共に支 援した Azito 地熱発電所はその一 例で、 同国の発電量の 増強に役立ちました。 もう一つは、IDAと共にオフショア 石油・ガス施設の建設と運営を支援したことです。これに より、同国のエネルギー・コストが低減され、エネルギー ジム・ヨン・キム 輸入に伴う外貨準備の利用を抑えることができるでしょ 2013 年6月30 日 6 | MIGA 年次報告書 2013 migaの 総務会および理事会 加盟国 179か国を代表する総務会と理事会が MIGAのプログラムや活動を指導しています。各加盟国はそれぞれ総 務 1名と総務代理 1名を任命します。MIGAの権能は総務会に委ねられ、さらに総務会はその権能のほとんどを 25 名で構成される理事会に託しています。 議決権数は、各理事が代表する国の出資比率に応じて加 rr 予算委員会 重されます。理事は米ワシントン DC にある世銀グループ rr 開発効果委員会 本部で定期的に会 合を開き、投資プロジェクトの審査と rr ガバナンス・運営委員会 決定、ならびに全般的な運営方針の監督に当たります。 rr 人事委員会 各理事はまた以下のいずれか 1 つ以上の委員も務めてい これらの常任 委員会は、MIGAの方針や手続きについて ます。 の深部にわたる検証を行うことにより、理事会が監視責 rr 監査委員会 任を全うする際に役立っています。 2013年 6月30日現在のMIGAの理事会 9 9 18 18 6 76 7 12 1214 14 5 5 8 8 15 15 19 19 22 22 23 23 4 4 10 10 13 13 16 16 20 20 24 24 1: Merza Hasan; 2: Agapito Mendes Dias; 3: Satu Santala; 4: Roberto B. Tan; 2 2 11 11 3 3 17 17 21 21 5: John Whitehead; 6: Marie-Lucie Morin; 7: Shaolin Yang; 8: Gwen Hines; 1 1 25 25 9: Vadim Grishin; 10: Mukesh N. Prasad; 11: Mansur Muhtar; 12: Piero Cipollone; 13: Omar Bougara; 14: Ibrahim M. Alturki(代理) ; 15: Gino Alzetta; 16: 鈴木 英明 ; 17: Ingrid-Gabriela Hoven; 18: Denny H. Kalyalya; 19: César Guido Forcieri; 20: Juan José Bravo; 21: Sara Aviel(代理) ; 22: Hervé de Villeroché; 23: Frank Heemskerk; 24: Jörg Frieden; 25: Sundaran Annamalai MIGA 年次報告書 2013 | 7 小林いずみMIGA長官からのメッセージ (2008~ 2013年) 世界経済が転機を迎えている兆しが見られます。近年 に見た実質リスクが後退し、情勢の激しい変化が収ま りつつあります。高所得国の 2013 年の 経済成長は依 然、1.2 %程度に過ぎませんが、途上国では 5.1 %の伸 びが見込まれています。 この比較的高い成長率を受け、途上国は海外投資家の関 各国が民間の資金や投 資を誘致するための新たな方 策 心を引き寄せ続けています。投資家が一段と困難な環境 を模 索する中で、私は、MIGA がサブサハラ・アフリカや で見返りを求めるようになる中、MIGAのリスク緩和商品 中東・北アフリカへの支 援を拡 大するなど、事業開拓に 引き続き大きな努力を注いでいる点を指摘したいと思い に対する需要が高まりを見せているのは、そうした理由 ます。アジアにおける業務拡大と欧州での事務所の増強 に一部起因しています。その中で、今年、創立 25周年を迎 は、前年に続いてよい実績を上げることに役立ちました。 えた MIGAは、新規保証総額 28億ドルという高い業績を さらに MIGA は、国 際開発協会(I DA )の融 資 適格 国、 前年に続いて達成しました。 紛 争の影 響下にある脆 弱な環 境、複合プロジェクト、そ して「 南・南」投資という戦略的重点分野に的を絞った 途上国への対外直接投資の呼び水になるというMIGAの 投 資支援を続けて行っています。MIGA が支援したプロ マンデートは、極 度の貧困を撲滅し、繁栄を全員で分か ジェクトの4分の 3以上は、これらの分野のうち少なくとも ち合うという世 銀グループの全体的使命の一環としてそ 1 つに取り組んでおり、新規保証総額の 82 %を占めてい の重要性をますます高めています。民間セクターが開発 ます。 支援で重要な役割を演ずることは私どもも認識していま 今年は保証業務の多様化が引き続き堅調に進みました。 す。MIGAの課題は、民間セクターに価値をもたらす適切 地 域別にみると、サブサハラ・アフリカ向けプロジェクト な投資を促 進することであり、しかも開発の恩恵が受入 が新規保証額の 54%という最大の割合を占めました。こ 国で末 永く続くようにするには持続可能なものであるこ れは前年度の 24 %の 2 倍以上、2011 年度の 12 %の 4 倍以 とが必要です。本報告書には、新規保証業務をはじめ、 上に当たります。セクターの多様化においては、インフラ すでに世界中の人々の生活向上に貢献している既存プロ と資源採掘産業での複合プロジェクトが力強い伸びを示 ジェクトの開発成果を含め、本年度に達成した前向きな し、2012年度に新規保証額の 60%を占めていたものが本 結果が要約されています。 年度は 69%に増大しました。こうした手堅い業務結果の 8 | MIGA 年次報告書 2013 背景には、これらの多くのプロジェクトが状況を一変させ ナーシップ」は力強いビジネスモデルへと発展し、クライ る画期的な特徴を備えていたことが挙げられます。それ アントに最適なソリューションを提供する傍ら、共同事業 らは、MIGAの加盟途上国に電力、運輸、より効率的な技 開拓や知識共有を促進することにも役立ちました。 術をもたらしたほか、投資を最も必要としていた紛争の 影響下にある脆弱国にとっても特に重要でした。 MIGA内部では、引き続き情報技術(IT)システムの強化 を重点的に進め、期待通りのニーズに応え、柔軟性向上 MIGAが支援したプロジェクトの影響をみると、これらの とクライアントへの迅速な対応のためのプロセス合理化 プロジェクトは、インフラ、農産物ビジネス、製造など開 を進めました。さらに、プロとしての精神に徹した、多様 発成果を幅広く達成できるセクターに民間資金を動員す な背景を持つ有能な職員の採用に引き続き力を入れまし ることで、民間セクターが貧困緩和に大きな役割を果た た。 「 MIGAプロフェッショナルズ 今年、 ・プログラム」の下 せることを再度示しています。民間セクターがぜひとも必 で新たに 4名の職員を迎えました。 要とされる投資を行う中、受入国の政 府は、雇用を創出 し成長を促 進する一段と生 産的な経済活動を進めるた 私の MIGA 長官としての任期は本 年度をもって満了しま めの基盤作りを行って、民間セクター投資を補完すること す。この重要な機関の業務を推進するにあたり理事会や ができます。加えて、こうした投資は、周辺のコミュニティ 他のパートナー、クライアントの皆 様 からいただいたご の経済的・社会的持続可能性に寄与するうえでも重要な 指 導やご支 援に感 謝の 意を 表します。私 が 退 陣した後 役割を果たします。 も、MIGA は、成長 促 進と人々の生活向上に資する投 資 MIGA はまた、各産 業の業務 慣 行 や開発ソリューション の促 進というマンデートを全うできる良好な位置づけに に関する知識を共有するため、新旧の外部パートナーと あると確信しております。また優れたリーダーシップで世 接触しました。その例として、グローバルな政治的リスク 銀グループを牽引しておられるジム・ヨン・キム総裁にも 管理に関する会議の開催、上級幹部を招いたアウトリー 謝意を表します。そして特に、私の任期を通じ、加盟途上 チ活動、MIGAが支援したプロジェクトの視察などが含ま 国で MIGA の使命を貫くために専門家として意欲的に活 れます。その一環として私は、紛争と脆弱な状況にさらさ 躍された MIGAの運営陣と職員の方々に心からお礼を申 れたイラクとパレスチナ自治区を訪問しました。MIGAは し上げます。皆さんと一 緒に仕事ができたことを光 栄に また、ミャンマーへの協力再開という世銀グループの草分 思います。 け的な任務に参画しました。今後、世銀との協力により、 エネルギー・インフラ開発などの改革を通じて貧困削減 と成長促進に貢献できると期待されます。 本年度、MIGAは、世銀グループの機関全体との連携を強 め、戦略的重点分野での協調的取り組みを強化する方策 小林いずみ について検討しました。特に「 IFC/MIGA事業開拓パート 2013 年6月30 日 MIGA 年次報告書 2013 | 9 本田桂子MIGA長官からのメッセージ MIGA の今年の力強い業績をまとめた 2013 年度の 年次報告書をここに提出できますことを喜ばしく 思います。 この時期に、世 銀グループに加わり、極 度の貧困の撲滅 と繁栄の共有促進という崇高な目的に取り組むことに大 きな興奮を覚えます。 MIGAは、この目標の達成の助力となるソリューションを 提供すべくクライアントや開発パートナーと全力をあげて 協力していく所存です。MIGAのリスク緩和手段は、画期 的なインフラ・プロジェクトの実現、雇用を生み出す企業 の育成 、そして金融へのアクセス確保のために資金を動 員する際に不可欠な役割を担うことができます。 この目標の達成に向け、理事会、パートナー、職員の皆様 と共に働くことを心待ちにしております。また、この重要 な業務に貢献できますことを光栄に思います。 本田桂子 2013 年 7 月15 日 10 | MIGA 年次報告書 2013 migaの 運営チーム 小林いずみ Michel Wormser Ana-Mita Betancourt Kevin W. Lu MIGA長官 副総裁兼最高業務責任者 取締役兼法務顧問 東アジア・大洋州担当取締役 Edith P. Quintrell Lakshmi Shyam-Sunder Ravi Vish Marcus S. D. Williams 業務担当取締役 最高財務責任者兼財務・ チーフエコノミスト兼経済・ 戦略・コミュニケーションズ・ リスク管理担当取締役 持続可能性担当取締役 パートナーシップ担当主任 MIGA 年次報告書 2013 | 11 開発に与えた影響 12 | MIGA 年次報告書 2013 世界の経済活動が緩やかに回復している兆しが見られます。これらの兆しは、 低金利、世界的な流動性向上、国際金融情勢の改善、世界貿易の成長加速化、 内需の増大に支えられています。 世界経済環境に関する世銀の 2013年の 対外直接投資の動向 見通しは、比較的弱い 2.2%の世界成長 こうしたやや脆 弱な世界 環 境を受け、 を 予 想しています。その 後、2014 年と 途 上 国 へ の対外 直 接 投 資( FDI )は、 2015年にはそれぞれ3.0%と3.3%へと徐 2012 年に推 定 4.5 %低下し、 6,700 億ド 々に伸びる見込みです。ここで重要なの ル に留まりました 。 しかし 、2013 年 に は、世銀によると、世界経済が起伏の少 は 持ち直し 、途 上 国 への FDI 流 入額は ない押しなべて安定した時期へと移行 しつつあると見られることです。 7,190 億ドル に 上るものと予 測 さ れま す。また、2012 年 の 途 上国 への流 入額 は、世界 の FDI 合 計 の 大きな割 合を占 め、45%に達しました。 特に興 味 深 い点は、途 上 国からの FDI 流出額が、最 近の増加傾向を反映し、 2012 年には 推 定 2,380 億ドルという最 高 記 録を 達 成したことです。この 額 は 2013年には 2,750億ドルに達する見込み です。 途上国からの FDI 流出額の約 4 分 の 1 は 他 の 途 上 国 に 流 入して い ま す (「南・南」投 資 )。欧 州や 米 国の 投 資 家が最近の景気減速やユーロ圏の危機 の影響を受ける中、この南・南投資フロ ーは、新たな FDIの供給源として従来型 の投資を上回りつつあります。 投 資家の機 運をみると、比 較的高成長 の 途 上 国 が海 外 投 資 家 の 関 心 を 続 け て引き寄 せています。MIGA の 年 次 報 告書「World Investment and Political 高 所得国では急性なリスクが 低下して いますが、経済 調整が進む中で 穏やか Risk 2012(世界の投資と政治的リスク 2 0 1 2 」の 作 成 の た め に 実 施 さ れ た な下振れリスクが尾を引いています。今 後数年間は、ゆっくりと成長の足取りが 2012 年のエコノミスト・インテリジェン 早まるものと予想されます。一方、先進 ス・ユニット( EIU )の調査によると、投 国が 徐々に回 復する中、世界成長は主 資家は途上国の将来が明るいと見てい に途上国経済が牽引しています。ただし ます。事実、調 査 の回 答 者の 半 数以 上 途上国の成長も前年に比べると減 速し は、途上国への投 資を短期的に増やす てます。 意向だと回答しました。 MIGA 年次報告書 2013 | 13 MIGAの役割 この中で MIGAが最も重視している分野は世界の最貧国 への FDIの促 進です。2013年度には MIGAの投資保証総 多数の投資家や金融機関が途上国市場に参入するように 額のうち、この分野が 74%を占めました。その例として、 なると、MIGAの非商業的リスク保険はそれらにとって強 力なツールとなります。多くの場合、 ウガンダとバングラデシュでの発電プロジェクト、ニカラ MIGAの保証は、特に 高リスクと見られる国々への投資を決断する際によくあり グアの商用竹農園(ボックス 2参照)、マダガスカルとニジ がちな「躊躇い」に応えることができます。実際、MIGA ェールでの関税検 査サービス、そしてザンビアでの数件 の保証があるかないかで、投資の決断の成否が左右され の農産物ビジネス向け投資といった支援が含まれます。 る場合も多々あります。また、クライアントがより良い条 紛争の影響下にある脆弱国という戦略的重点分野は、長 件で長期の融資を確保したいとき、MIGAの保証は、当該 年にわたる混乱の後、安定を取り戻す際のカギを握る転 クライアントの信用を強化するツールとなることが増えて 換期に、MIGAがこれらの国々の復興作業で重要な役割 います。 を果たすことを主軸としています。この分野で指摘すべき MIGA は、経 済 発展、貧困削減、人々の生活向上という 点は、他の保険会社が対象としないプロジェクトに対して 使命を実現するために途上国への FDI流入を促進してい MIGAが保険引受を行える能力があることです。コートジ ます。その際、世 銀グループの 担当者と投 資家の協力を ボワールでの 3件の変革的なプロジェクト(後述の項目参 得て、プロジェクトの当事者全員に恩恵をもたらし、地元 照)では、戦火が下火となった直後に、MIGAが民間セク コミュニティと円滑な関係を確立できる方法で、プロジェ ター開発の呼び水となるための準備態勢を整えていたこ クトの組 成に当たります。世 銀や国際金融公社( IFC )と とが分かります。今年はまた、ヨルダン川西岸・ガザ地区 の協調 的取り組みは、例えば、今年始まったウガンダの の製 造プロジェクトへの支援が、この重点分野に対する Bujagali水力発電所の建設やコートジボワールの Azito地 MIGAの意気込みを体現しました。紛争の影響下にある 熱 発電 所の拡張 (ボックス1 参照 )など、いくつかの大 規 脆弱国・領土でのプロジェクトは、本年度の MIGAの新規 模な開 発プロジェクトで実を結んでいます。さらに世 銀 保証額の41%を占めました。 グループとの幅広い協調的取り組みでは、MIGA の投 資 支援が受入国に対する世銀グループの戦略と一致するよ MIGA は本年度、この重点分野での支援をさらに深化さ う万全を期しています。MIGA はまた、世 銀グループの環 せるための「紛争の影響下にある脆弱国ファシリティ」の 境・社会基準を活用することにより、クライアントに大き 設立で理事会の承認を取り付けました。このファシリティ な価 値をもたらすだけでなく、保証を行った投 資の開発 は、困難な状況下での投資プロジェクトに保険をかける 成果にも重大な影響を与えることが多々あります。 ため、MIGA の 保証に加え、最初の損 失 層に対しドナー 資金と保証の両方を提供します。同ファシリティは、この 今年、MIGAは創立25周年を迎えました(ボックス3参照)。 それ は 、これまで に達 成した 数々の 功 業 を振り返るよ イニシアティブへの拠出を約束したカナダ政府とスウェー い機 会であり、次の 25 年に臨むうえでの節目だといえま デン政府との共同で 6月に立ち上げられました。また、こ す。MIGA は創設以来、世界のあらゆる地 域と広 範なセ のファシリティを支援するため、他のドナーとの間で拠出 クターを網 羅にしたプロジェクトに総 額 300 億ドルの投 可能性が検討されました。 資保証を行ってきました。今後は、以下に掲げるMIGAの MIGAが独自な競争優位性を発揮できるもう一つの重点 戦略的重点分野に合致し、最も大きな影響を与えるプロ 分野は複合プロジェクトです。今年は、コートジボワール ジェクトを中心に引き続き保証 業務を展開していく所存 で石油・ガスおよび発電向け投資に保証を行ったほか、 です。 アンゴラの 発 電プロジェクトも支 援しました 。こうした 複合プロジェクトは、当該国に変革的な影 響を与えるこ 戦略的重点分野 とが多く、世 銀グループ内の数か所の部局を交えること MIGAの業務は 4つの戦略的重点分野を中心に進められ がしだいに増えています。そのような場合、MIGAの保証 ます。この重点分野の形成に際しては、極 度の貧困の撲 は、IFCからの資金供与や、世銀の貸付と保証手段を補完 滅と繁栄の共 有促 進という世 銀グループの使命、MIGA することができ、複合プロジェクトの実現に向け各種の商 加盟国の開発ニーズ、そして MIGA の比較優位性に注視 品を幅広く提供することが可能になります。複合プロジェ し他の保険会社を補完することの必要性も配慮されてい クトへの支援は、本年度の MIGAの新規保証額の 69%を ます。 占めました。 14 | MIGA 年次報告書 2013 ボックス1 – コートジボワールへの投資誘引 西 アフリカの 国 、 コートジボワール 国際金融公社( IFC )の融資と、株式 は、 インフラ再建を積極的に進め、 投資を行っている Globaleq社に対す 域内の経済大国としてのかつての名 る MIGA の 1 億 1,600 万ドルの保証に 声を取り戻そうとしています。同 国 より、同 発 電 所 は、現 在のシンプル がこの 意 欲 的 な目標 を 達 成 で きる サイクル 発 電 からコンバインドサイ よう、 MIGAは、 多額の民間セクター クル 発電への変 換プロジェクトに着 投 資を 動 員する際 に 重 要 な 役 割 を 手し 、現 在 の 290 メガ ワットから約 担 って いま す。大 規 模 で 画 期 的 な 430メガワットへと発電量を増大させ インフラ・ プロジェクト3件を支援する る予定です。これにより、同社はガス ため、 MIGAの投資保証は、 同国との の使用量を増やさずに発電量を大幅 協働により、 20 億ドル以 上の対外直 に増やすことが可能になります。 接投資を誘引しています。 さらに電 力サプライチェーンの川上 2012年度には、 MIGAはアンリ・コ で は 、MIGA は 、Azito 発 電 所を 含 ナン・ベディエ有料橋梁の建設に対 め 、コ ートジ ボ ワ ール の 各 地 の 発 して投 資保 証を提 供しました。 この 電 所 に 乾 性 天 然 ガスを直 接 供 給す 官民 パートナーシップは 15 年以 上に るオフショア・ガス生 産 施 設を支 援 及ぶ内戦で中断されていただけに、 しています。 ギニア湾にある Foxtrot 今回の再開は同国にとって重要な突 International社の石油・ガス生産施 破口となりました 。 この橋 の建 設は 設では毎日、 同国の生 産 量の 2 分 の 現在順調に進んでおり、 2014年 12月 1 以 上に 相当する 1 億 1,000 万~ 1 億 に開通する予定です。 100トンに上る 2,000 万立 方フィート ( 311 万 5,000 コンクリートの支 柱 を含め 、 この 橋 ~ 339 万 8,000 立 方メートル)の 天 を構 成 する 要 素 は すべ て 国 内 で 生 然 ガ ス が 生 産 さ れて いま す。同 社 産されているほか、 いわば工場の役 は 現 在、6 つ のガス田 を 運 営してお 割を果たす建設現場ではピーク時に り、MIGA の 保証を受けた新規投 資 800人の労働者が雇用されます。 により、2014 年末までに合 計 7 つの また 2013年度には、 増大する同国の 新ガス田の掘削が可能になります。 エネルギー需要を満たすため MIGA 同 社 はまた、Marlin ガ ス 田 で 新 た は 2 件の投 資 案件に保 証を行いまし なプラットフォームを建 設 する予定 た。 同国政府は、 今後 6年間に発電量 で、2015年に生産が開始される見込 を約 80 %拡 大しようとしています。 みです。このプロジェクトはさらに、 近年の内戦を踏まえると、 コートジボ 同国政府と投資家の間で交わされた ワールの電力セクターは域内の基準 「ガス供給購買契約」の下で支払い を上回る堅実な実績を上げており、 を保証する、6,000万ドルの部分的リ すでに隣国数か国に電力を輸出して スク保証をIDAから受けています。 います。 2000年に建設が開始された Azito 地 熱 発電 所は、同 国の電 力需 こうして合計 20 億ドルを超える新規 要 の 3 分 の 1 以 上を賄っています。 こ 投 資を誘引することで、家 庭に灯り の独立系発電事業体は、 危機の間、 がともり、通 勤・通学時間が短 縮さ 終始電力を供給し続け、 場 合によっ れ、雇用が生み出され、コミュニティ ては従業員が発電施設の護衛にあた 開発プログラムを通して無 数の恩 恵 りました。 がもたらされることでしょう。 MIGA 年次報告書 2013 | 15 南・南 投 資 が し だ い に F D I の 重 要 な 供 給 源 と な る の開拓に努めています。こうした各国の努力の助けにな 中、MIGAは、この投資をもう一つの戦略的重点分野とし る解決策を提供するには民間セクターは不可欠な存在で て支援し続けています。今年は、MIGA の投 資保証 総 額 す。しかし多くの市場では、当初のコストが高く、政治的リ の 13%が途上国から別の途上国への FDIに関わるもので スクが大きいと見られ、しばしば投資家の決断を揺るが した。MIGAの保証を受けた南・南投資の例としては、リ しています。 ビアの製造工場やケニアの発電所が挙げられます。 ケニアの地熱発電から中国の廃棄物発電、さらにアルバ 全 体 的 に み ると、戦 略 的 重 点 分 野 のプ ロ ジェクトは ニア、アンゴラ、パキスタンでの水力発電まで、MIGAは、 2013年度の新規保証額の 82%を占めました。 世界のあらゆる地 域で持続可能な発電手段に投 資保証 を提供することでエネルギー源の変革に支援を行ってい 地域別視野に立つと、MIGAは今年、サブサハラ・アフリ ます。さらに最 近では、パナマとトルコの大 量 輸 送プロ カと中東・北アフリカに重点を置きました。 ジェクトも支援しました。 サブサハラ・アフリカは世銀グループにとっての最優先課 本年度はまた、シンプルサイクル発電からコンバインドサ 題であり、MIGAの保証は、この地域の開発に恩恵をもた イクル発電への変換に携わるコートジボワールとバング らす FDIの誘引で重要な役割を担っています。エネルギー ラデシュでのプロジェクトに加え、ニカラグアの風力エネ とインフラ分野では、公的資金源の乏しさも手伝って、不 ルギー・プロジェクトへの投資保証に調印しました。前者 足が生じており、MIGAはそれを補うために大きな力を注 のプロジェクトは、ガスの使 用量を増やさずに発電量を いでいます。世銀の試算によると、アフリカのインフラ不 拡大できるため、両国は二酸化炭素の年間排出量を大幅 足に対応するには年間 380 億ドルが必要だと見られてい に削減できます。 ます。民 間資 金へのアクセスを促 進し、官民 パートナー シップのような革新的な構造を用いることで、MIGAは、 アフリカの多くの人々に影響を与えるプロジェクトに投資 環境・社会基準 を仕向けることに役立ちました。今年、この地域でのプロ 健全な環境パフォーマンス、持続可能な自然資源管理、 ジェクトはMIGAの新規保証額の 54%を占めました。 社 会 的 責任 は、投 資を成 功 に導き、受 入 国の開 発 に資 するうえで 決 定 的な要 因となります。MIGA は、保 証を 本年度はまた、中東・北アフリカ( MENA)での取り組み 行ったすべての投 資に対して、一 連の包括的なパフォー にも続けて注 力しました。この地 域では、多くの国々が マンス基 準 を 適 用しており、環 境・社 会 基 準 の 担 当 者 従 来、欧 州からの投 資に依存してきましたが、その欧 州 は、MIGAの支援プロジェクトの潜在的な悪影響について が自らの財 政 問 題に取り組 んで いるため 、最 近の 不透 評 価し、それを極力抑え緩和する方策をクライアントに 明な情 勢がさらに悪化しています。その結果、雇 用や機 伝えています。また世銀グループ内で民間セクターを支援 会 の創出に必 要な資 金はかつてなく多 額に上っていま する部局との間で調和化を図るため、IFC が行った同様 す。MIGAにとってはこの時期こそ民間セクターが対応で の審査を基に MIGAの方針とパフォーマンス基準の更新 きない不足を補うべき重要なときだといえます。2011 年 を進めています。 度末、MIGAは、この地域への FDIを維持・促進するため に保険引受用の資金として10 億ドルを動員すると約束し 日本政 府の資金援助を受け、MIGA が管 理する「アフリ ました。それ以来、同地域で 6億 580万ドルの投資保証を カのための環 境・社 会チャレンジ基金 」は引き続き、ア 行っており、この目標に向けて着実な成 果を上げていま フリカへの対外投資家に技術支援を提供するメカニズム す。今年は、ヨルダン川西岸・ガザ地区投 資保証 信 託 基 となっています。この基金は、MIGAの保証をすでに受け 金を通じた 2件の製造プロジェクトを含め、同地域で合計 ているか、現在考慮されつつある投資家を対象にケース 5件のプロジェクトを支援しました。これらのプロジェクト ごとに受け付けています。この基金を通して、投資家は、 は、この困難な地 域に雇用とビジネス活動をもたらすで プロジェクトが 環 境・社 会パフォーマンスの向上に貢献 しょう。 するよう、MIGA や外部コンサルタントから専門的助言 を受けることができます。本年度、同基金は、エチオピア で 2 件の MIGA プロジェクトを支援しました。その一つは カーボン・フットプリントの削減 africaJUICEによるフェアトレード認証を受けた農業生産 各国は、再生可能なエネルギーと省エネ、二酸化炭素排 者組合の育成と、 他方は National Cement社による強固 出量の 少ない 都市 交 通に多 額の資 金を投じ、専門知 識 な環境・社会管理システムの確立です。 16 | MIGA 年次報告書 2013 ボックス 2 – 環境にやさしいビジネス: ニカラグアでのEcoPlanet Bamboo社 の活動 森 林 伐 採 は 、二 酸 化 炭 素 排 出 量 の い地 域 に 属 する遠 隔 の 南 大 西 洋自 17%以上を占め、 温室効果ガスの 3番 治 地 域 に 雇 用 を 生 み 出して い る の 目の多量 発 生 源となっています。木 です。この比 較 的 最 近のプロジェク 材に代わる持続可能な代替品があれ トが 地 元 経 済 にもたらして い る 成 ば、 二酸化炭素の排出量削減が容易 果は、雇 用創出、土地 改善、労 働 者 になるはずです。 の 技 能向上など、すでに目に見えて います。ニカラグ アにおける同 社の EcoPlanet Bamboo社は、MIGAの支 当 初 の 投 資 は 、高 失 業 率 の 地 域 に 援を受け、 従来、 木材を利用してきた 300人以上の雇用を生み、4,800エー 産業に、 相当量の代替原料を安定的 カー( 約 1,900 ヘクタール)の 荒 廃 に供給しようとしています。 MIGAか した 土 地 を 竹 農 園 に 変 え 、その結 ら2,700万ドルの保証を受け、 同社の 果 、生 物 多 様 性 に 貢 献し 、周 囲 の 投 資は、 ニカラグ アの荒 廃した土地 森 林 に 対 する圧 力 を 軽 減した ので を購入し、 竹 繊 維の輸出・販 売を目 す。EcoPlanet Bamboo社は、地元の 的とする商用竹農園へと変換するた サプライヤーを利用し、間接的な雇 めに 利 用されます。 これに伴 い、森 用を生み出すことにも腐心していま 林 管 理評議 会( FSC )の認 証 済み竹 す。同社の基 本 理 念は、女性を重要 繊維の生産・販売に向けた前処理施 な労働力とみなし、地元社会への貢 設の建 設 が予定されています。 竹繊 献を通じて良 好な関係を築き、教育 維の販 売ターゲットは、米 国をはじ を支 援し 、人々の生計を改善するこ め、 建設用・家具用ラミネート板や複 とにあります。 合材、 パルプ・紙生産、 再生可能エネ ルギー生産などに携わる多国籍木材 さらに昨 年 11 月、同 社は、認定炭素 生産会社です。 基 準( VCS )の下 でニカラグ アの 竹 農園に対し初めての炭素認証を受け MIGA の 保証は同社にとって決 定的 なものでした。 「要するに、 た企業となり、林 業と気候 変 動の両 MIGA の 保 証のおかげ で、 ニカラグ アへの投 分 野で 大きな節目を迎えました。従 資を倍増することができました」 と、 来、カーボン・ファイナンスの恩 恵に 同 社 のトロイ ・ワイズ マン最 高 経営 預かってこなかった国であり分 野で 責任者 (CEO)は述べています。 あることを踏まえると、この功績は、 同社が、現地にも、地域的にも、また この 投 資 は 開 発 に 非 常 に大 きな 影 国際的にも、環 境・社 会面で確固た 響 を与えています。同 国で 最も貧し る影響を与えたといえるでしょう。 MIGA 年次報告書 2013 | 17 開発の有効性 同報告書はまた、MIGAの投資保証が紛争後の環境での FDI活性化に役立ち、途上国から途上国への(南・南)技 MIGAは、保険引受を行った投資の開発結果を的確に把 術移転や知識交換を支援したと言及しています。 握することにより、業務 の焦 点をさらに鋭化し、より高 い次元で開発効果を達成することができます。それによ り、開発 効果の強化と測定を引き続き行って、過去のプ MIGAと企業倫理 ロジェクトから引き出した貴重な教訓を現行業務に応用 することが可能になります。 最 近 の あ る 推 定 に よ る と 、不 正 や 汚 職 に より 年 間 200~400億ドルもの資金が途上国から吸い上げられて 本年度は、MIGAが保険引受を行ったプロジェクトの開発 いると言 われています。不正・汚 職 は、多くの国で事 業 成果を測定・追跡する「開発効果指標システム( DEIS)」 の運営コストを高め、投資環境をむしばみ、法の支配力 の立ち上げから 3 年目を 迎 えます。このシステムを 通じ を弱めます。この不正・汚職が与える影響を認識し、今で て、MIGAは、支援を受けた投資、直接創出された雇用、 は、各種の協定や、法律、政策が施行され、MIGAのクラ 研 修 費、現 地 調 達 財、地 域 社 会への 投 資という一 連の イアント、受入国、投資国など世界中の事業活動を司る 指標をどのプロジェクトにもおしなべて測定しています。 ようになりました。 さらに、セクター別 指 標 の測 定も行っています。その 結 果、2013年度には、発行した保証額のほぼ 2倍にあたる54 高い企 業倫 理 基 準を適 用することは、有益で持 続 可能 億ドルの投資を誘引しました。 な FDI を期する際の MIGA の重要な方策の一つとなって います。MIGA が 2011 年に策定した倫理戦略は、保険引 また DEISには、保証契約の締結から3年が経過した時点 受を行った投資の開発成果を保護するのに役立っていま でプロジェクトの実際の開発結果を測定するプロセスが す。2012年には、贈賄、不正、詐欺、 マネーロンダリン 共謀、 盛り込まれています。来年度を皮切りに、2011 年度に締 グなど不道 徳な行動 や違法行為にかかる潜在的リスク 結された一 連の実 施中保証 契約の測定データが明らか を特定するため、引受プロセスの一環として正式な枠組 になり始めます。 みが設 定されました。MIGA の倫理に関するデューデリ MIGA は開発 効果の測定を引き続き改善しています。こ ジェンスで は 、取 引の 詳 細 へ の 配 慮 だ けでなく、プロ れに伴い、他の開発金融機関と連携して、指標の標準化 ジェクトの構造、ライセンス契約や入札の過程、さらにプ に努めています。 ロジェクトの関係企業やプロジェクト参加者が非倫理的 または不名誉な行動を引き起こしかねない危険性につい 開 発 効 果 を正 確 に 把 握 するため の もう一 つ の 有 効 な ての分析も常に行われます。 ツールとして MIGA の自己評 価プログラムが挙げられま す。この評価には、プロジェクトの結果を、事業パフォー MIGAの倫理に関するデューデリジェンス手続きは、支援 マンス、経済的持続可能性、民間セクター開発に与えた の対象となったプロジェクトで不正が生じる可能性を低 影 響、開発の成果、環境・社会面での成果という基準に 減するのに役立ちます。加えて、MIGAの保証契約書の中 照らして詳細にモニターすることなどが含まれます。こう には不正防止条項が組み込まれています。MIGAは、クラ した評価は、世銀の独立評価グループ(IEG)による評価 イアントやパートナーが当該国の法を守り、貿易・調達上 (本書の別項目を参照)とMIGA担当者によるプロジェク の規則を遵守し、世銀グループの不正防止基準に準拠す トの継 続的監視に加えて行われるものです。MIGA は今 るものと期待しています。 年、6 件のプロジェクトに対する自己評価を実施しました。 IEG は今 年 、途 上国における「世 銀グループによるイノ 2012 年に新規に開発されたモバイル・ アプリケーション ベーションと起業家への支援」についての評価を行いま には、 MIGA が支援するプロジェクトの情 報が搭載され した。その報告書によると、イノベーションは経済発展に ており、ユーザーは詐欺や不正の疑いのあるプロジェクト 不可欠なだけでなく、インクルージョンや持続可能性な を匿名で世銀グループの倫理局に通報できるようになっ どに関連した主な開 発問題に取り組む上でその重 要性 ています。また、このモバイル・アプリは国別、活動の種 を増していると強調しています。 (技 術 移転、 IEG は、 技 類別、キーワード別にプロジェクトを特定したり、画像を 術普及、新技術の買収を通じた)企業の技術向上に対す 送ったりすることが可能です。加えて、世銀グループとの る MIGA の支援が、多くの場合、イノベーション促 進、技 取引から締め出された企業や個人のリストにもアクセス 能育成 、民間セクター発展に貢献したと述べています。 できます。 18 | MIGA 年次報告書 2013 ボックス3 – MIGAの歴史 政治的リスク保証を提 供する国際機 加 盟 国 は 、バーレ ーン、バ ングラデ 関の設 立 案は、 MIGA が発足するよ シュ、 バルバドス、 カナダ、チリ、キプ り遥かに前の 1948 年ごろから浮上し ロス、 デンマーク、 エクアドル、 エジプ ていましたが、 実際にこの案 が具体 ト、ドイツ、 グレナダ、 インドネシア、 化し始めたのは 1985 年 9 月以降のこ ジャマイカ、 日本 、ヨルダン、 韓国、 とです。 当時、 世銀の総務会は MIGA クウェート、 レソト、 マラウィ、オラン の中心的使命をつづった設立協定を ダ、ナイジェリア、 パキスタン、 サモア、 支 持することで、 新たな投 資保 証機 サウジアラビ ア、 セネガル、 スウェー 関 の 設 立 プ ロセ ス に 着 手した ので デン、 スイス、 イギリス、 米国の 29 か す。 同協定には MIGAの使命とは 「公 国です。 正かつ堅固な基準に基づいて対外投 資を扱いつつ、 途上国の開発ニーズ、 MIGA は、途 上国における非商業的 政 策、 目的と合 致した状 況下で、生 リスクに対し投資保険を提 供する民 産的な目的のために、 途上国に対す 間および公的事業体を補完するため る資 本 と技 術 の 流 れを 強 化 するこ に設 立されました。MIGA の多国間 と」 と明記されています。 機 関としての 性 質や、先 進国と途 上 国から合同で支持を受けていること 1988年 4月12日、MIGAは、国際会議 は、 クロスボーダーの投 資家の 信任 において世銀グルー プの4番目の機関 を大幅に高めるとみられたのです。 として設 立され、 法的には別途の、 財政的には独立した機関として業務 今日、MIGAの使命は簡潔明瞭で を開始したのです。 MIGAへの加盟は す。それは、途上国への対外直接投 国際復興開発銀行 (IBRD)の全加盟 資の促進を通じて、経済成長、貧困 国に開放されており、設立時の資本 削減、人々の生活向上を図ることに 株式は 10 億ドルでした。 MIGA の原 あります。 MIGA 年次報告書 2013 | 19 MIGA 加盟国(179か国) 先進国( 25か国) オーストラリア、オーストリア、ベルギー、カナダ、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、フランス、ドイツ、ギリシャ、 アイスランド、アイルランド、イタリア、日本、ルクセンブルグ、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、ポルトガル、 スロベニア、スペイン、スウェーデン、スイス、イギリス、米国 途上国(154か国) アジア・大洋州 アフガニスタン、バングラデシュ、カンボジア、中国、フィジー、インド、インドネシア、韓国、ラオス人民民主共和国、 マレーシア、モルディブ、ミクロネシア連邦、モンゴル、ネパール、パキスタン、パラオ、パプアニューギニア、フィリピン、 サモア、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、タイ、東ティモール、バヌアツ、ベトナム ヨーロッパ・中央アジア アルバニア、アルメニア、アゼルバイジャン、ベラルーシ、ブルガリア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、クロアチア、キプロス、 エストニア、グルジア、ハンガリー、カザフスタン、コソボ、キルギス共和国、ラトビア、リトアニア、マケドニア(旧ユーゴ スラビア共和国)、マルタ、モルドバ、モンテネグロ、ポーランド、ルーマニア、ロシア連邦、セルビア、スロバキア共和国、 タジキスタン、トルコ、トルクメニスタン、ウクライナ、ウズベキスタン ラテンアメリカ・カリブ海 アンティグア・バーブーダ、アルゼンチン、バハマ、バルバドス、ベリーズ、ボリビア、ブラジル、チリ、コロンビア、コスタリカ、 ドミニカ、ドミニカ共和国、エクアドル、エルサルバドル、グレナダ、グアテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、 メキシコ、ニカラグア、パラグアイ、パナマ、ペルー、セントキッツ・ネーヴィス、セントルシア、セントヴィンセント・グレナ ディン、スリナム、トリニダード・トバゴ、ウルグアイ、ベネズエラ 中東・北アフリカ アルジェリア、バーレーン、ジブチ、エジプト、イラン、イラク、イスラエル、ヨルダン、クウェート、レバノン、リビア、 モロッコ、オマーン、カタール、サウジアラビア、シリア・アラブ共和国、チュニジア、アラブ首長国連邦、イエメン サブサハラ・アフリカ アンゴラ、ベニン、ボツワナ、ブルキナファソ、ブルンジ、カメルーン、カーボヴェルデ、中央アフリカ共和国、チャド、コモロ、 コンゴ(人民共和国)、コンゴ(共和国)、コートジボワール、赤道ギニア、エリトリア、エチオピア、ガボン、ガンビア、 ガーナ、ギニア、ギニアビサウ、ケニア、レソト、リベリア、マダガスカル、マラウィ、マリ、モーリタニア、モーリシャス、 モザンビーク、ナミビア、ニジェール、ナイジェリア、ルワンダ、サントメプリンシペ、セネガル、セーシェル、シエラレオネ、 南アフリカ、南スーダン、スーダン、スワジランド、タンザニア、トーゴ、ウガンダ、ザンビア、ジンバブエ 加盟要件の適合過程にある国 ブータン、ミャンマー 20 | MIGA 年次報告書 2013 連絡先 上級幹部 本田桂子 khonda@worldbank.org 長官 Michel Wormser mwormser@worldbank.org 副総裁兼最高業務責任者 Ana-Mita Betancourt abetancourt@worldbank.org 取締役兼法務顧問 Kevin W. Lu klu@worldbank.org 地域担当取締役 — アジア・大洋州 Edith P. Quintrell equintrell@worldbank.org 業務担当取締役 Lakshmi Shyam-Sunder lshyam-sunder@worldbank.org 最高財務責任者兼財務・リスク管理担当取締役 Ravi Vish rvish@worldbank.org チーフエコノミスト兼経済・持続可能性担当取締役 Marcus S.D. Williams mwilliams5@worldbank.org 戦略・コミュニケーションズ・パートナーシップ担当主任 地域拠点 アジア・大洋州 — Kevin W. Lu klu@worldbank.org 地域担当取締役 ヨーロッパ・中東・アフリカ — Olivier Lambert olambert@worldbank.org 地域担当マネージャー 保険引受部門 Antonio Barbalho abarbalho@worldbank.org エネルギー・資源採掘産業 Nabil Fawaz nfawaz@worldbank.org 農産物ビジネス・製造・サービス Olga Sclovscaia osclovscaia@worldbank.org 金融・通信 Margaret Walsh mwalsh@worldbank.org インフラ 再保険部門 Marc Roex mroex@worldbank.org 商品に関する問合せ migainquiry@worldbank.org マスコミに対する窓口 Mallory Saleson msaleson@worldbank.org MIGA 年次報告書 2013 | 21 www. miga . o rg Multilateral Investment Guarantee Agency World Bank Group 1818 H Street, NW Washington, DC 20433 USA t. 202.458.2538 f. 202.522.0316 ISBN 978-1-4648-0059-7