世 界 銀 行 年 次 報 告 2 0 0 6 世界銀行年次報告 2006 世界銀行(ワシントン本部) 世界銀行東京事務所 1818 H Street, NW 〒 100-0011 Washington, DC 20433 USA 東京都千代田区内幸町 2-2-2 電 話:202-473-1000 富国生命ビル 10F フ ァ ッ ク ス:202-477-6391 電 話:03-3597-6650(代) ホームページ:www.worldbank.org フ ァ ッ ク ス:03-3597-6695 E メ ー ル:wbannualreport@worldbank.org ホームページ:http://www.worldbank.org/japan/jp PIC 東京(世界銀行情報センター) 世界銀行情報センター(Public Information Center、通称 PIC)は、世銀の業務や政策、開発問題に関する情報窓口です。 PIC 東京では、世銀の出版物や資料に関する情報サービスを行うと共に、世銀の途上国支援の取り組みについて、皆様にご理 解いただくことを目的とし、どなたでも気軽にご参加頂けるさまざまなプログラムおよびイベントを開催しています。 開館日:月曜日〜金曜日 午前 10 時〜午後 6 時 休館日:土日、祝祭日、年末年始(臨時休館させていただく場合があります) THE WORLD BANK 連絡先:〒 100-0011 東京都千代田区内幸町 2-2-2 富国生命ビル 1F 電 話:03-3597-6650 E メール:ptokyo@worldbank.org ISBN 0-8213-6759-5 活動概要 | 2006 年度 IBRD(単位:100 万ドル) 2006 年度 2005 年度 2004 年度 2003 年度 2002 年度 承認額 14,135 13,611 11,045 11,231 11,452 うち開発政策融資 4,906 4,264 4,453 4,187 7,384 プロジェクト数 112 118 87 99 96 うち開発政策融資 21 23 18 21 21 実行総額 11,833 9,722 10,109 11,921 11,256 うち開発政策融資 5,406 3,605 4,348 5,484 4,673 元本返済額(前納分を含む) 13,600 14,809 18,479 19,877 12,025 実行純額 (1,767) (5,087) (8,370) (7,956) (769) 融資残高 103,004 104,401 109,610 116,240 121,589 未実行額 34,938 33,744 32,128 33,031 36,353 業務活動による収益 a 1,740 1,320 1,696 3,021 1,924 利用可能資本および準備金 33,339 32,072 31,332 30,027 26,901 資本/貸出比率 33% 31% 29% 27% 23% a. 財務会計基準書第 133 号の規定に基づき、IBRD の財務諸表では「非商品勘定デリバティブにともなう総務会承認済みの移転および未実現純利得(損 失)差引前純利益」と報告されている。 IDA(単位:100 万ドル) 2006 年度 2005 年度 2004 年度 2003 年度 2002 年度 承認額 9,506 8,696 9,035 7,282 8,068 うち開発政策融資 2,425 2,301 1,698 1,831 2,443 プロジェクト数 167 160 158 141 133 うち開発政策融資 30 32 23 24 23 実行総額 8,910 8,950 6,936 7,019 6,612 うち開発政策融資 2,425 2,666 1,685 2,795 2,172 元本返済額 1,680 1,620 1,398 1,369 1,063 実行純額 7,230 7,330 5,538 5,651 5,549 融資残高 127,028 120,907 115,743 106,877 96,372 未実行額(融資) 22,026 22,330 23,998 22,429 22,510 未実行額(グラント) 3,630 3,021 2,358 1,316 148 開発グラント供与額 1,939 2,035 1,697 1,016 154 通知 本年次報告 は、2005 年 7 月 1 日から 2006 年 6 月 30 日までの ポール・ウォルフォウィッツは、本年次報告、運営予算、および監 活動を対象に、国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA) 査済み財務諸表を総務会に提出しました。 ―世界銀行と総称―の理事が、それぞれの機関の規定に従って作 、多数国間投資保証機関(MIGA) 国際金融公社(IFC) 、および 成したものです。IBRD と IDA の総裁および理事会議長を兼務する 投資紛争解決国際センター (ICSID)の年次報告は別途刊行されます。 世界銀行年次報告 2006 目次 CD-ROMの内容 世界銀行総裁兼理事会議長からのメッセージ 2 組織に関する情報 理事会 4 地域別所得 世界銀行グループ 8 新規承認プロジェクト 1 世界の貧困との闘い 11 融資データ 2 地域別展望 27 財務諸表 世界銀行の地域区分、現地事務所、および融資適格国 28 アフリカ地域 30 東アジア・大洋州地域 34 南アジア地域 38 ヨーロッパ・中央アジア地域 42 ラテンアメリカ・カリブ海地域 46 中東・北アフリカ地域 50 3 2006年度の活動概要 54 注:財務諸表の全文(世銀幹部の所見と分析、および国際復興開発銀行/国際開発協会の監査済み 財務諸表)は本年次報告の添付 CD-ROM に収められています。本年次報告の内容はインターネット でも公開されています(英 語 版:www.worldbank.org、日本 語 版:http://www.worldbank.org/ 。 japan/jp) 本書中のドル表記はすべて、特に断りがない限り、現在の米ドルを意味します。図中の%の値は 四捨五入したため、合計が 100%とならない場合があります。 世界銀行 年次報告書 2006 1 世界銀行総裁兼理事会議長からのメッセージ 本年次報告で取り上げている 2006 年度は、貧困削減に対する 数が 1981 年から 2002 年の間に、1 億 6400 万人から、総人口の 世界的な取り組みが活気づいた 1 年となりました。 約半数にあたる 3 億 300 万人へとほぼ倍増しています。2015 年 「開発年」である 2005 年は、国連加盟 189 カ国が貧困、飢餓、 には、さらに増加して、3 億 3600 万人になると予想されています。 疾病、ジェンダー不平等、非識字、環境破壊に関する具体的な一 しかし、楽観できる要因もあります。1995 年以降、アフリカの 連の削減目標(ミレニアム開発目標)に合意してからの 5 年間に 非産油国 15 カ国(アフリカの総人口の 35%を占める)では経済 ついて、実績評価を行う機会となりました。 成長率が各々 4%以上となっており、同 15 カ国の成長率の中央値 7 月に英国グレンイーグルズで開催された主要 8 カ国首脳会議 は 5.3%に達しています。初等教育就学率は、1990 年の 73%から (G-8 サミット)では、ミレニアム開発目標達成に向けた歩みを促 2004 年には 93%へと急上昇しています。多くの国での公共財政 進させるべく、援助国により、援助額を倍増し最貧国が国際機関 管理、行政改革、透明性改善といった、ガバナンスの向上も、ア に対して抱える債務を免除するという重大な公約がなされました。 フリカの人々に希望と機会をもたらすものとなっています。 世界銀行に対しては、アフリカでの貧困削減の成果を確実なもの 現在では、援助を提供しても、堅固なガバナンスなくして持続 とし、クリーン・エネルギーと開発への投資を動員するための新 可能な成果は得られないことが認識されています。よいガバナン たな枠組みを構築するよう要請が行われました。 スとは本質的に、 透明性と説明責任のある制度、 優れた技能と能力、 G-8 によるこのイニシアティブは、昨年 9 月の年次総会でトレ そして正しい行動をしようとする根本的な意欲が組み合わさった バー・マニュエル開発委員会議長が言うところの「G-184 イニシ ものであり、これらにより、政府は国民へのサービスを効率的に アティブ」となりました。世銀総務会は 2006 年 3 月、一部の最 提供することが可能となります。昨年、世銀は、国レベル、世銀 貧国の国際開発協会(IDA)債務 370 億ドルを 40 年間にわたり帳 が支援するプロジェクトでの汚職リスクの最小化、民間セクター 消しとする、多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)の融資パッ も含め、 ガバナンス向上に関心を寄せるグループとの世界的なパー ケージに合意しました。この合意は、拡大重債務貧困国(HIPC) トナーシップの強化という 3 つの領域で、ガバナンスと不正対策 イニシアティブで IDA がすでに承認していた約 170 億ドルの債務 の活動を強化しました。 削減に加えて行われたものです。 よいガバナンスは、投資で雇用を創出することによって、貧困 9 月には、インフラ格差の縮小やマラリア対策をはじめ、ビジ 層が貧困から脱出する機会を生み出すためにも重要です。この点 ネスの障害となっている規制の簡略化など、あらゆる事項に関す でも重要な進展が見られます。世銀グループの「ビジネス環境の る具体的目標を定めたアフリカ行動計画が、世銀理事会に提出さ 現状 2006」によると、2004 年にアフリカの 10 カ国がビジネス環 れました。アフリカには依然として深刻な開発課題があります。 境改善のための改革を導入しました。さらに重要なのは、20 カ国 世界的には経済成長率が上昇し貧困率が低下しているにもかかわ を超える国々で「ビジネス環境分析」の指標そのものが改革を促 らず、サブサハラ・アフリカでは、極度の貧困状態にある人々の し、政策対話や法的改革に寄与していることです。 2 世界銀行 年次報告書 2006 2006 年度、国際復興開発銀行(IBRD)の融資総額は 141 億ド 責任ある持続可能なインフラ、すなわち人間開発を促進するイン ルに達しました。IDA 融資・グラントの総額は 95 億ドルで、その フラの整備を主導していきます。 半分(48 億ドル)がアフリカ諸国に対するものでした。現在、ア 昨年、私は 5 つの大陸を訪れ、約 30 カ国で政策担当者、企業家、 フリカに対する援助総額の 13%が IDA により拠出されています。 シビルソサエティ組織のリーダー、農業従事者、子供たちと話を 国際金融公社(IFC)は設立 50 周年を迎え、融資承認 総 額は する機会に恵まれました。そうした交流を通じて私が確信したの 67 億ドルを記録しました。また、多数国間投資保証機関(MIGA) は、われわれの前にあるのは貧困削減という困難な問題であると の保証額は 13 億ドルに増加し、そのうち 1 億 8000 万ドルはアフ 同時に、大きな変化をもたらす未曾有の機会でもあるということ リカでのプロジェクトに向けたものでした。 1 日 1 ドル未満の生活をしている人々の数は、 です。過去 25 年間に、 サブサハラ・アフリカは、世銀の最優先課題となっていますが、 世界全体で 5 億人減少しました。この傾向が続けば、2015 年まで 唯一の優先課題ではありません。世界の貧困層の 25%は中所得国 にさらに 4 億人が貧困から脱出できると見込まれています。こう に住んでいます。ブラジル、中国、インドで極度の貧困状態にあ した数値は、貧困削減が単なる希望ではないことを示すものです。 る人々の合計数は、サブサハラ・アフリカ全体の極貧層の人数を 貧困削減は、 途上国内外のパートナーシップ、 ビジョン、優れたリー 上回っています。今後も世銀は、鳥インフルエンザなどの疾病へ ダーシップ、そして投資によって、現実のものとなり得るのです。 の対策を講じたり、途上国のクリーン・エネルギーへのアクセス 拡大を支援したりするなど、地球規模の公共財の提供において、 引き続き大きな役割を果たしていきます。 2006 年度の終わりに当たり、私は世銀をより効果的な組織にす るための構造的変革を発表しました。かつての「環境・社会・持 続可能な開発」 と「インフラストラクチャー」 のネットワークは 「持 続可能な開発」と呼ばれるネットワークに統一され、 「金融」と「民 間セクター開発」のネットワークも統合されました。 ポール・ウォルフォウィッツ 環境プロジェクトやインフラ・プロジェクトの統合は、過去 10 年間に得られた教訓の重要な成果であるといえます。 1990 年代、 世銀はインフラ投資を大幅に削減しました。しかし、世界中で基 本的なエネルギー・サービスすら受けられない人々が 16 億人にも 上っていたため、われわれは、インフラ投資削減の流れを逆転さ せることが必要となり、 現在に至っています。こうした中で世銀は、 世界銀行 年次報告書 2006 3 理事会 理事会は世銀業務全般について責任を負っており、総務会から 導入が挙げられます。また、理事会の有効性を高めるための方法 委任された権限に基づいてその任務を遂行します。世銀協定の規 としては、会議の運営や検討用資料の作成・提出に関する手順・ 定により、24 名の理事のうち 5 名は 5 大出資国が任命し、残りの ガイドラインの変更と明確化などが挙げられます。これらの政策 理事はその他の加盟国から成る複数の理事選出母体(2 年ごとに は異なる実行段階にあります。これらの政策を実施した結果、成 選出)により選任されます。 果が一段と重視されるようになり、また、常任委員会ではいっそ 理事会は、総裁が提出する IBRD の融資・保証案件、および う選りすぐった問題が討議されるようになりました。理事会はこ IDA の融資・グラント・保証案件を検討・承認します。理事会は のほか、理事会の規則と手続きに関するハンドブックの作成、規 世銀の業務方針や方向性を決定する上で重要な役割を果たしてい 則や手続きに違反した場合の制裁枠組みの確立、提言の実行状況 ます。その際、理事会は世銀グループとその活動に対する加盟国 を調査するための時間枠の設定などの活動に取り組んでいます。 の認識の変化を考慮します。また、理事会は会計監査報告書、運 理事会は「世銀・IMF 合同開発委員会」を通じて国際通貨基金 営予算、世銀の活動や政策をまとめた年次報告(本報告書) 、およ (IMF)と密接に協力し合っています。理事会は半年ごとに開催さ び理事会が総務会に提出する必要があると判断した諸事項を、年 れる開発委員会の会合のアジェンダや課題文書の作成において重 次総会の場で総務会に提出する任を負っています。 要な役割を果たしています。2006 年春期総会の後、開発委員会 理事会はワシントン DC の世銀本部で定期的に会合を開いてい はよいガバナンス(不正との闘いを含む)と相互的な説明責任の ます。理事会には監査委員会、 予算委員会、 開発効果委員会、統治・ 強化の必要性を強調しました。 管理委員会、および人事委員会の 5 つの常任委員会が設置されて 2006 年度、理事会は援助の有効性、貿易交渉におけるドーハ おり、各理事は 1 つ、または複数の委員会に所属しています。理 開発ラウンドの進捗状況、世銀の「アフリカ行動計画」 、債務削減 事会は常任委員会の支援を得ながら、世銀の政策と慣行を詳細に や IDA との関係をめぐる実行の問題、 および「重債務貧困国(HIPC) 検討し、その監督責任を果たしています。常任委員会は理事会全 イニシアティブ」の実行状況をめぐる問題に関する文書や報告書 体に代わって意思決定を行う権限を持っていません。独立評価グ を検証しました。また、理事会は世銀・IMF 間の連携を評価する ループ(IEG:かつての業務評価局)は独立した立場から、世銀業 任を負う「外部評価委員会」の創設について検討しました。 務の妥当性、持続可能性、効率性、および有効性に関するアセス プロジェクトの実施状況を直接評価するため、 理事会のメンバー メントを提供しています。このグループは理事会に対して直接的な が 2005 年 11 月にはグレナダ、グアテマラ、ペルーを、2006 年 説明責任を負っています(詳細については www.worldbank.org/ 3 月には中央アフリカ共和国、ガボン、ガンビアを、2006 年 5 月 。 boards および www.worldbank.org/ieg を参照) にはロシア連邦をそれぞれ訪問しました。彼らはこれらの訪問に 2006 年度、理事会はその有効性を高め、世銀の意思決定に対 際して、プロジェクトマネージャー、受益者、政府関係者、シビ する早期の意見表明を確実にするための政策を承認しました。主 ルソサエティ組織や民間セクターの代表者、その他の開発パート な政策としては、四半期ごとの理事会活動プログラムの戦略的検 ナー、金融機関、現地事務所の世銀職員などさまざまな関係者と 討、スケジュール調整プロセス、政策課題の追跡記録手段などの 会合を持ちました。 4 世界銀行 年次報告書 2006 左から右へ: (起立)Gino Alzetta, Zou Jiayi, Marcel Massé, Paulo F Gomes, Jakub Karnowski, Jaime Quijandria, Mulu Kelsela, Dhanendra Kumar, 大久保良夫 , Sid Ahmed Dib, Pierre Duquesne, Joong-Kyung Choi, Jennifer Dorn, Herwidayatmo, Mahdy Ismail Aljazzaf, Abdulrahman M. Almofedhi, Biagio Bossone;(着席)Otaviano Canuto, Thorsteinn Ingolfsson, Eckhard Deulscher, Alexey G. Kvasov, Jan Willem van der Kaaij, Tom Scholar 写真なし : Luis Marti 戦略的課題 債務救済 2006 年度に理事会が重点的に取り組んだ分野は次のとおりです。 2006 年 3 月、理事会は HIPC イニシアティブの完了時点に到達 した国に対して債務救済措置を講じる「多国間債務救済イニシア 戦略フレームワーク ティブ(MDRI) 」を承認しました。MDRI は 2006 年 7 月 1 日に発 理事会の活動は引き続き世銀の戦略フレームワークの 2 つの柱 効しました。理事会はまた、債務救済を支援するために世銀と である「良好な投資環境の構築支援」 と「貧しい人々のエンパワー IMF が共同で作成したいくつかの文書の検討も行いました。こうし メント」を中心としたものとなりました。一連の介入の中には、 た文書の中には、HIPC イニシアティブの実行状況に関するものや、 健全なガバナンス、持続的開発、社会サービスの包括的な供給、 いわゆるフリーライダー問題を含む、IDA の MDRI 実行について検 インフラの改善、民間セクター開発、雇用創出などに向けた支援 討するものなどがありました。2006 年度、理事会は、1 件の HIPC が含まれています。理事会は世銀の活動を厳選する必要性を再度 完了時点文書についても検討しました(www.worldbank.org/debt 主張するとともに、開発パートナーとの連携の強化を求めました。 および第 1 章を参照) 。 また理事会は、「アフリカ行動計画」とそれに含まれる 25 の具体 的なイニシアティブを IDA の第 14 次増資の実施期間中に世銀の 国別プログラム 定義するアフリカ地域で実行することを承認しました。そのほか 国別援助戦略(CAS) 、国別パートナーシップ戦略、および切迫 に理事会が討議した問題は、ドナー国間の活動方針・手順・慣行 した状況にある低所得国や紛争後の国、中所得国に関する世銀の の調和の促進、結果重視型のメカニズムを通じて援助の有効性を 政 策 が、引き続き世 銀グ ル ープ の 活 動 の 指 針となりました。 高める方法の概要を記した「パリ宣言」の実行促進、HIPC を含 2006 年度、理事会は 31 件の CAS および CAS 関連文書を検討し む低所得国および脆弱な国々のニーズの充足、および中所得国と ました。理事会はこれらの戦略文書に詳記された結果アジェンダ の関係強化に焦点を当てたものでした。 の最重要目標として、貧困削減をいっそう重視するよう提言しま した。またそうした見地から、理事会は CAS の成果を初めて体系 貧困削減 的に評価した CAS 完了報告書検討の主流化を歓迎しました。理事 理事会は世銀の貧困削減と「ミレニアム開発目標」の達成に向 会は IBRD、IDA、IFC および MIGA が構築した支援戦略の実施に けた貢献の実行状況を引き続き監視しました。2006 年度、理事会 向けた世銀の取り組みを支援しました。また、その他の開発パー は 10 件の貧困削減戦略(PRS)文書と 20 件の PRS 進捗状況報 トナーとの協力関係の強化も支援しました。 告書を検討し、改善の余地のある分野を特定しました。また理事 会は、PRS の効力や、貧困削減目標の達成を支援するために世銀 監督責任と受託者責任 が提供している融資手段である貧困削減戦略融資の有効性など、 世銀は監査委員会等を通じて、監督責任と受託者責任を果たし 貧困削減に世銀が果たす役割を強化することを目的として作成さ ています。監査委員会は、世銀グループの財務状況、リスク管理 れたほかのいくつかの文書についても検討しました。 とアセスメント手順、ガバナンスと管理の妥当性、および会計と 世界銀行 年次報告書 2006 5 報告の方針・手続きに関して理事会が行う監督および意思決定を の設置からこれまでの間に受理された調査請求は 40 件となりまし 支援する権限を与えられています。 た。このうちの 13 件はアフリカ地域、12 件はラテンアメリカ地域、 10 件は南アジア地域、4 件は東アジア・大洋州地域、および 1 件 運営予算 は東ヨーロッパ地域から提出されたものです。40 件の請求のうち 予算委員会が検討し理事会が承認した 2006 年度の一般管理費 35 件が登録済みであり、査閲パネルは 20 件について調査の実施 は 21 億 280 万ドル(返済金額を除く)であり、このうちの 1 億 を提言しました。このうちの 6 件はパネルの活動方針に修正条項 7190 万ドルは開発グラント・ファシリティに関するものでした。 が加えられた 1999 年 4 月より前に承認されたもの、14 件はそれ 一般管理費の純額は 15 億 4330 万ドル、前年度予算からの実質増 以降に承認されたものです。現在は 2 件の調査が行われています 加率は 0%、名目増加率は 3% でした。2006 年 6 月、理事会は (2006 年 6 月現在) 。 2007 年度の運営予算として、 21 億 1860 万ドル(返済金額を除く) 査閲パネルは一般市民、中でも特に貧しい人々に、世銀理事会 を承認しました。 に申し立てを行う手段を提供しています。市民から申し立てを受 けた理事会は、査閲パネルの提言をもとに、調査を実施するかど 査閲パネル うかを決定します。申し立てへの対処のプロセスは、世銀が融資 査閲パネルは 4 件の調査請求を受理しました。調査請求の対象 したプロジェクトにより悪影響を受けている可能性のある人々に となった世銀プロジェクトは、ホンジュラスの「土地管理プロジェ 権利と発言の機会を与えています。 クト」 、ナイジェリアの「西アフリカ・ガスパイプライン・プロジェ 調査請求、請求に対する執行部の回答、パネルの提言、パネル クト」 、ルーマニアの「鉱山閉鎖と社会的保護」 、およびコンゴ民 の 調 査 報 告 書、 お よ び 2006 年 度 に 調 査 の 対 象 と な っ た プ 主共和国の「経済復興融資の暫定的支援および緊急的な経済・社 ロ ジ ェクトに 対 す る 執 行 部 の 提 言 は、 世 銀 の ウェブ サ イト 会復帰支援に関するプロジェクト」です。この結果、査閲パネル (www.worldbank.org/inspectionpanel)で公開されています。 6 世界銀行 年次報告書 2006 理事、理事代理、および委員会委員 | 2006 年 6 月 30 日 理事 理事代理 国名 任命理事 (空席) Jennifer Dorn 米国 (空席) 大矢俊雄 日本 Eckhard Deutschere (C) Walter Hermannh ドイツ Tom Scholarb (VC) Caroline Sergeant 英国 Pierre Duquesnea (C) Alexis Kohler フランス 選任理事 Gino Alzettaa, d (VC) Melih Nemli オーストリア、カザフスタン、スロバキア共和国、スロベニア、チェコ共和国、トルコ、 (ベルギー) (トルコ) ハンガリー、ベラルーシ *、ベルギー、ルクセンブルグ Luis Martia, d Jorge Familiarh エルサルバドル、グアテマラ、コスタリカ、スペイン、ニカラグア、 (スペイン) (メキシコ) ベネズエラ(・ボリバル共和国)*、ホンジュラス、メキシコ Jan Willem van der Kaaijc, e Anca Ciobanuh アルメニア、イスラエル、ウクライナ、オランダ、キプロス、クロアチア、グルジア、 (オランダ) (ルーマニア) 、モルドバ、 ブルガリア *、ボスニア・ヘルツェゴビナ、マケドニア(旧ユーゴスラビア共和国) ルーマニア * Marcel Masséd, e Gobind Gangah アイルランド、アンティグア・バーブーダ *、カナダ、ガイアナ、グレナダ、ジャマイカ *、 (カナダ) (ガイアナ) セントクリストファー・ネーヴィス、セントビンセントおよびグレナディーン諸島、セントルシア、 ドミニカ国、バハマ *、バルバドス、ベリーズ Otaviano Canutob (C), i Jeremias N. Paul, Jr. エクアドル、コロンビア、スリナム *、トリニダード・トバゴ、ドミニカ共和国、ハイチ、パナマ、 (ブラジル) (フィリピン) フィリピン、ブラジル Biagio Bossonea, b Nuno Mota Pinto アルバニア、イタリア、ギリシャ、サンマリノ *、ポルトガル、マルタ *、東ティモール (イタリア) (ポルトガル) Joong-Kyung Choib, e Terry O’Brienh (C) オーストラリア、カンボジア、キリバス、サモア、ソロモン諸島、ニュージーランド、バヌアツ、 (韓国) (オーストラリア) パプアニューギニア、パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア(ミクロネシア連邦)、モンゴル、 韓国(大韓民国) Mathias Sinamenyec, d Mulu Ketsela アンゴラ、ウガンダ、エチオピア、エリトリア、ガンビア、ケニア、ザンビア、シエラレオネ、 (ブルンジ) (エチオピア) ジンバブエ、スーダン、スワジランド、セーシェル *、タンザニア、ナイジェリア、ナミビア *、 ブルンジ、ボツワナ、マラウイ、モザンビーク、リベリア、レソト、南アフリカ Dhanendra Kumarc, d Zakir Ahmed Khanh インド、スリランカ、バングラデシュ、ブータン (インド) (バングラデシュ) Thorsteinn Ingolfssonb, e Svein Aassh アイスランド、エストニア *、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、フィンランド、ラトビア、 (アイスランド) (ノルウェー) リトアニア * Sid Ahmed Dibc (VC), e Shuja Shah 、ガーナ、チュニジア、 アフガニスタン、アルジェリア、イラク、イラン(・イスラム共和国) (アルジェリア) (パキスタン) パキスタン、モロッコ Pietro Veglioc (C), d Jakub Karnowski アゼルバイジャン、ウズベキスタン、キルギス共和国、スイス、セルビア・モンテネグロ、 (スイス) (ポーランド) タジキスタン、トルクメニスタン *、ポーランド Mahdy Ismail Aljazzaf Mohamed Kamel Amr アラブ首長国連邦、イエメン(共和国)、エジプト(・アラブ共和国) 、オマーン、カタール *、 (クウェート) (エジプト・アラブ共和国) クウェート、シリア・アラブ共和国、バーレーン *、モルディブ、ヨルダン、リビア、レバノン Zou Jiayia, b Yang Jinlinh 中国 (中国) (中国) Abdulrahman M. Almofadhib Abdulhamid Alkhalifa サウジアラビア (サウジアラビア) (サウジアラビア) Alexey G. Kvasovd (C) Eugene Miagkovh ロシア連邦 (ロシア連邦) (ロシア連邦) Herwidayatmoa, e Nursiah Arshadh インドネシア、シンガポール、タイ、トンガ、ネパール、フィジー、ブルネイ・ダルサラーム *、 (インドネシア) (マレーシア) ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス人民民主共和国 Jaime Quijandriac, d Alieto Guadagni アルゼンチン、ウルグアイ *、チリ、パラグアイ、ペルー、ボリビア (ペルー) (アルゼンチン) Paulo F. Gomesb, e (VC), f Louis Philippe Ong Sengh カーボヴェルデ、カメルーン、ガボン、ギニア、ギニアビサウ、コートジボワール、コモロ、 (ギニアビサウ) (モーリシャス) コンゴ(共和国) 、サントメ・プリンシペ、ジブチ、セネガル、チャド、 、コンゴ(民主共和国) トーゴ、ニジェール、ブルキナファソ、ベナン、マダガスカル、マリ、モーリシャス、 モーリタニア、ルワンダ、赤道ギニア、中央アフリカ共和国 * IBRDのみに加盟。 委員会 a. 監査委員会 f. 年金管理委員会 C =委員長 b. 予算委員会 g. 年金財政 VC =副委員長 c. 開発効果委員会(CODE) h. CODE 小委員会(2005 年 1 月 12 日発足) d. 人事委員会 i. 倫理委員会 e. 統治管理委員会 世界銀行 年次報告書 2006 7 世界銀行グループ 世界銀行グループは相互に密接な関係にある 5 つの機関で構成されています。世銀はグループ機関と協力しながら、 世界各国の開発プロジェクトを支援しています。グループ間の協力の例としては、合同の国別援助戦略、投資促進イ ニシアティブ、外国投資助言サービス、大規模なインフラ・プロジェクトに対する保証プログラム、零細・中小事業 者を育成するための合同プログラム、HIV/ エイズ(ヒト免疫不全ウィルス/後天的免疫不全症候群)の啓蒙・予防活 動などがあります。 国際復興開発銀行(IBRD) 世銀グループの中でも最古の機関である の 健 全 な 財 務 体 質 を 示 す 指 標 と な り、 1944 年設立 | 184 加盟国 IBRD は、中所得国および信用力のある貧 IBRD が資本市場から低利で資金を調達 累積融資額:4202 億ドル * 困国の貧困を削減するために、 融資、保証、 し、借入国に緩やかな条件で融資を行う 2006 年度融資額:33 カ国の 112 件の リスク管理サービス、および分析・助言 ことを可能にしています。IBRD の理事会 新規プロジェクトに対して 141 億ドル サービスなどの非融資業務を提供し、こ は 同 機 関 の 184 の 加 盟 国 を 代 表 す る れらの国の持続可能な開発を促進してい 24 名の理事で構成されています。このう *2005 年度から継続中の保証を含む。 ます。過去の融資から得られた利益は、 ち 5 名は任命理事、 19 名は選任理事です。 開発活動の原資となるだけでなく、IBRD IBRD の主要財務指標 | 2002 〜 2006 年度 (単位:100 万ドル) 2002 2003 2004 2005 2006 業務活動による収益 a 1,924 3,021 1,696 1,320 1,740 融資残高 121,589 116,240 109,610 104,401 103,004 総資産 227,454 230,062 228,910 222,008 212,326 自己資本 32,313 37,918 35,463 38,588 36,474 a. 財務会計基準書第 133 号の規定に基づき、IBRD の財務諸表では「非商品勘定デリバティブにともなう総務会承認済みの移転および未実現純利得(損失)差引前純利益」と報告さ れている。 国際開発協会(IDA) IDA は世界 81 の最貧国にきわめて譲許的 たしています。IDA の資金は借入国が推進 な融資を行っています。これらの国々は市 する貧困削減戦略の主要政策分野で用い 1960 年設立 | 165 加盟国 累積承認額:1700 億ドル * 場の条件で借入れを行うことはほとんど、 られています(生産性の向上、責任あるガ 2006 年度承認額:59 カ国の 167 件の もしくはまったくできないため、ドナー国 バナンス、健全な投資環境の構築、教育 新規プロジェクトに対して 95 億ドル から IDA への拠出金と IBRD 純益からの移 や医療など基本サービスを受ける機会の 転によって調達され、無利子で提供され 拡大など)(www.worldbank.org/ida 参 * 2005 年度から継続中の保証を含む。 る IDA の融資がきわめて大きな役割を果 照)。 IDA の主要財務指標 | 2002 〜 2006 年度 (単位:100 万ドル) 2002 2003 2004 2005 2006 業務活動による収益(損失) 692 108 (1,684) (986) (2,043) 開発融資残高 96,372 106,877 115,743 120,907 127,028 開発原資合計 109,495 119,454 127,930 130,378 102,871 8 世界銀行 年次報告書 2006 国際金融公社(IFC) IFC は世銀グループの民間セクター投資 IFC は民間投資家が高リスクと考える市 1956 年設立 | 178 加盟国 機関です。IFC は政府保証を受けずに途 場に投資し、現地企業にコーポレート・ 承認済みポートフォリオ:216 億ドル 上国と移行国の持続可能な民間企業に投 ガバナンスや環境・社会分野の専門知識 (協調融資分の 51 億ドルを含む) 資を行うことにより、貧困削減と人々の を提供することで、現地プロジェクトの 2006 年度承認額:66 カ国の 284 件の 生活の向上に寄与しています。これらの 投資価値を高めています。IFC は民間セ プロジェクトに対して 67 億ドル 企 業 に は 投 融 資、 長 期 融 資、 ス ト ラ ク ク タ ー の イ ニ シ ア テ ィ ブ に 関 し て、 チャード・ファイナンス、リスク管理商 IBRD、IDA、MIGA お よ び ICSID と 協 力 品のほか、技術協力や助言サービスが提 しています。詳しい情報は IFC の年次報 供されます。IFC の支援対象となるのは、 告 書 に 掲 載 さ れ て い ま す(www.ifc.org 資本の確保が困難な地域・国の企業です。 参照) 。 IFC の主要財務指標 | 2002 〜 2006 年度 (単位:100 万ドル、特に断りのない限り) 2002 2003 2004 2005 2006 営業収益 a 161 528 982 1,953 1,409 純益 215 487 993 2,015 1,278 流動資産(関連デリバティブを除く) 14,532 12,952 13,055 13,325 12,730 融資・出資純額 7,963 9,377 10,279 11,489 12,731 借入金(支払済・残高) 16,581 17,315 16,254 15,359 14,967 資本合計 6,304 6,789 7,782 9,798 11,076 平均資産利益率(%) 0.6 1.8 3.1 5.4 3.6 平均自己資本利益率(%) 2.7 8.2 13.7 22.6 13.7 向こう 3 年間の予想現金需要の純額に占める現金・流動投資の割合(%) 109 107 116 142 112 負債比率 2.8:1 2.6:1 2.3:1 1.8:1 1.5:1 株主資本比率(%) 49 45 48 50 54 実行済ポートフォリオに対する貸倒引当金の割合(%) 21.9 18.2 14.0 9.9 8.3 a. 2005 年以降は、技術協力と助言サービス、成果ベースのグラントの経費を控除した後の利益 アフリカにおける中小企業の成長:IDA と IFC の協力 アフリカにおける中小企業の成長は世銀グループの戦略目標の への融資の借り換えを助ける部分信用保証などのストラク 1 つであり、経済の構築と貧困の緩和のために何より望まれる チャード・ファイナンス商品も利用されています。IDA と IFC ことだと考えられています。しかし、多くの場合、中小企業は によるプログラムが、アフリカの 10 カ国(ブルキナファソ、ガー 資金を入手しにくい状況にあります。このギャップを埋めるた ナ、ケニア、マダガスカル、マリ、モザンビーク、ナイジェリア、 め、IFC と IDA がパートナーシップを組み、金融市場の国内環 ルワンダ、タンザニア、ウガンダ)でパイロット実施中です。 境の強化、国内金融機関が収益的に中小企業に融資する能力の 技術協力、キャパシティ・ビルディング、結果重視型のグラント、 向上、 ベンチャー投資を供給する革新的な手段の構築などによっ 規制援助などの介入策が行われています。 て資金を入手しやすくしています。地元の銀行による中小企業 世界銀行 年次報告書 2006 9 多数国間投資保証機関(MIGA) MIGA は途上国への外国直接投資に非商業 確保するための助言サービスを提供して 的 な 保 証( 保 険 ) を 提 供 し て い ま す。 いるほか、投資紛争を調停することで、 1988 年設立 | 167 加盟国 MIGA は投資を抑制する要因になりやすい 途上国が現在の投資を確保し、投資障壁 累積保証額:160 億ドル * 2006 年度保証額:13 億ドル 投資環境への懸念やリスク認識に対処す となる可能性のある問題を排除できるよ るために、政治リスク保険を提供してい う支援しています。諸外国の企業に投資 * 協調保険引受プログラムを通して保証した金額を含む。 ます。MIGA の保証は、収用、通貨の兌換 情 報 を 提 供 す る こ と も MIGA の 役 割 の 停止、契約不履行、戦争、内乱などの非 1 つです。詳しい情報は MIGA の年次報告 商業的リスクから投資家を保護するもの 書 に 掲 載 さ れ て い ま す(www.miga.org です。途上国に対しては、 外国投資を誘致 ・ 参照) 。 MIGA の主要財務指標 | 2002 〜 2006 年度 (単位:100 万ドル) 2002 2003 2004 2005 2006 業務活動による収益 48 38 26 24 17 経営資本 a 702 766 811 830 863 業務収益/経営資本(%) 7 5 3 3 2 ネット・エクスポージャ 3,202 3,204 3,259 3,138 3,310 経営資本/ネット・エクスポージャ(%) 22 24 25 26 26 トップ 5 のエクスポージャ b 1,006 912 923 834 827 トップ 5 のエクスポージャ/ネット・エクスポージャ(%) 31 29 28 27 25 IDA の融資適格国におけるネット・エクスポージャ 1,113 1,255 1,139 1,341 1,435 IDA の融資適格国におけるネット・エクスポージャ/ ネット・エクスポージャ(%) 35 39 35 43 43 a. 自己資本と保険責任・適正引当金の合計 b. 上位 5 カ国のネット・エクスポージャの合計 投資紛争解決国際センター(ICSID) ICSID は、外国投資家・投資受入国間の となっています。国際投資協定の多くは、 投 資 紛 争 の 調 停 を 容 易 に す る 目 的 で、 ICSID を 仲 裁 機 関 に 指 定 し て い ま す。 1966 年設立 | 143 加盟国 1966 年に設立されました。ICSID は国際 ICSID は仲裁法や外国投資法に関する研 合計申し立て案件:210 件 投資紛争の中立的な調停と仲裁を行う場 究や関連文献の出版も行っています。詳 2006 年度申し立て案件:26 件 を提供することで、外国投資の促進に貢 しい情報は ICSID の年次報告書に掲載さ 献しています。ICSID の存在は、投資受 れ て い ま す(www.worldbank.org/icsid 入国と外国投資家が信頼関係を育む一助 参照) 。 世界銀行グループの活動 昨年、世銀、 IFC および MIGA のすべてがかかわった投資プロジェ カバーする 3 億 500 万ドルの保証を発行しており、プロジェク クトの 1 つに、ロシア連邦の「クーポ鉱山プロジェクト」があ トへの融資者は、この保証がなければ融資ができなかったと言 ります。世銀のロシア向け 2002 〜 06 年国別援助戦略は、ロシ います。採取産業に関する世銀の政策に沿って、このプロジェ ア北東の辺境にあるこの地域の経済開発・成長の必要性に対す クトでは、クーポ鉱山の社会・環境パフォーマンスを国際基準 る理解を促すための土台を築きました。IFC はビーマ・ゴール に確実に合致させるための、専門知識の提供や指導が行われる ド社に、最大で 750 人の雇用を創出し得る金鉱の開発・運営資 ことになっています。 金として 3500 万ドルの融資を行いました。MIGA は株式投資を 10 世界銀行 年次報告書 2006 世界の貧困との闘い 1 貧困の削減と不均衡の是正 国、特に IBRD と IDA の両方の援助が受けられる適格国のニー 昨年は世界の貧困と不均衡に対する闘いが前進した一方で、 ズによりよく応えるため、世銀はビジネス・モデルの柔軟性を 引き続き課題も残される 1 年でした。世界の最貧国における貧 高める方法について議論を進めています。近年、国境を越える 困への取り組みは、8 つのミレニアム開発目標(MDGs)の達成 開発課題に対応するため、準地域や大陸規模のイニシアティブ の進捗状況で評価されます。MDGs は、市民への基本的なサー が数多く実施されています。たとえばアフリカでは、多くの国 ビスの提供、 環境の持続可能性の強化、開発のためのグローバル・ がこの地域の極端な貧困と現在に至るまでの脆弱な制度や不十 パートナーシップ構築における成果測定の基準となる具体的目 分なガバナンスを原因とする同じような問題に直面しています。 標を規定したもので、存在はしているものの多くの場合不平等 また、気候変動、鳥インフルエンザ、国際金融制度の安定性など、 なサービスや雇用へのアクセスを拡大しようとする中所得国政 世界的な広がりを持つ課題もあります。 府の取り組みの進捗状況を評価する際にも使用されます。どの 国境を越えるそうした課題が各国の個別の努力だけで解決さ ような経済水準の国でも、ガバナンスや投資環境の質が市民の れることはないでしょう。力を結集して行動を起こすことが必 生活に影響を及ぼしています。 要とされているのです。世銀は、そうしたグローバルな問題に 世銀は借入国と共にそのニーズの優先順位を付け、開発戦略 国際社会と共に立ち向かうため、世界的な保健上の脅威との闘 を策定し、そうしたニーズに応じた融資プログラムを選択して い、環境保護、貿易や経済の統合の促進、開発知識の共有を目 います。中所得国は IBRD からの融資を受け、世界の最貧国は 的とするプログラムや基金など、世界的あるいは地域的な公共 IDA を通じてグラントや無利子の譲許的融資を受けます。借入 財の供給の充実を目指した広範なイニシアティブを支援してい 2006年度ハイライト 2006 年度の重要題目:最貧国の債務救済(15 ページ参照);アフリカの開発 融資以外の活動:307 件の技術協力プロジェクト、601 件の経済・セクター の目標設定(16 ページ参照) ;ガバナンスと不正対策の問題へのグローバル 調査(ESW)報告書。 な取り組み(13 ページ参照) ;国際社会とのパートナーシップの強化(19 ペー ジ参照) ;潜在的な鳥インフルエンザ大発生への迅速な対応(17 ページ参照); 独立評価グループ(IEG)による活動評価:IEG が世銀による国別援助、債 災害救済(14 ページ参照) 。 務削減、開発効果、中所得国、災害後援助、貿易など一連の活動での達成度 を審査する 16 件の主要評価。 IBRD の融資:112 件のプロジェクトに総額 141 億ドル。上位 3 セクター: 法律・司法・行政、運輸、エネルギー・鉱業。 刊 行 物:「 世 界 開 発 金 融 2006」、「 グ ロ ー バ ル・ モ ニ タ リ ン グ・ レ ポ ー ト 2006」、「世界開発指標 2006」 「世界開発報告 2006:公正と開発(仮題) 、 」 IDA の譲許的融資:167 件のプロジェクトに総額 95 億ドル。上位 3 セクター: など、150 冊以上を刊行(www.worldbank.org/publications 参照) 。 法律・司法・行政、運輸、保健・その他の社会サービス。 12 世界銀行 年次報告書 2006 ます。 エンザ対策での他の国際機関との協力、気候変動に取り組むた 世界の貧困の問題は経済的・社会的不均衡や資源配分の格差 めの新たなアプローチの模索、2005 年 3 月「援助効果にかかる と強く結びついています。世銀の「世界開発報告 2006:公正と パリ宣言」の監視計画を導入するためのパートナーシップの強 開発(仮題)」 では、経済成長と人間開発を促進する政策が公平 化など、多岐にわたる問題が含まれます。また、2005 年 10 月 さの拡大を目指した政策―医療、教育、雇用、土地、市場への のパキスタン北部地震や 2006 年 5 月のインドネシア地震など アクセス拡大のための介入など―とどのように作用し合い、貧 の緊急事態にも対処しました(囲み 1.1 参照) 。 困削減という長期的な目標に向けて前進できるかが示されてい ます。世銀は貧困と不均衡の関係に関する研究を長年にわたっ ガバナンスと説明責任の強化 て実施してきました。2006 年度の「世界開発報告」 では、世銀 不正対策や相互説明責任の強化など、よいガバナンスの促進 の活動課題としてのその重要性が強調されています。 は MDGs の達成に不可欠です。MDGs に関する「グローバル・ モニタリング・レポート 2006」 では、不正はガバナンスが不十 新たな開発課題への取り組み 分であることの現れであるとされています。世銀・国際通貨基 国主導の貧困削減・国家開発戦略は国別の優先事項や援助戦 金(IMF)合同開発委員会が上記レポートについて協議し、すべ 略 を 明 確 化 す る た め に 引 き 続 き 重 要 な メ カ ニ ズ ム で す が、 ての国のガバナンスを向上させ、堅固な国内制度を備えた効果 2006 年度には特筆すべきいくつかの問題が新たに世銀の活動の 的な国づくりをし、ガバナンス向上のための世界的なイニシア 中心に加わりました。これには、ガバナンスと説明責任の向上、 ティブの実施で協調することにより、透明性を高め、主体性を 新設された多国間債務救済イニシアティブの実行、2005 年アフ 強化するような形で国レベルでのよいガバナンスの需要を構築 リカ行動計画の下で実施されたイニシアティブの拡大、中所得 する努力が必要であることに合意しました。過去 10 年間にわた 国向けの枠組みの構築、最貧国における農業支援、鳥インフル る活動に基づき、同委員会は、加盟国によるガバナンスの強化 ミレニアム開発目標 1. 極度の貧困と飢餓の撲滅 6. HIV/ エイズ、マラリアなどの疾病の蔓延防止 2015 年までに極度の貧困状態にある人々の割合と飢餓に苦しむ人々の割合 2015 年までに HIV/ エイズの拡大、マラリアの発生率、その他の深刻な疾病 を半減させる。 を食い止め、減少に転じさせる。 2. 初等教育の完全普及 7. 持続可能な環境作り 2015 年までにすべての子供が初等教育を修了できるようにする。 環境資源の損失を逆転させる。2015 年までに安全な飲料水への安定したア クセスを持たない人々の割合を半減させる。2020 年までに最低 1 億人のス 3. ジェンダーの平等と女性のエンパワーメント ラム居住者の生活を顕著に改善する。 望ましくは 2005 年までに初等・中等教育におけるジェンダー格差を解消し、 2015 年までにすべての教育現場におけるジェンダー格差を解消する。 8. グローバルな開発パートナーシップの構築 ルールに基づいた、開放的で公正かつ予測可能な貿易・金融制度を構築し、後 4. 子供の死亡率の削減 発開発途上国、陸封国、小島嶼開発途上国の特別なニーズに取り組む。開発途 2015 年までに 5 歳未満の子供の死亡率を 3 分の 2 削減する。 上国の債務の問題に包括的に取り組む。若者に一定水準の生産的雇用を確保す るための戦略を策定、実施する。必須医薬品を安価に提供する。先端技術の恩 5. 妊産婦の健康の改善 恵 を 広 め る(www.developmentgoals.org、www.un.org/millenniumgoals 2015 年までに妊産婦の死亡率を 4 分の 3 削減する。 参照) 。 第1章:世界の貧困との闘い 13 や不正対策の充実に役立つような幅広い戦略を策定することを 源に対する支援も、世銀のガバナンス課題への対応強化に役立 世銀に求め、その戦略について 2006 年 9 月の年次総会で協議 ちました。さらに、不正の原因や是正に関して世銀が続けてい することとしました。明確な業務指針につながるこの戦略では、 る研究の成果として、有益な診断ツールが作られました。その 世銀が IMF をはじめとする国際開発金融機関や加盟国と密接に ツールには、200 カ国以上でガバナンスの 6 つの側面を評価す 協力して首尾一貫した公平かつ効果的なアプローチを確保する る一連の世界指標が含まれています。政府機関やプログラムの よう求められています。 有効性を評価する指標もあります。これらの指標を組み合わせ 2006 年度、世銀はガバナンスおよび法規のプログラムに対し て改革の計画に使用することもできます。IMF とは、金融制度 て 46 億ドルの融資を行いました。これには、不正対策、行政事 の統合性を強化し不正に対処する 2 つのイニシアティブ、 「世銀・ 務改革、分権化、公共財政管理、税務政策、調達、法律・司法 IMF 金融セクター評価プログラム」と「マネーロンダリング防 改革などが含まれています。シビルソサエティ組織や情報発信 止/テロ資金対策プログラム」でも連携しています。また、採 囲み 1.1 復興 インド洋沿岸諸国は 1 年半で 3 回もの破壊的な自然災害に には、世銀は復興支援と実施中の改革プログラムや貧困削 見舞われました。インドネシア沖を震源とした地震による 減プログラムの保護のために 4 億 7000 万ドルを提供しま 2004 年 12 月の津波、パキスタン北部での 2005 年 10 月の した。12 月には 4 億ドルの追加融資が承認されました。こ 地震、インドネシアでの 2006 年 5 月のジョグジャカルタ の地震からの復興のための世銀の拠出総額は 10 億ドルで、 地震です。世銀はこれら 3 つの災害後の被害・損害のアセ そのほとんどは IDA 融資の形で行われます。1984 年以後の スメントに密接にかかわり、被災国の復興活動を支援して 世銀による自然災害関係の融資総額は 260 億ドルを超えて います。 います。先般の独立評価グループ(IEG)による評価「自然 の危険、開発のリスク(仮題) 」 では、こうした災害は開発 津波被害が最も大きかったインドネシアでは、 世銀はアチェ の障害としてではなく開発のリスク要因として考えるべき とニアスのためのインドネシア・マルチドナー基金の受託 であると指摘されています。さらに、世銀はプロジェクト 者となっており、15 のドナーが 5 億 2600 万ドルの拠出を や国別プログラムの計画時に自然災害を考慮に入れると共 約束しています。世銀はこの基金の 12 のプロジェクトのう に、緊急援助のためのより効果的な融資メカニズムを構築 ち住宅、道路、給水、保健、生活支援、ならびに住宅再建 する必要があると結論づけられています。 や沿岸管理とプロジェクト実施におけるキャパシティ・ビ ルディングの援助を提供する 6 つのプロジェクトの監視を 自然災害に対する活動に加えて、世銀は武力衝突の被害を しています。インドネシアは IBRD の剰余金からの 2500 万 受けた 35 カ国への支援も行いました。そうした支援は、元 ドルのグラントも受領しています。アチェの復興と平和構 戦闘員の社会復帰、インフラの再建、制度面の能力やガバ 築のための IDA 追加融資 3900 万ドルも配分されました。 ナンスの再構築、コミュニティ主導の開発の確立を目指す 南アジアの津波被災国に対しては、世銀が復興のために ものです。世銀による通常の支援ができない場合は、地域 8 億 3500 万ドル以上の融資を承認しています。 レベルや世界レベルのグラントに加えて紛争後基金から柔 軟かつ革新的なグラントが借入国に提供されます(現在 2005 年 10 月の地震では約 7 万 3000 人が犠牲になり、そ 13 カ国)。1998 年以来、紛争後基金は 166 件のグラントを の多くはパキスタン北部の人々でした。インドとアフガニ 提供しており、その総額は 8300 万ドルに上ります。 スタンの一部も被災しました。この地震のわずか 2 週間後 14 世界銀行 年次報告書 2006 掘産業からの収益が持続可能な開発や貧困削減に確実に寄与す ブに基づく債務救済の延長となります (囲み 1.2 参照)。MDRI は、 るようにするための多元的な利害関係者によるイニシアティブ 対象となる国々― HIPC イニシアティブの「完了時点」に到達 「採掘産業からの資金の透明化イニシアティブ」にも参加してい した国―による MDGs の達成に役立つはずです。 ます。 ただし、 MDRI を通じた IDA のグラントおよび債務救済は「フ 世銀は組織の内部に、不正の報告を受け付ける世界的なホット リーライダー問題」 のリスクを高める可能性があります。フリー ラインを設置しています。報告は世銀の組織公正管理局に送られ、 ライダー問題とは、IDA の債務救済もしくはグラントが受領国 世銀プロジェクトにおける不正あるいは不正の申し立てや職員に への非譲許的融資を提供する貸し手にとっての補助となりかね よる不正行為の申し立てについて、調査が実施されます。組織公 ない状況を指します。IDA のグラントや MDRI の債務救済は 正管理局の取扱件数はこれまでに 2000 件を超え、330 を超す企 IDA 国の長期的な債務の持続可能性の見通しを向上させること 業や個人に対して公に制裁措置が科されました。場合によって を目指したものであり、上述のような非譲許的融資はそうした は、組織公正管理局が調査結果を加盟国の検察当局に付託し 目的を損なう可能性があります。そのため、IDA はフリーライ て、さらなる措置を求めることもあります。2006 年度、組織 ダー問題に対するアプローチを作成しているところであり、こ 公正管理局の業務は拡大し、取扱件数は 426 件に上りました のアプローチでは貸し手による協力や借入意欲をそぐようにす (www.worldbank.org/corruption お よ び www.worldbank.org/ ることが求められます。 integrity 参照)。 MDRI に基づく債務救済総額は約 500 億ドルと見積もられま す。そのうち 370 億ドルが IDA 単独のものであり、これは IDA 多国間債務救済イニシアティブの始動 の原資総額の 4 分の 1 以上に相当します。債務救済は、HIPC 国 2005 年 7 月のグレンイーグルズ・サミットで、先進 8 カ国の が MDRI 融資適格国になると一括かつ取消不能の形で行われま 首脳は、世界の一部の最貧国(そのほとんどはアフリカおよび す。ドナー国は、IDA への通常の財政支援に加え、IDA の長期 ラテンアメリカの国)が IDA、IMF、アフリカ開発基金に対して 的な財務能力を維持し、IDA の放棄債権の還流を、取り消され 抱える債務を全額免除することを提案しました。この新しい債 た債権の返済期間 40 年間にわたって補充することを約束してい 務救済計画は多国間債務救済イニシアティブ(MDRI)と呼ばれ、 ま す。IDA の 理 事 会 が 2006 年 3 月 28 日 に MDRI を 承 認 し、 世銀・IMF 合同開発委員会が 2005 年 9 月の年次会議で承認しま IDA の 総 務 会 が 2006 年 4 月 21 日 に 採 択 し ま し た。IDA は した。この計画による救済は、貧困に対する各国政府の取り組 2007 年度初めから MDRI の実施を開始しました(適格国リスト みを支援するもので、拡大重債務貧困国(HIPC)イニシアティ など MDRI の詳細は www.worldbank.org/debt 参照) 。 囲み 1.2 評価:重債務貧困国の最新情報 独立評価グループ(IEG)の 2006 年度の報告書「最貧国の ます。債務削減だけでは債務の持続可能性を実現できませ 債務削減:HIPC イニシアティブの評価(仮題) 」 では、債 ん。輸出の多様化、財政管理、新規融資の条件、公的債務 務の持続可能性への世銀の取り組みが分析されています。 管理も必要とされます。債務削減によって経済成長や人間 この報告書によると、拡大 HIPC イニシアティブにより 開発に投資できる資源が確保され、借入国の MDGs 達成に 18 カ国で債務比率が 2 分の 1 に低下したものの、そのうち 役立つものと期待されています(www.worldbank.org/hipc 8 カ国では債務比率が再び上昇して HIPC 基準を超過してい 参照)。 第1章:世界の貧困との闘い 15 アフリカ行動計画の実施 るための取り組みを支援し、シエラレオネは世銀の助けを借り アフリカ行動計画では、成長のための取り組みが貧困層や弱 て国内の統治制度の包含性、透明性、説明責任の向上に着手し い立場の人々に利益をもたらすものとなることの重要性が強調 ました。また、輸出主導型の経済成長を促進するため、東アフ されています。アフリカ行動計画には、有効なガバナンス構造 リカ共同体諸国間やそうした国々とルワンダの間の国境検問所 の構築、民間セクターやインフラ、人間開発への投資など成長 の建設に融資しました。さらに、民間投資を活用したプロジェ 推進要因の強化、借入国政府、ドナー国、開発機関の間のパー クトで、ケニアとウガンダの両国にまたがる鉄道の民間委託を トナーシップの影響力の拡大に的を絞った 25 のイニシアティブ 支援しました。しかし、地域規模の電力セクターのプロジェク が含まれています。また、人材やインフラへの投資、こうした ト は、 コ ン ゴ 民 主 共 和 国 と ル ワ ン ダ で 電 力 近 代 化 プ ロ グ ラ 支援を提供する他のドナーとのより効果的な協力なども明確に ム の 着 手 が 遅 延 し、 挫 折 し ま し た。 世 銀 の 国 別 政 策・ 制 度 約束されています。 評価で良好な成果を上げた国として評価されたアフリ インフラ投資を促進するため、2006 年 3 月にアフリカ触媒成 カ諸国の数は、2006 年に 6 カ国から 20 カ国に増加しました 長基金が開設されました。この基金は、アフリカ開発銀行、ア (www.worldbank.org/afr 参照)。 フリカ連合、西アフリカ諸国経済共同体、アフリカ開発のため の 新 パ ー ト ナ ー シ ッ プ、 欧 州 委 員 会、G8、 世 界 銀 行 に よ り 中所得国の戦略への融資 2005 年に設立されたアフリカ・インフラ・コンソーシアムの後 貧困層とは 1 日 2 ドル未満で生活している人々と定義されま 援を受けて実施されるプロジェクトのために年間 10 億ドルを調 すが、世界の数億人の貧困層は最貧国ではなく中所得国に住ん 達する可能性があります。 でいます。こうした国々は IBRD 融資適格国ですが、いわゆる「ブ 人間開発への投資も進んでいます。世銀のマラリア対策促進 レンド」借入国は IDA の譲許的融資も受ける資格があります。 プログラムの拡充および HIV/ エイズ融資の拡大により最初に恩 これらの国はいずれも未解決の大きな社会的課題を抱えており、 恵を受けたのは、コンゴ民主共和国、エリトリア、ニジェール、 そこには MDGs を達成しさらにそれを上回る成果を上げること ザンビアでした。教育面では、アフリカ行動計画が 15 カ国で初 も含まれています。 等教育の無料提供への支援を拡大することを約束しています。 中所得国は、クリーン・エネルギー、貿易の統合、環境保護、 成果はすでに現れ始めています。たとえばエチオピアでは就学 国際的な財政の安定性、伝染病対策など世界的な公共財の提供 率が 65%に上昇しており、これは 1 年生への入学者の増大によ においても、その役割の重要性が高まりつつあります。しかし、 るものです。 ほとんどの中所得国は、インフラ、保健、教育、そして国内投 地域の中核的研究拠点を設置しジェンダーの平等という MDG 資環境の改善に不可欠な政策や制度の改革への投資に必要とさ (24 ページ参照)達成のための投資を提供するという約束を果 れる資金の調達で制約に直面しています。すべての中所得国が たすべく、世銀は、ガーナで雇用創出およびセクター多様化の 外国市場で融資を受けたりリスク管理手段を利用したりできる プロジェクトを促進しました。ナイジェリアでは、ガバナンス わけではなく、こうした資金調達源を利用できたとしても、満 を向上させ、国庫から略奪された資金を取り戻す活動を支援し 期日までの期間が短く、金利が高い場合が多くなっています。 ました。ケニアでは国家予算編成や調達手続きの透明性を高め このように多様な国々から成る中所得国グループのニーズに 16 世界銀行 年次報告書 2006 対し、世銀は銀行業務、金融、知識サービスの柔軟なプログラ 1 兆 2500 億ドルもの損失が生じて世界経済が混乱し、莫大な数 ムを提供しています。世銀は、他の国際開発金融機関や二国間 の人命が失われ、途上国の貧困が悪化する可能性があります。 ドナーと協調することにより、国レベルでの関与の規模を拡大 このような可能性を最小限にし、農村の家畜を動物病から守る し、開発の効果を最大限にすることができると認識しています。 ためには、潜在的な大発生への対応を国家レベル、地域レベル、 その結果として、国際開発金融機関は中所得国にブレンド借入 国際レベルで調整しなければならず、そのためには相当な財政 国の資格を与えることに関する合同政策文書を作成しています 資源が必要となります。世銀では、 世界の専門機関、国際機関(特 (www.worldbank.org/middleincome 参照)。 に国連インフルエンザ問題担当調整官事務所) 、ドナー、借入国 と活動を調整すべく密に協力しています。 農業支援 2005 年 11 月、世銀、食糧農業機関、世界保健機関、世界獣 世界のほとんどの低所得国では、今なお農業が成長の原動力 疫事務局が、連携メカニズムについて話し合うためにジュネー となっています。そのため農業はアフリカやその他の地域にお ブでインフルエンザに関する国際会議を共同開催しました。 け る 世 銀 の 活 動 の 重 要 な 部 分 と な っ て お り、 こ の こ と は 2006 年 1 月には、世銀、欧州委員会、中国政府が鳥インフルエ 2006 年度に世銀が約 18 億ドルの融資を提供しており、2008 年 ンザに関する国際会合を北京で共同開催しました。柔軟な財政 の「世界開発報告」 でも農業が重点分野として選択されている 的枠組み内で総額約 19 億ドルの拠出が誓約され、これによりド ことにも反映されています。現在、農業セクターでは、世銀は ナー国は、明確に定義された総合的で借入国の主体性ある計画 農業従事者の所得を増加させ市場主導の農業革新システムを構 に貢献するために、それぞれにとって使いやすい手段を利用で 築するような高価値商品の生産を増加、多角化するため、農村 きるようになります。2006 年 6 月にオーストリアのウィーンで の投資環境の向上に重点を置いています。 国際的行動に関する最初の現状把握が行われた時点で、国家あ 農業は、水源地の保護、潅漑や排水への投資拡大の持続、効 るいは国際・地域組織が着手した特定のプログラムに対する融 果的な森林法施行と健全なガバナンスに対する支援、気候変動 資承認額は 11 億ドルを上回っていました。世銀は世界鳥インフ に対する農林水産業の弾性を高める取り組みの促進など、総合 ルエンザ・プログラムに基づいて最高 5 億ドルの IBRD・IDA 融 的な天然資源管理と結びついています。新たなマルチドナー・ 資を約束しており、2006 年 6 月末までに鳥インフルエンザ発生 イニシアティブである PROFISH は、漁業資源減少の脅威に取 の防止または対応ならびにヒトインフルエンザの世界的大流行 り組むものです。一方、狂牛病や鳥インフルエンザといった動 の場合の備えのために 11 カ国に対して 1 億 4740 万ドルの融資 物原性感染症(動物から人間に伝染し得る病気)の世界的な脅 を承認しています。鳥インフルエンザに対する国際社会の取り 威に伴い、家畜管理や動物の健康が再び開発アジェンダの上位 組みには、新たに設置された 7500 万ドルのマルチドナーによ になっています(www.worldbank.org/essd 参照) 。 る鳥インフルエンザ・ヒトインフルエンザ・ファシリティも含 まれており、世銀はこのファシリティの受託者となっています 鳥インフルエンザの防止 (www.worldbank.org/avianflu 参照)。 2006 年度までに、野鳥や家禽の高病原性鳥インフルエンザ H5N1 型の発生が 55 カ国で報告されており、2 億羽以上の鳥が 気候変動への対応 死亡し農村部の家畜が深刻な被害を受け、特に途上国の最も貧 世界は、環境を保全しながら経済成長と貧困削減を支えてい しい地域での被害が顕著になっています。世界保健機関は、 くための手頃で費用効果の高いエネルギー供給を確保しなけれ H5N1 ウィルスが最終的にヒトインフルエンザの流行を引き起 ばならないという大きな課題に直面しています。先般の世銀報 こし得る型に突然変異する可能性があるという懸念を表明して 告書「クリーン・エネルギーと開発:投資枠組みに向けて(仮題)」 います。万一そのような事態が起きた場合、深刻な場合には では、途上国のエネルギー・ニーズやエネルギー・サービスへ 第1章:世界の貧困との闘い 17 のアクセス、温室効果ガスの排出抑制、途上国による気候リス エネルギー・サービスの拡大は貧困削減と経済発展のために クへの適応の支援について取り上げています。この報告書では、 必要不可欠ですが、拡大に当たっては気候変動を招く温室効果 必要なエネルギー・サービスを提供するための技術はきわめて ガスの排出を最小限にしなければなりません。そうした排出の 幅広く存在しているものの、そのために必要な年間約 3000 億ド 緩和のためには、さらに年間数百億ドルがかかります。この資 ルの投資を刺激するため、エネルギー・セクターの政策改革が 金は世銀がパートナーや民間セクターと協力して評価を進めて 緊急に求められていると結論づけています。 いる革新的な融資手段を通じて得られる可能性があります。 気候変動の影響はすべての国が受けるのですが、上述の報告 書では、最貧国とそこに住む貧困層が最も影響を受けやすいこと が強調されています。しかし、そうした国々に対し、温室ガス排 出量の少ない経済への移行にかかる付加的なコストの負担を期待 すべきではありません。気候変動への適応は途上国にとって優先 課題であり、既存技術の移転、新技術の開発、既存の計画基準や 制度の見直しなどが必要となるでしょう(www.worldbank.org/ climatechange 参照)。 地方自治体との協力 世銀グループは、借入国政府が地方分権に取り組む重要性や、 地方自治体(地域、州、省、市町村、地方管轄区域、およびそ れらの機関)が独自の開発計画を実行する必要性が高まりつつ あることを認識しています。こうしたニーズを満たすため、世 銀グループは国家保証なしの地方自治体への直接的な技術協力 や IFC による財政支援の提供を拡大しています。 IFC の地方自治体基金の経験に基づき、世銀と IFC は地方自 治体の開発活動を世銀グループの主流に組み入れる合同プログ ラムとして、 「地方自治体開発プログラム」を準備中です。この プログラムが始動すると、地方自治体に対する技術協力や融資 を管理、調整し、世銀と IFC の原資を利用して投資や制度構築 の拡充を図ります。借入国での経済的に存続可能で財政的に責 任のある地方自治体作りを助けることが、このプログラムの目 的です。このプログラムでは特に国内金融市場の発展を促進し、 国内の民間資金を動員します。このプログラムを通じて資金が 提供される新規プロジェクトのほとんどはインフラ部門になる と予想されます。 18 世界銀行 年次報告書 2006 援助の有効性の拡大を目指して すべての国の参加、貿易援助の拡大を強調しました。農業に関 2005 年 3 月のパリ宣言では、MDGs を達成し、借入国による しては、途上国の農産物市場へのアクセスがきわめて重要であ ガバナンス強化や開発実績向上の取り組みを支援するためには援 ることが、世銀による調査で明確に示されています。世銀は、 助の金額と共に援助の有効性も高めなければならないことが認識 IMF やその他のパートナーと協力して、後発開発途上国に対す されています。パリ宣言は、ドナー援助の調和と整合、ならびに る貿易関連技術協力の総合的な枠組みの強化など、貿易に対す 5 つの国(ガーナ、モザンビーク、タンザニア、ウガンダ、ベト ナム)で実施されている開発成果マネジメントについての明確な アジェンダを定めています。それ以外の 10 カ国でも順調な進展 が見られ、さらに別の 40 カ国ではそれほど組織的ではないもの のアジェンダの一部の要素が実施されています。 2006 年度、世銀はパリ宣言の 56 の詳細なコミットメントの実 施に対する監視計画を策定する国際的な活動に参加しました。合 意の指標についての基準を定める活動が 2006 年 5 月から開始さ れ、多数の国で援助の調査と調整が同時に実施される初めての機 会となりました。しかし、政府とドナーがこのアジェンダに取り 組んでいる国においてさえ、大きな前進に対する障害が残されて います。そうした障害としては、データの不足、不適切な職員イ ンセンティブ 、 (ドナー機関と政府)制度の剛直さ、 不十分なコミュ ニケーション、一部のドナー機関における組織リーダーシップの 。 欠如などが挙げられます(www.aidharmonization.org 参照) 世銀の貧困削減戦略の 2 つの柱 投資環境の向上と人々のエンパワーメントが世銀の長期的な 貧困削減戦略の 2 つの柱となっています。この 2 つの柱は互い に関連し合っており、人間開発が進捗すると、投資環境の向上 を持続させ、経済成長を支え、経済・社会的不均衡に取り組む 能力が培われます。 第 1 の柱:投資環境の向上 世銀は、より公平な貿易の提唱、政策改革の支援、そして貿易、 民間セクター・イニシアティブ、インフラ、金融セクター、採 掘産業へのプロジェクト別の投資(多くの場合、他の世銀グルー プ機関と共同で行われる)を通じて経済成長を促進しています。 貿易の促進 世銀は、世界貿易機構ドーハ開発アジェンダ交渉で 大きな成果を上げるよう主張し続け、特に、実質的な農業改革、 第1章:世界の貧困との闘い 19 ビジネス環境の評価  「ビジネス環境分析」プロジェクトの 3 年目の年次報告書「ビジネス環境の現状 2006:雇用の創出(仮 題) 」 は、155 カ国におけるビジネス面での制約の数値指標を示 しています。今年発表された報告書では、 各国で企業が支払う税、 営業許可の扱い、輸出入にかかる各国の手続き上の条件という 3 つの指標が新たに追加されました。また、世界の総合ランキ ングも初めて掲載されました。途上国のビジネス環境に関するも う 1 つの 情 報 源 で ある世 銀 の 企 業 調 査 で は、今 や 76 カ国の 5 万 1000 社 が 対 象 と な っ て い ま す。 こ う し た デ ー タ が、 2006 年度の 23 件の投資環境評価や借入国への活動に使用され ました。借入国によるコーポレート・ガバナンスの枠組み強化 を助けるため、2006 年度、世銀は 7 カ国のコーポレート・ガバ ナンス評価を完了し、新規評価と過去の評価のアップデートを る援助を拡大する提案を策定しました。世銀の貿易関連融資は 合わせて総計 55 件となりました。また、国有企業のガバナンス 過去 3 年間でほぼ 3 倍になり、融資総額の 6 %を占めるように に関する 3 件のパイロット評価に着手しました。こうした評価 なっています。 での分析は政府改革の手引きとして有益であり、30 カ国以上で 貿易を国家の成長戦略に組み入れることが、引き続き世銀活 の世銀プロジェクトを支えています。2006 年度、民間セクター 動の中心となっています。また、貿易分析を実施するほか、標 開発を主要テーマとする新規プロジェクトに対する融資承認総 準の調和化から通関改革までさまざまな問題で 35 カ国以上を支 額は 61 億ドルを上回りました。 援しました。世銀は、地域貿易協定の交渉を進める借入国に対 世銀では、評価のみにとどまらず、IFC との共同プロジェク し 支 援 を 続 け て い ま す。 ま た、 米 国 や 欧 州 連 合 の 後 援 す ト「外国投資助言サービス」を通じて改革志向の政府による投 る 自 由 貿 易 協 定、 特 に ア フ リ カ や 中 米 に お け る 自 由 貿 易 資環境向上の支援もしています。2006 年度、この助言サービ 協定に関する分析や技術協力も提供しています(囲み 1.3 およ スにより 43 の途上国で 82 件のプロジェクトが完了し、こうし び www.worldbank.org/trade 参照)。 囲み 1.3 評価:世銀の貿易支援 独立評価グループ(IEG)の報告書「世界銀行の貿易支援の 国の貿易制度自由化への支援では効果を上げているものの、 評価、1987 〜 2004 年(仮題)」 では、貧困国の自由貿易に 動的で持続的な輸出拡大に向けた取り組みでは成功してい 対する世銀の貢献を分析し、貿易機会を促進し貧困を削減 るといえないとしています。また、貿易問題に関する世銀 するための方法に関して具体的な提言を示しています。 の研究の質が高いことや世界貿易システムの公正さを高め 1987 年から 2004 年までの世銀の融資承認総額 (380 億ドル) る上での役割も指摘されています(www.worldbank.org/ の 8.1%が、途上国を世界経済に組み込むための支援として ieg/trade 参照)。 117 カ国に提供されました。この報告書では、世銀は途上 20 世界銀行 年次報告書 2006 た 助 言 プ ロ ジ ェ ク ト の 52 % は 高 リ ス ク 国 ま た は 低 所 得 供しました。また、金融サービスへのアクセスを数値化した指 国 で の も の で し た。 プ ロ ジ ェ ク ト の 多 く は「 ビ ジ ネ ス 環 標作りのための国際的な活動も主導しました。借入国やその他 境分析」プロジェクトおよび企業調査で実施した分析に の開発機関と連携して、金融サービスへのアクセスを示す指標 基 づ い て 行 わ れ ま し た(www.doingbusiness.org お よ び を開発優先課題の設定プロセスに取り入れるためのより系統的 www.enterprisesurveys.org 参照)。 な方法を模索しています。さらに、金融アクセスが MDGs の達 成に及ぼす影響についても研究しています。そして最後に、世 インフラ支援の拡大 2006 年度、インフラ分野で 125 件の新規 プロジェクトへの融資が承認され、その総額は 80 億ドルを上回 りました。前年度比で約 10%増加したことになり、これは世銀 のインフラ行動計画に沿ったものです。同計画は、インフラ投 資のニーズと MDGs に示されている広範な開発目標の両方に関 係する借入国からの要請に着実に対応していくために 2003 年 に策定されました。融資承認のほとんどは、 運輸セクター (40%) とエネルギー・鉱業セクター(38%) 、次いで上下水道・洪水予 防セクター(21 %)です。このインフラ行動計画の開始以来、 プロジェクトの質は一定しており、問題を抱えているプロジェ クトの比率は引き続き世銀平均を下回っています。 さらに、世銀はインフラに関係する 139 件の分析・助言報告 書を作成し、そのうち 1 件が、これまでの教訓に関する大規模 な調査「岐路に立つインフラ:世界銀行の 20 年間の経験からの 教訓(仮題) 」 です。G8 グレンイーグルズ ・サミットで、世銀は、 アフリカにおけるインフラ課題のために提供される援助の大幅 な拡大を円滑に調整することと、クリーン・エネルギーと開発 のための投資を確保する新たな枠組みを作ることというイン フラ関連の 2 つの領域で世界的なリーダーシップをとるよう 求 め ら れ ま し た(17 ペ ー ジ の「 気 候 変 動 へ の 対 応 」 お よ び www.worldbank.org/infrastructure 、 www.worldbank.org/ energy 参照)。 金融サービスへのアクセスの拡大 健全で包含的な金融システム は MDGs 達成のために不可欠です。預金、信用、保険、送金な ど金融サービスへのアクセスの向上は、貧困層が経済的機会を 利用して不安定な状態から身を守るためにきわめて重要です。 世銀では、貧困層支援協議グループ(CGAP)と緊密に協力し、 マネーロンダリング防止・テロ資金対策規制と特に貧困層への 金融アクセス提供の必要性とのバランスに関する国際研修を提 第1章:世界の貧困との闘い 21 ルワンダにある元戦闘員のためのオリエンテーション・センターの教室で数学の問題を解く元少 年兵。世銀と 11 のドナーが資金提供した多国間動員解除・社会復帰プログラムはルワンダ国内 の動員解除・社会復帰プログラムを支援しているほか、大湖地域の 6 カ国でも従事しています。 銀では、自然災害や商品価格の変動などの衝撃が貧困層に及ぼ るガバナンスの中心的役割を検討すると共に、国家のガバナン す影響を緩和することを目指したリスク管理プログラムを構築 ス・システムの主要な要素を監視する枠組みを提案しています。 する活動を強化しています(www.worldbank.org/finance 参照)。 教育機会の拡大 貧困層の児童が経済的に有利な児童と同等の教 移民による送金の促進 世界の移民の数は 2 億人に上り、2005 年 育機会が与えられれば、成人したときに雇用競争での機会が大 には途上国への送金が 1670 億ドル―公的援助総額の 2 倍以 きくなります。現在、初等教育の就学年齢にありながら就学し 上―に達しており、国際的な人口移動は開発に不可欠なものと ていない児童の数は 1 億人を超えています。2015 年までに初等 なっています。一般的に、受領国経済ではそうした送金が銀行 教育の完全普及を達成するため、世銀は「万人のための教育」 融資や海外直接投資といった他の資金の流入よりも広く流通し イニシアティブに対する支援を拡大しています。この支援強化 ており、不均衡の緩和に直接貢献しています。さらに、送金が は主に「万人のための教育ファースト・トラック・イニシアティ 所得のかなりの部分を占める家計で貧困を軽減していることも ブ(FTI) 」を通じて行われ、ドナーと途上国によるこのグロー 証明されています。したがって、政策の調整ばかりでなく、送 バル・パートナーシップは昨年、ドナーからの新たな資金・技 金コストの削減を目指したサービス提供者間の市場競争の促進 術協力のおかげで大きく前進しました。FTI は途上国における教 によっても直接的な効果が得られます。世銀では、国際送金の 育のための国内・海外融資を拡大し、そうした援助の効果も高 流れや金融アクセスのシステムの改善に努めており、確実で効 めています。また、 より生産的な政策対話が行われるようになり、 率 的 な 送 金 シ ス テ ム を 構 築 す る た め に、 国 際 決 済 銀 行 と 初等教育のための柔軟性のある援助が拡大され、学校建設のた 共に「国際送金サービスに関する一般原則」 を発表しました めの費用効果の高い基準についてのドナーの取り組みも広がり (www.bis.org/press/p060313.htm 参照)。 ました。初等教育の完全普及の達成を約束している低所得国は すべて FTI 融資を受ける資格があります。現在、 20 カ国がファー 第 2 の柱:貧しい人々のエンパワーメント スト・トラックのパートナー国となっています。独立評価グルー 人々が生産的な生活を送り、自己の将来に関する正しい判断 プ(IEG)の報告書「学校教育の提供から学習の成果へ(仮題) 」 を下し、環境を保全することができるようにするエンパワーメ では、過去 15 年間に就学率が大幅に上昇したこと、学習の成果 ントへの投資が、世銀の貧困削減戦略の第 2 の柱となっていま にも学校教育の提供と同じくらいの重点を置くことが必要であ す。人間開発への投資は生活の質を改善し、経済活動への参加 ることが指摘されています。 を促進し、そうした経済活動はその国の開発を促し、サービス 2006 年度、国レベルのドナー・パートナーが 7 カ国の教育戦 へのアクセスを拡大し、不均衡を緩和します。 略を支持し、対外融資の大幅な増加を持続する用意があること 世銀は、2015 年までに途上国の人々の生活を向上させること を表明しました。ドナーや支援が限られている国のために創設 を目指した世界的な取り組みである MDGs に定められている基 された FTI 触媒基金での融資は総額 6020 万ドルでした。教育の 準を使用して進捗状況の監視を続けています。世銀は、MDGs 分野における能力開発のために新設された「教育プログラム開 の達成に向けた各国政府、国連機関、その他の国際的な金融機 発基金」の実行は、第 1 ラウンドが 2006 年度に完了しました。 関との取り組みで中心的な役割を果たしています。世銀と IMF 実 行 額 は 融 資 承 認 総 額 490 万 ド ル の 45 % に 上 り ま し た。 が共同発行した MDGs に関する報告書「グローバル・モニタリ 28 カ国のプログラムがこの基金から技術協力・資金援助を受け ング・レポート」 の第 3 巻「相互説明責任の強化:援助・協力・ ました。世銀は教育のために、2005 年の総融資額を上回る合計 ガバナンス(仮題) 」 では、援助活動の効果を高め、ドナー、国 20 億 ド ル の 融 資 を 行 い ま し た。 他 の セ ク タ ー の プ ロ ジ ェ 際金融機関、途上国政府が確実にコミットメントを果たすため クトにおける教育分野に対する支援は 5 億 3300 万ドルでした の施策が示されています。このレポートでは、開発効果におけ (www.worldbank.org/education 参照)。 22 世界銀行 年次報告書 2006 伝染病対策 健康障害や伝染病に苦しむ人の割合が最貧困層に 偏っている国では、平等を目指すことはできません。開発の世 界 で も 保 健 面 で の 改 善 の 重 要 性 が 認 識 さ れ て お り、8 つ の MDGs のうち 3 つで健康障害の削減目標が開発の進捗の基準と して定められています。 HIV/ エイズ  新規感染者数とエイズ関係の死亡者数は 2006 年 も増加しました。新たなグローバル HIV/ エイズ行動計画は、効 果的な国家・地域プログラムに対する持続的な支援を提供し、 戦略的計画に重点を置き、国別の監視・評価システムや証拠に 基づく対応を強化し、実施を促進するという世銀のコミットメ ントを反映したものです。HIV/ エイズについての世銀の知識ア ジェンダには、この病気の多様性についての理解を深めプログ ラムの有効性を高めるための影響評価・分析研究が含まれてい ます(囲み 1.4 参照)。 ジェクト関連分野は、ベナンでの 3100 万ドル、ブルキナファソ での 1200 万ドル、コンゴ民主共和国での 3000 万ドル、エリトリ マラリア  世銀は、2005 年度から始まった新たな世界戦略マラ アでの 200 万ドル、エチオピアでの 2000 万ドル、ニジェールで リア対策促進プログラムに対する支援を強化し、借入国にもパー の 1000 万ドル、ザンビアでの 2000 万ドルに加え、セネガル川 トナー機関にも好評を博しています。このプログラムは、結果や 流域の準地域プロジェクト(ギニア、マリ、モーリタニア、セネ 成果の監視の重視とアプローチや融資手段の柔軟性とを組み合わ ガル)での 4200 万ドルで、2006 年度の総額は 1 億 6700 万ドル せたものです。アフリカで現在実施中のこのプログラムは、2008 でした。これ以外に少なくとも 7 カ国でプロジェクトが準備中で 年度末までに IDA 融資 5 億ドルを目標として設定している 3 年間 あり、世銀は 5 億ドルという目標のうち 4 億 2750 万ドルの融資 の「集中段階」から開始されました。この対策促進プログラムの を承認する予定です。また、パートナー機関と協力して新世代の 開始以降に世銀が承認したマラリア対策プロジェクトおよびプロ 抗マラリア薬を入手しやすくする方法も引き続き探っています。 囲み 1.4 HIV/ エイズ関連援助の評価 世銀による HIV/ エイズ関連援助に対する独立評価グループ ビルソサエティ組織が参加するようになったというもので (IEG)の評価「成果を上げる取り組み:HIV/ エイズ関連援 す。ただし、必ずしも最もリスクの高い行動への対処がな 助の効果の向上(仮題) 」 が今年発表されました。この報告 されているわけではなく、その効果が検討されていないイ 書では 2004 年半ばまでの HIV/ エイズに対する世銀の 25 億 ニシアティブがあることも指摘されています。IEG は、世 ドルの融資承認について検討されています。IEG による調 銀が政治的な障害を予測し、戦略性を高め、制度を強化し、 査結果は、この援助によって借入国が施策を実施すると同 その国での微候に基づいて行動することにより国家のエイ 時に活動の費用対効果を高めることが促され、伝染病対策 ズ対策の有効性を高めるべきであると提言しています。 の制度が作られ、HIV/ エイズのもたらす難題への対応にシ 第1章:世界の貧困との闘い 23 結核  世銀は、スイスのダヴォスで開催された 2006 年世界経済 取り組む能力を強化することを目的としたものです。世銀は、 フォーラムから開始した新たな世界結核対策計画の準備に参加し ジェンダーの平等を促進するための新たな課題を話し合う「ミ ました。世銀の投資承認累積額は約 6 億ドルで、30 カ国以上が レニアム開発目標であるジェンダーの平等の促進:実施上の課 対象となっています。こうした直接的な支援に加え、世銀は結核 題」 と題するハイレベルの協議も開催しました。この協議から、 対策を向上させるサービスの提供に関する分野横断的な研究にも ジェンダーの平等という目標に向けた歩みを加速させるために 従事しています。さらに、エイズによって免疫力が低下している 策定された新たな行動計画が生まれました。オランダ、ノル 患者が結核にかかるケースも多くなっていることから、現在では ウェー、スウェーデンの政府からの財政支援によって、世銀の いくつかの多国間エイズプログラム(エリトリア、ケニア、ウガ 活動においてジェンダー問題を大きく取り上げるための取り ンダでのプログラムなど)が結核対策の要素を含んでいます。 組みが促進されています。世銀が支援するプロジェクト、特 に保健、教育、社会的保護の分野のプロジェクトではその計 妊産婦と子供の健康の改善 MDGs の 4 番目と 5 番目は子供と妊 画段階でジェンダーに関する分析が取り込まれるようになって 産婦の死亡率削減に関するものです。2006 年度、子供の健康お います(www.worldbank.org/gender 参照)。 よび性と生殖や妊産婦の健康に関する世銀の融資承認額は 3 億 130 万ドルに増加し、2 億 5980 万ドルが実行されました。そう 社会的保護を通じた平等の向上 社会保護に対する世銀のアプ した世界的な取り組みの成果が現れ始めています。第 14 次 IDA ローチは社会的リスク管理の枠組みに従っており、世銀はこの枠 増資に関連して作成された最近の報告書によると、熟練した医 組みを通じて失業者を支援し、公平な労働市場を構築し、児童労 療スタッフの立ち会いの下で行われた出産の割合が 1997 〜 働をなくす活動をし、貧困層のための実行可能な老齢所得保障の 設立を助け、脆弱なグループのための社会的セーフティネットを 99 年の 40%から 2002 年の 44%に上昇しています。5 歳未満の 子供の死亡率も、同期間に 1000 人中 125 人から 120 人に減少提供しています。昨年、世銀は貧困削減と成長のアジェンダに公 しています。バングラデシュでの妊産婦と子供の健康および栄 平な雇用創出を含めることに重点を置きました。また、世銀全体 養状態を改善する介入策についての独立評価グループ(IEG)の での現状把握プロセスから生まれた有望な労働市場調査戦略を実 評価を例に見ると、5 歳未満の子供の死亡率が低下し、妊産婦 施しました。年金制度と改革に関する 2 つの刊行物「21 世紀の の死亡率では 3 分の 2 も減少していることが示されています。 高齢者所得支援:国際的な視点から見た年金制度と改革(仮題) 」 このような改善が見られたのは、世銀主導のドナー・コンソー と「年金改革:非市場運用拠出建て(NDC)制度の問題と見通 シアムの支援により政府の提供サービスが増加したためです。 し(仮題) 」 も発行されました(www.worldbank.org/sp 参照) 。 また、家族計画に関するサービスの拡大や子供の予防摂取率の 増大にも資金が利用され、予防摂取率は 2%未満から 75%近く 社会開発の促進 世銀の社会開発戦略では統合力、結合力、説明 にまで上昇しました(www.worldbank.org/hnp 参照)。 責任が強調されています。ガバナンスやサービスの提供を向上さ せ、地方政府とコミュニティをつなぐ改革を支援するため、世銀 ジェンダーの平等の実現 ジェンダーに基づく障壁が開発に与え はコミュニティ主導の開発基金に約 20 億ドルを提供しました。 る影響に関する革新的な調査を通じて、世銀は借入国が経済的 また、借入国が公務員に説明責任を負わせる上での市民の責任を エンパワーメントにおけるジェンダーの不平等に取り組む上で 拡大するため世銀職員が使用する社会的説明責任の方法も強化し 役立つ知識ベースを構築しつつあります。昨年、世銀は開発の ました。貧困や社会的影響に関する拡大分析が世銀プロジェ 実務家を対象としてジェンダーと経済に関する一連のワーク クトの初期段階に統合されたことで、公平なプロジェクトの ショップを開催しました。これらのワークショップは途上国が 成果も向上しています(囲み 1.5 および www.worldbank.org/ 。 ジェンダーの不平等が経済成長にもたらす制約を分析しそれに socialdevelopment 参照) 24 世界銀行 年次報告書 2006 シビルソサエティの参加の拡大 シビルソサエティ組織は、疎外 環境持続性の支援 世銀は、環境への配慮を開発関係の活動にす されている人々に発言権を与え、透明性とよいガバナンスを促 べて統合することにより、途上国が環境持続性を確保するための 進し、コミュニティへのサービス提供で重要な役割を果たしま 分野横断的な目標を果たせるよう支援しています。環境、貧困、 す。あらゆるレベルの世銀職員が、特に世銀・IMF 年次総会や 経済成長のつながりを認識し、特に貧困層の保健、生計、脆弱性 春の総会の期間中に、債務、貿易、採掘事業などの問題に関し に着目した環境戦略の実施を通じて、世銀は、パートナー国との てシビルソサエティ組織との実質的な対話を続けています。職 協力の下、その環境面の優先課題、主要政策の環境への影響、開 員らは国内での会合を通じて、あるいは本部で、あるいはテレ 発優先課題やそれに関連する環境上の懸念への対応能力を系統 ビ会議を通じても、シビルソサエティとの接触を図っています。 的に評価しています。同時に、環境管理が国、地域、世界に及ぼ 世銀は、社会的説明責任、参加型予算編成、コミュニティの す影響―気候変動、健康への影響、自然災害などの形での―に エンパワーメントなどに関する国ベースの調査を実施し、世銀 ついて世銀がこれまで以上に注意を払わなければならないことが プロジェクトへのシビルソサエティの参加を奨励しました。世 証明されています。環境の持続可能性という MDG 達成に向けた 銀が 2006 年度に承認した 31 件の国別援助戦略のほとんどでシ 手段として、世銀は途上国で生じている自然資産の変化を評価す ビルソサエティ組織の意見を聞いており、承認された新規融資 る 一 連 の 評 価 基 準 を 構 築 し て い ま す(www.worldbank.org/ の 72%でもその準備段階でシビルソサエティ組織の意見を聞い environment 参照)。 ています。また、19 の借入国政府に貧困削減戦略の策定にシビ ルソサエティ政府を関与させるよう促すと共に、コミュニティ 開発成果マネジメントの強化 主導の開発ポートフォリオなどさまざまなメカニズムを通じて 「グローバル・モニタリング・レポート 2006」 では、国際金 シビルソサエティの開発努力への資金提供を促進しました。ア 融機関や国別プログラムの重点が開発成果マネジメントに移行 ジアの津波被害からの復興活動でも世銀とシビルソサエティの しつつある、すなわち投入面ではなく成果を管理するようにな 協調が著しく、特にインドネシアでは初年度の救済に使用され りつつあるとしています。このように成果志向へ移行するには、 た海外援助の半分以上がシビルソサエティ組織を通じて提供さ 長期的なビジョン、追加的な資金、パートナー国における能力 。 れました(www.worldbank.org/civilsociety 参照) 強化に対する支援が要求されます。こうした移行を促進するた 囲み 1.5 2006 年のディベロップメント・マーケットプレース 5 月にワシントン DC で開催されたディベロップメント・マー ロジェクトであることを世界銀行や外部専門家で構成される ケットプレースの世界大会で、事前に選抜された 55 カ国 審査員に納得させた各入賞者は、最高 20 万ドルの賞金を獲 118 人の出場者の中で目立っていたのがアフリカと民間セク 得しました。今年の賞金スポンサーは、ビル&メリンダ・ゲ ターでした。また、初出場であったブータン、ガンビア、レ イツ財団、地球環境ファシリティ、グーグル財団、国際金融 ソト、トルクメニスタン、バヌアツからの出場者が、途上国 公社、世界銀行が務めました。2006 年には、この世界大会 の貧困層のためのきれいな水、下水道、エネルギーに関する とは別に 9 カ所で国別大会が開催され、13 カ国が参加しま それぞれのアイデアを披露しました。この大会では、入賞者 した。こうした国レベルの大会では地域的な開発テーマに重 30 人に総額 500 万ドルの賞金が授与されました。高い開発 点が置かれます 。 (www.developmentmarketplace.org 参照) 効果を得られる可能性のある革新的なアイデアを提供するプ 第1章:世界の貧困との闘い 25 め、世銀は主要な手段や手続きの変更を実施しています。たと 価グループは世銀全体で、あるいは特定の国別プログラムやプ えば、国別プログラムが借入国の開発計画と整合するよう成果 ロジェクトについて、効果を評価するに当たり主導的な役割を ベースの国別援助戦略の使用を中心に据え、評価プロセスに関 果たしてきました。DIME イニシアティブでは、そうした評価を する指針を修正し、国レベルでの成果マネジメントに重点を置 さらに一歩進めて、世銀が開発成果マネジメントに移行するよ くようにしました。 う導いていくとしています。現在、 教育プロジェ DIME を通じて、 さらに世銀は世銀融資を受けたプロジェクトやプログラムの クト、条件付き資金移転プログラム、スラム改善イニシアティ 効果に対する評価をとりまとめるための開発効果評価(DIME) ブに関する 20 件以上の厳密な評価が進められています。 イニシアティブにも着手しています。これまで、世銀の独立評 品質保証グループの調査結果 世銀の融資ポートフォリオに関する 2005 年の審査で、品質保証グループ • 問題が生じたときに、それを特定し、取り組めるよう、警戒を怠らないこと。 (QAG)は 2005 年度に完了したプロジェクトの 80%以上が開発目的を達成 • 世銀の分析・助言活動の成果を広く発信することにより、この活動の影響 する見込みであると判断しました。10 年前に行われた同様の審査では、世銀 を最大限にすること。 のプロジェクトの 4 件に 1 件が満足のいく成果を上げていませんでした。 2005 年度にはこの割合が 10 件に 1 件まで減少しています。ただし、品質に 前述の審査では、融資を伴わないサービスに関しても、分析・助言活動で、 ついては、4 分の 1 のプロジェクトが中程度の満足度でしかないとされてい 特に貧困削減戦略文書や国別フレームワークに関して、改善が見られたこと ます。これまでに達成された進歩を犠牲にすることなく世銀のポートフォリ が示されています。また、個々の経済・セクター調査(ESW)や技術協力プ オを拡大するために、QAG は職員に対して次のことを提言しています。 ロジェクトの評価でも広範囲にわたって前進が確認されています。ただし、 全体的な国別分析・助言活動の評価では改善の余地があるとされました。 • プロジェクト設計が現地、特に脆弱な国家での現実に見合ったものにする こと。 26 世界銀行 年次報告書 2006 地域別展望 2 世界銀行の地域区分、 世界銀行の地域区分、 現地事務所、 現地事務所、 および融資適格国 および融資適格国  現在、 世界銀行は世界  現在、 100カ所以上に設置された現地事務所 世界銀行は世界 100カ所以上に設置された現地事務所 を通して活動しています。 を通して活動しています。 借入国に事務所を開設することで、 借入国に事務所を開設することで、 借 借 入国に対する理解が深まるだけでなく、 入国に対する理解が深まるだけでなく、 借入国との協力関係が 借入国との協力関係が 密になり、 密になり、 これまで以上に迅速にサービスを提供することができ これまで以上に迅速にサービスを提供することができ るようになっています。 るようになっています。 世銀の貸付残高の 世銀の貸付残高の はワシントン 4 分の 34 分の 3 はワシントン DCの本部ではなく、 DCの本部ではなく、 現地の国別担当局長が管理しています。 現地の国別担当局長が管理しています。 職 職 %は現地事務所で活動しています。 員の30員の 30%は現地事務所で活動しています。 メキシコ メキシコ ドミニカ共和国 ドミニカ共和国 カーボ ベリーズ ジャマイカ ジャマイカ ハイチ ハイチ ベリーズ グアテマラ ホンジュラス グアテマラ ホンジュラス ニカラグア エルサルバドル エルサルバドル ニカラグア コスタリカ パナマ ベネズエラ コスタリカ パナマ ・ ベネズエラ・ ガイアナ ボリバル共和国 ボリバル共和国 ガイアナ コロンビア コロンビア スリナム スリナム エクアドル エクアドル キリバス キリバス ラテンアメリカ ・カリブ海地域 ラテンアメリカ ・カリブ海地域 サモア サモア 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 ペルー ペルー IBRD: 億5410 56IBRD: 万ドル 56億5410万ドル ボリビア ボリビア ブラジル ブラジル フィジー フィジー IDA:2億5640 IDA:万ドル 2億5640万ドル トンガ トンガ プロジェク トのポートフォリオ プロジェク : トのポートフォリオ 166億ドル :166億ドル パラグアイ パラグアイ アルゼンチン アルゼンチン ドミニカ ドミニカ チリ チリ ウルグアイ ウルグアイ 共和国 共和国 アンティ グア・ アンティグア・ バーブーダ バーブーダ セントク セントク リストファー・ リストファー・ ネーヴィス ネーヴィス ドミニカ国 ドミニカ国 セントルシア セントルシア セントビンセントおよび セントビンセントおよび グレナディーン諸島グレナディーン諸島 IBRD融資のみの適格国 IBRD融資のみの適格国 グレナダ グレナダ IBRDとIDA融資の適格国 IBRDとIDA融資の適格国 (ブレンド国) (ブレンド国) トリニダード・ トリニダード トバゴ ・トバゴ ベネズエラ・ ベネズエラ ボリバル共和国 ・ボリバル共和国 IDA融資のみの適格国 IDA融資のみの適格国 融資が行われたことのない 融資が行われたことのない IDA融資適格国 IDA融資適格国 世銀の融資を受けていない国 世銀の融資を受けていない国 世銀現地事務所 世銀現地事務所 国別担当局長が駐在する現地事務所 国別担当局長が駐在する現地事務所 世銀地域区分の境界線 世銀地域区分の境界線 28 世界銀行 年次報告書 2006 中東 ・北アフリカ地域 中東 ・北アフリカ地域 ヨーロッパ ・中央アジア地域 ヨーロッパ ・中央アジア地域 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 IBRD: 億3360 13IBRD: 万ドル 13億3360万ドル IBRD: 億3190 35IBRD: 万ドル 億3190万ドル 35 IDA:3億6700 IDA:3億6700万ドル 万ドル IDA:5億1280 IDA:5億1280万ドル 万ドル プロジェク トのポートフォリオ プロジェク トのポートフォリオ :66億ドル :66億ドル プロジェク トのポートフォリオ プロジェク トのポートフォリオ :165億ドル :165億ドル エストニア エストニア ロシア連邦 ロシア連邦 ロシア連邦 ラトビア ロシア連邦 ラトビア リトアニア リトアニア ポーランド ベラルーシ ポーランド ベラルーシ ウクライナ ウクライナ カザフスタン カザフスタン モルドバ モルドバ モンゴル モンゴル ルーマニア ルーマニア ブルガリア ブルガリア グルジア アルメニア グルジア アゼルバイジャン アルメニア アゼルバイジャン ウズベキスタン ウズベキスタン キルギス共和国 キルギス共和国 中国 中国 東アジア ・ 大洋州地域 東アジア ・ 大洋州地域 トルクメニスタン トルクメニスタン トルコ トルコ タジキスタン タジキスタン 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 シリア・アラブ共和国シリア・アラブ共和国 アフガニスタン アフガニスタン 大韓民国 大韓民国 アルジェリア チュニジア アルジェリア チュニジア レバノン レバノン モロッコ モロッコ イラク イラン・ イラク イスラム共和国 イスラム共和国 イラン・ パキスタン パキスタン IBRD: 億4430 23IBRD: 万ドル 23億4430万ドル ヨルダン川西岸 ・ ヨルダン川西岸 ガザ地区 ・ガザ地区 :10億 : 億5720万ドル 万ドル ヨルダン ヨルダン ネパール ブータン ネパール ブータン IDA 5720 IDA 10 リビア エジプト リビア・ エジプト・ アラブ共和国 アラブ共和国 インド インド バングラデシュ バングラデシュ プロジェク プロジェク トのポー ト フォ トのポー リオト : フォ 195億リオ ドル:195億ドル ミャンマー ミ ベトナム ャンマー ベトナム モーリタニア モーリタニア ヴェルデ カーボヴェルデ ラオス人民民主共和国 ラオス人民民主共和国 スーダン エリ スーダン トリア イエメン共和国 エリトリア イエメン共和国 フィリピン フィリピン セネガル ニジェール ニジェール タイ タイ マリ セネガル ブルキナ マリ ブルキナ ガンビア ガンビア ファソ ファソ チャド チャド カンボジア カンボジア ギニアビサウ ギニアビサウ ナイジェ リア ナイジェリア ミクロネシア連邦 ミクロネシア連邦 ギニア ギニア ジブチ ジブチ コート コート マーシャル諸島 マーシャル諸島 ジボワール ジボワール エチオピア エチオピア スリランカ スリランカ シエラレオネ シエラレオネ ガーナ ベナン ガーナ ベナン カメルーン 中央アフリカ共和国 カメルーン 中央アフリカ共和国 リベリア リベリア マレーシア マレーシア パラオ パラオ トーゴ トーゴ ソマリア ソマリア 赤道ギニア 赤道ギニア モルディブ モルディブ ウガンダ ウガンダ サントメ・プリンシペサントメ・ ガボン プリンシペ ガボン ケニア ケニア キリバス キリバス ルワンダ ルワンダ コンゴ コンゴ ブルンジ セーシ ブルンジ ェル セーシ ェル コンゴ コンゴ タンザニア タンザニア ソロモン ソロモン 民主共和国 民主共和国 インドネシア インドネシア 諸島 諸島 コモロ コモロ パプアニューギニア パプアニューギニア アンゴラ アンゴラ 東ティモール 東ティモール マラウイ マラウイ ザンビア ザンビア バヌアツ バヌアツフィジー フィジー マダガスカル マダガスカル ジンバブエ ジンバブエ モーリシャス モーリシャス ポーランド ポーランド ナミビア ナミビア ボツワナ ボツワナ 南アジア地域 南アジア地域 ウクライナ ウクライナ モザンビーク モザンビーク スロバキア共和国スロバキア共和国 南アフリカ 南アフリカ 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 スワジランド スワジランド ハンガリー ハンガリー レソト レソト IBRD: 億3100 12IBRD: 万ドル 12億3100万ドル スロベニア スロベニア クロアチア ルーマニア クロアチア ルーマニア IDA:25億IDA: 6620 25万ドル 億6620万ドル セルビア・ セルビア・ ボスニア・ モンテネグロ ボスニア・ モンテネグロ プロジェク トのポートフォリオ プロジェク トのポートフォリオ :174億ドル :174億ドル ヘルツェゴビナ ヘルツェゴビナ ブルガリア ブルガリア アフリカ地域 アフリカ地域 アルバニア マケドニア アルバニア マケドニア 旧ユーゴスラビア 旧ユーゴスラビア 2006年度 新規融資承認額 2006年度 新規融資承認額 共和国 共和国 IBRD:4000 : 万ドル IBRD 4000万ドル IDA:47億IDA: 万ドル 47 4660 億4660万ドル プロジェク トのポートフォリオ プロジェク :186億ドル トのポートフォリオ :186億ドル IBRD 32613R2 IBRD 32613R2 2006年7月 2006年7月 第2章:地域別展望 29 アフリカ地域 2006 年度、石油資源を持つ国を除いた 15 カ国は、年間成長率 いるアフリカの国々を対象としたものになるでしょう。また世銀 の 10 年間中央値を 5.3% に伸ばしました。また、5 つの国で 5 歳 は、ガバナンスの改善、インフラ格差の縮小、開発による利益の 未満児の死亡率が大幅に低下したほか、初等教育の普及が最も遅 より公平な共有に焦点を当てた「アフリカ行動計画」を初めて採 れていた国の 1 つであるニジェールが、初等教育を最も普及させ 択しました。よいガバナンスと説明責任を促進し、貧困克服のた た国の 1 つとなりました。それでもアフリカには、世界で最も深 めのプログラムへの持続的な取り組みを促すため、チャド、コン 刻な開発上の課題が残されています。1 日 1 ドル未満で暮らす人々 ゴ共和国、エチオピアおよびケニアにおいて断固とした行動をと の数は、1981 年当時の 2 倍近くに当たる 3 億 1400 万人以上に上 りました。 ります。世界の最貧国 48 カ国のうち 34 カ国が、また、国連開発 この 1 年間、アフリカではガバナンスやリーダーシップの面で 計画の人間開発指数が最も低い 32 カ国のうち 24 カ国がアフリカ 前向きな変化がみられました。リベリアでは、アフリカ初の女性 にあります。さらに、年間 300 万人以上が HIV/ エイズやマラリア 大統領が選出されました。ガーナとルワンダは、アフリカにおけ で死亡しており、この 2 つの疾病によって、この地域では 1 人当 るピア・レビュー ・メカニズムによる監視を受けるためガバナンス ・ たり年間成長率の推定 1% 以上に当たる損失が出ています。 プログラムを提出した最初の国となりました(www.nepad.org を 2005 年半ば、ドナー各国は 2010 年までにアフリカへの年間援 参照)。またアフリカでは初めて、元大統領が武力紛争への関与を 助額を 500 億ドルに倍増させると約束しました。世銀は「多国間 理由に国際法廷に拘束 ・告発されました。カメルーンとケニアでは、 債務救済イニシアティブ」に参加しており、このイニシアティブ 閣僚が辞任したり投獄されたりしました。南アフリカでは、副大 の下で 370 億ドル相当の債務を 40 年にわたって免除する予定で 統領が不正にかかわったとして解任されました。 す。その大部分は、健全な財政運営を行い、貧困削減を約束して こうした前向きな動きにより、アフリカの人々は将来に希望を アフリカ地域の概要 総人口: 7 億人 人口増加率: 2.1% 2006 年度の 2006 年度の 平均寿命: 46 歳 新規融資承認額 融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) : 100 件 IBRD:4000 万ドル IBRD:400 万ドル 若い女性の識字率: 77% IDA:47 億 4660 万ドル IDA:40 億 300 万ドル 2005 年の 1 人当たり国民総所得(GNI): 750 ドル HIV 感染者・エイズ患者数: 2480 万人 2006 年 6 月 30 日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 186 億ドル 注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)および若い女性の識字率は 2004 年、 HIV 感染者・エイズ患者数は 2006 年の国連エイズ合同計画「世界のエイズ流行に関する 最新情報」、その他の指標は 2005 年の「世界開発指標」の数字です。 30 世界銀行 年次報告書 2006 世銀融資適格国 アンゴラ ギニア シエラレオネ チャド ボツワナ ルワンダ ウガンダ ギニアビサウ ジンバブエ 中央アフリカ共和国 マダガスカル レソト エチオピア ケニア スーダン トーゴ マラウイ エリトリア コートジボワール スワジランド ナイジェリア マリ ガーナ コモロ セーシェル ナミビア 南アフリカ カーボヴェルデ コンゴ共和国 赤道ギニア ニジェール モーリシャス ガボン コンゴ民主共和国 セネガル ブルキナファソ モーリタニア カメルーン サントメ・プリンシペ ソマリア ブルンジ モザンビーク ガンビア ザンビア タンザニア ベナン リベリア 抱き始めています。ギャラップ社の調査では、回答者の 52% が 致命的な疾病であるマラリアの抑制を目指す「世界戦略・予防 「2006 年は経済的に繁栄する」と予想し、57% が「2005 年より 接種プログラム」の下で、世銀は昨年度、8 カ国への融資総額を いい年になる」と予想しています。 300% 以上増やしました。ベナン、コンゴ民主共和国、ニジェール、 ザンビアにおいてこのプログラムは、基本的な保健インフラの再 世銀の援助 建と殺虫剤処理した蚊帳の供給、そしてマラリア治療を中心に進 世銀はアフリカへの最大の開発援助提供者であり、最近 5 年間 められました。また、セネガル川流域にあるギニア、マリ、モー に支援を大幅に増やしています。2006 年度 IDA 融資額は、グラ リタニア、セネガルの 4 カ国では、マラリア抑制策が世銀の出資 ントが 11 億ドル、クレジットが 35 億ドルであり、2000 年度の援 する水資源開発プログラムの一環として進められる予定です。 助額の 2 倍に相当します。融資実行額は 40 億ドルで、100% 以上 増えています。 2 つの IBRD 融資の総額は 4000 万ドルに上りました。 紛争の緩和と参加型社会の構築 世銀のアフリカ支援戦略の概要は「アフリカ支援戦略の枠組み」 紛争のために、アフリカ諸国の経済成長率は推定で年間 2.2% に示されており、この枠組みの基盤となっているのは「アフリカ 低下しています。世銀は 「アフリカ開発のための新たなパートナー は 21 世紀に生き残れるか」と題する報告です。この枠組みは、紛 シップ(NEPAD) 」と協力して、成長を加速させ、外国からの投 争の緩和、 ガバナンスの改善、 国民への投資、 援助の有効性の向上、 資を呼び込み、輸出を増やすために必要な平和と安定の実現に努 そして競争と貿易の活性化を通じた経済成長の促進に焦点を当て 力しています。2006 年度、世銀はスーダン再建のため 2 つのマル たものであり、 「アフリカ行動計画」によって補足されています チドナー信託基金からの融資を開始しました。21 年間におよぶ武 (第 1 章「アフリカ行動計画の実施」参照) 。 力紛争で壊滅的な打撃を受けたスーダンは、世銀が「切迫した状 貧困削減は 2005 年も変わらず世銀の着目する重要な課題でし 況にある低所得国イニシアティブ」の下で経済の再生と元兵士の た。数ある取り組みの中でも特に、ニジェールでは基本的なサー 社会復帰に取り組んでいる国の 1 つです。世銀はまた、アフリカ ビスの供給を改善するための融資を行い、 タンザニアでは金融サー 全体で、透明性を高め、石油、ガス、ダイヤモンド、木材、貴金 ビスのアクセスを拡大し、ベナン、ブルンジおよびコンゴ民主共 属などの紛争にからんだ不法輸出による利益を減らすための取り 和国では労働集約的な公共事業と雇用創出プログラムに出資し、 組みを続けています。 エチオピアでは現地政府と国民の参加を得て保健、教育、農業、 安全な水の供給といった不可欠なサービスを維持し、ケニアでは 投資に適した環境の醸成 不正と戦い透明性と説明責任を向上させるために主要省庁の能力 「アフリカ行動計画」は、官民パートナーシップの拡大と革新的 を向上させ、コンゴ民主共和国では林業と鉱業セクターのガバナ な資金供給手段の普及を促進します。世銀、IFC および MIGA は、 ンスを改善しました。 世銀グループの相補的な能力を統合することで、優先的なインフ 世銀は開発パートナーと協力して、貯蔵中の廃棄農薬を除去す ラ・プロジェクトへの民間参加を促しています。良好な実績を上 る「アフリカ廃棄農薬プログラム」や、漁業資源の枯渇や海洋環 げている国の成長、貧困削減、そして「ミレニアム開発目標」の 境の悪化といった問題に取り組む「PROFISH パートナーシップ」 達成を促すため 2006 年 3 月に創設された 「アフリカ触媒成長基金」 などのプログラムを開始しました。ナイジェリアでは鳥インフル は、地域のプログラムを支援し、経済改革を強化しています。世 エンザ対策に、またザンビアでは小規模農業の商業化促進策に、 銀グループの「ビジネス環境の現状 2005:成長の妨げとなる障害 融資を行いました。マラウイでは、旱ばつによる飢饉の影響を受 の撤廃(仮題) 」は、アフリカの大半の国においてビジネス環境は けている人々に対して食料援助を行いました。プログラム融資は、 コストもリスクも大きいと述べていますが、前向きな動きとして、 約 20 万世帯の農業生産量と収入を増やすことを目標とした灌漑 成長と雇用創出の原動力となる民間セクターの潜在能力育成を目 促進や農業投資資本のアクセスのためにも利用されました。 的としたルワンダの改革を挙げています。問題が多くコストが高 第2章:地域別展望 31 図2.1 図2.2 アフリカ地域 アフリカ地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 総融資額48億ドルに占める割合 総融資額48億ドルに占める割合 法規 4% 21% 金融・民間セクター開発 産業・貿易 7% 7% 教育 エネルギー・鉱業 11% 3% 金融 公共セクター運営 20% 9% 貿易・統合 8% 上下水道・治水 運輸 13% 5% 環境・天然資源管理 12% 農業・漁業・林業 経済管理 1% 社会的保護 ・ 6% 都市開発 保健・その他の リスク管理 5% 社会サービス 13% 11% 農村開発 社会開発・ジェンダー・ 参加 4% 14% 人間開発 情報・通信 <1% 26% 法律・司法・行政 地域統合:繁栄を築くための柱 「アフリカ行動計画」は地域統合を、15 の内陸国を抱え、国内 総生産はベルギー 1 国分相当しかないアフリカ大陸に繁栄をもた らすための主要な柱の 1 つと考えています。2006 年度のアフリカ 地域向け融資(複数国の試験プロジェクト向け)は 4 億 7500 万 ドルを上回り、2005 年度の 3 倍に達しました。プログラムにより 融資を受けたのは、貿易促進、HIV/ エイズへの地域的取り組み、 民間セクター開発、地域の電力システム、電気通信、運輸、保健、 高等教育、農業調査、移動性害虫、食糧安全保障、国境を越えた 環境問題、天候に対する農村部の脆弱性といった分野でした。ケ ニア、ルワンダ、タンザニアおよびウガンダでは、地域の貿易や 輸送システム、特に鉄道事業を促進するプログラムに融資しまし た。世銀はまた、ブルキナファソ、カメルーン、ギニアおよびマ リの航空輸送の安全性を向上させ、 これらの国の航空産業界が「国 いというビジネス環境の結果、アフリカ地域は 2005 年の途上国 際民間航空輸送協会」の安全基準を完全に近い形で満たせるよう 向け外国直接投資総額 2370 億ドルのうち 220 億ドルを受け取っ にするためのプロジェクトにも援助を行いました。 たにすぎませんでした。こうした投資の大半は、石油、ガス、鉱 物およびサービスに対して行われたものでした。 援助フローの拡大、簡素化および調和 大多数の産油国が石油価格高騰による恩恵を受けましたが、ア 世銀は「パリ宣言」のアフリカでの実行を支持しています。こ フリカ地域の石油純輸入国は、主に石油価格が原因で国内総生産 の宣言は、各国政府に独自の開発優先策を主体性をもって立案す の約 3.5% に相当する累積損失を被りました。多くの国の輸出は るよう求める一方で、国際パートナーに対しては、信頼できる成 約 8% 拡大しましたが、ドーハラウンド貿易交渉が合意に達しな 果重視型の資金フローを低コストで拡大して提供するよう求める かった上、世界的に貿易が制限されたこともあって、こうした成 ものです。そのためには、アフリカ諸国の政府は、不正と戦い、 果をもってしても世界貿易にアフリカが占める割合の縮小を補う 成長によって生まれた利益を公平に分かち合い、有意義かつ測定 ことはできませんでした。 可能な開発成果を上げるという覚悟が必要です。世銀はドナー国 貿易を拡大するには、アフリカの労働力の 70% が集中し、輸出 に対し、2003 年のモンテレー・サミットや 2005 年のグレンイー の 40% を占めている農業セクターの強化が必要です。世銀は グルズ G8 サミットでの公約を守ることで、アフリカが「ミレニア 2015 年までに農業生産高を年間 6% 増やすことを目指す NEPAD ム開発目標」の達成に必要な年間 7% の成長を実現するのを支援 の「包括的アフリカ農業開発プログラム」を支援しています。ま 。 するよう、強く求めています(www.worldbank.org/afr 参照) た世銀と NEPAD は、域内貿易の自由化、資本市場の創設、起業 や投資家保護や不動産登記の障害の解消、付加価値のある「アフ リカ製品」に世界市場で不利益をもたらすようなカスケード式関 税の廃止の提唱などに取り組んでいます。 32 世界銀行 年次報告書 2006 表 2.1 アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経済管理 138.5 138.7 37.8 68.0 46.5 31.4 環境・天然資源管理 110.0 159.9 227.0 195.2 217.2 250.6 金融・民間セクター開発 625.8 780.7 383.6 810.9 768.2 979.1 人間開発 399.4 739.0 811.4 618.2 620.2 673.3 公共セクター運営 429.6 851.9 432.4 818.4 708.0 964.7 法規 34.0 22.5 34.5 28.3 30.9 179.7 農村開発 296.3 329.2 384.1 360.7 537.2 528.6 社会開発・ジェンダー・参加 491.8 347.4 420.0 374.3 221.8 198.5 社会的保護・リスク管理 376.4 98.3 543.7 209.2 294.3 262.7 貿易・統合 261.5 46.4 37.2 371.5 232.0 413.1 都市開発 206.1 279.6 425.5 261.1 211.4 304.9 テーマ総額 3,369.6 3,793.5 3,737.2 4,115.9 3,887.5 4,786.6 セクター 農業・漁業・林業 212.0 210.4 303.4 268.5 215.3 585.5 教育 209.5 472.6 423.6 362.9 369.0 339.3 エネルギー・鉱業 198.0 490.3 324.4 365.8 509.5 524.5 金融 200.1 192.8 67.2 165.7 68.6 142.3 保健・その他の社会サービス 889.9 616.6 775.9 723.1 590.3 614.0 産業・貿易 170.6 266.7 92.7 95.4 253.8 348.4 情報・通信 21.1 33.8 41.4 52.9 20.0 5.0 法律・司法・行政 880.8 906.9 721.8 1,004.2 1,077.5 1,263.0 運輸 229.8 491.1 690.5 716.6 507.2 602.7 上下水道・治水 357.8 112.2 296.3 360.8 276.2 361.9 セクター総額 3,369.6 3,793.5 3,737.2 4,115.9 3,887.5 4,786.6 うち、IBRD 融資額 0.0 41.8 15.0 0.0 0.0 40.0 IDA 融資額 3,369.6 3,751.6 3,722.2 4,115.9 3,887.5 4,746.6 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資融資を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 第2章:地域別展望 33 東アジア・大洋州地域 2005 年、東アジア・大洋州地域の経済は 8.2% という安定的な この地域の国々は、鳥インフルエンザの発生に対処するための方 ペースで成長し、2006 年上期も同様の成長を続けました。この地 策を講じています。鳥インフルエンザは養鶏関係者に大打撃を与 域では、最近 5 年間、持続的成長によって毎年 5000 万人が貧困 えましたが、その影響は経済全体にまでは及んでいません。 から脱け出しています。1 日 1 ドル未満で暮らす人が人口のわず か 8% にすぎない東アジアでは、2010 年までに絶対的貧困が大幅 世銀の援助 に削減される可能性があります。この地域で貧困削減が進んだ大 東アジア・大洋州地域に対する世銀の戦略は、広範な経済成長 きな要因は、中国の急速な経済成長と、結果的に中国の隣国から を支援し、貿易と経済統合を促進し、よいガバナンスのための環 の輸出が増えたことにあります。輸出は最近 3 年間にほぼ倍増し 境を整え、社会的安定を高め、 「ミレニアム開発目標」を達成する ています。実質原油価格が過去 25 年強で最高を記録したにもか ことです。こうした目標を達成するため、世銀は 2006 年度、この かわらず、2005 年の成長はわずかに影響を受けたにすぎませんで 地域向けに 34 億ドルの融資を承認しました。うち 10 億ドルは した。インドネシアをはじめとするいくつかの国は、費用のかか IDA クレジット、8450 万ドルは IDA グラント、23 億ドルは IBRD る逆行的な燃料補助金の削減に踏み切る一方で、消費者や企業に 融資です。また今年、9 億 3930 万ドルの炭素基金の設立契約が 対し原油価格高騰に順応するよう促しました。 締結され、世界中の温室効果ガス排出削減に向けた東アジア・大 この地域の途上国は現在、投資環境を改善し、スキルの導入と 洋州地域への承認総額は 11 億ドルになりました。 構築を促進し、健康危機や雇用喪失や自然災害などの衝撃的な事 世銀は中国で、 平等性、環境、 農村部から都市部への移動といっ 件からどのように弱者を守るかという課題を抱えています。鳥イ た問題に取り組むための新たな国別パートナーシップ戦略を承認 ンフルエンザへの懸念によっても先行きに大きな不安があります。 しました。またインドネシアでは、同国を支援するための最新の戦 東アジア・大洋州地域の概要 総人口: 19 億人 人口増加率: 0.8% 2006 年度の 2006 年度の 平均寿命: 70 歳 新規融資承認額 融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) : 29 件 IBRD:23 億 4430 万ドル IBRD:18 億 600 万ドル 若い女性の識字率: 97% IDA:10 億 5720 万ドル IDA:7 億 5500 万ドル 2005 年の 1 人当たり国民総所得(GNI): 1630 ドル HIV 感染者・エイズ患者数: 240 万人 2006 年 6 月 30 日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 195 億ドル 注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)および若い女性の識字率は 2004 年、 HIV 感染者・エイズ患者数は 2006 年の国連エイズ合同計画「世界のエイズ流行に関する 最新情報」 、その他の指標は 2005 年の「世界開発指標」の数字です。 34 世界銀行 年次報告書 2006 世銀融資適格国 インドネシア ソロモン諸島 トンガ 東ティモール マーシャル諸島 モンゴル カンボジア タイ バヌアツ フィジー マレーシア ラオス人民民主共和国 キリバス 大韓民国 パプアニューギニア フィリピン ミクロネシア連邦 サモア 中国 パラオ ベトナム ミャンマー 略に沿って、不正防止への取り組みや投資環境の改善に向けた支 にも自然災害による危険、特にハリケーン並みの力を持つサイク 援を強化しています。津波の被害を受けたインドネシアのアチェ ロンによる危険があります。東アジア・大洋州地域の国内総生産 州では復興が急速に進んでおり(囲み 2.1 参照) 、コミュニティ主 の大部分は沿岸地域で得られています(特に中国ではその傾向が 導の復興促進に向けた世銀の活動の一環として、数千の土地所有 あります)が、こうした地域は海面上昇や天候関連の被害の影響 権が分配されました。この活動には、欧州委員会とオランダをは を最も大きく受ける場所です。世銀の報告書 「『もし』ではなく『い じめとする 15 のドナーが出資し世銀が管理する 5 億 2600 万ドル つ』 」は、被害を受ける可能性がきわめて大きい島々を擁 (仮題) の「 アチェ州とニア ス島 のた め の マ ル チド ナー 基 金 」から、 する太平洋諸島の災害準備についての調査結果です。ベトナムの 2850 万ドルが割り当てられました。また、ジョグジャカルタ地震 自然災害危機管理プロジェクトは、主に最も脆弱であることの多 に際しては、インドネシア政府からの要請を受け、この地震が発 いコミュニティのレベルで、自然災害の影響を緩和するための革 生した 2006 年 5 月 27 日からわずか 2 日後にドナー会議を開催し、 新的な手法を採用しています。 6 月に行われるドナー国の年次総会に間に合うよう、政府と共同で 世銀の「包括的炭素ファシリティ」の下で、中国企業 2 社が過 被害状況の調査を行いました。東ティモールでは、治安状況の悪 去最大規模の HFC-23(トリフルオロメタン)排出削減プロジェク 化につながる要因を考慮に入れる方向で、世銀の援助戦略が見直 トに同意しました。これらの企業は年間約 1900 万トンの二酸化炭 されようとしています。世銀は開発パートナーと協調して、ガバナ 素の排出を削減すると期待されています。HFC-23 の排出削減に ンス問題、公共財政、行政サービスの提供、雇用創出などに関す よって中国政府が得る収入の半分以上は、エネルギー効率、再生 る改革課題に再度焦点を合わせるのを支援し、また、石油収入に 可能エネルギー、石炭層メタンガスの確保と利用などの気候変動 関する制度面の能力強化の成果が紛争のために失われることが絶 に関連する活動に投資する新しい「クリーン開発基金」によって 対にないよう努めています。 利用されることになっています。 東アジア・大洋州地域では、ガバナンスを改善し不正と戦うた めの草分け的な取り組みが進行中です。たとえば、インドネシア 投資環境の構築 の国別援助戦略は、ガバナンスに焦点を当てた最初の戦略となり 世銀の政策融資は、投資を支援し経済成長を促進する制度を構 ました。この戦略は、この地域のプロジェクト・ポートフォリオに 築しています。インドネシア向けの 4 億ドルの第 2 次開発政策融 おけるセーフガードの強化、さらに広くは行政サービスやシステ 資は、投資環境の改善や財政運営などの主要優先事項の改善に充 ムの改革によって支えられています。 てられています。またこの政策融資は、世銀、日本政府およびア 世銀は「ミレニアム開発目標」により提示された課題に取り組 ジア開発銀行を共通の政策枠組みで結びつけるものでもあります。 んでいます。モンゴルの「農村教育・開発プロジェクト」は、農 ベトナムでは、約 10 のドナーが協力して、貧困削減支援融資によ 村部の初等教育の質を高めることを目指しています。また、清潔 る改革プログラムを支えています。東アジアの最貧国のひとつで な水と一般家庭の下水処理設備へのアクセスが切実に望まれてい あるラオス人民民主共和国でも、経済・構造改革プログラムで引 るベトナムでは、 「レッド・リバー・デルタ上下水道プロジェクト」 き続き進展が見られます。 によって 4 つの州の上下水道サービスが改善されることになって 貿易と統合は東アジア・大洋州地域の貧困削減に向けた取り組 います。 みにおいて重要な役割を果たしており、世銀はそうした活動とし 世銀は専門機関や政府と協力して、東アジアに現在も脅威を与 ては新しい分野であるベトナムの税関近代化プロジェクトを支援 えている鳥インフルエンザの予防、発生時への備え、および蔓延 しています。世銀は金融セクターの多様化に関する会議を共催し 防止に取り組んでいます。ベトナムでは動物とヒトの両方の健康 ました。この問題についての最終報告を、 2006 年 9 月にシンガポー 問題に取り組むプロジェクトが開始されており、ラオス人民民主 ルで行われる世銀の年次総会で発表する予定です。 共和国でもこのプロジェクトの新規導入が承認されました。ほか インフラが今も課題となっているのは、昨年の共同調査「東ア 第2章:地域別展望 35 図2.3 図2.4 東アジア・大洋州地域 東アジア・大洋州地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 総融資額34億ドルに占める割合 総融資額34億ドルに占める割合 法規 <1% 22% 金融・民間セクター開発 産業・貿易 1% 8% 教育 3% 貿易・統合 6% 金融 12% 環境・天然資源管理 エネルギー・鉱業 12% 公共セクター運営 11% 17% 上下水道・治水 13% 都市開発 経済管理 2% 運輸 19% 社会的保護 ・ 11% 農業・漁業・林業 リスク管理 4% 保健・その他の 14% 農村開発 社会サービス 5% 社会開発・ジェンダー・ 参加 2% 17% 人間開発 情報・通信 <1% 20% 法律・司法・行政 ジアのインフラ整備に向けた新たな枠組み」 の中で指摘されてい ピンでは大規模な司法会議が開催され、世界中から集まった裁判 るとおりです。今年度、中国、インドネシア、フィリピンおよび 官が司法機関のスキルと有効性の向上について話し合いました。 ベトナムにおける新しいエネルギー・プロジェクトを通じて、世 また、世銀が管理するマルチドナーの「ミンダナオ(フィリピン) 銀はエネルギー効率や送配電の改善に貢献しています。ラオス人 信託基金―復興・開発プログラム」が導入されました。このプロ 民民主共和国での「ナムトゥン 2 水力発電プロジェクト」の建設 グラムは包括的かつ有効なガバナンスのプロセスを普及させるこ 工事は順調に進んでおり、工事に伴って人々や環境が受ける影響 とを目的としており、現地公共機関の能力開発に焦点を当てた を軽減する努力も続いています。 第 1 段階がすでに開始されています。 中国、パプアニューギニア、フィリピンおよびベトナムは今年、 開発への参加促進 ディベロップメント・マーケットプレースを開催し、地域の開発 世銀は国や地方レベルのガバナンス環境を改善するための活動 課題への新しいアプローチを試すため、230 万ドル以上をシビル を行っています。あるコミュニティ主導の開発イニシアティブで ソサエティ団体に支給しています(囲み 1.5 参照)。東アジア・大 は、コミュニティ開発プロジェクトを通じてよいガバナンスを求 洋州地域に設置された世銀情報センターは、障害者、特に視覚障 「森林法の施 める声を強化する方法について研究を進めています。 害者がより多くの情報を利用できるよう取り組みを進め、また、 行とガバナンスに関するイニシアティブ」の下では、カンボジア 開発問題に対する理解を広めるため現地の団体と協力しています とフィリピンに派遣された使節団が、法令施行の改善が地域の森 。 (www.worldbank.org/eap 参照) 林の持続可能性にいかに貢献し得るかを調査しています。フィリ 囲み 2.1 アチェ州の平和再建 インドネシア政府と自由アチェ運動による 2005 年 8 月の 携をとっています。このプログラムには、政策立案を支援 ヘルシンキ和平合意の後、インドネシア政府は世銀に和平 するための包括的な調査プログラムが含まれており、この プロセスの支援を要請しました。これを受けて世銀は、和 調査プログラムで復興の必要性の評価を完了することに 平を知らせるポスターや和平合意書のコピーを配布し、平 なっています。このプログラムには、選挙時の分析作業、 和を呼びかけるラジオのトレーニングを試行し、元兵士を 復興プログラムの評価、紛争に配慮した方針を津波援助に コミュニティに復帰させるための「フォーラム・ブルサマ」 組み入れる方法の研究が含まれることになっています。 に参加しました。「ケチャマタン開発事業」は国際移住機関 と協力して復興援助金を支給しており、また「貧困地域援 世銀はアチェ州の主要な輸送路での不正を監視する革新的 助プログラム」はこれらの地域で復興プロセスを進展させ、 手法の開発を支援しています。こうした手法が開発されれ 元兵士の社会復帰を支援する予定です。 ば、建設工事費用の値上がりの要因となる不正な支払いの 要求を追跡できるようになります。世銀はまた、アチェ州 世銀は和平プロセス支援の一環として、アチェ州政府との 政府の要請に応じて紛争の動向や復興の動きの監視も行っ 協力の下、アチェ監視団、欧州連合、国際移住機関、国連 ています。 開発計画、日本政府およびアメリカ合衆国政府と密接に連 36 世界銀行 年次報告書 2006 表 2.2 東アジア・大洋州地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経済管理 0.0 4.8 29.7 0.0 87.0 78.7 環境・天然資源管理 399.3 102.3 232.3 432.2 446.9 396.4 金融・民間セクター開発 310.9 512.8 458.8 553.9 340.6 720.7 人間開発 52.6 226.4 152.7 164.6 184.6 543.7 公共セクター運営 65.1 127.4 341.5 299.0 344.5 385.9 法規 3.8 20.3 7.3 67.3 45.8 13.4 農村開発 341.6 360.9 411.7 400.9 484.1 465.7 社会開発・ジェンダー・参加 248.0 173.0 143.7 167.2 241.1 83.3 社会的保護・リスク管理 239.4 138.7 161.5 5.5 88.7 144.9 貿易・統合 40.0 43.3 138.0 82.9 126.5 112.1 都市開発 433.1 63.6 233.6 399.2 493.5 456.9 テーマ総額 2,133.8 1,773.6 2,310.8 2,572.7 2,883.3 3,401.6 セクター 農業・漁業・林業 109.7 151.2 106.7 290.4 207.9 373.3 教育 14.8 134.6 225.7 118.6 228.0 287.9 エネルギー・鉱業 142.2 314.5 254.3 67.2 359.1 425.2 金融 87.5 219.2 22.7 49.0 213.1 197.6 保健・その他の社会サービス 217.3 243.8 184.1 84.3 204.3 160.6 産業・貿易 151.8 9.4 32.5 78.7 159.1 29.3 情報・通信 12.5 11.1 6.6 0.0 5.0 5.3 法律・司法・行政 257.4 115.2 385.1 257.5 436.6 693.6 運輸 729.7 540.2 684.3 1,209.9 306.7 652.3 上下水道・治水 410.8 34.4 408.7 417.1 763.7 576.5 セクター総額 2,133.8 1,773.6 2,310.8 2,572.7 2,883.3 3,401.6 うち、IBRD 融資額 1,136.1 982.4 1,767.1 1,665.5 1,809.8 2,344.3 IDA 融資額 997.7 791.2 543.7 907.2 1,073.6 1,057.2 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資融資を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 第2章:地域別展望 37 南アジア地域 国内の改革と外国からの支援が、南アジア地域における経済急 数は約 7100 万人に上ります。 成長の追い風となっており、過去 20 年間の年間経済成長率は平 バングラデシュで毎年起きる洪水、モルディブやスリランカ、 均 5.5% に達しています。2005 年の国内総生産は推定 6.9%拡大し、 南インドに被害をもたらした 2004 年の津波、2005 年 10 月のパ おかげで南アジア地域は 2015 年までに貧困を半減するというミ キスタン北部地震など、頻発する大規模な自然災害に対してこの レニアム開発目標の達成に向け順調に進んでいます。南アジア地 地域が無防備であることから、世銀は防災対策に取り組んでいま 域の長期的成長は、民間セクターによる貢献が増えつつあること す。7 万 3000 人が死亡し、7 万人以上が重傷を負うか、あるいは を反映して、2015 年まで 5.5%前後での推移が予想されています。 障害者となり、280 万人以上が家を失ったパキスタンの巨大地震 貿易改革、民営化、インフラ整備、および銀行セクターの自由化 発生後、世銀とアジア開発銀行は共同で「被害・ニーズ・アセス や規制撤廃によって、投資環境が改善し、生産性が向上し、最終 メント」を実施し、被害額を 52 億ドルと見積もりました。この地 的に所得の拡大がもたらされると予想されます。 震の発生から 2 週間後、世銀は復興を支援すると共に継続中の改 しかし、南アジア地域は人間開発に関して途方もなく大きな問 革や貧困削減プログラムの中断を防ぐため、4 億 7000 万ドルを拠 題を抱えています。この地域では 4 億人もの人々が 1 日 1 ドル未 出しました。12 月にはさらに、 当面の苦痛の緩和と生活の立て直し、 満で暮らしており、障害者や子供を中心に貧困の問題は極端に深 住宅の再建、必要な輸入のための資金調達を目的とする 4 億ドル 刻で、栄養失調が蔓延しています。南アジア地域では乳幼児死亡 の拠出が承認されました。これらの承認額はその大部分が IDA 融 率のミレニアム開発目標を達成できる見通しが立っておらず、イ 資で、震災復旧のために世銀が拠出を誓約した総額 10 億ドルの ンドは世界でも有数の HIV 感染者を抱えています。また、南アジ 一部です(囲み 1.1 参照) 。 アは紛争の影響下にある住民が世界で最も多い地域でもあり、ア フガニスタン、ネパール、スリランカの 3 国を合わせると、その 南アジア地域の概要 総人口: 15 億人 人口増加率: 1.6% 2006 年度の 2006 年度の 平均寿命: 63 歳 新規融資承認額 融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) : 66 件 IBRD:12 億 3100 万ドル IBRD:10 億 3400 万ドル 若い女性の識字率: 65% IDA:25 億 6620 万ドル IDA:32 億 1800 万ドル 2005 年の 1 人当たり国民総所得(GNI): 680 ドル HIV 感染者・エイズ患者数: 620 万人 2006 年 6 月 30 日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 174 億ドル 注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)および若い女性の識字率は 2004 年、 HIV 感染者・エイズ患者数は 2006 年の国連エイズ合同計画「世界のエイズ流行に関する 最新情報」 、その他の指標は 2005 年の「世界開発指標」の数字です。 38 世界銀行 年次報告書 2006 世銀融資適格国 アフガニスタン インド スリランカ ネパール パキスタン バングラデシュ ブータン モルディブ 世銀の援助 世銀理事会はバングラデシュ、ブータン、パキスタンに対する新 世銀は 2006 年度、南アジア地域向けに 38 億ドル近くの融資を たな国別援助戦略について話し合いました。バングラデシュの戦略 承認しました。12 億ドルは IBRD 融資であり、26 億ドルは IDA の のテーマはガバナンスであり(囲み 2.2 参照) 、ブータンの戦略は 承認額(うち 2 億 7500 万ドルはグラント)です。この援助は、南 コミュニティと市場の連結や民間セクター開発に焦点を当てており、 アジア地域の都市部と農村部の深刻なインフラ不足や、不正や官 パキスタンの戦略は人間開発、インフラ、ガバナンス、脆弱性など 僚的形式主義などの投資環境の脆弱性といった問題に対処するた さまざまな角度から貧困問題に取り組むための広範な計画を示すも めのものです。世銀の援助は、平等性と一体性、HIV/ エイズ、地 のとなっています。 域統合、公的説明責任という 4 つの分野横断的な問題に注目する ことにより、この地域の人間開発を促進することを目的としてい 投資環境の構築 ます。世銀はガバナンスの改善を重視しており、たとえばバング 世銀は南アジア地域で 2 件の投資環境アセスメントを完了しま ラデシュ、インド、ネパールでは、政府調達の改革を支援するこ した。1 件は、紛争終結後の国として最初の事例となるアフガニ とによってガバナンスの改善を図っています。 スタンで、もう 1 件はモルディブで行ったものです。世銀はまた、 世銀は農村開発、教育および保健に対し、引き続き支援を行い バングラデシュ、インド、パキスタンで新たに投資環境アセスメ ました。スリランカでは、基礎教育を終えることのできない危険 ント活動を開始しました。 性のある約 55 万人の主に貧困層の子供たちが、教育機会拡大の 世銀はインフラの脆弱性、官僚形式主義、不正など南アジア地 ための 6000 万ドルのグラントから恩恵を受けるはずです。また、 域の投資環境の脆弱性にかかわる問題に取り組んでいます。アフ 保健制度が世界で最も未発達な国の 1 つであるアフガニスタンで、 ガニスタンでの課題は、改革をカブール以外の地域にまで拡大し、 世銀は基礎保健サービスの供給を拡大するための 3000 万ドルの 広範な成長の実現につながる改革を行うことです。8000 万ドルの 追加グラントを承認しました。インドのタミルナドゥ州には、貧困 第 2 次制度構築プロジェクトは、アフガニスタンの行財政改革を コミュニティに影響を与える変化の計画と実行にコミュニティ自 拡大し持続させることを目的としています。バングラデシュには、 体 を 関 与 さ せ る こ と に よ っ て、 社 会 資 本 を 構 築 す る た め、 不正発生の余地を減らしてもっと有効な行政機関を作り、 公共サー 1 億 2000 万ドルのクレジットを提供しました。 ビスの供給を改善するため、2 億ドルの開発支援クレジットを提供 また世銀は 1982 年から、バングラデシュ、ブータン、パキスタ しました。深刻な電力不足が続いているインドには、地区と州の間 ンおよびスリランカの HIV/ エイズ対策プロジェクトを支援し、アフ で安定した電力取引を拡大するため、4 億ドルの融資を行いました。 ガニスタンとモルディブの HIV/ エイズ対策を評価検討するため、 南アジア地域に約 3 億 8000 万ドルの融資を行うことを約束してい ます。南アジアの HIV/ エイズ罹患率は約 1% とそれほど高くなく、 協調的な行動によって流行を食い止めることができるだけの規模で すが、罹患率の高い地域は早急な対応を必要としています。世銀 はまた、インドで「第 3 次国家エイズ対策プログラム」の準備に入 り、この病気が与えるインドでの経済的影響の研究を開始しました。 世銀の戦略の重要な要素の 1 つに、分析・助言活動があります。 最近発表されたアフガニスタンの公共財政管理に関する報告書の中 では、経済成長、サービス供給および貧困削減を促進するための財 政的枠組み構築に向けた行動計画の提言を行いました。また、パキ スタンでの男女平等に関する調査、地域的な HIV/ エイズに関する調 査、バングラデシュにおけるシビルソサエティ組織の役割に関する報 告、ネパールでの社会的阻害に関する調査、平等性とサービス供給 に焦点を当てたインドの開発政策に関する調査などを実施しました。 第2章:地域別展望 39 図2.5 図2.6 南アジア地域 南アジア地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 総融資額38億ドルに占める割合 総融資額38億ドルに占める割合 法規 <1% 14% 金融・民間セクター開発 産業・貿易 8% 10% 教育 4% 貿易・統合 2% 金融 公共セクター運営 16% エネルギー・鉱業 13% 2% 環境・天然資源管理 8% 上下水道・治水 経済管理 1% 運輸 14% 社会的保護 ・ 15% 都市開発 10% 農業・漁業・林業 リスク管理 12% 保健・その他の 15% 農村開発 社会サービス 5% 社会開発・ジェンダー・ 参加 10% 10% 人間開発 情報・通信 1% 29% 法律・司法・行政 インドのタミルナドゥ州には、都市開発を支援するため、3 億ドル、 た。このプログラムは、 復興と農村インフラ整備を目的とするコミュ カルナタカ州にも 2 億 1600 万ドルの融資を行いました。長年にわ ニティ主導のイニシアティブで、2002 年の開始以来、850 万人が たる整備不良のせいで道路網が荒廃していたスリランカでは、1 億 その恩恵を受けています。また、世銀独自の若者向けプログラムは、 ドルのクレジットによって 620 キロメートルの国道が改良される予 学校を卒業してから仕事に就くという移行を円滑に進めるためのも 定であり、また、2005 年には 52% に上っていた整備不良の国道 。 のです(www.worldbank.org/sar 参照) が 2010 年には 35% にまで減らされることになっています。 開発への参加促進 世銀による開発参加促進のアプローチは、南アジア地域のコミュ ニティ・グループに、開発に関する意思決定を行い、資源を管理し、 プロジェクトで役割を担えるようにするものです。その際に重視さ れているのは、貧困な地域、コミュニティ、世帯の平等性と一体性 です。たとえばインドとパキスタンで、世銀は数百万人に上る貧困 層の女性に、マイクロ・ファイナンスや自営活動の機会を提供する 生計プログラムを支援しています。アフガニスタンでは、 「国家連 帯プログラム」に対して 4000 万ドルの追加グラントを承認しまし 囲み 2.2 バングラデシュの難問 途上国で年間成長率が 2% を下回ったことが全くない国は られています。こうした脆弱性をこのままにしておくと、 18 カ国しかありませんが、バングラデシュもその 1 つです。 特に電力や運輸など重要な分野の成長阻害要因となるで 1990 年代以降、同国の経済成長率は年間 4、5% ずつ順調 しょう。バングラデシュの「貧困削減戦略文書」は、ガバ に伸びており、 インフレも比較的低水準で、 国内債務、金利、 ナンスと投資環境の改善の必要性を強く指摘しています。 為替レートも安定しています。洪水などの気象災害が発生 この国の国別援助戦略はこの戦略文書に沿って策定されて しているにもかかわらず、国内総生産の伸びは 10 年ごとに おり、世銀グループによる介入すべてがセクター実績同様 1%ずつ加速しています。こうした成長は人口増加率の著し ガバナンスの改善を実現するものになるよう、ガバナンス い減少もあって、国民 1 人当たり年間成長率を 1980 年代 の問題に大きく着目しています。 の 1.6% から 1990 〜 2004 年には 3.3% に倍増させました。 またバングラデシュは初等教育の完全普及を達成し、中等 世銀のプログラムは、規制の枠組みの脆弱性を改善し、透 学校の生徒の構成に男女の差はありません。さらに、乳幼 明性を高め、公共財政管理・調達の能力を向上させ、説明 児死亡率に関するミレニアム開発目標達成に向けた歩みも 責任の制度を強化することによってバングラデシュを援助 順調です。 するものです。バングラデシュの国別援助戦略は 2006 年か ら 2009 年 ま で の 期 間 を 対 象 と し て お り、 融 資 額 は 推 定 このように成長や開発の成果が現れているにもかかわらず、 30 億ドルです。 ガバナンスは脆弱で、バングラデシュの難問として広く知 40 世界銀行 年次報告書 2006 表 2.3 南アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経済管理 47.4 232.5 123.5 7.7 87.5 56.6 環境・天然資源管理 587.8 295.2 94.2 94.8 433.9 93.0 金融・民間セクター開発 865.9 381.6 689.1 689.9 923.0 550.4 人間開発 124.8 30.2 546.9 760.6 1,041.6 391.7 公共セクター運営 261.0 678.0 467.3 669.8 639.5 597.9 法規 36.1 59.3 12.5 2.9 10.5 7.2 農村開発 379.5 417.2 403.7 314.1 1,132.5 568.6 社会開発・ジェンダー・参加 240.5 414.2 197.3 642.8 265.3 366.9 社会的保護・リスク管理 118.4 164.0 184.4 98.6 337.0 472.3 貿易・統合 398.3 70.0 197.3 52.7 63.7 138.8 都市開発 186.8 766.2 2.6 87.8 59.0 553.7 テーマ総額 3,246.6 3,508.4 2,918.7 3,421.6 4,993.3 3,797.2 セクター 農業・漁業・林業 116.1 328.1 212.6 251.9 940.8 368.9 教育 206.4 95.9 364.6 665.8 286.4 377.2 エネルギー・鉱業 746.2 504.8 150.6 130.8 83.6 483.0 金融 209.7 310.0 185.8 331.4 461.8 73.0 保健・その他の社会サービス 188.1 278.7 369.0 334.6 493.2 195.9 産業・貿易 34.0 443.1 144.9 46.1 485.2 306.5 情報・通信 17.7 12.4 11.5 16.9 91.9 50.0 法律・司法・行政 377.4 632.5 372.3 925.5 885.7 1,101.4 運輸 1,294.3 758.1 1,067.6 444.8 1,181.0 520.1 上下水道・治水 56.8 144.9 40.0 273.7 83.7 321.3 セクター総額 3,246.6 3,508.4 2,918.7 3,421.6 4,993.3 3,797.2 うち、IBRD 融資額 2,035.0 893.0 836.0 439.5 2,095.9 1,231.0 IDA 融資額 1,211.6 2,615.4 2,082.7 2,982.1 2,897.4 2,566.2 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資融資を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 第2章:地域別展望 41 ヨーロッパ・中央アジア地域 ヨーロッパ・中央アジア地域は、1989 年のベルリンの壁の崩壊 制度の脆弱性、インフラの老朽化、企業城下町の不振、国有企業 と共に始まった過渡期を過ぎて、順調に発展しています。この地 の改革の必要性、 (囲み 2.3 環境の悪化などの問題に直面しています 域にある 28 カ国の大多数の市場は改革に好意的な反応を示して 。中央計画経済の遺物であるこれらの問題は、一部の国では 参照) おり、独立国家共同体(CIS)の一部の国は政治的変化によってパ 人口の減少によって一層深刻化しています。 フォーマンスを改善しました。この地域の経済成長率は、2004 年 には 8% でしたが、2005 年には 5.7% にまで低下しました。金融 世銀の援助 セクターの持続的拡大によって需要が増える一方で、リスクも高 2006 年度の援助額は 40 億ドルに上り、35 億ドルが IBRD 融資・ まっています。 保証、5 億ドルが IDA 融資承認額でした。世銀は 98 件の経済・セ 政治面では 2006 年度も大きな展開がありました。欧州連合が クター調査(ESW)を実施し、 59 件の技術協力活動を完了しました。 トルコおよびクロアチアと加盟に向けた事前交渉を開始し、アル さまざまなレベルの政府の代表が参加する世銀のパートナー バニアとの準加盟協定への調印も行いました。2006 年 5 月に住民 シップは、ヨーロッパ・中央アジア地域の低中所得国を支援するた 投票を実施したモンテネグロは、セルビアとモンテネグロの連合 めの好ましい方法になりつつあります。この新しいアプローチは、 を解消して独立することを宣言しました。 地方分権化が進み、地方レベルでの成果が広範な改革の促進につ 欧州連合への加盟によって、多くの国が自国の複雑な改革の進 ながることが多いと政府が認識するようになったのを受けたもので 展に弾みをつけましたが、それでもなおヨーロッパ・中央アジア す。こうしたパートナーシップの例としては、いずれも 2006 年度 地域には課題が残っています。長期的な失業や、公共セクターに に理事会で検討された、2006 年から 2009 年までの「グルジア国 労働者を受け入れる能力がないことは、慢性的な問題となってい 家パートナーシップ戦略」や新しい「アルバニア国別援助戦略」が ます。ブルガリアやロシア連邦などの国は、農村部の貧困、地方 挙げられます。 ガバナンスと不正が最大の懸念であるため、 ヨーロッ ヨーロッパ・中央アジア地域の概要 総人口: 5 億人 人口増加率: 0.1% 2006 年度の 2006 年度の 平均寿命: 69 歳 新規融資承認額 融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) : 28 件 IBRD:35 億 3190 万ドル IBRD:25 億 5000 万ドル 若い女性の識字率: 98% IDA:5 億 1280 万ドル IDA:4 億 5700 万ドル 2005 年の 1 人当たり国民総所得(GNI): 4110 ドル HIV 感染者・エイズ患者数: 150 万人 2006 年 6 月 30 日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 165 億ドル 注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)および若い女性の識字率は 2004 年、 HIV 感染者・エイズ患者数は 2006 年の国連エイズ合同計画「世界のエイズ流行に関する 最新情報」 、その他の指標は 2005 年の「世界開発指標」の数字です。 42 世界銀行 年次報告書 2006 世銀融資適格国 この項ではコソボ、セルビア・モンテネグロについても報告する。 アゼルバイジャン カザフスタン タジキスタン ボスニア・ヘルツェゴビナ リトアニア * エストニアは 2006 年年次総 会で世銀の融資対象国を卒 アルバニア キルギス共和国 トルクメニスタン ポーランド ルーマニア 業する予定。 アルメニア グルジア トルコ マケドニア ロシア連邦 † モンテネグロは 2006 年 5 月 ウクライナ クロアチア ハンガリー 旧ユーゴスラビア共和国 に実施した独立を問う住民投 モルドバ 票の結果、セルビアとモンテ ウズベキスタン スロバキア共和国 ブルガリア ネグロの連合を解消して独立 エストニア * セルビア・モンテネグロ † ベラルーシ ラトビア すると宣言した。 パ・中央アジア地域は財政改革と裁判所の近代化を進めるプロジェ 銀グループが毎年発行している「ビジネス環境の現状」 報告書に クトを重視しています。世銀の専門家は、不正に対する認識の度合 よれば、2005 年には東ヨーロッパのすべての国がビジネス環境要 いを評価するための企業調査を引き続き利用しています。 素を 1 つ以上改善しており、東ヨーロッパはすべての地域の中で 世銀は鳥インフルエンザによる健康危機を回避するための支援 改革のペースが最も速い地域でした。セルビア・モンテネグロ、 要請に早急に対応しました。アルバニア、アルメニア、アゼルバイ スロバキア共和国、ルーマニアおよびラトビアは実施済み制度改 ジャン、グルジア、モルドバ、キルギス共和国およびトルコへの援 革のほとんどで世界最高の順位を獲得しました。 助(アゼルバイジャンについては融資再配分)を承認し、その他の 投資環境を活性化するため、世銀は企業の競争力向上と、主要 国についても同様の活動を進めています。これらの活動は主に動物 な経済セクターに規律を与える司法などの制度の改善に向けた各 とヒトの健康、国民の意識と情報発信、モニタリングと評価、およ 国政府の取り組みを支援しています。その例としては、 「モルドバ び緊急輸入に関するものです。 競争力向上プロジェクト」や「セルビア・モンテネグロ民間・金 2006 年度には、欧州連合に加盟する体制が整った国の固有の 融開発政策プログラム融資」などがあります。政策面に関しては、 技術的ニーズを満たすため、いくつかの革新的なプロジェクトが トルコの「2006 年国別経済メモランダム」が持続的成長の促進と 開始されました。具体的には、 「ルーマニア知識経済プロジェクト」 や「クロアチア科学技術プロジェクト」などがあります。ルーマ ニアのプロジェクトは、 十分な通信設備のない辺境のコミュニティ が同国の知識集約型社会に積極的に参加できるようにし、デジタ ル情報処理能力を高め、電子政府サービスを開発し、小規模事業 者の技術革新を支援するものです。またクロアチアのプロジェク トは、応用研究を推進し、テクノロジーを有効に商業利用するた めに必要なスキルを企業に身につけさせるために、研究開発機関 の能力を向上させることを目的としています。 雇用、貿易、貧困と不平等、HIV/ エイズの経済的損失などの重 要な問題に焦点を当てた詳細な調査と助言活動を通じて、世銀は 知識を深め、優先度の高い開発問題について議論を喚起すること ができました。2006 年度、ヨーロッパ・中央アジア地域では、 「成 長、 貧困および不平等 :東ヨーロッパと旧ソビエト連邦(仮題)「雇 」、 用機会の拡大:東ヨーロッパと旧ソビエト連邦(仮題) 」「崩壊か 、 ら再統合へ:国際貿易の中での東ヨーロッパと旧ソビエト連邦(仮 題) 」という 3 つの重要な報告書が発表されました。そのほかにも、 この地域の労働移民、人口動向、生産性向上に関する調査が実施 されているところです。定期刊行の「ロシア経済報告」 と「EU 8 カ国四半期経済報告」は、ジャーナリスト、経済学者、政策担当 者が主要な国のマクロ経済動向を追跡できるようにするものです。 投資環境の構築 東ヨーロッパやバルト海沿岸の国々は、事業者の規制や税を合 理化する広範な改革を行うことにより起業を促進しています。世 第2章:地域別展望 43 図2.7 図2.8 ヨーロッパ・中央アジア地域 ヨーロッパ・中央アジア地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 総融資額40億ドルに占める割合 総融資額40億ドルに占める割合 法規 10% 35% 金融・民間セクター開発 産業・貿易 7% 3% 教育 9% 金融 6% 貿易・統合 <1% 上下水道・治水 エネルギー・鉱業 28% 3% 農業・漁業・林業 公共セクター運営 15% 環境・ 4% 天然資源管理 経済管理 <1% 運輸 10% 社会的保護 ・ リスク管理 8% 5% 都市開発 社会開発・ジェンダー・ 6% 農村開発 保健・その他の 参加 2% 9% 人間開発 社会サービス 8% 32% 法律・司法・行政 欧州連合への収斂に焦点を当てたものとなっています。また、企 事者とそのコミュニティを支援する社会的包含戦略を実施するも 業がきちんと機能する法廷に訴えることのできる必要があること のです。アルバニアでは、既存の保健制度に組み入れられていな から、世銀は裁判所庁舎の改良や司法手続きの有効性と透明性の い人々が基礎的な保健サービスを受けられるようになります。ま 向上をめざすアルメニアの司法改革への援助も行っています。 た、「保健制度近代化プロジェクト」の一環として全国で開始され ロシアでは、世銀が援助する「土地台帳プロジェクト」によっ ている医療制度の改善により、貧困層がかかりつけの医師を選ぶ て不動産市場の開発を支援しています。土地利用や不動産改革を ことができるようになります。 支援する世銀の他の活動と同様、このプロジェクトはロシアの投 世銀はヨーロッパ・中央アジア地域で融資以外の活動も支援し 資環境を改善すると同時に、地方自治体に土地税による予測可能 ています。 「ディベロップメント・マーケットプレース」プログラ な収入源を提供することを目的としています。 ムはシビルソサエティ組織にマイクログラントの獲得を競うこと を奨励しています。マルチドナーの 「ロマ族教育基金」 は、 ヨーロッ 開発への参加促進 パ最大の少数民族であるロマ族が学校教育を受ける機会を広げて 社会の幅広い階層が利益を享受できるようにし、参加型開発を います。ロシア人の若者を対象に北コーカサスで行われた調査は、 促進するため、世銀の活動は公共サービスの改善と、革新的なプ 対象層が高い失業率、社会不安、疎外化といった問題に直面して ロジェクトや調査イニシアティブへの脆弱なグループの参加を重 いることを浮き彫りにしました。また、 「早すぎる死(仮題) 」報 視しています。「ポーランド EU 加盟後農村支援プロジェクト」は、 告 書 で は、所 得 水 準 が 同 程 度 の 他 国 に 比 べ てロシ ア の 死 亡 開発の立ち遅れた村落を対象に、地方自治体による社会的保護戦 率 や 罹 患 率 が 高 いことに 政 策 担 当 者 の 注 意 を 喚 起しまし た 略の実行を支援し、農業保険基金への援助を行い、小規模農業従 (www.worldbank.org/eca 参照) 。 囲み 2.3 北アラル海の再生 北アラル海の表面積は、行き過ぎた灌漑と不適切な生態系 シルダリア川流域の給水設備を改善し、南北アラル海の間 管理が原因で、2005 年の初めまでに元の大きさの半分にま に 13 キ ロ メ ー ト ル に 及 ぶ コ ク – ア ラ ル 堤 防 を 建 設 す る で縮小しました。しかし 8 月に完成した堤防のおかげで北 8580 万ドルのプロジェクトをカザフスタン政府と世銀が共 アラル海の水量は部分的に増え、周辺住民の期待が高まり 同で実施し、世銀はこのプロジェクトに 6500 万ドルを融資 ました。アラル海はカザフスタンとウズベキスタンによっ しました。 「シルダリア川治水 ・ 北アラル海プロジェクト」 は、 て共有されていますが、そこに注ぎ込む川はアフガニスタ 漁業や農業、水力発電事業の機会を復活させるために、シ ン、キルギス共和国、タジキスタン、トルクメニスタンを ルダリア川流域の給水設備を建設・修復するものでした。 も流域としています。アラル海の縮小が始まったのは、綿 すでに漁業資源は増加しており、淡水域に生息する鳥類も を栽培するために行われた大規模な引水のせいで水源とな 北アラル海やその周辺の湖に戻ってきています。また、こ る 2 つの川が枯渇した 1960 年代からでした。その結果、 のプロジェクトは生態系の回復を促しているだけでなく、 1996 年までにアラル海の水量は 75% が消滅し、周辺環境 冬の間水力発電用に水を使う上流の国と夏の間灌漑用水を の荒廃と、隣接する村落の伝統的な漁業経済の崩壊を招き 利用する下流の国の緊張関係を緩和する役割も果たしてい ました。1990 年代後半までに、アラル海は南部の 2 つと北 ます。 部の 1 つの、合わせて 3 つの部分に分割されました。 44 世界銀行 年次報告書 2006 表 2.4 ヨーロッパ・中央アジア地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経済管理 127.4 636.1 19.5 242.0 17.4 4.6 環境・天然資源管理 161.3 157.5 122.7 309.4 394.4 148.8 金融・民間セクター開発 1,074.0 2,210.8 483.3 950.2 933.9 1,461.1 人間開発 51.1 138.3 550.4 297.1 539.4 360.3 公共セクター運営 95.6 1,313.7 317.7 895.1 272.3 589.1 法規 77.4 106.6 289.8 132.3 66.8 401.6 農村開発 137.6 309.9 194.9 117.4 161.5 238.5 社会開発・ジェンダー・参加 65.1 188.8 55.9 33.9 246.6 95.1 社会的保護・リスク管理 381.2 363.9 288.5 305.3 668.8 335.9 貿易・統合 138.4 32.5 130.6 182.6 424.4 226.6 都市開発 383.9 65.4 216.7 93.6 368.0 183.0 テーマ総額 2,693.1 5,523.6 2,670.0 3,559.1 4,093.5 4,044.7 セクター 農業・漁業・林業 139.0 470.4 335.4 168.6 107.0 117.9 教育 62.5 83.2 395.0 164.0 263.8 126.7 エネルギー・鉱業 336.6 218.0 262.9 352.2 657.9 1,108.3 金融 802.3 1,284.9 195.8 836.9 259.1 374.5 保健・その他の社会サービス 281.9 524.7 415.3 244.3 484.9 339.9 産業・貿易 296.5 552.1 269.0 126.3 253.5 274.8 情報・通信 8.7 9.6 1.0 7.0 10.9 0.0 法律・司法・行政 446.4 2,181.9 698.9 1,176.8 1,160.6 1,271.7 運輸 118.3 67.1 30.6 321.2 557.9 416.7 上下水道・治水 200.7 131.7 66.3 162.0 337.9 14.2 セクター総額 2,693.1 5,523.6 2,670.0 3,559.1 4,093.5 4,044.7 うち、IBRD 融資額 2,154.0 4,894.7 2,089.2 3,012.9 3,588.6 3,531.9 IDA 融資額 539.0 628.9 580.8 546.2 504.9 512.8 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資融資を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 第2章:地域別展望 45 ラテンアメリカ・カリブ海地域 2006 年、ラテンアメリカ・カリブ海地域は記録的な商品価格の ての発言権、説明責任を持つ有効な政府といった住民の要望に応 上昇や世界的な経済成長の結果生じた輸出量・輸出高の伸びによっ えることです。世銀は特に貧困率の高い中所得国で、援助の内容 て恩恵をこうむりました。2004 年に 25 年ぶりの高水準(6%)を を国民の要望に沿うよう調整しています。たとえばチリでは幅広 記録したこの地域の成長率は、2005 年には 4.4% に達し、2006 年 いプロジェクトへの資金供給をやめ、高成長と平等性の両立をめ は 4.6% と予想されています。この地域における開発上の大きな ざす同国の全体的戦略の一環として、特定の重点分野(教育、社 問題点は、なかなか解消しない貧困と深刻な不平等です。ある地 会的保護、技術革新)に対して援助を行うようになりました。 域では、天然資源と人的資本に恵まれているにもかかわらず、人 2006 年度に世銀がラテンアメリカ・カリブ海地域に対して 口の 4 分の 1 近くが 1 日 2 ドル未満で生活しています。 行 った 融 資 は、IBRD 融 資 56 億 5410 万ド ル、IDA クレ ジット 2006 年、この地域の政治地図は塗り替えられようとしています。 1 億 7950 万ドル、IDA グラント 7690 万ドルでした。こうした融 世銀が援助している 30 カ国のうち 3 分の 1 近くの国で選挙が行わ 資の中には、ブラジルの長期的成長見通しの拡大に必要なミクロ れることになっており、こうした選挙はこの地域の住民のほぼ半数 経済改革を支援するために行った 6 億 150 万ドルの融資や、メキ に影響を与えることになります。世銀はすべての主だった支持団体 シコの金融システムを強化し将来金融危機に陥るリスクを減らす や候補者と対話を続けることによって、政府と協力してこの地域の ために行った 5 億 100 万ドルの融資が含まれています。アルゼン 貧困層への援助を確実に続けることができるようにしています。 チンでは、平等性を伴った持続的成長、社会的包含の拡大、ガバ ナンスの改善を支援するための投資パートナーシップの構築を目 世銀の援助 指す、新たな国家支援戦略を開始しました。また、 「東カリブ諸国 ラテンアメリカ・カリブ海地域での世銀の戦略は、雇用、家族 機構」向けの新しい援助戦略は、同機構に加盟する 6 カ国が成長 が安全に暮らせる環境、教育や公共サービスの利用、将来につい を加速させ、競争力を強化し、外的なショック、特に自然災害に ラテンアメリカ・カリブ海地域の概要 総人口: 6 億人 人口増加率: 1.4% 2006 年度の 2006 年度の 平均寿命: 72 歳 新規融資承認額 融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) : 27 件 IBRD:56 億 5410 万ドル IBRD:56 億 2800 万ドル 若い女性の識字率: 97% IDA:2 億 5640 万ドル IDA:2 億 6100 万ドル 2005 年の 1 人当たり国民総所得(GNI): 3990 ドル HIV 感染者・エイズ患者数: 190 万人 2006 年 6 月 30 日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 166 億ドル 注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)および若い女性の識字率は 2004 年、 HIV 感染者・エイズ患者数は 2006 年の国連エイズ合同計画「世界のエイズ流行に関する 最新情報」 、その他の指標は 2005 年の「世界開発指標」の数字です。 46 世界銀行 年次報告書 2006 世銀融資適格国 アルゼンチン グアテマラ セントクリストファー・ ドミニカ共和国 パラグアイ ボリビア アンティグア・バーブーダ グレナダ ネーヴィス ドミニカ国 ブラジル ホンジュラス ウルグアイ コスタリカ セントビンセント トリニダード・トバゴ ベネズエラ・ メキシコ およびグレナディーン諸島 ボリバル共和国 エクアドル コロンビア ニカラグア セントルシア ベリーズ エルサルバドル ジャマイカ ハイチ チリ ペルー ガイアナ スリナム パナマ 対する脆弱性を低下させることを目的としています。ニカラグア 近の進展と主な課題(仮題) 」によれば、この地域ではインフラへ とパナマに対しては、根深い貧困を緩和する国家的努力を支援す の投資が急激に減少しているために、経済成長や貧困削減が妨げ る暫定的な戦略をとっています。ボリビア、ガイアナ、ホンジュ られ、中国などの活発なアジア経済に対する競争力が低下してい ラスおよびニカラグアは 2006 年度の「多国間債務救済イニシア ます。世銀が 2006 年度に行ったインフラへの支援の中には、ホ ティブ」の下で 100% 債務免除の適格国となりました(第 1 章「多 ンジュラスとペルーの農村部の電力アクセス改善やニカラグア農 国間債務救済イニシアティブの始動」参照) 。 村部の電気通信サービスのコスト抑制への融資が含まれています。 ラテンアメリカ・カリブ海地域におけるもう 1 つの優先事項は、 ペ ル ー で は、 世 銀 が 融 資 し た 2 つ の プ ロ ジ ェ クト に よ り、 根深い不正や非効率性のために公共機関への国民の信頼が低いと 1 万 3000 キロメートルにわたる農村部の道路が修復され、移動時 いう問題に対する各国の取り組みを支援することです。たとえば 間が平均 68%短縮されました。また、この道路修復によって就学 ペルーで、世銀は司法制度の近代化を支援すると共に、先住民族 率は 8% 上昇し、医療センターの訪問者は 55% 増えました。 や貧困層が司法制度を利用しやすくするための支援をしています。 中央アメリカ諸国、ドミニカ共和国およびアメリカ合衆国の間 グアテマラでは政府の電子調達システムの導入を支援しています。 で結ばれた自由貿易協定について世銀がまとめた報告書は、この このシステムは透明性を高め、業者間の競争を活発化させるので、 協定が中央アメリカの経済成長と貧困削減の促進につながる貿易 効率性向上とコスト抑制に役立っています。 や投資を拡大する可能性を持っていることを明らかにしています。 世銀が最近発表したラテンアメリカ・カリブ海地域に関する大 この報告書は各国に対し、すべての人の利益を実現するため相互 規模な調査報告書「貧困削減と成長:好循環と悪循環(仮題) 」は、 貧困によってラテンアメリカ・カリブ海地域の持続的な高成長率 の達成が妨げられる仕組みを探ったものです。この報告書では、 低成長と高い貧困率という悪循環を断ち切って、貧困削減と高成 長が相互に強化し合う好循環を作り出すための政策パッケージを 策定するよう提言しています。 投資環境の構築 世銀は、ラテンアメリカ・カリブ海地域の各国政府による投資 環境の改善に向けた取り組みを援助しています。たとえばメキシ コに対する 3 億ドルの融資は、小規模事業者が正規の市場に参加 して競争力をつけることができるよう支援するものです。またコ ロンビアに対する 2 億 5000 万ドルの融資は、企業の設立と運営 を促進し、資金調達をしやすくするためのものです。おそらく最 も重要なのは、世銀が一連の開発融資を通じて各国政府による優 先的開発課題への取り組みを支援していることです。これらの融 資は成長の促進、貧困削減、社会指標の改善、マクロ経済の安定 性強化、公共セクターの効率性向上を目的としています。たとえ ばエルサルバドルとグアテマラは、それぞれこのプログラムの下 で 1 億ドルの融資を受けています。 世銀の報告書「ラテンアメリカ・カリブ海地域のインフラ:最 第2章:地域別展望 47 図2.9 図2.10 ラテンアメリカ・カリブ海地域 ラテンアメリカ・カリブ海地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 総融資額59億ドルに占める割合 総融資額59億ドルに占める割合 法規 2% 25% 金融・民間セクター開発 産業・貿易 10% 12% 教育 エネルギー・鉱業 3% 公共セクター運営 18% 運輸 13% 15% 金融 12% 貿易・統合 経済管理 1% 社会的保護 ・ 保健・その他の 6% 上下水道・治水 リスク管理 10% 8% 環境・天然資源管理 社会サービス 14% 社会開発・ジェンダー・ 5% 農業・漁業・林業 参加 5% 都市開発 6% 人間開発 9% 4% 農村開発 情報・通信 <1% 22% 法律・司法・行政 補完的な投資や改革を行うよう助言しています。この報告書の所 その他の革新的なプロジェクトとしては、ブラジルの「ボルサ・ 見はすべての協定当事国の議会審議に情報を提供しました。 ファミリア(家族グラント) 」プログラムやメキシコの基礎教育開 発などが挙げられます。世銀は現在までに、ブラジルの最も重要 開発への参加促進 な社会政策であり、世界最大規模の条件つき資金移転プログラム 平等、包含、持続可能性を目標に、世銀はラテンアメリカ・カリ でもある「ボルサ・ファミリア」プログラムに、5 億 7200 万ドル ブ海地域で、ガバナンス、プロジェクトへの利害関係者や受益者の を援助しています。 「ボルサ・ファミリア」は既存の 4 つの社会的 参加、サービスのアクセスや品質を改善するための取り組みを進め プログラムを 1 つにまとめたものであり、資金移転を通じた貧困 ています。また、包括的でしかも安価な福祉制度を実現し、有効な の削減と最貧困世帯への教育・保健サービスの供給促進を目的と 天然資源の利用と環境保護制度の構築を促進するための取り組み しています(囲み 2.4 参照) 。また世銀はこれまでに、メキシコの を支援しています。2006 年度に世銀がこの地域で行った主な融資 補 習 教 育 プ ロ グ ラ ム(CONAFE) を 強 化 す る プ ロ グ ラ ム に としては、アルゼンチンの社会的保護と農村教育の改善、ブラジル 7 億 1500 万ドルを提供しています。このプログラムは小学校の算 の人間開発と社会的包含、メキシコの自律的な学校経営、安価な 数と中等学校のスペイン語の学習方法を改善し、留年者や落第者 住宅の供給および都市部の貧困削減を目的とした融資があります。 の比率を低下させています(www.worldbank.org/lac 参照) 。 囲み 2.4 条件つき資金移転プログラム ラテンアメリカ・カリブ海地域の政府は貧困の連鎖を断ち への融資を承認しました。また、コロンビアで実施されて 切るため、条件つき資金移転プログラムを採用しています。 いる「ファミリアス ・エン・ 」に、 アクシオン(行動する家族) このプログラムは、学校に毎日通わせる、基礎医療サービ 都市部にあって社会の進歩から取り残された地域や暴力の スを利用するなどといった人的資本への検証可能な投資を 蔓延する地域の最貧困世帯を含めることにより、対象世帯 行うことを条件として、貧困世帯に資金を提供するもので 数を 34 万から 40 万に拡大する取り組みも支援しました。 す。貧困者への資金移転は、直線的な資金移転政策によっ てもたらされる貧困世帯の収入増加をしのぐ効果がありま 特に深刻な不平等が経済成長の貧困削減効果を弱めている す。このプログラムはまた、信用制約を緩和すると共に、 中所得国や高中所得国で、これらのプログラムが貧困層へ 世帯収入の増加や経済全体での長期的な所得拡大につなが の到達および消費・教育・保健の改善といった点で成功し る人的資本の蓄積を促進します。 ていることを、影響評価は裏づけています。たとえばコロ ンビアでは、プログラムの受益者は抑制世帯より平均消費 世銀は 1990 年代後半から、ブラジル、コロンビア、ドミニ 支出を 15 パーセンテージ・ポイント増やし、2 歳未満の子 カ共和国、エクアドル、エルサルバドル、ジャマイカおよ 供の身長は 0.78 センチメートル伸びました。エクアドルで びニカラグアの条件つき資金移転プログラム(ニカラグア 実施されている「ボノ・デ・デサロージョ・ウマノ (人間 は試験プロジェクト)を支援してきました。2005 年、世銀 開発資金移転) 」 という条件つき資金移転プログラムの受益 はエルサルバドル国内の最貧困コミュニティ 100 カ所の恵 世帯では、2003 年から 2005 年までの間に中等学校への入 まれない世帯を支援する革新的なプログラム「レッド・ソ 学者が 10% 増え、児童労働は 17 ポイント減少しました。 リダリア・ア・ラ・ファミリア (世帯連帯ネットワーク) 」 48 世界銀行 年次報告書 2006 表 2.5 ラテンアメリカ・カリブ海地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経済管理 570.1 391.0 567.2 111.2 310.4 42.5 環境・天然資源管理 68.8 187.4 240.3 159.1 841.2 454.0 金融・民間セクター開発 985.4 965.4 819.8 912.4 729.6 1,518.7 人間開発 471.2 560.4 1,171.7 1,046.7 469.8 502.6 公共セクター運営 1,099.7 1,182.8 798.6 672.0 506.2 1,054.2 法規 202.2 15.5 138.8 270.9 147.9 108.8 農村開発 580.8 168.3 415.9 249.6 331.8 236.5 社会開発・ジェンダー・参加 371.7 248.9 123.1 268.9 187.9 282.6 社会的保護・リスク管理 530.0 310.4 1,050.3 926.9 950.4 606.2 貿易・統合 218.3 83.9 59.6 364.6 233.4 720.3 都市開発 202.0 251.9 435.2 337.6 457.1 384.1 テーマ総額 5,300.1 4,365.8 5,820.5 5,319.8 5,165.7 5,910.5 セクター 農業・漁業・林業 72.3 85.0 58.4 379.6 233.4 291.0 教育 529.1 560.4 785.5 218.3 680.0 712.7 エネルギー・鉱業 107.6 445.6 96.2 50.5 212.6 172.8 金融 946.7 593.5 973.0 405.1 530.0 907.3 保健・その他の社会サービス 904.7 660.5 1,574.1 1,558.9 443.4 821.8 産業・貿易 38.3 51.4 183.4 428.0 199.9 569.2 情報・通信 97.8 16.5 52.4 14.0 44.7 20.8 法律・司法・行政 1,726.7 1,440.0 1,564.9 1,521.3 1,776.0 1,278.8 運輸 650.3 463.1 146.4 675.7 556.4 785.4 上下水道・治水 226.6 49.8 386.2 68.4 489.5 350.7 セクター総額 5,300.1 4,365.8 5,820.5 5,319.8 5,165.7 5,910.5 うち、IBRD 融資額 4,806.7 4,188.1 5,667.8 4,981.6 4,904.4 5,654.1 IDA 融資額 493.4 177.8 152.7 338.2 261.3 256.4 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資融資を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 第2章:地域別展望 49 中東・北アフリカ地域 2003 年から 2005 年にかけての中東・北アフリカ地域(イラク 労働市場戦略と知識経済関連プログラムを実施しています。しか を除く)の経済成長率は、年間平均 6.2% と 30 年近い期間の中で し今でも、この地域における若者の雇用創出は、資源が豊富な国 最も高く、1990 年代の年間成長率 3.7% を上回りました。こうし とそうでない国のギャップを埋めるに当たっての一番の課題です。 た経済成長の波によって得られた機会を利用して、各国は改革を 雇用創出は中東・北アフリカ地域における開発上の重要な課題 推し進めてきました。エジプト・アラブ共和国の新政府は、金融 です。予想経済成長率は 2007 年と 2008 年に 5.2% に低下すると セクター、投資環境、社会的保護、教育および都市再開発に関連 されており、まだ中東・北アフリカ地域の雇用問題を完全に解決 する一連の改革を実施しています。ヨルダンは教育と投資環境の するのに十分なものではありません。新規就労者に加えて現在失 改革を急速に進めています。モロッコはガバナンス政策と貿易改 業中の人々も労働市場に取り込むためには、今後 20 年間に現在 革を推進しています。またチュニジアは貿易政策と電気通信改革 の倍に当たる 1 億件近くの雇用を新たに創出する必要があります。 を進めています。 現在、改革の機運が高まっているため、域内各国は、地域のニー イエメン共和国の新しい国別援助戦略は、ガバナンスの改善、 ズを満たすのに必要な成長率を達成できるだけの競争力と多様性 水資源の有効利用および経済の多様化を目指すという新たな方針 に富んだ民間セクター主導の経済を構築しやすくなっています。 を見越したものです。一方、レバノンの新政府は透明性と説明責 もう 1 つの課題は貿易改革です。なぜなら多くの国の高率関税 任を強化するための基礎を築くと共に、持続可能な経済成長を実 と一部で存続する非関税障壁が原因で、この地域は他の大多数の 現するための土台作りを進めています。石油価格の上昇に勢いづ 中所得地域に遅れをとっているからです。中東・北アフリカ地域 けられている 「湾岸協力会議」 クウェートの民間セクター 加盟国は、 のビジネス環境改革は大きく進展していますが、それでもまだ中 開発や民営化からサウジアラビアの革新的な参加型都市開発プロ 所得国の平均を下回っています。また、大きな懸念要因となって グラムに至るまで、さまざまな改革を推進しています。カタールは いるのが、この地域のガバナンス改革の進展の遅さです。行政の 中東・北アフリカ地域の概要 総人口: 3 億人 人口増加率: 1.8% 2006 年度の 2006 年度の 平均寿命: 69 歳 新規融資承認額 融資実行額 乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり) : 44 件 IBRD:13 億 3360 万ドル IBRD:8 億 1100 万ドル 若い女性の識字率: 81% IDA:3 億 6700 万ドル IDA:2 億 1600 万ドル 2005 年の 1 人当たり国民総所得(GNI): 2240 ドル HIV 感染者・エイズ患者数: 40 万人 2006 年 6 月 30 日現在において実施中のプロジェクトのポートフォリオ: 66 億ドル 注:平均寿命、乳幼児死亡率(出生 1000 件当たり)および若い女性の識字率は 2004 年、 HIV 感染者・エイズ患者数は 2006 年の国連エイズ合同計画「世界のエイズ流行に関する 最新情報」 、その他の指標は 2005 年の「世界開発指標」の数字です。 50 世界銀行 年次報告書 2006 世銀融資適格国 この項ではヨルダン川西岸・ガザ地区についても報告する。 アルジェリア イラク エジプト・アラブ共和国 ジブチ モロッコ レバノン イエメン共和国 イラン・イスラム共和国 シリア・アラブ共和国 チュニジア ヨルダン 質の高さについて見ると、中東・北アフリカ地域の順位は世界的 ルディングの問題に取り組んでいます。イラクでは、教育融資を な傾向とほぼ一致しますが、公共セクターの説明責任について見 行っているほか、 「緊急道路修復プロジェクト」に 1 億 3500 万ド ると、この地域の平均的な順位は世界中で下から 5 番目です。い ルを融資し、マルチドナーの「世界銀行イラク信託基金」を管理 くつかの国での包括性や説明責任の実現に関する改革の遅れは、 しています。ヨルダン川西岸・ガザ地区では、上下水道、コミュ この地域全体の経済改革への幅広い取り組みが成功するかどうか ニティ開発、社会的セーフティネット、土地行政および教育のプ に関わることであるため、重大な問題となっています。 ロジェクトに融資を行っています。世銀はマルチドナーの予算援 助手段である「公共財政管理改革信託基金」の管理も行っていま 世銀の支援 す。2006 年度には、この基金からパレスチナ自治政府の改革プロ 2006 年度の融資額は 17 億ドルに達し、13 億ドルは IBRD 融資、 グラムを進めるための資金 9600 万ドルが支払われました。また 3 億 700 万ドルは IDA クレジットでした。1720 万ドルはイラク信 世銀は、ヨルダン川西岸・ガザ地区の経済・政策分析を先導する 託基金を通じて融資されました。世銀は 44 件の経済・セクター 機関でもあります。ドナーからの依頼に基づき、世銀はパレスチ 調査(ESW)を実施し、39 件の技術協力活動を完了しました。援 ナの経済とその回復の見通しに関する 2 つの報告書を作成しまし 助は幅広いセクターの改革や投資の支援に向けられています。鳥 た(www.worldbank.org/ps 参照) 。 インフルエンザの危険に対処するため、中東・北アフリカ地域の 借入国からの要望の高まりを受けて、分析・助言サービスは政 いくつかの国では、短期的および長期的に不足している制度面で 策的対話と改革のための重要なツールになっています。経済・セ の能力を明らかにするための準備アセスメントが速やかに実施さ クター調査(ESW)にプログラム的アプローチを導入することに れました。 よって、世銀は中東・北アフリカ地域のパートナー国に複数年に 教育は現在も、世銀が中東・北アフリカ地域での活動の中で重 わたる持続的なプログラムへの参加を促しています。また、技術 視している項目です。2005 年 11 月、世銀は 30 年ぶりにイラクへ 協力や研修の内容は、パートナー国のキャパシティ・ビルディン の融資を承認しました。この 1 億ドルの融資は「第 3 次緊急教育 グに対するニーズに合わせて決定しています。継続中の活動は 6 プロジェクト」として IDA から行われ、学校の過密状態の緩和と つあります。 教育改革の促進に役立てられることになっています。ジブチでは、 世銀は分析活動の効果を高めるため職員の能力を向上させると 1000 万ドルの IDA 融資協定によって、特に女子や社会的サービス 共に、信託の問題や対外投資促進に関してドナー、ほかの国際機 から取り残されたグループに質の高い教育を公平に施す機会を増 関および世銀グループのパートナーとの協力関係を強化していま やしています。チュニジアでは、7600 万ドルの融資を通じて、高 す。また、中東・北アフリカ地域に関する一連の重要な報告書も 等教育を受けられる機会を増やすと共にその質を高める政府の取 出版しました。最初に出版した報告書はガバナンス、貿易と投資、 り組みを支援しています。ヨルダン川西岸・ガザ地区では、包括 雇用、およびジェンダーをテーマとしており、最近出版した報告 的な教育開発計画の立案について助言を行うと共に、公的資金の 書は教育と水に関するものです。ガバナンスに関する報告書の出 教育への有効かつ公平な活用について検証しています。エジプト 版後、世銀はガバナンスと公共セクター管理に関する活動を拡大 ・ では、親やコミュニティの指導者などから成る評議員会を創設す 強化するための 10 項目の戦略を策定しました。これは国別援助戦 ることによって、教育制度の地方分権化を支援しました。エジプ 略の中でのガバナンスの扱いの改善から、高リスク環境下での借 トとヨルダンでのプロジェクトとセクター調査は、幼児の発達指 入国との調整・監視・対話の推進、そしてこの地域の公共セクター 導の導入を支援しています。また、エジプトとヨルダン川西岸・ 改革やガバナンス実績の相対的指標に関する分析活動の強化に至 ガザ地区で継続中のセクター調査は、学業成績の評価に焦点を当 るさまざまな分野で、一定の進展を視野に入れたものです。 て、教育改革の次段階の戦略を立案するものです。 知識の共有は、湾岸地域の高所得国に対する世銀の開発援助の 紛争の影響下にある国で、世銀は緊急復興やキャパシティ・ビ 中心となっています。世銀は「実費精算を前提とした技術協力プ 第2章:地域別展望 51 図2.11 図2.12 中東・北アフリカ地域 中東・北アフリカ地域 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 総融資額17億ドルに占める割合 総融資額17億ドルに占める割合 法規 3% 53% 金融・民間セクター開発 9% 教育 産業・貿易 1% 36% 金融 エネルギー・鉱業 18% 環境・ 3% 天然資源管理 6% 上下水道・治水 公共セクター運営 13% 2% 都市開発 社会的保護 ・ 1% 農業・漁業・林業 リスク管理 4% 10% 農村開発 社会開発・ジェンダー・ 参加 4% 8% 人間開発 運輸 14% 15% 法律・司法・行政 成長に向けた枠組みの強化を支援しました。エジプト、イラン・ イスラム共和国およびシリア・アラブ共和国では、健全な財政運 営と良質なコーポレート・ガバナンスを奨励する目的で公共支出 報告書を出版しました。また世銀は事業コストの削減(アルジェ 、貿易円滑化の促進(レバノン、チュニジア、ヨ リア、モロッコ) ルダン川西岸・ガザ地区)、輸出市場の開発(サウジアラビア)な どの改革のための技術協力を行いました。モロッコでは、金融仲 介活動やリスク・マネジメントに適した環境を整備するため 2 億 ドルの金融セクター開発政策融資を行いました。世銀はまた、エ ジプトの金融セクター改革プログラムも支援しています。 インフラ・サービスの向上は投資環境を改善するのに不可欠で す。世銀はこれに関して、運輸・電力セクター(ジブチ、エジプト、 モロッコ、イエメン共和国)、農村部の道路開発(モロッコ)、水 関連サービスの品質と信頼性向上への取り組み(モロッコ、チュ ニジア)への支援を通じた官民パートナーシップのモデルをいく ログラム」を通じて、必要に応じた技術協力や助言サービスを提 つか示しました。アルジェリアでは水資源開発のための技術協力 供し続けています。サウジアラビアでは、いくつかのセクターで を有料で提供しています。また世銀はチュニジア政府と協力して、 政策助言を提供しています。クウェートでは「教育の指標とアセ インフラ・サービスの開発と管理に向けた官民パートナーシップ スメントに関するプログラム」に援助を行っており、またバーレー 戦略を構築しています。 ンでは、社会的セーフティネットを構築したりバーレーン証券取 引所を湾岸地域の金融センターとして再定義したりするための助 開発への参加促進 言を求められています。 社会における集団や意見の多様性、そして中東・北アフリカ地 世銀は中東 ・北アフリカ地域の社会セクターに関する報告書「中 域全体で高まっている改革の機運を踏まえて、世銀は国会議員や 東・北アフリカ地域の年金制度:変化のとき(仮題) 」を出版しま 若者、女性、民間セクター、報道関係者との対話を開始しました。 した。この報告書は年金制度改革の緊急の必要性を強調していま エジプト、レバノンおよびモロッコでは、これらのグループが国 す。世銀はイラン・イスラム共和国とエジプトで年金制度改革に 別援助戦略についてのコンサルテーションに参加しました。世銀 関する分析・助言活動を行い、アルジェリアの社会保険制度につ は中東・北アフリカ地域全体で、こうしたグループを貿易改革、 いても同様の活動を実施しました。HIV/ エイズ感染者の急増を防 ガバナンス、法規、ジェンダーといった問題についての議論に参 ぐための地域的な戦略も開始しました。中東・北アフリカ地域の 加させました。また、 エジプトとイエメン共和国では若者のグルー HIV/ エイズ感染率は比較的低いものの(推定で成人の 0.2%) 、感 プのための組織「スモール・グラント・ワークショップ」を通じて、 染の危険性を過小評価することはできません。 エジプトでは 150 人以上の若者との「世界開発報告 2007」 コン サルテーションを通じて、若者が開発に参加できるようにしまし 投資環境の構築 。 た(www.worldbank.org/mna 参照) 世銀はレバノン、サウジアラビアおよびイエメン共和国で、投 資環境アセスメントなどの分析活動を通じて民間セクター主導の 52 世界銀行 年次報告書 2006 表 2.6 中東・北アフリカ地域に対するテーマ別、セクター別融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002 2003 2004 2005 2006 経済管理 11.9 5.0 0.0 0.0 45.8 0.0 環境・天然資源管理 27.5 21.7 186.0 113.8 160.2 44.5 金融・民間セクター開発 78.8 204.1 48.3 259.3 166.6 907.8 人間開発 35.7 61.9 140.9 192.1 95.4 128.5 公共セクター運営 102.6 93.3 106.6 19.6 166.0 229.0 法規 56.5 49.1 48.0 1.8 1.8 46.9 農村開発 86.4 14.5 100.6 65.1 155.3 177.9 社会開発・ジェンダー・参加 52.5 13.4 63.1 70.7 123.0 67.8 社会的保護・リスク管理 5.6 11.0 96.1 31.6 98.5 69.7 貿易・統合 3.4 24.8 3.6 158.3 0.0 0.0 都市開発 46.7 55.8 262.7 178.7 271.1 28.6 テーマ総額 507.5 554.5 1,056.0 1,091.0 1,283.6 1,700.6 セクター 農業・漁業・林業 46.5 2.9 196.7 27.2 229.2 15.3 教育 72.3 38.0 154.3 154.9 124.0 146.8 エネルギー・鉱業 0.0 1.3 0.0 0.0 0.0 316.5 金融 0.0 110.5 1.9 20.8 142.5 625.0 保健・その他の社会サービス 39.3 41.7 124.2 52.0 0.3 0.0 産業・貿易 27.0 71.7 74.3 23.4 277.9 14.0 情報・通信 59.2 69.9 2.3 0.0 18.5 0.0 法律・司法・行政 161.5 74.7 213.6 93.6 232.9 249.2 運輸 82.8 70.9 107.9 409.6 29.0 237.6 上下水道・治水 19.0 73.1 180.9 309.5 229.3 96.4 セクター総額 507.5 554.5 1,056.0 1,091.0 1,283.6 1,700.6 うち、IBRD 融資額 355.2 451.8 855.6 946.0 1,212.1 1,333.6 IDA 融資額 152.3 102.7 200.4 145.0 71.5 367.0 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資融資を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 第2章:地域別展望 53 3 2006 年度の活動概要 知識の共有 実施するため、ドナーとの知識共有能力の強化に務めています。 世銀では、借入国への援助としてプロジェクトやプログラム 2006 年度の活動では 601 件の ESW 報告書と 307 件の技術協力 への融資だけでなく、開発に関する知識資源へのアクセスも提 報告書が作成されました。ESW でも技術協力でも、テーマとし 供しています。世銀は借入国に関する研究から、国別援助の分析・ て最も多かったのは、金融・民間セクター開発および公共セク 概念フレームワークの構築、さらには借入国における持続可能 ター運営でした。 な開発のためのキャパシティ・ビルディングまで、多岐にわた る知識関連活動を展開しています。 セクター戦略 2006 年度、世銀が従事するセクター/テーマ別のすべての領 研究 域にわたる進捗状況を総合的に評価した 2 冊目の報告書「セク 世銀の研究プログラムは、幅広い開発問題の影響についての ター戦略実施アップデート」を刊行しました。その中で、上下 調査を支援しています。そうした研究の結果は、開発課題につ 水道、保健、農村開発、公共セクター運営という 4 つの具体的 いての理解を深めるのに役立ち、貧困層にとって望ましい成果 な分野における戦略も取り上げられています。世銀は、HIV/ エ を生み出すために、政策に影響を与えるよう活用することも可 イズ行動計画およびマルチセクターでのアフリカ行動計画、な 能です。たとえば、バングラデシュ、エクアドル、インド、イ らびに社会開発と教育のセクターにおける新たにアップデート ンドネシア、ウガンダ、ザンビアで教員や医療従事者の常習欠 された 2 つの戦略の実施にも重点を置いています。 勤の実態が世銀の調査で明らかになったことにより、インドで は教員や医療従事者を確実に出勤させるための徹底したキャン 能力開発 ペーンを政府が展開し、アフリカでは世銀の開発援助戦略の一 開発プログラムが効果を上げ、かつ持続可能であるためには、 環としてアフリカの医療・教育制度に「市民評価カード」が導 それらを管理する能力をパートナー国が備えていなければなり 入されました。 ません。世銀は、世界銀行研究所(WBI)およびキャパシティ・ また、環境研究の結果として、アジアでは工場による環境汚 ビルディングのためのプロジェクトを通じてパートナーの能力 染が大幅に減少しています。工場の排出物に関する情報を公表 向上を支援しています。 することで排出物削減を求める世論の圧力を高められるという 確証の下、世銀は、中国、インド、インドネシア、ベトナムで 世界銀行研究所 汚染の実態を監視してその達成度評価を開示するという試みを 世界銀行研究所(WBI)は、借入国の能力面のニーズをみき 支援しました。この 4 カ国すべてで、試験区域における汚染規 わめると共に、技術協力、テーマ別の学習プログラム、閣僚向 制遵守率が 10 〜 50%上昇しました。 け研修などのリーダーシップ開発研修といった能力開発サービ スを提供しています。 2006 年度、WBI のトレーニングおよびキャ 経済・セクター調査(ESW)と融資を伴わない技術協力 パシティ・ビルディング活動への参加者は 10 万人近くに上りま 世銀の分析・助言活動の大半が、経済・セクター調査と融資 した。 を伴わない技術協力で構成されています。分析・助言活動は、 WBI は複数年プログラムを通じて 45 の重点国で長期的な能 国別援助プログラム全体において借入国の主体性、参加型プロ 力開発を支援しています。このうち 14 カ国がアフリカ諸国であ セス、キャパシティ・ビルディング、パートナーシップ、成果 り、WBI は世銀のアフリカ行動計画(第 1 章参照)で重要な役 がますます重視されつつある中、その重要な部分を占めていま 割を果たすことになっています。WBI のグローバル・ガバナン す。このため世銀では、世銀の政策や手続きを他のドナーの政 ス・プログラムは、ガバナンスや汚職対策に関する世銀の取り 策 や 手 続 き と 調 和 さ せ、 ド ナ ー と 連 携 し て 共 同 分 析 活 動 を 組み支援のため、実証的研究を実施し、200 を超える国や地域 第3章:2006年度の活動概要 55 図3.1 における不正の蔓延やその社会経済的影響を示す世界的な指標 IBRDとIDAの地域別融資 | 2006年度 を発表しています(第 1 章参照) 。また、マスコミ、議会、シビ 合計236億ドルに占める割合 ルソサエティとも協力し、優れたガバナンスを求める国民の声 南アジア 16% 20% アフリカ を支援しています。2006 年度、このプログラムは 30 カ国以上 で実施されました(www.worldbank.org/wbi/governance 参照)。 中東・北アフリカ 7% グローバル・ディベロップメント・ラーニング・ ネットワーク 14% 東アジア・大洋州 人々を開発のための知識と結びつけることが差し迫って求め られていることを受け、世界銀行は 2000 年 6 月に 11 の関連組 織と共にグローバル・ディベロップメント・ラーニング・ネッ ラテンアメリカ・カリブ海 トワーク (GDLN)を立ち上げました。そもそも一方向の学習チャ 25% 17% ヨーロッパ・中央アジア ネルという構想から始まった GDLN ですが、現在は世界中に広 がる 100 以上の関連組織を通じてインタラクティブなテレビ会 議や E ラーニング技術を利用した実にタイムリーな知識交換を 専門的に行うコミュニティとなっています。GDLN クライアン 図3.2 トの 4 分の 3 は政府機関、シビルソサエティ組織、ドナー機関 IBRDとIDAのテーマ別融資 | 2006年度 合計236億ドルに占める割合 で す。2006 年 度、GDLN 関 連 組 織 は ク ラ イ ア ン ト の た め に 900 件以上の活動を実施し、専門的なファシリテーション、イ 法規 3% 26% 金融・民間セクター開発 ベント ・コーディネーション、IT サービスを行いました。世銀は、 世界銀行研究所のチーム、各地域担当の副総裁室、情報ソリュー ション・グループを通じて GDLN のパートナーシップを支援し 公共セクター運営 16% 7% 貿易・統合 ました。 環境・天然資源 経済管理 1% 管理 6% 社会的保護 ・ 統計能力向上のイニシアティブ リスク管理 8% 8% 都市開発 具体的な開発結果を目標に定めたプログラムを策定するため 9% 農村開発 には、確実でタイムリーな統計が必要です。ところが、多くの 社会開発・ジェンダー・ 参加 5% 11% 人間開発 国において、統計制度には十分な資金が充てられておらず、基 本的な指標も作成できないのが実情です。2005 年度、世銀は、 最終的にプロジェクトの質的向上を可能にするよう、新たな融 資プログラム STATCAP を導入して統計制度への投資プロセスを 簡素化しました。STATCAP は統計能力向上信託基金を補完する 図3.3 ものです。 IBRDとIDAのセクター別融資 | 2006年度 世銀は開発グラント・ファシリティを通じて新たなグローバ 合計236億ドルに占める割合 ル・パートナーシップも支援しています。このパートナーシッ 産業・貿易 7% 8% 教育 プでは、開発成果マネジメントに関する第 2 回ラウンドテーブ 10% 金融 ルで合意された統計に関するマラケシュ行動計画の実行を目指 エネルギー・鉱業 13% しています。この行動計画は、各国による公式統計向上のため 7% 上下水道・治水 の国家戦略の構築や実施を助けると共に、国勢調査、教育統計、 世帯調査といった優先分野における国際統計機関の取り組みに 運輸 14% 7% 農業・漁業・林業 対する支援を充実させるものです(www.worldbank.org/data/ statcap 参照)。 保健・その他の 社会サービス 9% 情報・通信 <1% 25% 法律・司法・行政 56 世界銀行 年次報告書 2006 表 3.1 世界銀行によるテーマ別、セクター別の融資 | 2001 〜 2006 年度 単位:100 万ドル テーマ 2001 2002a 2003 2004 2005 2006 経済管理 895.3 1,408.0 777.8 428.6 594.6 213.8 環境・天然資源管理 1,354.6 924.0 1,102.6 1,304.6 2,493.8 1,387.3 金融・民間セクター開発 3,940.9 5,055.4 2,882.9 4,176.6 3,862.0 6,137.8 人間開発 1,134.7 1,756.1 3,374.0 3,079.5 2,951.0 2,600.1 公共セクター運営 2,053.7 4,247.2 2,464.1 3,373.9 2,636.4 3,820.9 法規 410.0 273.2 530.9 503.4 303.8 757.6 農村開発 1,822.3 1,600.0 1,910.9 1,507.8 2,802.2 2,215.8 社会開発・ジェンダー・参加 1,469.7 1,385.7 1,003.1 1,557.8 1,285.8 1,094.1 社会的保護・リスク管理 1,651.0 1,086.4 2,324.5 1,577.0 2,437.6 1,891.7 貿易・統合 1,059.9 300.9 566.3 1,212.7 1,079.9 1,610.9 都市開発 1,458.6 1,482.4 1,576.3 1,358.1 1,860.0 1,911.2 テーマ総額 17,250.6 19,519.4 18,513.2 20,079.9 22,307.0 23,641.2 セクター 農業・漁業・林業 695.5 1,247.9 1,213.2 1,386.1 1,933.6 1,751.9 教育 1,094.7 1,384.6 2,348.7 1,684.5 1,951.1 1,990.6 エネルギー・鉱業 1,530.7 1,974.6 1,088.4 966.5 1,822.7 3,030.3 金融 2,246.3 2,710.8 1,446.3 1,808.9 1,675.1 2,319.7 保健・その他の社会サービス 2,521.2 2,366.1 3,442.6 2,997.1 2,216.4 2,132.3 産業・貿易 718.3 1,394.5 796.7 797.9 1,629.4 1,542.2 情報・通信 216.9 153.2 115.3 90.9 190.9 81.0 法律・司法・行政 3,850.2 5,351.2 3,956.5 4,978.6 5,569.3 5,857.6 運輸 3,105.2 2,390.5 2,727.3 3,777.8 3,138.2 3,214.6 上下水道・治水 1,271.7 546.0 1,378.3 1,591.6 2,180.2 1,721.0 セクター総額 17,250.6 19,519.4 18,513.2 20,079.9 22,307.0 23,641.2 うち、IBRD 融資額 10,487.0 11,451.8 11,230.7 11,045.4 13,611.0 14,135.0 IDA 融資額 6,763.6 8,067.6 7,282.5 9,034.4 8,696.1 9,506.2 注:すべての調整融資、開発政策融資、投資貸付を含む。2005 年度からは、保証と保証ファシリティを含む。端数を四捨五入したため、合計が合わないことがある。 a. 2002 年年次報告の表 2.2 の数字と一致しないのは、ラオス人民民主共和国でのプロジェクトの扱いが異なるため。2002 年年次報告書では社会的保護・リスク管理の値が 220 万ドル少なく、農村開発が 220 万ドル多くなっている。 第3章:2006年度の活動概要 57 世銀の融資 れます。PRS のアプローチは、借入国政府に独自の優先事項を 世銀は国際資本市場から資金を調達する IBRD と、富裕な加 定める権限を与え(同時に、成果についての説明責任を負わせ) 、 盟国から直接拠出金を得る IDA で構成される協同組織です。 ドナーにはそうした優先事項に整合した予測可能で調和の取れ IBRD と IDA の資金はいずれも、途上国の貧しい人々のために た援助の提供を促すものであり、これによって援助のあり方が 役立てられています。2006 年度の IBRD/IDA 融資の概要につい 再定義されました。現在までに 50 カ国が貧困削減戦略文書を作 ては図 3.1 〜 3.3 と表 3.1 をご覧ください。 成しており、そのうち半数がアフリカ諸国です。 2005 年の PRS 評価では、過去 5 年間における実施の経験が 国別融資 検証されました。経験の内容はさまざまですが、困難な開発ア 世銀の国別融資には、ミレニアム開発目標(MDGs)の達成 ジェンダを、能力も乏しく制度も脆弱な環境で実行しなければ という世銀の目標が反映されています。融資は借入国の個別の ならないという点は共通しています。多くの借入国が、PRS の ニーズに基づいて行われ、 その手段はますます柔軟なものになっ アプローチによって公共部門の措置と連動した明確な目標設定、 ています。国別融資に関するすべてのデータをわかりやすい形 予算・監視制度の改善、貧困削減や成長をもたらす国内の優先 でまとめたウェブサイトを作成したことにより、パートナー国 事項や政策の議論の余地づくり、国別の分析格差の解消、ドナー が国別融資の情報を入手しやすくなりました。加盟国政府やプ による援助と国内優先事項との整合や調和を重視するように ロジェクト実施機関(世銀の現在の融資業務の 75%以上を占め なっています(www.worldbank.org/prspreview 参照)。 る)で働く 5000 人以上の人が、このウェブサイトで情報にア クセスし、このウェブサイト上で世銀との業務を実施していま IDA の役割 す。このウェブサイトは、2003 年にパイロット 10 カ国で開始 IDA は最貧国に譲許的融資を行う世界最大の機関です。IDA された安全なもので、2004 年にはすべての国が利用可能となり 融資適格国の基準となる一人当たり国民所得の上限は、2006 年 ました。プロジェクト、融資、信託基金などに関する最新デー 度は 965 ドルでした。IDA は経済規模の小さい諸島国のように、 タを提供するほか、ユーザーはこのサイトから調達文書を世銀 融資適格国の基準となる一人当たり国民所得は超えているが、 に送信して審査を受けることができます(clientconnection. IBRD 融資を受けるだけの信用力を持たない国にも支援を提供し worldbank.org 参照)。 ています。融資額は借入国のガバナンスや成長促進政策や貧困 削減政策の質などパフォーマンス要因を基に主に決定され、こ 国別援助戦略 の評価は毎年実施されます。 国別援助戦略(CAS)は、借入国における世銀グループの活 IDA 融資を受けている国々は、MDGs の達成に取り組んでい 動の指針となるものです。CAS は借入国が定めた開発ビジョン ますが、その前途には多くの複雑な問題が立ちはだかっていま を基に、政府、シビルソサエティ組織、開発パートナーなどの す。政策面の優先課題としては、成長の促進と貧困削減、公共 関係者との協議を経て策定されます。CAS は借入国の開発状況 セクターのガバナンスと透明性の改善、紛争からの復興、イン を分析し、その国のニーズに合った支援プログラムを提案しま フラ整備、基礎教育の質の向上と貧困層が基礎教育を受ける機 す。CAS は世銀グループの支援が、借入国の持続可能な開発と 会の拡大、HIV/ エイズ、鳥インフルエンザ、その他の伝染病に 貧困削減に最も効果を発揮する分野を特定することを目指して 対する対策の強化、民間セクター投資の条件となる健全な投資 います。2006 年度、世銀は、7 件の CAS 進捗報告書と 6 件の 環境の構築、資金調達の機会の拡大などがあります。 暫定戦略ノートを含め、31 件の CAS を作成しました。暫定戦 IDA はきわめて譲許的な融資を通して、途上国を支援してき 略ノートは、固有の国内事情により正式な CAS が作成できない ました。2003 年度にはグラントの適用範囲が拡大されました。 場合に作成されるものです。31 件のうち 17 件は IFC と共同で IDA 第 14 次増資(IDA14)に伴い、IDA 国の中でも特に債務額 作成され、2 件(バングラデシュとウガンダ)は他のドナーと の 大 き い 国 々 の プ ロ ジ ェ ク ト を 支 援 す る た め に、 グ ラ ン 共同で作成されました(www.worldbank.org/cas 参照)。 ト資金が利用されるようになりました( 「IDA の原資」および www.worldbank.org/ida 参照)。 低所得国 世銀の低所得国支援の鍵となっているのが、貧困削減戦略 IDA の融資 (PRS)のアプローチです。PRS は借入国自身が作成する結果重 2006 年度は IDA14 の初年度であり、IDA 融資承認額は過去 視型の包括的なロードマップであり、借入国の優先開発分野を 最高となりました。2006 年度、IDA は 167 件のプロジェクトに 特定した上で、それに取り組むために必要なステップが規定さ 対して、 総額 95 億ドルの支援を承認しました(融資額 76 億ドル、 58 世界銀行 年次報告書 2006 グラント 18 億ドル、 保証 6000 万ドル)。融資承認額が最も多かっ 図3.4 たのはアフリカ地域で、IDA 融資承認総額の 50% に相当する IDAの地域別融資承認額 | 2006年度 合計95億ドルに占める割合 47 億ドルの融資が行われました。第 2 位は南アジア (26 億ドル) 、 第 3 位は東アジア・大洋州(11 億ドル)でした。国別に見ると、 南アジア 27% 50% アフリカ 特に多くの IDA 融資を承認されたのは、パキスタンでした。 2006 年度は IDA 融資の約 19% がグラントとして供与されました。 セクター別に見ると、融資承認額が最も多かったのは法律・ 司法・行政で、IDA 融資全体の 28% に相当する 28 億ドルの融 資が行われました。また、運輸セクター(11 億ドル)と保健・ 中東・ 北アフリカ 4% その他の社会サービス・セクター(10 億ドル)にも多額の融資 が行われました。テーマ別に見ると、IDA 融資承認総額に占め ラテンアメリカ ・カリブ海 3% る割合が最も多かったのは公共セクター運営(19%)と金融・ ヨーロッパ ・中央アジア 5% 11% 東アジア・大洋州 民間セクター開発(19%)でした。次いで人間開発が 15%、農 村開発が 14%、 社会的保護 ・リスク管理が 9% でした。図 3.4、3.5、 および 3.6 は、2006 年度の IDA 融資承認額を地域、テーマ、お よびセクター別で分類したものです(図 3.7 も参照) 。 図3.5 IDAのテーマ別融資承認額 | 2006年度 IDA の原資 合計95億ドルに占める割合 IDA の活動資金は自己資金とドナー国からの拠出金でまかな われています(図 3.8 参照) 。ドナーと借入国の代表者は 3 年ご 法規 3% 19% 金融・民間セクター開発 とに会議を開き、IDA の融資方針と優先分野を話し合い、今後 6% 貿易・統合 3 年間の融資プログラムに対する新規拠出額を決定します。通 公共セクター運営 19% 常、拠出額が最も多いのは主要先進国ですが、途上国や移行国 4% 環境・天然資源管理 もドナー国に名を連ねています。この中には現在 IBRD から融 4% 都市開発 経済管理 1% 資を受けている国や、IDA から融資を受けた経験を持つ国も含 社会的保護 ・ 14% 農村開発 まれています。 リスク管理 9% 2006 年度は、2006 年度から 2008 年度に承認される融資の原 社会開発・ジェンダー・ 資となる IDA14 の初年度でした。この 3 年間の IDA 借入国への 参加 8% 15% 人間開発 譲許的融資として 219 億 SDR(約 320 億ドル、SDR =特別引出 権)が承認される予定です。その内訳は、ドナーからの新たな 拠出金が 121 億 SDR(約 177 億ドル) 、自己資金が 87 億 SDR (約 127 億ドル、過去の融資に対する元本返済金や投資収益な 図3.6 ど) 、IBRD 純利益からの移転が 11 億 SDR (約 15 億ドル) です (た IDAのセクター別融資承認額 | 2006年度 だし、 IBRD 総務会の承認が必要) 。多国間債務救済イニシアティ 合計95億ドルに占める割合 ブ(MDRI) に 基 づ き、 ド ナ ー は 今 後 40 年 間 で 248 億 SDR 産業・貿易 8% 10% 教育 (約 370 億ドル)の提供を承認しています(第 1 章「多国間債務 3% 金融 救済イニシアティブの始動」参照) 。この債務救済イニシアティ エネルギー・鉱業 10% ブは 2006 年 7 月 1 日に発効しました。2006 年度は、重債務最 7% 上下水道・治水 貧国(HIPC)イニシアティブを通じて過年度から継続している 運輸 12% 債務削減プログラムがあります(図 3.9 と 3.10 参照) 。 10% 農業・漁業・林業 脆弱な国家 保健・その他の 社会サービス 11% 調査によると、脆弱な国家の能力と説明責任を高め、平和と 安全保障と開発のつながりを築き、ドナー援助を調整し、強力 情報・通信 1% 28% 法律・司法・行政 第3章:2006年度の活動概要 59 図3.7 かつ柔軟に対応できる制度を構築する必要があることが示され 社会セクターに対するIDA援助の増大 ています。 実施中のプロジェクト273件(10年前は239件) 2006 年度、世銀は国連システムのパートナーと協力して紛争 300 後復興プロセスの連携を深め、復興の政治、安全保障、経済、 250 社会の各側面を統合する取り組みを行いました。開発援助委員 59 62 会の脆弱国家グループの共同議長として、世銀は、中心的な目 59 200 的としての国家建設、効果的なドナー・プログラムの総合的な アプローチ、迅速かつ柔軟な対応、脆弱な国家への優れた国際 150 132 98 135 関与原則の 9 つのパイロット国を通じた長期的な関与に関する 100 政策合意の構築を続けました。これらの点は、改革や移行を支 援 す る LICUS 信 託 基 金 の 2500 万 ド ル 増 資 と 共 に 理 事 会 が 50 82 85 77 承認した新たな脆弱な国家戦略に取り入れられました 0 (www.worldbank.org/licus 参照)。 96年度 01年度 06年度 教育 上下水道・治水 小国 保健・栄養・人口 2000 年に世界銀行/イギリス連邦共同タスクフォース・レ 注: 実施中のプロジェク トの数はIDA融資のみの適格国とブレンド国の両方を含む。 ポートで取り上げられている小国の課題について開発委員会で 実施中の社会セクター ・プロジェク トに対するIDA融資承認額は1996年度が122億ドル、 2001年度が142億ドル、2006年度が150億ドル。 議論されて以来、世銀は、世界の最小途上国 45 カ国(その大半 が人口 150 万人未満)や国際社会との新たなパートナーシップ の下、小国の開発ニーズに対応してきました。このパートナー シップにおいて、世銀は、毎年の世銀・IMF 年次総会期間中に 小国フォーラムを開催して小国間での情報交換と共に、今後の 図3.8 活動の優先事項を定めるための場を設けることを約束していま IDAの資金源 | 単位:10億ドル す。このフォーラムは、世銀の通常の国別プログラムの一環と して小国に提供される多大な融資や助言による援助を補完する 20.7 ものです。2005 年、このフォーラムで小国の課題が取り上げら れ、 脆 弱 な 小 国 ― 特 に カ リ ブ 海、 イ ン ド 洋、 太 平 洋 地 域 の 12.7 12.7 国々―がハリケーンや地震といった自然災害後の十分かつ迅速 11.7 な資金調達に役立てられる大型災害用保険を提供する革新的 9.2 7.9 なメカニズムに関する世銀の提案が議論されました (www.worldbank.org/smallstates 参照)。 0.9 0.9 1.5 12次増資00~02年度 13次増資03~05年度 14次増資06~08年度 中所得国 中所得国は依然として、多数の開発課題に直面しています。 IDAの自己資金a ドナー拠出金b 主な課題としては、生産的雇用を創出する成長の維持と、貧困 IBRDの純利益からの拠出 削減と不均衡の是正、ボラティリティの軽減(特に民間金融市 a. IDAの自己資金には元本返済金、 手数料から一般経費を差し引いたもの、 および投 資利益が含まれている。 IDA14ではMDRIを通じてドナー拠出金により調達される8 場へのアクセス)、市場経済の基盤となる制度・ガバナンス構造 億ドルを含む。 の整備などがあります。世銀は独自の立場を活かして、中所得 b. 構造的な資金調達ギャップが含まれる。 国が制度改革を実施し、官民セクターへインフラ投資を誘致し、 社会サービスの提供状況を改善し、ボラティリティに対処でき るよう支援しています。中所得国は一般に IBRD の融資適格国 です。 60 世界銀行 年次報告書 2006 IBRD の役割 図3.9 IBRD はトリプル A の格付けを得ている国際金融機関です。 重債務貧困国 (HIPC) に対する債務救済 債務額の削減と債務返済比率の改善 IBRD は他の金融機関にはないいくつかの特長を備えています。 たとえば、IBRD の株主は各国政府です。株主は IBRD の方針に (%) (10億ドル) $71 75 輸出に占める債務返済 発言権を持ち、その多くは IBRD の融資適格国でもあります。 25 の割合 (左軸) IBRD は中所得国と信用力のある低所得国の持続可能な経済発展 20 60 歳入に占める債務返済 を促進することで、各国の貧困を削減することを目指していま 15 45 の割合 (左軸) す。IBRD は開発関連の技術協力にも資金(融資、保証、および $31 決定時点での債務額 10 30 (右軸) 関連するリスク管理ツール)とノウハウを提供しています。 5 15 IBRD は償還期間の長い融資と金融リスク管理ツールを、一般 14.5% 21.8% 10.3% 6.6% 的な金融機関よりも有利な条件で、豊富に、かつ持続可能な形 0 0 支援前(1999年) 支援後 (2005年) で途上国に提供しています。商業銀行と異なり、IBRD の目的は 利益の最大化ではなく、開発効果の最大化に置かれています 注:2005年7月末時点で決定時点に達していた28カ国の加重平均。 (www.worldbank.org/mic 参照)。 出典 「重債務貧困国 : イニシアティブの実施状況」 (HIPC) (世界銀行IDA/SecM2005-0442、 ワシントンDC、2005年) IBRD の融資 2006 年度の IBRD の新規融資承認額は、112 件のプロジェク トに対し、前年度を 5 億ドル上回る 141 億ドルでした。これは 図3.10 過去 7 年間の IBRD 融資で最高額です。政策融資の占める割合は、 HIPCイニシアティブの実施前と実施後の貧困削減支出の推移 2005 年度と比べて若干増大しました。IBRD の融資額が最も多 (100万ドル) (%) かったのはラテンアメリカ・カリブ海地域で、全体の 40% に相 $13,493 貧困削減支出額 (左軸) 14,000 14 当する 57 億ドルでした。次いで、ヨーロッパ・中央アジア地域 12,000 12 貧困削減支出の が 35 億 ド ル、 東 ア ジ ア・ 大 洋 州 地 域 が 23 億 ド ル で し た。 対GDP比率(右軸) 10,000 10 2006 年 度 は ブ ラ ジ ル、 中 国、 イ ン ド、 メ キ シ コ、 ト ル コ の 8,000 8 5 カ国を合わせると、IBRD 融資承認総額の 52% を占めました。 $5,940 8.5% 6,000 6 2006 年度の IBRD 融資をセクター別にみると、融資承認額が 4,000 4 最も多かったのは法律・司法・行政(31 億ドル) 、次いで運輸 6.4% 2,000 2 (21 億ドル) 、エネルギー・鉱業(21 億ドル)でした。テーマ 0 0 支援前 (1999年) 支援後 (2005年) 別にみると、融資承認額が最も多かったのは金融・民間セクター 開発で、次いで公共セクター運営と都市開発でした。図 3.11、 注: 2006年3月時点で決定時点に達していた29カ国の加重平均。 3.12、および 3.13 は IBRD の融資を地域、 テーマ、 およびセクター 出典: 「重債務貧困国 (HIPC)イニシアティブ最新統計値」 ワシントンDC、 (世界銀行、 2006年3月) 別で分類したものです。開発政策融資の承認額の一覧は本年次 報告の付属 CD-ROM をご覧ください。 IBRD の原資 IBRD は国際資本市場で世界銀行債券(世銀債)を発行するこ とにより、必要な資金の大半を調達しています。2006 年度は 2005 年度実績の 130 億ドルを下回る 100 億ドルの中長期資金 を調達しました。2006 年度は多様な償還期間とストラクチャー を持つ世銀債が、11 種類の通貨で発行されました。 IBRD は多額の長期資金を有利な条件で調達することができま す。IBRD の健全な財務体質を支えている堅実な財務方針と運用 は、IBRD が高い信用力を維持する上でも重要な役割を果たして います。 第3章:2006年度の活動概要 61 図3.11 協同組織である IBRD は、利益の最大化よりも、健全な財務 IBRDの地域別投資 | 2006年度 体質を維持し、開発活動を継続するために必要な利益の確保を 合計141億ドルに占める割合 重 視 し て い ま す。2006 年 度 の IBRD 業 務 活 動 に よ る 利 益 は 南アジア 9% <1% アフリカ 17 億 4000 万ドルでした。このうち 10 億 3600 万ドルは別途積 立金に、6400 万ドルは年金向け引当金に、1 億 4000 万ドルは 中東・北アフリカ 9% 17% 東アジア・大洋州 余剰金勘定に繰り入れられました。2006 年 8 月、理事会は総務 会に対し、2006 年度の分配可能な純所得から IDA への 5 億ドル の移転ならびに余剰金勘定から IDA への 3 億ドルの追加移転を 承認するよう提案しました(詳細は付属 CD-ROM の「財務諸表」 を参照) 。 IBRD は 2006 年度も流動性を適切な水準に保ち、その業務を ラテンアメリカ・カリブ海 40% 25% ヨーロッパ・中央アジア 遂行しました。2006 年 6 月 30 日現在の流動資産は約 249 億ド ルでした。同じく 2006 年 6 月 30 日現在、IBRD の資本市場か らの借入金残高(スワップ後)は約 916 億ドルでした(図 3.14 参照) 。借入額は世銀の自己資本の約 3 倍に上りました。 融資実行額と未実行残高の合計は 1030 億ドルでした。新規 図3.12 の 融 資 承 認 に 利 用 で き る 変 動 ス プ レ ッ ド 融 資( 融 資 総 額 の IBRDのテーマ別投資 | 2006年度 40%)および固定スプレッド融資(変動金利で 19%、固定金利 合計141億ドルに占める割合 で 8%)に加え、IBRD の融資ポートフォリオには、多通貨プー 法規 4% 31% 金融・民間セクター開発 ル融資(12%) 、単一通貨プール融資(9%) 、固定金利単一通貨 融 資(8 %) な ど、 古 い レ ガ シ ー 融 資 が 含 ま れ て い ま す。 2006 年 5 月 2 日、理事会は、既存の融資契約の包括的な修正の 公共セクター運営 14% 実施に合意した借入国に対する多通貨プール融資およびドル建 経済管理 1% 8% 貿易・統合 ての単一通貨プール融資についてはロンドン銀行間出し手レー 社会的保護 ・ トに 100 ベーシスポイント(または相当する固定金利)を加え リスク管理 7% 社会開発・ジェンダー・ 7% 環境・天然資源管理 た率という低率でわかりやすい貸出金利を採用することを承認 参加 3% しました。 11% 都市開発 開発機関である IBRD にとって、最大のリスクは途上国に融 人間開発 8% 6% 農村開発 資や保証を提供することによるカントリーリスクです。金利や 為替レートの変動リスクは最小限に抑えられています。世銀の リスク負担能力の基本指標となる総資本に対する貸付残高の比 率は、世銀の財務・リスク見通しに基づいて厳格に管理されて 図3.13 います。2006 年 6 月 30 日現在の資本/貸出比率は 33% でした IBRDのセクター別投資 | 2006年度 (図 3.15 参照) 。 合計141億ドルに占める割合 産業・貿易 6% 7% 教育 パートナーシップ エネルギー・鉱業 15% 世界経済の統合の進展や国境を越える開発課題の存在により、 グローバル・パートナーシップが拡大しつつあります。このよ 14% 金融 運輸 15% うなパートナーシップは、伝染病対策、環境保全、知識の取得 と共有、貿易の統合、国際的な人口移動問題への取り組み、イ 8% 上下水道・治水 ンフラ整備など、共通の関心領域における活動を促進するもの 保健・その他の 社会サービス 8% です。世銀は世界レベルや地域レベルで約 160 のパートナーシッ 5% 農業・漁業・林業 プに参加しており、2006 年度には 1 億 7000 万ドル以上を自己 情報・通信 <1% 22% 法律・司法・行政 資本から提供しました。世銀はこうした活動でドナー基金の受 62 世界銀行 年次報告書 2006 託機関として、資金提供者として、あるいは実施機関としてなど、 図3.14 IBRDの借入金および投資額 | 2006年6月30日現在 さまざまな役割を果たしています。 単位 :10億ドル 111.2 信託基金 103.0 103.3 世銀が管理する信託基金は、譲許的な資源を動員・配分するこ 91.5 91.6 とで、さまざまなセクターおよび地域の貧困を削減し、 パートナー シップの構築を促進し、国際、地域、および国レベルで開発の効 果を向上させています。信託基金の規模拡大は主に、世銀に対す る国際社会の期待、つまり世界エイズ・結核・マラリア対策基金 31.1 (GFATM)、地球環境ファシリティ(GEF) 、HIPC イニシアティブ 25.1 26.6 26.4 24.9 といった多国間パートナーシップを通して、世銀がさまざまな国 際イニシアティブの運営を支援することを国際社会が期待してい るためです。世銀グループの開発プロジェクトやワークプロ 02年度 03年度 04年度 05年度 06年度 グラムも、信託基金の支援を受けています。各信託基金の活 現金および流動性投資 スワップ後借入金残高 動内容については、世銀の「信託基金年次報告」をご覧ください (www.worldbank.org. にアクセスし、Index を選択)。 拠出金、総資産、および実行状況 図3.15 2006 年度、世銀の信託基金ポートフォリオは拡大しました。 資本/貸付比率 | 2006年6月30日現在 単位:% 2006 年度、ドナー拠出金は前年度よりも 9.5% 多い 53 億ドル 35 33.1 となりました。信託基金の総資産は 10.5% 増の 103 億ドルとな 31.4 29.4 りました。拠出総額の 80% は上位 10 ドナーによるものです 26.6 (表 3.2 参照)。 22.9 主な新規プログラム 2006 年度、ドナーコミュニティは新たな開発課題に対処する ために、以下に紹介する 4 つのプログラムなど、複数の信託基 金プログラムを創設しました。 0 02年度 03年度 04年度 05年度 06年度 鳥インフルエンザ・ヒトインフルエンザ・ファシリティ このファシ リティは、これまで満たされていない資金調達ニーズに対処す るいくつかの信託基金で構成されており、7000 万ドル以上を拠 出の予定です。これらの基金は、ファシリティの諮問委員会に 承認された総合的な国別行動計画などの活動を支援します。 アフリカ触媒成長基金 この基金は成長促進のメカニズムとして 英国からの 2 億ポンドの一次拠出で設置されました。その他の パートナーからの資金の活用や MDGs 達成のために実施されて いる政府プログラムの支援などを目的とします。 アジア・大洋州および中央アメリカ・カリブ海のマネーロンダリング 防止・テロ資金対策信託基金 カナダの拠出金によるこの基金は、 マネーロンダリング防止活動やテロ資金対策を担当する機関の 能力を強化するためのものです。 第3章:2006年度の活動概要 63 紅海・死海間送水フィージビリティ調査 1550 万ドルのこのマル 表 3.2 チドナー信託基金は、紅海から死海への送水が実現可能かどう 信託基金ドナーの上位 10 カ国・機関 単位:100 万ドル かの判断を通じて死海の水位低下に対して可能な解決策を探る ための調査に資金を提供するものです(www.worldbank.org/ ドナー 05 年度 06 年度 cfp 参照)。 米国 358 713 協調融資 英国 552 664 協調融資とは、特定の融資プロジェクトまたは融資プログラ ムに対して、世銀の資金とは別に、借入国以外の第三国が資金 オランダ 411 488 を拠出する仕組みです。2006 年度は 141 件の世銀プロジェクト 欧州共同体(EC) 408 459 が、協調融資を通して 49 億ドルを調達しました。 主なパートナー は米州開発銀行(13 億ドル) 、英国国際開発省(5 億ドル)でし 世銀グループ 462 422 た。多国間パートナーによる協調融資の拠出は 35 億ドルでした。 日本 405 339 こうした協調融資を最も多く受けた地域は、ラテンアメリカ・ カリブ海地域(15 億ドル) 、東アジア・大洋州地域(12 億ドル) 、 フランス 373 335 アフリカ地域(10 億ドル)でした。 イタリア 211 315 IMF との協調の促進 ノルウェー 202 272 2006 年 3 月、世銀総裁と IMF 専務理事が、世銀および IMF スウェーデン 193 193 の現役職員や前職員、国際金融機関の幹部、政府財政官など 6 名で構成される外部評価委員会の設立に合意しました。この その他のドナー 1,236 1,069 委員会は、大きく拡大している世銀と IMF との協調に関する意 拠出金総額 4,811 5,269 見を加盟国に求める予定です。また、政策助言、融資業務、技 術協力、借入国の固有のニーズを満たすプログラムの構築方法 信託基金 9,322 10,293 といった問題に関する世銀と IMF の協調における具体的な改善 a 拠出金 4,811 5,269 策を提言することも期待されています。 現金支払 4,235 4,374 財政管理枠組み契約 ドナー援助の調和や調整は、共同分析活動への参加、国別戦 注:2006 年度の各ドナー拠出額に基づいたランキング。 略やセクター別戦略の共同策定、プロジェクトやプログラムへ a. 拠出額は現金主義で計上。ただし GEF (地球環境ファシリティ)、GFATM(世界エイズ・ の融資のための共通の仕組みづくりなどを通じて国レベルで行 結核・マラリア対策基金)、HIPC は発生主義で計上されている。 われます。世銀が他のドナーらと、2006 年 3 月に国連と財政管 理枠組み契約を締結したことは、この課題に関するさらなる前 進となりました。この契約は、世銀がこれまで二国間および多 国間の開発機関に重点を置いて進めてきた財政管理調和のプロ グラムにおける画期的な出来事であるといえます。この新たな 契約により、世銀は、世銀の資金が意図した目的に使用される という合理的な保証を引き続き提供する枠組みの中で国連の財 政管理規制に頼ることができるようになります。 64 世界銀行 年次報告書 2006 世界銀行年次報告 2006 出版局 年次報告書製作チーム責任者 Richard A. B. Crabbe 編集長 Anne Carlin 副編集長 Jonathan H. Tin 編集製作 Cindy A. Fisher Mary C. Fisk Aziz Gökdemir 印刷製作 Randi Park Denise Bergeron 製版 Publishing Dimensions デザイン Gensler Studio 585 CD-ROM 製作 Publishing Dimensions ©2006 年 ワ シ ン ト ン D.C. に あ る 世 界 銀 行 の イ ン フ ォ 写真提供者 The International Bank for Reconstruction and ショップは、開発経済関連の文献を幅広く揃え 表紙 Crispin Hughes/Panos Pictures Development / The World Bank たブックストアであると同時に、世銀のプロ p16 Arne Hoel /世界銀行 1818 H Street NW ジェクトに関する情報センターでもあります。 p20 Arne Hoel /世界銀行 Washington D.C. 20433 インフォショップにはさまざまな組織が発行 p22 Bruno Donat /世界銀行(左) 電 話:202-473-1000 する各種出版物や、世銀の情報公開政策に基 p25 Arne Hoel /世界銀行 ホームページ:www.worldbank.org E メ ー ル:feedback@worldbank.org づいて公開されている文書が揃っています。 p30 Arne Hoel /世界銀行 国別情報は世界各地の現地事務所に設置され p32 Arne Hoel /世界銀行 すべての権利は留保されています。 た 情 報 セ ン タ ー(PIC) か ら も 入 手 で き ま す p50 Arne Hoel /世界銀行 (www.worldbank.org/infoshop)。 p52 Arne Hoel /世界銀行 本書中の地図に示されている国境、色、名称などの情報は、 それぞれの地域の法的地位に対する世銀グループの意見 や、こうした国境に対する支持あるいは承認を示すもので 住 所:701 18th St., NW 他の写真はすべて世界銀行のもの。 はありません。 Washington, D.C. 20433 (月〜金の午前 9 時〜午後 5 時) 権利およびライセンス(副次的権利を含む)に関するお問 い合わせは下記へお送りください。 電 話:202-458-4500 The World Bank (午前 9 時 30 分〜午後 3 時 30 分) The Office of the Publisher ファックス:202-522-1500 1818 H Street, NW 電子書店(e-bookstore): Washington D.C. 20433 ファックス:202-522-2422 www.worldbankinfoshop.org E メ ー ル:pubrights@worldbank.org PIC 東京 〒 100-0011 東京都千代田区内幸町 2-2-2 富国生命ビル 1F 電 話:03-3597-6650 ファックス:03-3597-6695 E メ ー ル:ptokyo@worldbank.org Printed on postconsumer recycled stock.