子育て支援への取り組み:企業主導型の子育て支援の 企業の事例 ケーススタディ 三菱東京 UFJ 銀行 金融機関(日本) 市場を拓き、機会を創る この翻訳版について このケーススタディは、IFC のジェンダー事務局が中心となり推進している IFC の「子育て支援への取組みのためのイニシアティブ」の一環で作成さ れ、2017 年の報告書「子育て支援への取り組み:企業主導型の子育て支援の企業の事例」で発表されました。本報告書はこれを翻訳したものです。こ の報告書は、世界各地の企業の詳細なケーススタディ 10 件に基づいたもので、事業主に様々な育児支援の選択肢を示すととともに、子育て支援への投 資がどのように業績の向上につながるかを示すなど、企業の指針としての役割を果たします。また、事業所内の保育所の設置や補助金など、従業員のニー ズに最も適切な形で応える支援を見極めるため、従業員の分析をどのように行うことができるかについても論じています。 報告書の全文、および詳細は www.ifc.org/tacklingchildcare をご覧ください。 IFC とは 世界銀行グループの一員である IFC は、途上国の民間セクターに特化した世界最大の国際開発金融機関です。世界の 2,000 以上の民間企業との協働を通 じて、 IFC は、資金、専門知識、影響力を駆使することで、世界の最も困難な地域において市場を拓き、機会を創るための支援を行っています。 2017 年度 には、民間の資金を最大限活用することにより貧困を撲滅し繁栄の共有を促進するため、約 193 億ドルの資金を提供しました。詳細についてはウェブサイト (www.ifc.org)をご覧ください。 著作権及び免責事項 © International Finance Corporation 2017. 無断複写・転載を禁じます 2121 Pennsylvania Avenue, N.W. Washington, D.C. 20433 インターネット:www.ifc.org この出版物は著作権により保護されています。許可なくこの出版物の一部またはすべてを複写もしくは転載することは、関連法違反となる可能性があります。 IFC は、その研究結果の普及に努めており、通常出版物の複製は可能な限り迅速に許可しています。教育や非商業目的での複製の場合は無料で行っていま すが、必要に応じ帰属の明確化と通達が必要となることもあります。 IFC はこの報告書の内容の正確性、信頼性、完全性を、またここで述べる結論もしくは判断を保証するものではありません。また、この報告書の内容の省略 または誤り(誤植、技術上のミスを含むがこれに限定されない)およびこの点に関する信頼性などについて責任もしくは法的義務を負うものではありません。 この報告書に記載されている地図の国境、色、単位名称、その他の情報は、世界銀行グループの領土の法的立場に関する判断やこうした国境の承認または 受諾を示すものではありません。この報告書の分析結果、解釈および結論は、必ずしも世界銀行グループの理事またはこれが代表する政府の見解を反映す るものではありません。 表紙の写真は三菱東京 UFJ 銀行のご厚意により提供いただきました。 この報告書は、一般的な情報の提供のみを目的としており、法制面、証券、もしくは投資に関する助言、および投資の適正に関する見解またはいかなる勧 誘をも意図したものではありません。 IFC またはその関連団体は、特定の企業または組織(本報告書で挙げられたものも含む)への投資、その他の助言やサー ビスの提供もしくは経済的利害関係がある可能性もあります。 副次的権利を含むその他の権利・著作権に関するお問合せは、IFC Communications, 2121 Pennsylvania Avenue, N.W., Washington, D.C. 20433  までお願いいたします。 国際金融公社は、加盟国が採択した協定に基づき設立された国際機関であり、世界銀行グループの一員です。すべての名称、ロゴまたは商標は IFC に属す るものであり、 IFC の書面での同意無くいかなる目的のためにもこれらを利用することはできません。「国際金融公社」および「IFC」は、 IFC の登録商標 であり国際法の下で保護されています。 2017 年 9 月 政策概要 日本 休暇規則 産前産後休業(有給) 有 98 日間 父親休業(有給) 無 男性: 育児休業 取得可能 経済上の分類での名称: 育児休業(有給) 有 309 日間 日本 主要商業都市: 子育て支援に関する事業主の法的義務 0 ~ 2 歳 3 ~ 5 歳 東京 * 子育て支援に関する事業主の義務 有 有 地域: 女性の従業員数を基盤とした義務 無 無 OECD 高所得 従業員の数を基盤とした義務(性別問わず) 無 無 事業主による育児に関する特別法 無 無 所得水準: 高所得 政府による子育て支援に関する対事業主奨励策 人口: 子育て支援を行う事業主への税制優遇策 無 無 127,131,800 人 子育て支援を行う事業主に対する税制面以外での 有(保育 有(保育 うち女性: 優遇措置(資金および / または非資金支援) 所の設置、 所の設置、 65,306,963 人 運営資金 運営資金 の支援) の支援) 労働力参加率(15 歳~) : 民間による子育て支援サービスの質 49% 女性 70% 男性 免許または登録の義務 有 有 義務教育開始年齢: ゾーニングの義務 無 無 6歳 子供対職員の割合に関する義務 有 有 違反に対する罰則 有 有 * 「女性、経済活動ビジネス、法律」に関するデータは、国の主要な商業都市に適用される国内 法及び規制を基盤にしています。出産休業・父親休業・育児休業の算出法など、手法に関する情 報は、こちらをご覧ください:wbl.worldbank.org 3 三菱東京 UFJ 銀行 金融機関 (日本) 三菱東京 UFJ 銀行、2016 年従業員データ: • 三菱東京 UFJ 銀行の 31,800 人の日本に いる正社員のうち 49.5% と、1 万 1,425 人 の事務・契約社員のうち 90% が女性。事 務・契約社員も含めた全体では 60% が 親、仕事、育児-日本 女性。 • 同行の男女の正社員の 17% が 5 歳未満の 65 歳未満の日本女性の大半が職に就いており、既婚女性の多くが仕事をしています。これは、 子有り。 35 年前と比べると大きな変化です(内閣府男女共同参画局、 2016 年)。しかし、他の多くの 三菱東京 UFJ 銀行の 子を持つ社員への支援 高所得国と比較すると、日本における母親の就業率は低く(OECD、 2016 年)、働く女性の は以下の通り: 60% 以上が出産と同時に、多くの場合数年間にわたり職を離れる傾向にあります(内閣府男 • 子供が 2 歳になるまでの間、職場復帰が 女共同参画局、 2016 年)。こうした経験を積んだ女性の離職は、日本の事業主の、そしてよ 保証された 1 年間の無給の育児休務を取 得できる。 (これは、政府が定める 1 年間 り広く日本経済全体の損失です。離職した女性の多くが 40 代後半前に復帰しますが、その行 の休業にプラスして行われる-この間の雇 先は低賃金のパートタイムもしくは臨時雇用に集中しています(日本統計、 2016 年)。大企 用保険育児休業給付金は産前の給与の 3 分の 2) 業の多くが依然としてコース別人事制度を取り入れています。この制度の下では、管理職への • 妊娠中、産育休中、そして復職のための 昇進機会は、継続して働き日本各地への転勤が可能な従業員に限られています。従業員は通 女性向け支援プログラム 常、大学を卒業してすぐに就職します。仕事を中断したりまたは転勤が不可能な従業員に残さ • 託児補助 れたキャリアは、難易度の低いそして / または事務的なポジションです。中途採用や再雇用と • 保育園・託児所探しなどに関するコンサル いう選択肢は限られています。さらに男女間で大きな賃金格差があり、教育を受けた女性の ティングサービス 復職の動機付けが低くなっています(Kato、 Kodama、 2015 年)。 • 看護休暇(最大 10 日間) 日本では仕事と育児の両立は容易ではありません(OECD、 2016 年)。保育所はキャンセル • 子供が 9 歳になるまで時短勤務を選択す ることができるほか、時間外労働の免除、 待ち状態で私立の保育所の保育料は高く設定されています(Osaki、 2016 年)。加えて通勤 セレクト時差勤務制度など 時間も長くこれも仕事と家庭の両立の妨げとなっています(Abe、 2011 年)。家庭における無 子育て支援の主なビジネス面の効果: 給の仕事の男女間の分担は平等から大きくかけ離れています(Addati 他、 2016 年)。さら • 新しく母親になった従業員の定着率の大幅 に長時間労働という文化により仕事と家庭の間でバランスを取ることが難しく、父親が家庭内 な改善 で果たせる役割が限られています(OECD、 2015 年)。育児休業は父親・母親の双方が利 • 顧客満足度の上昇 用することができますが、 2014 年を見ると実際にこれを取得した父親の割合はわずか 2% で • 賞を複数受賞するなど、広報・企業イメー ジでプラスの効果 す(内閣府男女共同参画局、 2016 年)。 • 同 行 のジェンダー の 多 様 性 戦 略 の 重 要 な柱 仕事と育児の両立が困難であることが、日本の出生率の大幅な低下の要因のひとつになって います(Kato、 Kodama、 2015 年)。日本の出生率は世界でも最も低くなっています(内 4 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 このケーススタディは、三菱東京 UFJ 銀行が日本で事業を展開していくな 「多様性に富んだ従業員とマネジメント かで家庭を持つ従業員を、託児補助をはじめとする同社の支援によってど のように支えているのかを検証しています。同行は、新しく母親になった が、組織をよりパワフルにするための真の 従業員の定着率が大幅に高まること、そして子育て支援が、多様性のた 原動力であることはどの企業においても同 1 めの戦略で重要な位置を占めていると考えています 。 じです。より多様な人材が集まれば、様々 なアイデアや考え方、働き方が生まれます。 三菱東京 UFJ 銀行 これが、ビジネスの幅を広げ一段と活力 日本最大の銀行である三菱東京 UFJ 銀行は、 2006 年に東京三菱銀行と に満ち溢れた企業を創り出していきます。 UFJ 銀行が合併して誕生しました。親会社である三菱 UFJ フィナンシャル・ ダイバーシティは、どの企業にとっても極 グループ(MUFG)は、世界トップクラスの金融グループであり、 2017 年 3 月 31 日現在で総資産は約 303 兆 3,000 億円(2 兆 7,000 億ドル) めて重要なのです」 となっています。東京に本社を構え約 350 年の歴史を誇る MUFG のグ 平野 信行 三菱 UFJ フィナンシャル・グループ取締役 ローバルネットワークは世界 50 カ国以上に広がっています。 2,000 を超 代表執行役社長 グループ CEO えるオフィス、15 万人以上の従業員、そして約 300 のグループ関連会社が、 商業銀行業務、リテール(個人)向けサービス、信託銀行業務、証券業 務、クレジットカード、消費者金融、資産運用、そしてリース事業を展開 閣府男女共同参画局、 2016 年)。低出生率は日本の高齢化社会の大き しています。 な要因のひとつです。また、高い技術を持った人材の不足という日本企 業が抱える深刻な問題の原因のひとつでもあります(Ganelli、Miake、 2015 年)。日本政府は、低出生率および女性の経済活動への参加が低い 子育て支援とビジネス ことがもたらす経済コストを認識しており、出産後も働き続けることへの 女性従業員の定着と登用は、三菱東京 UFJ 銀行、総じて日本の最優先課 障害を減らすため様々な政策措置を導入してきました。たとえば、母親・ 題です。 2016 年 4 月に「女性活躍推進法」が施行されました。これは、 父親双方を対象とした 1 年間の有給の育児休業を取得することができ、ま 女性の就業率および労働参加率の改善、並びに男女問わず働く人の仕事 た子供が 3 歳になるまで短時間勤務を選択することができます。さらに、 と生活の調和(ワークライフバランス)の向上の支援を目標としています。 保育所の数を増やすために多大な投資を行っています(内閣府男女共同 同法の下、企業は進捗状況を分析およびモニタリングするとともに、男女 参画局、 2016 年)。日本政府は、 2020 年までに民間セクターの上級管 平等に向けた行動計画を策定する必要があります。日本最大の銀行であ 理職に占める女性の割合を 15% まで引き上げるという数値目標も打ち出 る三菱東京 UFJ 銀行は、こうした日本政府による職場における男女平等 しました。民間企業が男女平等と女性の経済活動への参加の推進で積極 の向上という目標を自らの目標として掲げこれを支援するとともに、従業 的な役割を果たすことが期待されています。 2003 年施行の「少子化社 員の子育てに関するニーズに応えるべく積極的な取組みを展開しています 会対策基本法」(2013 年に延長)は、雇用する従業員が 101 人以上のす (Kambayashi、 Kato、 2017 年 ; Araki、 2006 年)。平野信行取締役 べての企業に対し、育児に取り組む従業員の仕事と生活の調和の実現の 代表執行役社長 グループ CEO は、次のように説明します。「多様性に富 ための行動計画の策定・届出を義務付けています(Umeda、 2014 年)。 んだ従業員とマネジメントが、組織をよりパワフルにするための真の原動 力であることはどの企業においても同じです。より多様な人材が集まれば、 5 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 様々なアイデアや考え方、働き方が生まれます。これが、ビジネスの幅を 2016 年日本の三菱東京 UFJ 銀行で女性従業員の占める割合 広げ一段と活力に満ち溢れた企業を創り出していきます。ダイバーシティ は、どの企業にとっても極めて重要なのです。」 三菱東京 UFJ 銀行は、上級管理職に就くことができる女性従業員の数 4.5% 部店長 を増やすことが特に必要だと考えています。現在、上級管理職で女性の 占める割合はわずか 4.5%、そして全管理職ポジションで見ても 14% で 14% 次課長 す。一方で、従業員の半数が女性です。日本の大企業の多くがそうであ るように、通常従業員は大学を卒業してすぐ新卒として 23 歳で入社しま す。それから会社にとどまり会社とともに成長していくと期待されています 20% 役付者 (Kambayashi、 Kato、 2017 年 ; Araki、 2006 年)。 三 菱 東 京 UFJ 銀 行は次の 3 つの分野で従業員を採用します。総合職:地域を問わず転勤 49.5% 行員 が可能な従業員(従業員の 50.9%、 (本職種の)7.9% が女性)。総合職(特 定):転勤や業務領域間での異動は免除(従業員の 18.6%、(本職種の) 77% 役付者でない従業員 93.5% が女性)。アソシエイト職:(従業員の 30.1%、(本職種の) 97.7% が女性)。伝統的に、女性が職を離れた後にキャリアポジションに復帰す ることは困難です。 90.1% 事務・契約社員 同行において、女性従業員がはじめて子供を産み母親になる年齢は 30 歳もしくは 31 歳というケースが多くなっています。この段階で子育てのた めに従業員を失うことは、数年分の育成研修・経験が無駄になることを意 味します。さらに、同行は行内の人材の育成を重視していることから、通 常外部からの人材を登用することは多くありません。経験を積んだ女性従 業員を失うことによるコストは、女性従業員の大半が所属するリテール業 務の変化により大きくなっています。テクノロジーと顧客基盤の変化に伴 い、業務のなかでも定型的な側面は減り専門知識の必要性が高まってい ます。リテール銀行業務の成功のためには、顧客それぞれのニーズにあっ たアドバイスの提供、長期にわたる関係の構築、高度な(提案等の)選 択肢に関する深い知識がますます重要になっています。顧客のフィード バックは、女性従業員が産後離職することで、担当者の変更やその専門 写真:三菱東京 UFJ 銀行提供 知識へのアクセスが途切れるといったことが、顧客の質に関する認識に致 命的な影響を及ぼすことを示しています。こうした状況を踏まえ、同行の 取締役会は 2005 年に、女性の職場での活躍を推進するため「女性活躍 推進隊」を設置し、女性従業員の定着の推進のための手法を調査するよ 同行の女性従業員向けの冊子、「めざせ、ともノビママ!」。 う指示を出しました。 6 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 三菱東京 UFJ 銀行の従業員の約 17% が 5 歳未満児の親です。この割合 子供を持つ従業員への支援 に男女差はありません。これは、母親となった女性従業員が小さな子供 「女性活躍推進隊」を設置し、働く親をサポートすることで新しく母親になっ の育児のために銀行を離れるのではなく、仕事を継続することを提唱した た従業員の離職に伴う人材の損失を減らすという同行の重点的な取組み 同行のポリシーが成功していることを示しています。このポリシーの正式 は、 2005 年に始まりました。役付者以上の 8 人の女性からなる「女性 導入以前からこれは提唱されていましたが、以前は女性が母親になり離職 活躍推進隊」はまず、行内の女性従業員を対象に女性の働く環境について、 したことから、 18 歳以下の子供を持つ男性従業員の数は女性従業員の 2 そしてより女性が働きやすい労働環境の構築のための策について調査を 倍以上という傾向が続いています。 しました。寄せられた回答により、預け先を見つけることが困難であるこ 図 1、三菱東京 UFJ 銀行の子供を持つ従業員への支援 7 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 と、法で定められた 1 年間よりも長く育児休業を取りたいこと、また、ロー 産前産後休務・育児休業 ルモデルが存在せず、同行では働く母親も職場で歓迎され、周囲のサポー 三菱東京 UFJ 銀行によると、 2016 年、産前産後休務(産休)および育 トを受けられるということを明確に伝えるコミュニケーションがなされてい 児休業中の女性従業員が 1,500 人を超えるなど、その人数は日本トップと ないことなどが明らかになりました。 2006 年に 「 女性活躍推進隊 」 はこ なっています。産休の取得は、 10 年前に女性活躍推進を重点課題に据え の調査結果を取締役会に報告しました。また、この戦略の担当部署として て以来急激に増加しました(図 2)。 2007 年に産休・育休を取得した女 「女性活躍推進室」を人事部に設置しました。これが後に組織改編を経て 性はわずか 294 人でした。 「ダイバーシティ推進室」となります。様々なアイデアを出し合いこの取組 日本では、母親が出産 6 週間前から 14 週間の産休を取ることが法律で認 みを推進するため、ダイバーシティ・インクルージョン(D&I)に関する められています。その間の育児休業給付金は産休前の 3 分の 2 に設定さ 検討チームも複数作られました。当初はこうした取組みには女性従業員の れており国の雇用保険プログラムから支給されます。また男女問わず、子 みが抜擢されていましたが、 2012 年に、イニシアティブの推進において 供が 12 カ月になるまで、復帰が保証された育児休業(一部有給)を活 女性のみに焦点を当てていては変化は期待できないことが明らかになった 2 用することができます 。 2006 年に「女性活躍推進隊」が調査を行った ことから、男性従業員も参加することになりました。三菱東京 UFJ 銀行の、 際、多くの女性従業員が、子供が誕生してから 12 カ月後に子供を託児所 ジェンダーをはじめ、障がい者や年齢、性的指向といった幅広く多様性に に預け仕事に復帰するのは早すぎると感じていることが明らかになりまし 関する問題を扱う 「 ダイバーシティ推進隊 」 は、日本 3 カ所にチームがあ た。これを受け同行は、雇用関係を継続した状態で無給ながら育児休業 ります。 を 12 カ月間長く取得するという選択肢も追加しました。また多くの女性が、 三菱東京 UFJ 銀行は、そのワークライフバランス施策の推進において 2 長時間労働により仕事と母親業の両立について不安に思っていることも判 つの大きな節目を経験しました。 2006 年が起点となった第一ステージに 明しました(次項参照)。ダイバーシティ推進室による、産育休取得の推 おいては、育児休業の延長や、子育て支援、勤務時間の短縮や柔軟な勤 進の取組みは時と共に変化しました。当初の活動の重点は、就業継続に 務時間、女性のロールモデルの重視など、主な活動の焦点は母親でした。 ありました。これは今でも重要ですが、 2014 年以降は、女性の早期職場 2014 年の第二ステージでは、活動の重点が、男女平等およびより総体的 復帰の支援に明確に軸足を移しています。 2 年間の不在というのは(例え に企業文化の変化、特に長時間労働という文化の見直しへとシフトしまし ば)子供が 2 人いる女性の場合は 4 年間の休業となり、キャリア形成の た。同行の福利厚生は、男性従業員・女性従業員双方が利用することが できますが、課題はむしろ男性従業員の意識の変革です。様々なリソース 図 2.産休中の女性の数-三菱東京 UFJ 銀行 を女性と同様に父親にも振り分け、父親業に積極的に取り組んでいるロー ルモデルとなる男性従業員を見つけるための積極的なコミュニケーション 戦略を展開しています。 2,000 1,525 1,293 また同行は従業員支援策として、育児休業(法定以上の)期間の制度化、 1,000 750 託児補助、看護休暇、保育所探しの支援、柔軟な勤務や新しく親となっ 294 た従業員を対象とした時間外勤務免除、およびより健全な勤務時間の実 0 現のためのイニシアティブなどを推進しています(図 1 参照)。 2007 2010 2013 2016 8 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 上で大きな空白期間となるからです。職場への早期復帰のもうひとつの動 機付けとして、保育所は子供が 2 歳になる前のほうが見つかりやすいとい 「私の部署にいた女性部下の 1 人は、産 うことがあります。子供が 2 歳になると保育所への需要が急激に高まりま 育休明けの職場復帰の際、保育所から徒 す。 2006 年~ 2013 年の第一ステージでの無給の育児休業の平均的な 歩 10 分の距離にある支店へ異動すること 取得期間は、産休に加えて 1 年を超えていました。このポリシーが導入さ ができました。これにより、彼女は夜 7 時 れた第二ステージ、 2014 年以降 2017 年 3 月までに復帰した従業員を見 ると、同平均期間は 1 年未満となっています。 まで働きその後すぐに子供を引き取りに行 くことができるようになりました」 妊娠中・新しく母親になった従業員への支援 西尾優子リテール拠点部次長 三菱東京 UFJ 銀行は、新しく母親になった従業員を対象として、産休前・ 産休中・産休後のステージ毎のサポートがあります。産休前には、全て の女性従業員は直属の上司と面談します。この際直属の上司は、女性従 産育休取得中、すべての従業員が「wiwiw」というオンラインのサポー 業員に職場復帰を推奨するとともに、働く母親になること(両立)につい トプログラムにアクセスすることができます。このプログラムは、新しく てのあらゆる懸念に対応します。また、新任の管理職を対象に、こうした 母親になった従業員が職場との関係を維持できるようデザインされていま 面談を行うための研修を行い(ロールプレイング方式で行われ、様々な す。また、子供の託児先や両立のヒントといった職場復帰に関連したオン 懸念や疑問への対処手法を習得します)、さらに女性を様々なリソースと ラインの情報にアクセスできるとともに、例えば最新の技術を学び、英語 つなげ両立のヒントを紹介します。新しく母親になった従業員とその上司 コースやニューテクノロジーなどを学ぶこともできます。親となった従業員 は、円滑な職場復帰のため復帰前にも再び面談を行います。 へのサポート提供に加え、この wiwiw のもうひとつの重要な役割に、直 属の上司と従業員とのコミュニケーションの促進があります。さらに、上 三菱東京 UFJ 銀行における産育休の取得 司に育児休業中の従業員への最善のサポートおよび管理のためのリソー スも提供します。 wiwiw プログラムは、毎月直属の上司に「あなたの従 2015 年~ 2016 年、1,525 人の女性従業員が産休 / 育児休 業員の子供は今 3 カ月です(あるいは 11 カ月です)」といったようなメー 業中 ルを送付します。これは、たとえ産休中であってもその従業員は自分のチー ムの一員なのだという上司の認識を高める役割を果たします。また、上 2015 年~ 2016 年、555 人の男性従業員(新しく父親になっ 司が休業中の従業員に連絡を取るなどコミュニケーションが途切れないよ た従業員の 26%)が、短期育児休業を取得 う促します。 2015 年、産育休から職場復帰した女性の 90% 強が 1 年後も wiwiw は外部業者が管理運営しており、三菱東京 UFJ 銀行は、 ウェブペー 就労 ジやその内容の作成には一切関わっていません。ダイバーシティ推進室の スタッフが、大手の化粧品メーカー向けの同様のプログラムを見つけ、プ 2016 年、産育休から 761 人の女性従業員が復職 ログラム・デザイナーと協力して、同行の従業員向けにカスタム化した商 品を開発しました。 9 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 子育て支援 三菱東京 UFJ 銀行は、従業員に対して託児関連で多額の補助金を提供し 「年末のそれほど忙しくない時期に 5 日間 ています。 2007 年に始まったこの託児補助制度は、小学 3 年生以下の の育児休業を取りました。私は職場でよく 子供を対象としています(アフターケア関連)。子供が 1 歳の誕生日を迎 家族の話をするのですが、周囲は私が育 える前に職場復帰を望む女性従業員(これは日本、そして同行においても 児に積極的に携われるよう支えてくれてい 稀なケースです)については、託児関連費用が相対的に高いことを踏まえ ます。職場では仕事をスピーディーに行 (早期復職託児)補助の水準は高く設定されています。幼児保育の環境 は十分に整備されているとは言えません。自宅でベビーシッターを利用す い時間を効率的に使うように心がけていま るには費用が高くまた一般的ではありません。1 歳未満の子供を持つ親は、 す。こうすることで保育園からの突然の呼 月 10 万円(900 ドル)を自費負担ですが、これを超過する部分につい び出しにも対応することができます」 ては最長 6 カ月間月 20 万円(1,800 ドル)を上限に補助が受けられま す。このほか、三菱東京 UFJ 銀行は、託児所や学童保育にかかる費用の 配偶者も同行で働く 2 児の父(MUFG ダイバーシティ レポート、 2016 年) 半額を最大月 2 万円(180 ドル)まで補助します。補助金は男性従業員・ 女性従業員双方が利用することができ、多くの従業員がこれを利用してい ます。 2016 年、女性 4,000 人・男性 1,000 人を超える従業員が託児費 ある従業員は、 2 年間の産育休が終わり職場復帰して以降、3 回も保育所 用の補助を受けました。これは対象となる年齢の子供を持つすべての従 探しをしなければならなかったと言います。 1 回目は東京に引っ越してき 業員が利用することができます。 た時、 2 回目はそれまで利用していた保育所が閉園した時、そして急いで 多くの家庭にとり、保育園探しの最大の問題は費用ではなく施設の不足に 見つけた私立保育園が理想的とは言えなかったことから、より質の高い親 あります。保育園探しには膨大な時間がかかり大きなストレスを生みます。 子共に満足できる保育園に代える必要があった時です。保育所探しの負担 4 歳の子を持つ母であり 「 ダイバーシティ推進隊 」 のメンバーでもあると とこれにかかるストレスを軽減するため、 2016 年に同行は、外部業者と 契約し、空きのある適切な保育所を探す従業員を支援しています。従業 員はこのサービスを無料で利用することができます。また、育児費用を補 「第二ステージへの移行時、女性従業員 完するため、三菱東京 UFJ 銀行の従業員はベビーシッターを割安に利用 の妊娠中・職場復帰へのサポートに関す することもできます。三菱東京 UFJ 銀行がベビーシッター業者との年会費 る上司へのトレーニングは義務化されてい を支払い、従業員は都度のシッター利用料金を支払います。これら 2 つ のサービスは最近導入されたものであることから、その効果や影響に関す ました。しかし今ではこうしたトレーニング る情報はまだわかっていません。 は新しくマネージャーになった行員に限ら れています。これは我々の文化に根付い また職場復帰を目指す両立支援策の一環として、同行は新しく母親にな り(復職した)従業員を、自宅または保育園により近い支店に配属すると たと言えます」 いう対応もしています。西尾優子リテール拠点部次長はこれがどのように 上場庸江ダイバーシティ推進室室長 働く母親を支えているのかを説明しました。「私の部署にいた女性部下の 10 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 1 人は、産休明けの職場復帰の際、保育所から徒歩 10 分の距離にある支 およそ 1,400 人の女性従業員がこれを取得しました。主な利用者は女性 店へ異動することができました。これにより、彼女は夜 7 時まで働きその 従業員ですが、 2015 年には、 5 歳未満の子供を持つ 72 人の父親を含め 後すぐに子供を引き取りに行くことができるようになりました」 97 人の父親がこれを活用しました。従業員は最大 10 日間これを取得する ことができますが、男女ともに平均取得日数はこれを大きく下回っています 同行は、事業所内に保育所は設置していません。これは、同行の働く母 (母親は平均 3.9 日、父親は平均 2.8 日)。 親は、主にリテール支店に配属されており、各支店に複数の働く母親が いたとしても、通常 1 支店に専用の保育施設が必要になるほどその人数 短時間勤務と柔軟な働き方 は多くないからです。 三菱東京 UFJ 銀行の 2006 年の内部および外部による調査によると、長 時間におよぶ柔軟性に欠ける勤務時間が保育所の不足と同様、新しく母 看護休暇 親になった従業員の職場復帰を遅らせる大きな要因となっています。こう 9 歳未満の子供を持つ従業員は、年間で最大 10 日間の有給の看護休暇 した懸念に対処すべく、同行は労働時間を柔軟に管理することができるよ を取ることができます(子供 1 人を持つ従業員は 5 日間、 2 人以上の子供 う様々な選択肢を設けています。これらは、性別問わず利用することがで がいる従業員は 10 日間)。全従業員を対象とした年間の有給休暇に加え、 き、また、そのうちのいくつかは子供の有無にかかわらず全ての従業員が 育児に関連した緊急時や予約、たとえば、子供が病気の時や検診、通院 利用することができます。 に使うことができます。看護休暇は、なかでも 5 歳未満の子供がいる親 がよく利用しています。 2015 年、 5 歳未満の子供を抱える女性を中心に 日本の法律では、新しく親になった母親・父親ともに、子供が 3 歳になる まで 1 日 6 時間の時短勤務を選択する権利があります。給与はそれに応じ た額となります(Nakazato、Nishimura、 2014 年)。三菱東京 UFJ 銀 「家での仕事と職場での仕事のバランスを 行は、これを一番下の子供が 9 歳になるまで利用できるよう延長していま 取ることが難しい時もあります。柔軟な働 す。また働く親は、始業時間を調整し保育サービスをうまく利用できるよ き方を選択できる制度は、働く母親に多く うスケジュールを組むこともできます。たとえば、 9 時 10 分から 4 時 40 分を勤務時間としている人もいます。こうした時短勤務という選択肢は評 の選択肢を与えてくれます。その状況によ 判が良くその取得も、女性の産休取得と並行して増えています。 2007 年 り、自らの必要性に見合った働き方を選 にこれを利用した従業員は 100 人に満たなかったのですが、 2016 年に ぶことができます。私の場合、通常は夫 は 1,000 人を超えています。そのうち父親は 2 人でした。新しく親になっ が子供を保育園に送っていってくれるので た従業員は、時間外勤務を免除する制度を利用することもできます。従業 すが、先日夫がこれをできないときに、セ 員は、自らの生活パターンに合った始業時間・終業時間を選択することが できます。 レクト時差勤務を活用しました。早い時 間に出社するのではなく始業時間を 9 時 多くの従業員が時短勤務を取得するという状況は必ずしも容易ではありま 10 分と遅い時間に変更しました」 せん。支店がまだ営業していたり、本社スタッフが他の時差のある場所の スタッフや顧客との会議に出席しなければならないような夕方や夜には、 ダイバーシティ推進隊メンバーで母でもある従業員 保育所や学校を利用できません。一方で、上司が時短勤務を選択する場 合、若い従業員が代わりとなり学ぶ機会となります。またこれは、三菱東 11 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 通常行っている業務の体系的な見直しを行い、日常的な業務とそうでない 「私の部下に 3 人の子供を持ったチーム 業務の間で優先順位付けを行い、キャリア形成の一環で若手のプロフェッ ショナルやアソシエイトが対応可能な業務と、経験を積んだスタッフが必 リーダーがいます。彼女は、4 時 40 分 要な業務とを分別しました。この過程において、必要な業務に時間を割く に帰宅する時短勤務を利用していますが、 ために他の業務の一部を削減し時間ごとの生産性を大幅に改善すること 通常彼女と同レベルのポジションにある人 ができました。西尾次長は続けます。「柔軟な勤務体制を実現するには、 が行う残りの仕事は、若いスタッフが処理 子供を持たない従業員からの反発の可能性にも留意することが重要です。 しています。これは困難なように思えるか 私は、誰もがある程度の休みを取るべきであり、若いスタッフや子供がい ないスタッフが、仕事が終わらないという理由で休暇を取れないと感じる もしれませんが、2 つの利点があります。 べきではないとはっきり伝えています」。同行では当初、母親の職場復帰 ひとつは、若いスタッフが彼女の仕事を覚 が一般的になるにしたがい、女性従業員に対し短時間勤務制度の活用を えることができるということ。もうひとつは、 促すことに注力していましたが、現在では、子供が 3 歳になるのを待た 女性であり母親であってもマネージャーに ずに通常勤務への復帰を母親に促すことを重視しています。 なれるのだというロールモデルとなってい 「マイスタイル」カードを活用した生産性向上 ることです」 母親である従業員は、可能ならば短時間勤務の解消が推奨されています 須合玲子グローバルサービスセンター副所長 が、従業員全般については、労働時間を減らしより合理的で生産的かつ 健全な妥協点をみつけるよう推奨しています。ダイバーシティ推進室の目 指すゴールは、残業を前提としない働き方がすべての従業員の間で一般 京 UFJ 銀行で働く母親もマネージャーになれるのだという重要なメッセー 的となることです。柔軟な短時間勤務の利用が子供を持つ女性従業員に ジともなっています。これについてグローバルサービスセンターの須合玲 限られている限り、機会の平等で前進はないと考えられます。ダイバーシ 子副所長は次のように述べました。「私の部下に 3 人の子供を持ったチー ティ推進室のメンバーは次のように話します。「上司のなかには『ああ、 ムリーダーがいます。彼女は、 4 時 40 分に帰宅する時短勤務を利用して この女性は時短勤務だからそれほど多くの仕事は振り分けられないな』と いますが、通常彼女と同レベルのポジションにある人が行う残りの仕事は、 考える人もいます。しかしこれは、彼女の業務への意欲をくじく結果となり 若いスタッフが処理しています。これは困難なように思えるかもしれませ ます。変化は共同責任です。上司は全ての従業員を等しく扱うべきであり、 んが、 2 つの利点があります。ひとつは、若いスタッフが彼女の仕事を覚 従業員の勤務時間を問わずその能力を重視すべきです。同時に、従業員 えることができるということ。もうひとつは、女性であり母親であってもマ は、こうした選択肢を単に利用するのではなく、銀行に貢献することを重 ネージャーになれるのだというロールモデルとなっていることです。」 視すべきです」。若い女性は、こうした柔軟な勤務体制を選択する従業員 は真剣に受け止めてもらえず、キャリア面で意欲がないとみなされると考 同行では、時短勤務および柔軟な勤務時間制度により、一段と効率的な えるかもしれません。これは、彼女たちの管理職へステップアップすると 働き方が求められています。西尾優子リテール拠点部次長が、以前担当 いう意欲の妨げになりかねません。 していた支店での、時短勤務や時間外勤務の免除を選択する女性の増加 への対応に関する自身の経験を紹介しています。同氏と彼女のスタッフは、 12 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 労働時間に関する文化を楽しく変える一つの方法として、三菱東京 UFJ 銀行は、カードを使いその日の退社予定時刻を掲げる手法を導入しました 「子を持つ男性従業員が、子供が病気で (図 3)。通常より早い時間に退社する必要がある従業員は、このカード あることを理由に休暇を申請すると『本当 を机に掲げることで唐突に退社することなくあらかじめ従業員同士で必要 に?』と驚かれます。男性であれ女性で な話をすることができます。また特に頻繁に残業する従業員については、 あれ、子供がいる誰もが良い親となり子 なぜそれほどの長時間勤務が必要なのかを話し合い、仕事の配分をその 従業員と探る必要があるという上司へのメッセージとなります。従業員は 育てへの支援策の恩恵を享受できるよう、 このカードを、勤務時間に関する同僚とのコミュニケーションツールとし 文化を変えることが重要です」 てだけでなく、勤務時間や業務進捗に関する上司とのコミュニケーション 東京のダイバーシティ推進室の男性メンバー ツールとしても利用することができます。「イクボス働き方改革」運動のも 3 と 、直属の上司は、従業員と話し合い仕事への満足度を高め生産性の 高い職場環境作りについて 5 項目からなる宣言を作成することが奨励され 男性メンバーが説明します。「子を持つ男性従業員が、子供が病気である ています。この「イクボス働き方改革」運動は 2016 年にスタート、わず ことを理由に休暇を申請すると『本当に?』と驚かれます。男性であれ女 か 2 カ月間で 500 人を超える管理職が「イクボス」宣言を実施しました。 性であれ、子供がいる誰もが良い親となり子育てへの支援策と家庭を重 銀行で働く父親 視する文化の恩恵を享受できるよう、文化を変えることが重要です」 父親の育児に関する各種制度の活用の推奨 2016 年、三菱東京 UFJ 銀行は冊子「HUG くむ」 は、三菱東京 UFJ 銀行のダイバーシティ推進 図 3 「マイスタイル」カード。残業予定 を発行しました。これは子育てにおいて父親が を示すカードと時差勤務で通常より早く 施策において重要な位置を占めています。ダ 帰宅することを示すカード 積極的に果たすことができる役割を示したもの イバーシティ推進室は、男性・女性双方の従 4 です 。また、家庭内の仕事を父親がどれだけ 業員が子供を持っており、育児両立支援制度 こなすかが、母親の職場での仕事内容を左右 の利用が女性従業員に限られている間は、子 することも説明しています。日々の子育てに関 供のいる従業員が子供を持たない従業員と同 するスケジュールも細かく示しており(図 4)、 じように成功を収めることができる環境を整備 父親が子育て関連の仕事も分担し仕事と家庭の することは困難だとはっきりと認識しています。 間で時間をより公平に配分することを促してい 就学前の子供を抱える親である可能性は男性 ます。また男性従業員へのこうしたメッセージ 従業員も女性従業員も同じであり、また子を持 を強化するため、ダイバーシティ推進室は、積 つ男性の大半は託児補助を受けていますが、 極的に父親業をこなしている男性従業員のロー 写真:三菱東京 UFJ 銀行提供 休業の取得となると男性従業員の間ではまだ ルモデルを紹介する情報発信を行内向けに行っ 一 般 的で はありません。 2015 年 に育 児 休 業 ています。 を取得したのは、女性 1,995 人に対し男性は 235 人でした。東京のダイバーシティ推進隊の 13 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 文化の変化と多様性 同行におけるダイバーシティ推進は、優れた管理職を生み出すうえで重要 な役割を果たしており、全ての管理職が多様性に関する研修を受けます。 三菱東京 UFJ 銀行は、仕事と家庭に対する企業文化の改革に取り組ん ここでは、異なる性、年齢、家庭環境を持つ従業員を重んじ支援すること でいます。「子供の職場見学」である「かがや kids’ day」の開催や、育 を重視するとともに、子供の有無にかかわらず女性従業員に対するサポー 児と仕事をうまく両立している男女の従業員の経験を共有したり、先輩 トと、評価に影響を及ぼす上司の無意識の偏見に注目しています。竹川 復職者の経験を聞く機会を設け、また、子持ち従業員へより良い支援を 浩史人事部長が説明します。「我々の目標は、女性が『これは私が女性だ 行うための上司を対象とした研修プログラムなどを行っています。 からだ』と考えることなく女性たちが成功できる環境を、彼女たちが自ら の性が影響していると感じることなく男性従業員と同じように働き続けるこ 図 4.冊子「HUG くむ」で紹介された 1 日のスケジュールは、 とができる環境を作り出すことです」 父親の子育てへの参画を提案しています 子育て支援がビジネスにもたらす効果 三菱東京 UFJ 銀行の働く親への支援は、事業に関する合理的かつ明確 な理由に基づいています。託児補助をはじめとする働く母親への両立支 援策は、経験を積んだ女性行員の損失が顧客サービスに及ぼすマイナス の影響に対処するためにスタートしました。これにより、同行における従 業員の定着率が大幅に改善し採用にプラスの効果をもたらすとともに、顧 客開発にマイナスの影響を及ぼす要因に対処することができるようになり ました。こうした支援策はコストを伴いますが、新入社員の研修にかかる 費用を正確に分析すれば、これを十分に回収する以上の意味があります。 「我々の目標は、女性が『これは私が女 性だからだ』と考えることなく女性たちが 成功できる環境を、彼女たちが自らの性 が影響していると感じることなく男性従業 員と同じように働き続けることができる環 境を作り出すことです」 竹川浩史人事部長 14 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 一方で、平野信行取締役 代表執行役社長 グループ CEO は説明します。 「これは投資リターンを最重要視するプロジェクトではありません。これは、 当行が今後長きにわたり成功を収めるのに資するであろう多様性を実現す るための、我々の長期投資なのです」 写真:三菱東京 UFJ 銀行提供 こうした新規支援策の実施にはある程度の費用がかかりました。法律で定 められた育児休業(12 カ月)の間の給付金は、主に社会保険で賄われま す。三菱東京 UFJ 銀行は、託児補助、ベビーシッターサービスの年会費、 新しく母親になった従業員とその上司を支援する wiwiw ポータル、そし 2016 年「かがや KIDS’ DAY」は、三菱東京 UFJ 銀行の 125 カ所のオフィスで行われ 1,400 人の行員と 子供たちが参加しました。 て有給で看護休暇を提供しています。 後任の研修で同僚や上司が費やした時間、従業員の離職により失った生 子育て支援がもたらすビジネス上のメリット 産性や顧客などは含まれていません。この推計を基盤にすると、出産によ り離職せず雇用関係を継続する女性の数が 1,000 人を超す単位で増える 従業員の定着 と、資金面の名目リターンは 50 億円(4,500 万ドル)となります。 三菱東京 UFJ 銀行の子育ておよび出産関連支援策の最大の効果は、女 性従業員の定着率の改善です。的を絞った産育休と両立支援策の推進に 採用 より、同行における女性の離職率は、2007 年の 6% から 2016 年には 2.4% 三菱東京 UFJ 銀行の労働市場における人材獲得競争は極めて激しくなっ と半分以下となりました。それでも男性従業員と比較すると高いですが、 ています。採用努力の大半は大学の新卒に向けられており、同行は年に これは大きな前進です。 約 1,000 人の新卒をキャリアおよびその他のプロフェッショナルなポジ 新入社員の採用および研修の費用と比較すれば、子育てや育児関連の直 ションで採用します。同行の革新的な育児両立支援施策は、意欲にあふ 接支出はそれほど大きくありません。プロフェッショナルとして採用された れた若い優秀な女性をひきつけ、彼女たちの結婚の有無に関わらず、同 従業員の同行での 1 年目は、通常主に研修に費やされ生産性は求められ 行は積極的に女性に投資するというシグナルとなっています。ダイバーシ ていません。高いスキルが求められない業務でも十分貢献するには 2 年 ティ推進室が設立され活動を始めた当初に採用されたダイバーシティ推進 から 3 年の実務経験が必要です。 8 年あるいは 9 年を経て、管理職の第 隊のメンバーで、現在は彼女自身が会社説明会で話をする立場になった 一段階にステップアップする準備が整います。出産により従業員が離職す 従業員が振り返ります。「私は学生だった当時、三菱東京 UFJ 銀行の会社 る場合(総じて仕事を始めておよそ 8 年または 9 年経過した後)、後任は 説明会に参加しました。子供を持つ従業員は様々な制度を利用することが 通常内部の若手に引き継がれます。それは、日本において経験を積んだ できると聞き、結婚をして子供を産んでも仕事を続けることができると確 高スキル労働者の供給は限られており、同行がこうした人材を確保できる 信しました。最近会社説明会に参加した際、女子学生から多くの質問を ことは滅多にないからです。須合氏は、新しい部署で従業員が十分に生 受けました。『産休は本当に取れるのですか』、『産休明け・育児休業明 産性を発揮するには、少なくとも 12 カ月から 18 カ月かかるとの推計を示 けに銀行に戻ることはできますか』といった質問すべてに『はい』と答え しました。同氏は、こうした人材採用・育成にかかる費用は控えめに見 ることができたのはとても重要です」 積もって 500 万円(4 万 5,000 ドル)に達するとしています。これには、 15 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 生産性 親になった従業員の離職を減らすとともに男女平等の推進を重視してい ますが、このアプローチが、女性の管理職に占める割合の大幅な向上に 育児との両立支援の成功と勤務時間の短縮および柔軟化の促進は、作業 つながりました。 2006 年、多様性への取組みがスタートした当時、役 構成の効率化を促し、スタッフが短い時間で少なくとも従来と同じだけの 付者に占める女性の割合はわずか 5% でした。 2010 年までにその割合 業務を遂行することができるよう業務管理を支えています。 は 2 倍の 10% に達し、 2016 年 8 月までにさらに 19% へと上昇しました 顧客サービス (MUFG、 2016 年)。出産を機にした女性の離職という損失への対応が、 より広く同行における男女平等、開かれたコミュニケーション、および効 三菱東京 UFJ 銀行のこうしたダイバーシティ推進と女性行員の定着を重視 果的なマネジメントを重視するという機運を高めました。 する戦略は、女性行員の離職によるサービスの質への影響およびリテー ル支店の市場開拓へのマイナスの影響に対する取締役会の懸念を受けて 企業の評価 始まりました。出産関連・育児関連への支援がこの問題への同行の取組 三菱東京 UFJ 銀行は、重点的な男女平等および働く母親への両立支援の みを支えてきました。産育休後の職場復帰を推進しまたこれを可能とす 展開により様々な賞を受賞してきました。経済産業省と東京証券取引所は ることが、各支店での経験の蓄積と顧客との関係の維持につながってい 同行を女性活躍推進で優れた企業に選定しました(なでしこ銘柄、 H25 ます。 年度)。こうした外部からの高い評価により、三菱東京 UFJ 銀行は未来 多様性 の新入社員の目に魅力的に映り、また、顧客とクライアントの同行に対す るイメージを支えています。 三菱東京 UFJ 銀行のビジネス戦略と長期ビジョンにおいて、ダイバーシ ティ推進は極めて重要な位置を占めています。平野信行取締役 代表執行 役社長 グループ CEO は「人的資源の育成に関していえば、多様性は能 教訓 5 力の確保のカギとなる」と強調します 。三菱東京 UFJ 銀行は、新しく母 三菱東京 UFJ 銀行の働く親への支援は時と共に変化してきました。2006 年にスタートした第一ステージでは、同行は主に女性従業員に対し、産 育休の取得を勧め就労継続を促してきました。この戦略は女性従業員の 「最近会社説明会に参加した際、女子学 声を基に策定されました。託児補助や育休の延長、短時間勤務、看護休 生から多くの質問を受けました。『産休は 暇といった制度は、コミュニケーションや上司への研修などを通じて実現 した、女性および上司の「働く母親も従業員として成功することができる」 、 本当に取れるのですか』 『産休明け・育 という認識の変化と同じく重要な意味を持ちました。産育休を取得しその 児休業明けに銀行に戻ることはできます 後復帰する女性の数が劇的に増えたことは、こうした銀行の取組みが実を か』といった質問すべてに『はい』と答え 結んだことを示しています。 ることができたのはとても重要です」 しかし同時に、この成功そのものが新たな問題を生み出しました。産育休 「 ダイバーシティ推進隊 」 女性メンバー を取得し短時間勤務を選択する女性が大幅に増加したことで、女性従業 員を多く擁する部署で人手不足に陥る可能性が生まれました。また、他の 16 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 従業員が、こうした従業員の不在により彼女たちの埋め合わせをしなけれ 正式な休暇および時短勤務の権利は変わらないものの、三菱東京 UFJ 銀 ばならないと感じるなど母親たちへの反発の可能性も考えられました。こ 行は、女性に対して早期復職あるいは短時間勤務から通常勤務に変更す うした懸念への対応の一環として、男性の育児休業をはじめとする子育て ることを推奨し、またこれを支援しています。長期の休業や時短勤務は女 支援制度、活躍支援制度の推進に組織的に取り組みました。同時に、働 性の活躍機会を妨げ、管理職レベルでの男女平等という同行の目標の達 く親だけではなく全従業員について、勤務時間をより有効に管理し、長時 成が難しくなる可能性があります。 間労働という文化に変化をもたらすことも重視されました。西尾氏が説明 三菱東京 UFJ 銀行では、職場における子育てに対する理解を深め優秀な します。「チーム内の働く母親の存在は負担だと考える人もいます。私はこ 女性の離職を減らすという点で大きく進展しています。しかし、保育環境 うした認識を、これは、全員の生産性を上げるメリットだという認識に変 が十分に整備されていないことが引き続き大きな障害となっています。同 えていきたいと思っています。仮に、今まで 5 時までかかっていた仕事を 行による資金面での支援により託児にかかる費用はある程度抑えられます 4 時までに仕上げることができたら、余った時間は仕事以外の何かに使う が、これが保育サービスの利用の可能性を大幅に拡大しているわけでは ことができます。子育て、両親の世話、趣味など誰もが仕事以外のことを ありません。同行はこうした問題への取り組みを進めていますが、これら する。皆が仕事に加え他のことを両立する。つまり、もし生産性が向上す がすぐに変わる可能性は低いでしょう。 れば、皆が余った時間を仕事以外に使うことができるのです」 終わりに 「チーム内の働く母親の存在は負担だと考 わずか 10 年で、三菱東京 UFJ 銀行の働く親への支援の投資は、同行に おける働く母親の数を増やし従業員のインクルーシブ(包摂的な)な文化 える人もいます。私はこうした認識を、こ を高めるなど大きな変化をもたらしてきました。同行のダイバーシティ・ れは、全員の生産性を上げるメリットだ インクルージョンに関するポリシーは、女性従業員の定着と管理職に占め という認識に変えていきたいと思っていま る女性の割合の改善で成功を収めてきました。託児の機会が限られてい す。仮に、今まで 5 時までかかっていた ること、男性の育児休業の取得が進まないこと、さらには長時間労働とい 仕事を 4 時までに仕上げることができた う文化など課題はいくつか残っています。三菱東京 UFJ 銀行の、ニーズ に対応したダイバーシティ推進施策はこうした課題ひとつひとつに対処す ら、余った時間は仕事以外の何かに使う るために変化を続けています。 ことができます。 子育て、 両親の世話、 趣味など誰もが仕事以外のことをする。皆 が仕事に加え他のことを両立する。つまり、 もし生産性が向上すれば、皆が余った時 間を仕事以外に使うことができるのです」 西尾優子リテール拠点部次長 17 ケーススタディ:日本 三菱東京 UFJ 銀行 注 1 このケーススタディのため、2017 年 1 月に東京で、取締役代表執行役社長グルー 2 育児休業中は親一人につき最初の 180 日間は給料の 3 分の 2、その後は半額 プ CEO、人事部長、人事部企画 Gr、ダイバーシティ推進室のスタッフ、及び が支払われます。その資金は雇用保険制度で賄われています(Nakazato、 同行の他の部署のマネジメント 3 人を含め横断的に対面式のインタビューを行 Nishimura、2014 年) いました。また東京のダイバーシティ推進隊のメンバーとのインタビューも行い 3 「イク」は日本語で育てる・養育を意味します。 ました。 4 HUG くむは、日本語の「育む(子供を育てる)」を英語風にしたものです。 5 MUFG,「CEO 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